天井伏図に「ダウンライト12灯」と書いてあっても、明るいのか暗いのかは読み取れません。そして承認した時点で、直せない部分が確定します。

器具の位置は天井の下地に合わせて決まり、配線はその下地の中を通ります。天井を張ってしまえば、1灯足すのに天井を開けることになります。

決めることは7つ。照度、色温度、演色性、配光と配置、回路分けと調光、電源と下地、そして費用。専門知識ではなく、どこを見るかの問題です。

この記事でわかること

  • 図面の「ダウンライト12灯」から明るさを読み取れない理由と、承認の前に設計者へ出す3つの質問
  • 照度の公的な基準が法令・規格・告示の3層に分かれていること、そして働く人のための最低基準と、お客様によく見せるための基準はまったく別物だということ
  • 売場・レジ・厨房・バックヤードなど場所ごとに何ルクス必要かを、「何を見る作業か」から決める手順と、その測り方
  • 電球色・温白色・昼白色をどこで切り替えるかと、切り替わる境界で違和感が出る理由
  • 演色性(Ra)で失敗が表に出る場面と、器具を発注する前に自分で確かめる方法
  • まぶしさと映り込みを避ける器具の位置の決め方、そして調光とスイッチの回路分けをどの単位で分けるか
  • 内装工事の段階でしか入れられないもの(回路・調光配線・間接照明の下地・非常用照明の専用配線)の一覧
  • 照明の費用を器具代・電気代・交換の手間の3つの財布に分け、「1日何人分」に翻訳する計算手順
飲食店の夜は電球色でテーブル面を明るく周囲を落とす。カフェは電球色から温白色。美容室は温白色でカラー確認の演色性。クリニックは温白色から昼白色。物販店は温白色。オフィスは昼白色で作業面の均一性。
「明るくしてください」の正解は、業種で逆になります|飲食店の夜は周囲を落として料理を照らし、オフィスは全体を均一に明るくします。どちらを選ぶにせよ、器具の位置は天井の下地を組んで配線を通す前までに決めてください。

「ダウンライト12灯」から明るさが読めない理由

理由は4つあります。器具の明るさが書かれていない、天井高が考慮されていない、室の平均か、見る面かが示されていない、そして経年での低下が織り込まれていない。

図面から明るさが読み取れない4つの理由と、承認前に自分で確認できること
読み取れない理由 何が図面に書かれていないか 承認する前に自分で確かめること
器具の性能が記号では分からない 丸い記号は位置と数を示すだけで、光束(ルーメン)も配光の角度も読み取れない。同じ記号でも器具によって明るさは何倍も違う 凡例に書かれた品番をそのまま検索し、メーカーの仕様ページで「光束」「配光角」「色温度」「Ra」の4項目を書き写す
天井の高さと仕上げが計算に入っていない 同じ器具でも、天井が高いほど床面に届く光は減る。壁と天井が濃い色なら反射が減り、体感はさらに暗くなる 天井高を平面図ではなく断面図で確認し、壁・天井の仕上げ材の色を仕上表で確認して、両方をメモに残す
「どこを見る作業か」が書かれていない 図面は器具の位置を示すが、レジで釣銭を数える、値札を読む、料理の焼き色を見るといった作業面が指定されていない 平面図に、レジ・作業台・商品棚・テーブル・鏡の前など「見る面」を自分で丸で囲み、番号を振って設計者に渡す
什器と人が図面に描かれていない 什器を置けば影ができ、人が立てば手元に自分の影が落ちる。天井伏図には什器も人も描かれない 平面図に什器の外形を書き込み、レジや作業台の前に立つ人の位置に「立」と記入して、器具の真下に人が来ていないかを見る

照度の公的な基準は、3つの層に分かれている

法令、JIS、そして推奨。この3つは重みが違います。法令で決まっているのは、非常用照明と一部の作業面だけです。

JISは義務ではありませんが、設計者と話すときの共通の物差しになります。

照度に関する公的な文書の3つの層と、店舗での使い分け
層 性格と、店舗での意味 自分で確かめる方法
法令(省令・政令) 守らないと違反になる下限。守っているのは「働く人の安全」と「停電時の避難」であって、商品の見え方ではない e-Gov法令検索で「労働安全衛生規則」「事務所衛生基準規則」を開き、第604条・第605条・第10条の本文を自分の目で読む
規格(JIS) 設計の目安になる推奨値。法的な強制力はないが、設計者と工事会社が共通言語として使う。屋内の具体的な数値はJIS Z 9125にある 日本産業標準調査会(JISC)のJIS検索で規格番号と名称、改正年月日を確認する。本文は有償頒布なので、設計者に該当箇所を示してもらう
告示・ガイドライン 特定の施設や作業に適用される数値。学校や情報機器作業のものは店舗に直接は適用されないが、参考の目盛りとして使える 文部科学省・厚生労働省のページで告示や通達の本文を開き、「誰に適用されるものか」を冒頭で確認してから数値を読む
店舗にかかわる照度の法令一覧(条文で数値を確認したもののみ)
条文 定めている数値と対象 自分の店で確かめること
労働安全衛生規則 第604条 労働者を常時就業させる場所の作業面。精密な作業300ルクス以上、普通の作業150ルクス以上、粗な作業70ルクス以上 レジ・厨房・検品台・バックヤードの作業を「精密・普通・粗」のどれに当たると考えるかを紙に書き、その面の高さを図面に記入する
労働安全衛生規則 第605条 明暗の対照が著しくなく、まぶしさを生じさせない方法によること。照明設備は6月以内ごとに1回、定期に点検 開店前に「6か月ごとの照明点検」を店の年間予定表に入れる。点検日と交換した器具を記録する台帳を1冊用意する
事務所衛生基準規則 第10条第1項 事務所の室の作業面。一般的な事務作業300ルクス以上、付随的な事務作業150ルクス以上(令和4年12月1日施行) 店の事務室・バックオフィスが「事務作業に従事する労働者が主として使用する室」に当たるかを、実際の使われ方から判断する
建築基準法施行令 第126条の5第1項第1号イ 非常用の照明装置は直接照明とし、床面において1ルクス以上の照度を確保できること 非常用の照明装置が必要な建物かどうかを、令第126条の4の用途と規模の条件に照らして設計者に確認してもらう
駐車場法施行令 第13条 建築物である路外駐車場。自動車の車路の路面は10ルクス以上、駐車の用に供する部分の床面は2ルクス以上 屋内駐車場や地下駐車場がある物件では、車路と駐車区画の照明が既存のままで足りているかを内覧時に夜間に見る
消防法施行令 第26条第2項第3号 客席誘導灯は、総務省令で定めるところにより計った客席の照度が0.2ルクス以上となるように設けること 自店が消防法施行令別表第一の何項に当たるかを所轄の消防本部に確認し、誘導灯の種類と数を図面で確認する
照明にかかわる主なJISと、店舗の設計で使う場面
規格番号と名称 何が書かれているか(確認できた範囲) 設計者への確かめ方
JIS Z 9110:2024 照明基準総則 照明設計基準と照明要求事項の総則。令和6年12月20日改正でJIS Z 9110:2011を置き換えた。個別の照明基準があるときはそちらを用いると明記 「今回の設計はZ 9110の2024年版とZ 9125のどちらを参照していますか」と1問だけ聞く。答えられない相手は照明を数量でしか見ていない
JIS Z 9125:2023 屋内照明基準 屋内作業場と、作業場以外の屋内空間の照明の設計基準と要求事項。ISO 8995-1:2002を修正して採用(MOD)。令和5年1月20日改正 「売場・客席・レジの維持照度は、Z 9125のどの表のどの行を参照しましたか」と聞き、該当ページを打ち合わせの場で見せてもらう
JIS Z 9112 蛍光ランプ・LEDの光源色及び演色性による区分 光源色と演色性による区分を定める規格。JIS Z 9110:2024が引用規格として掲げている 器具のカタログに書かれた「電球色」「温白色」などの表記が、この規格の区分に基づくものかを、メーカーの仕様書で確認する
JIS Z 8726 光源の演色性評価方法 演色性の評価方法を定める規格。平均演色評価数(Ra)はこの規格に基づいて求められる。Z 9110:2024の引用規格 器具の仕様に「Ra」の数値が書かれているかを確認する。書かれていない器具は、色を見せる場所には使わない
JIS C 7612 照度測定方法 照度の測定方法を定める規格。Z 9110:2024とZ 9125:2023の両方が引用規格として掲げている 竣工検査で照度を測ってもらう場合、「どの規格に沿って、どの高さで測りますか」を事前に決めて議事録に残す
JIS C 1609-1 照度計 照度計そのものの規格。学校環境衛生基準は、照度の測定にこの規格に適合する照度計を用いると定めている 自店で測るときは、スマートフォンのアプリは規格に適合した照度計ではないことを踏まえ、傾向を見る道具として使う
厚生労働省リーフレットが掲載したJIS Z 9110:2010 表9(事務所)の維持照度と、店舗での読み替え
リーフレットに載っている場所 維持照度(Em)と、店舗で対応する場所 自分の店で確かめること
事務室・役員室・設計室 750ルクス。店ではバックオフィス、発注や帳簿をつける机、パソコンを長時間使う席が近い性格を持つ 事務机の天板の上で照度を測り、同じ机で夕方と夜にも測って、外光がなくなったときの差を記録する
調理室 500ルクス。店では厨房の作業台、下処理台、盛り付け台に対応する まな板の上にスマートフォンの照度計アプリを置いて測り、コックコートを着た自分が立ったときの影の落ち方を写真に撮る
キーボード操作・計算 500ルクス。店ではレジ、券売機、タブレットで注文を受けるカウンターに対応する レジの操作面に照度計アプリを置き、自分が立った状態と立っていない状態の2回測って、差が大きい場合は器具の位置を疑う
受付 300ルクス。店では入口カウンター、受付、待合の記入台に対応する 記入台に紙とボールペンを置き、実際に自分の名前を書いてみる。書きにくければ数値にかかわらず器具を足す
会議室・応接室 500ルクス。店ではカウンセリングルーム、商談スペース、施術前の相談席に対応する お客様が座る側の椅子に自分が座り、相手の顔に影が落ちていないか、天井の器具が視界に入らないかを確かめる

決めること1|場所ごとの照度を、面で決める

室の平均ではなく「見る面」で決めます。レジの手元、テーブルの上、商品棚の正面、鏡の前。場所ごとに必要な明るさが違います。

測り方も着工前に決めます。どこで、いつ、どの高さで測るか。

店の中の「見る面」と、そこで必要になる明るさの性格
見る面 誰が何のために見るか 自分の店で確かめる方法
レジ・会計カウンターの天板 従業員が金額を確認し、釣銭を数え、伝票に記入する。数字と紙という細かいものを見る面で、店内でもっとも高い照度が要る場所のひとつ 千円札と小銭を天板に置き、自分が立った状態で数えてみる。手元に自分の影が落ちるなら、器具が真上か背後にある
商品棚の下段と什器の内側 お客様が商品と値札を見る。天井からの光は上段には届くが、下段や什器の内側は影になりやすい 閉店後に照明だけを点け、いちばん下の棚の前にしゃがんで値札を読む。読めない帯があれば、その帯の商品は選ばれていない
テーブル面・カウンター面 お客様が料理とメニューを見る。飲食店では風営法の照度の測定面でもあり、営業の区分にも関わる 実際に使う皿を1枚置き、席に座って自分の目線から見る。皿の上に自分の頭の影が落ちていないかを確認する
鏡の前の顔 美容室、化粧品売場、試着室でお客様と従業員が顔と髪と肌の色を見る。上からの光だけでは目の下と顎に影が出る 鏡の前に座り、自分の顔を見る。目の下に濃い影が出るなら、正面または左右からの光が足りていない
厨房・作業台・下処理台 従業員が食材の状態、焼き色、異物の有無を見る。労働安全衛生規則第604条の作業面に当たる場所 まな板の上に白い紙を置いて測り、同じ場所で自分が包丁を持つ姿勢をとって、手元が暗くならないかを見る
メニューボード・サイネージの画面 お客様が価格と品名を読む。画面に照明や窓が映り込むと、角度によって読めなくなる 画面の正面、右斜め、左斜めの3か所から見て、映り込みで読めない角度がないかを確認して写真に残す
入口の床と段差 お客様が足元を見る。外が明るい昼と暗い夜で、目が慣れるまでの時間が変わる 昼と夜の2回、外から店に入る動作を実際にやってみて、入った瞬間に足元が見えるかを確かめる
バックヤード・在庫棚 従業員が品番とサイズを読み、検品する。削られやすいが、暗いと在庫の探索時間がそのまま人件費になる 在庫棚のいちばん奥、いちばん下の箱の品番を読んでみる。読むために箱を引き出しているなら照度が足りていない
作業の細かさから照度の水準を決める考え方(数値は法令の最低基準)
作業の区分 労働安全衛生規則第604条の基準と、店舗で当たる場所 自分の店で判断する方法
精密な作業 300ルクス以上。細かい文字や数字を読む、色や質感の差を見分ける、刃物や器具で細かく手を動かす作業 その作業を「老眼鏡をかけた人がやったらどうか」で考える。読み違えると事故や損失につながる作業はここに入れる
普通の作業 150ルクス以上。ものを運ぶ、並べる、片付ける、機器の表示を確認するといった、細かさを要求されない作業 作業中に目を近づける必要があるかどうかで分ける。近づける動作が出るなら精密な作業に上げる
粗な作業 70ルクス以上。物の位置を把握する、通る、置く程度の作業。ただし店内で「そこだけ暗い」と感じさせやすい水準でもある その場所で人が立ち止まるかどうかを考える。立ち止まって何かをする場所なら、粗な作業のままにしない
照度の測り方を着工前に決めておく4項目
決める項目 決め方と、決めておかないと起きること 自分でできる確認
測定する面と高さ レジ天板、テーブル面、まな板の上など実際の作業面で測る。床で測ると天板より明るく出て、問題が見えなくなる 平面図に測定点を丸で描き、それぞれに「床上◯センチメートル」と書き込んで、設計者と工事会社に渡す
測定する点の数 1点だけでは均一性が分からない。最大と最小の差が問題なので、同じ面で複数点を測る 1つの売場で最低3点、レジは操作面と手元の2点を測ると決め、測定日と数値を記録用紙に書く
測定する時間帯 外光が入る店では昼と夜で結果が変わる。夜の数値が本当の照明の性能を表す 日没後に一度、営業中と同じ点灯状態で測る。窓のブラインドを閉めた状態と開けた状態の両方で測る
誰が何で測るか 竣工検査で工事会社に測ってもらうか、自分で測るか。スマートフォンのアプリはJIS C 1609-1の照度計ではない スマートフォンの照度計アプリを入れ、着工前の現在の店や同業の店で測って、数値の感覚を身につけておく

決めること2〜3|色温度と、演色性

電球色、温白色、昼白色。混ぜること自体は悪くありませんが、境界で違和感が出ます。切り替える場所を意図して決めてください。

演色性(Ra)は料理や商品の色に直結します。低いと、肉は灰色に、服は別の色に見えます。

色温度の使い分けと、境界で起きること
光の色の区分 向く場所と、その理由 自分の店で確かめる方法
電球色(オレンジ寄り) 飲食店の夜、バー、カフェの夕方以降、美容室やサロンの待合。落ち着きと温かさが出る一方、白い紙が黄色く見えるため、細かい文字を読む作業には向かない 候補の色温度の電球を1個買い、いまの店の一角に付けて、営業時間と同じ時間帯に自分で見る。写真ではなく肉眼で見る
温白色(中間) 物販の売場、カフェの昼、クリニックの待合、サロンの施術面。木や布の質感が落ち着いて見えつつ、色の違いも判別しやすい汎用性の高い区分 自店の主力商品を1点持ち、その色温度の光の下と、屋外の自然光の下で見比べる。差が大きいなら区分を変える
昼白色(白寄り) 厨房、バックヤード、事務室、診察室、オフィス。色の差が分かりやすく作業しやすいが、客席に使うと落ち着かない印象になりやすい 厨房で食材の色を見て、生鮮の鮮度が判断できるかを確かめる。判断できないなら演色性の側も疑う
色温度が切り替わる境界で起きることと、設計での対処
境界の場所 起きること 図面の段階で確かめること
客席と厨房のあいだ(オープンキッチン) 客席の電球色と厨房の昼白色が同じ視野に入り、厨房だけが青白く浮いて見える。料理を出す瞬間に色が変わって見えることもある 平面図で、客席のいちばん近い席から厨房のどこまでが見えるかを線を引いて確認し、見える範囲の色温度を客席側に寄せる
売場とバックヤードの出入口 扉を開けたときにバックヤードの白い光が売場に漏れ、売場の演出が一瞬崩れる。扉が開きっぱなしになる時間帯は特に目立つ 扉の位置とお客様の視線が交わるかを平面図で確認し、交わる場合は扉の内側の器具だけ色温度を売場側に合わせる
売場と外部(ショーウィンドウ・ガラス面) 昼は外光、夜は店内の照明が主役になり、外から見た印象が時間帯で変わる。夜はガラスが鏡になり店内が見えにくくなる 近隣の同業店を昼と夜の2回、外から見て写真を撮る。自分の店でどちらの見え方を優先するかを先に決める
試着室・鏡の前と売場 売場と試着室で色温度が違うと、選んだときと着てみたときで服の色が違って見え、購入をためらわせる 試着室と売場の器具の色温度が同じ区分になっているかを、器具リストの品番で1行ずつ照合する
昼と夜(外光が入る店) 昼は外光が主役で店内が白く見え、夜は照明だけになって色が変わる。同じ商品が時間帯で違う色に見える いまの店または内覧した物件で、晴れた日の午前と日没後の2回、同じ場所を撮って色の差を目で確認する
演色性の低い照明で問題が表に出る場面と、確認の方法
場面 何が起きるか 自分の店で確かめる方法
アパレル・雑貨の色違い商品 紺と黒、ベージュとグレーの差が店内で判別できない。持ち帰ってから「思っていた色と違う」となり、交換の対応に時間を取られる 紺と黒の商品を1点ずつ持って店の外に出て、自然光の下で見比べる。店内で判別できなかった組み合わせを記録する
飲食店の料理と食材 肉の赤み、野菜の緑、焼き色が沈んで見える。写真に撮ったときにも同じことが起き、投稿される写真の印象が下がる 同じ料理を客席のテーブルの上と厨房の作業台の上に置いて、2か所で見比べる。差があれば客席側の器具を疑う
美容室のカラー確認 染めた色を店内で確認したのに、お客様が外に出ると別の色に見える。技術ではなく光の問題なのに、施術の評価として跳ね返る 施術後にお客様と一緒に入口付近の自然光の下で確認する運用を試し、そこで指摘が出るかどうかを記録する
クリニック・サロンの肌の色 皮膚の色調や施術前後の変化が正確に見えない。カウンセリングの説明と実物の印象がずれる 施術面と待合で自分の手の甲を見比べる。血色の見え方が大きく違うなら、施術面の器具の演色性を確認する
食品売場の生鮮 鮮度の判断が難しくなる。従業員が廃棄の判断を誤る側にも影響する 同じ商品を売場と検品台の2か所で見比べ、鮮度の判断が一致するかを従業員2人で確かめる
値札・タグの文字 電球色で演色性の低い光の下では、白い紙が黄ばんで見え、薄い色の文字が読みにくくなる 実際の値札を売場の各所に置いて、離れた位置から読めるかを確かめる。国土交通省の資料も文字と背景色のコントラスト確保を挙げている

決めること4〜5|配光と配置、回路分けと調光

1灯で全部を照らすより、多灯に分散させます。全体、作業面、演出、装飾の4つの役割があり、ガラスや鏡に器具が映る位置は避けます。

回路を分けておくと、時間帯で明るさを変えられます。分けていないと、あとから分けるのは工事になります。

多灯分散における4つの光の役割
役割 照らすものと、器具の例 図面で確かめること
全体照明 空間全体のベースの明るさ。歩く、位置を把握するための光で、抑えめでよい。ダウンライト、建築化照明 天井伏図で、全体照明の器具だけを蛍光ペンで塗る。塗った器具が等間隔に散っているだけなら、役割が分かれていない
作業照明 テーブル面、レジ、手元、施術面、まな板。人が立ち止まって何かをする面を照らす。ペンダント、スポットライト、什器組み込み 【決めること1】で列挙した「見る面」の一つひとつに、対応する器具が図面上に描かれているかを1件ずつ照合する
重点照明 商品、看板、見せたい壁面。周囲との明るさの差で視線を集める。スポットライト、ダクトレール 売場で「いちばん見てほしいもの」を3つ挙げ、その3か所に器具が向いているかを図面で確認する
演出照明 壁や天井を照らして奥行きを出す。建築化照明、間接照明、ウォールウォッシャー。天井や壁の下地に埋め込むため、あとから追加しにくい 間接照明を仕込む折り上げ天井や壁のふかしが、断面図に描かれているかを確認する。描かれていなければ工事段階では入らない
まぶしさと映り込みを避ける器具配置の考え方
場所 起きることと、位置での対処 図面と現場で確かめること
レジ・会計カウンター 器具が真上または背後にあると、立った人の頭と体で手元に影が落ちる。斜め前上方から当てると影が出にくい 平面図でレジに立つ位置に印を付け、その真上と背後に器具がないかを見る。あれば前方にずらすよう依頼する
美容室の鏡の前 真上からの光だけでは、目の下と顎の下に濃い影が出て、顔色が悪く見える。鏡の左右または正面からの光が要る 鏡の断面図に、鏡面の左右または上部に器具が描かれているかを確認する。天井のダウンライトだけなら足りない
クリニックの診察台・施術ベッド 仰向けになる方の視線に器具が直接入り、まぶしさで不快感が出る。天井の器具の位置と配光でしか避けられない 断面図でベッドに寝た人の視線の延長線を引き、その線上に器具がないかを見る。あれば拡散配光か位置変更を依頼する
飲食店の客席 真上からの強い光は顔に影を作る。少し斜めから当てるほうが自然に見える。テーブルの上に器具を下ろすのも有効 実際にテーブル位置に座り、天井の器具が視界の上のほうに直接入らないかを確かめる。入るなら光源が見えない器具に替える
メニューボード・サイネージ・モニター 画面に器具や窓が映り込むと、角度によって読めなくなる。画面の正面に器具や窓を置かないことが基本 画面の正面に立って、画面に何が映っているかを見る。器具や窓が映るなら、器具の位置か画面の向きを変える
ショーケース・ガラス什器 ガラス面に天井の器具が映り込み、中の商品が見えにくくなる。夜は外部のガラス面が鏡になる お客様が立つ位置から見て、ガラスに器具が映っていないかを確かめる。映るなら什器の向きか器具の位置を変える
床の仕上げ 光沢の強い床は、天井の器具をそのまま映して二重にまぶしくなる。器具ではなく仕上材の選択の問題 仕上表で床材の光沢の程度を確認し、サンプルを実際に照明の下に置いて、映り込みの有無を見る
回路を分ける単位と、分けなかった場合に起きること
分ける単位 分けないと起きること 図面で確かめること
エリアごと(客席・カウンター・厨房・トイレ・バックヤード) 閉店後に厨房だけを点けたいのに、客席まで点いてしまう。来客のない時間帯も全灯するしかない スイッチ系統図を見て、「この回路を切ると店内はどうなりますか」を1回路ずつ工事会社に説明してもらう
役割ごと(全体照明・作業照明・重点照明・演出照明) 昼と夜で見せ方を変えられない。演出照明だけを点けた「準備中の顔」を作れない 【決めること4】で分けた4役が、そのまま別の回路になっているかを器具リストと系統図で照合する
清掃・納品用の全点灯 閉店後の清掃で床の汚れが見えない。営業中と同じ照度では、隅のほこりや床の染みに気づけない 「清掃時に全部を明るくするスイッチはどれですか」と聞く。用意されていなければ、この時点で追加を依頼する
窓際の列と店奥の列 外光が入る昼に、窓際まで点灯し続ける。明るい場所を照らし続けることになる 平面図で、日中に外光が届く範囲に線を引き、その範囲の器具が別回路になっているかを確認する
什器組み込みの照明(ショーケース・棚下・サイネージ) 主照明とは別系統になっていることが多く、開店から閉店まで点きっぱなしになりやすい 什器に付いている照明の数を数え、それぞれのスイッチがどこにあるかを什器の発注前に確認する
看板・外部照明 営業時間外も点灯し続ける。タイマーを入れる余地が図面上に確保されていない 外部照明の回路にタイマーまたは自動点滅器を入れられるかを、分電盤の図面で確認する
調光を入れるかどうかを決めるときの確認項目
確認項目 確認しないと起きること 見積もりと図面で確かめること
器具が調光に対応しているか 調光器を付けても絞れない、またはちらつく。器具ごと交換になり、器具代と工事費が二重にかかる 器具リストの品番ごとに、メーカーの仕様書で「調光」の対応表記と対応する調光方式を確認して一覧にする
調光器の方式が器具と合っているか 調光の方式が合わないと、対応器具でも正常に動かない。組み合わせはメーカーが指定している 「この器具とこの調光器の組み合わせは、メーカーの適合表に載っていますか」と1組ずつ確認する
調光する範囲をどこまでにするか 全部を調光対応にすると器具代が上がる。客席だけ、演出照明だけといった絞り込みができていない 平面図で調光したい範囲を塗り、その範囲の器具だけが調光対応になっているかを器具リストで照合する
操作する人が誰か 調光器がバックヤードの奥にあると、時間帯ごとの操作が続かない。使われない機能になる 調光器の位置を平面図で確認し、営業中に手が届く場所かを、実際の立ち位置から考える
目盛りを記録できるか 誰が操作しても同じ状態を再現できない。日によって店の明るさが変わり、写真の色もばらつく 調光器に目盛りがあるかを確認し、時間帯ごとの設定値を紙に書いてレジの下に貼る運用を決めておく

決めること6〜7|電源と下地、そして費用

内装工事の段階でしか入れられないものがあります。配線、下地、天井内の納まり。確認する図面も表にしました。

照明には3つの財布があります。器具代、電気代、そして交換の手間。高い場所に付けた器具は、交換のたびに足場が要ります。

内装工事の段階でしか入れられないものと、確認する図面
工事段階でしか入れられないもの あとから入れる場合に必要になること どの図面で確かめるか
回路の数と分け方 壁と天井を開けて配線を追加し、分電盤にブレーカーを増設する。仕上げのやり直しと営業の停止が伴う 電気図面のスイッチ系統図と分電盤の単線結線図。回路数に空きがあるかも同時に確認する
調光用の配線 調光の方式によっては信号線が別に必要になる。天井内に通っていなければ、天井を開けることになる 電気図面で、調光対応の器具に信号線が描かれているかを確認する。器具リストの調光欄と突き合わせる
間接照明を仕込む折り上げ天井・壁のふかし 天井や壁を作り直す。造作そのものの工事になるため、器具代よりはるかに高くつく 断面図と展開図。間接照明を入れる溝の寸法と、器具の見え隠れが描かれているかを見る
ダクトレールを支える下地 天井ボードだけでは重量を支えられない。下地の位置を探して補強を入れ直す 天井伏図と下地伏図。ダクトレールの位置に下地の補強が描かれているかを確認する
ペンダントや大型器具の吊り位置と補強 吊り位置を動かすには天井を開ける。テーブル位置を変えたときに器具が合わなくなるのはこのため 天井伏図でテーブル位置と器具の位置が一致しているかを見る。テーブルを動かす可能性がある店は要注意
什器組み込み照明の電源 什器の位置に電源がなければ、床や壁を開けて配線する。露出配線にすると見た目が崩れる 平面図で什器の位置とコンセント・配線の位置が一致しているかを確認する。什器の発注前に行う
非常用の照明装置の専用配線 告示が専用の配線と接続方法を定めているため、一般の照明の配線を流用できない 電気図面で非常用の照明装置の系統が独立して描かれているかを確認する。設計者に法令上の要否も確認する
誘導灯の位置と電源 消防法施行令に基づく設置なので、位置も電源も所轄消防本部との協議で決まる。あとから動かせない 消防への届出図面。避難口誘導灯と通路誘導灯の位置が、実際の避難経路と合っているかを見る
天井内の他設備との取り合い 空調のダクト、スプリンクラー、換気の経路とぶつかると、器具の位置を動かすしかなくなる 設備の総合図。器具と空調吹出口とスプリンクラーヘッドが同じ場所に描かれていないかを確認する
常用の照明と、非常用の照明装置・誘導灯の違い
項目 常用の照明/非常用の照明装置・誘導灯の違い 自分で確かめること
根拠 常用の照明に照度を定めた法令はない(働く人のための最低基準を除く)。非常用の照明装置は建築基準法施行令、誘導灯は消防法施行令が根拠 設計者に「この店に非常用の照明装置と誘導灯は必要ですか」と聞き、根拠の条文名を答えてもらう
スイッチ・調光 常用の照明は自由に切り替えられる。非常用の照明装置は告示が配線の途中にスイッチを設けることを禁じている スイッチ系統図に非常用の照明装置の回路が含まれていないかを確認する。含まれていたら設計者に指摘する
電源 常用の照明は通常の分電盤から取る。非常用の照明装置は予備電源が必要で、停電時に自動的に切り替わる必要がある 器具の仕様書で、予備電源が器具内蔵か別置きかを確認する。内蔵型は電池の交換時期も確認しておく
点検 常用の照明は労働安全衛生規則第605条第2項により6月以内ごとに1回の点検。非常用の照明装置と誘導灯は別の点検制度がある 年間予定表に、常用の照明の点検と消防設備の点検を別の行として書き込む
位置の決まり方 常用の照明は設計者と施主で決める。誘導灯の位置は所轄消防本部との協議で決まる 消防への届出の前に、誘導灯の位置が入った図面を見せてもらい、看板や什器と干渉しないかを確認する
照明にかかる3つの財布と、それぞれの計算のしかた
財布 中身と、見えにくい理由 自分で計算する方法
器具と設置工事(初期費用) 器具本体、ダクトレール、調光器、電気工事の手間。見積書では「電気設備工事」の中に埋もれて、照明だけの合計が分からないことが多い 見積書の照明に関する行だけを電卓で合計し、その金額を余白に書き込む。合計が出せない書式なら内訳を出してもらう
電気代(毎月) 器具の消費電力×台数×点灯時間×営業日数。営業時間中ずっと点いているため、小さな差が長い時間で効く 器具リストから消費電力(ワット)と台数を拾い、1日の点灯時間と月の営業日数を掛けて月のキロワットアワーを出す
交換と清掃の手間 ランプや器具の交換、カバーの清掃。高い天井の器具は脚立や高所作業車が要り、営業中にはできない 天井高が3メートルを超える器具の台数を数え、「1回の交換に何人で何時間かかるか」を工事会社に聞いて記録する
交換と清掃の手間を、設計段階で減らす方法
対象 放置すると起きること 設計段階で確かめること
高所の器具 交換のたびに脚立や足場が必要になり、営業中にはできない。結果として切れたまま放置されやすい 天井高が3メートルを超える位置の器具の台数を数え、寿命の長い光源を選べているかを器具リストで確認する
器具の種類が多すぎる 予備の在庫を種類ぶん持たなければならない。1種類ずつ買うと単価も上がる 器具リストの品番の種類数を数える。同じ役割で違う品番が使われていれば、統一できないか聞く
カバーの清掃 汚れで1年間に5〜15パーセント明るさが落ちる(資源エネルギー庁)。設計時の照度が保てなくなる 器具のカバーが手の届く高さで外せる構造かを、器具の仕様書の図で確認する
光源が器具一体型か交換型か 一体型は光源が切れると器具ごと交換になる。同じ品番が生産終了していると、天井の見た目が揃わなくなる 器具リストで一体型と交換型の別を確認し、一体型の台数と設置位置を把握しておく
点検の記録 労働安全衛生規則第605条第2項が6月以内ごとの点検を求めているが、記録がないと何をいつ替えたか分からなくなる 開店前に点検記録の様式を1枚作る。点検日、切れていた器具の位置、交換した品番の3項目でよい
器具を発注する前に自分でできること
  1. 器具リストの品番を1行ずつ検索し、メーカーの仕様書でRaの数値を書き写す。書かれていない器具に印を付ける
  2. 印を付けた器具が、色を見せる場所(売場・客席・施術面)に使われていないかを平面図で確認する
  3. 候補の器具またはランプを1個だけ取り寄せ、自店の主力商品または主力メニューを実際に照らす
  4. 同じ商品を屋外の自然光の下に持ち出して見比べ、色の差を写真ではなく肉眼で確認する
  5. 差が大きい場所だけ、器具のグレードを上げる。全部を上げる必要はない

業種によって、優先する項目は逆になる

飲食は演色性と色温度、物販は照度と配光、美容は鏡の前の光。同じ「明るくしてください」でも、意味が違います。

決定には期限があります。戻れなくなる3つの日を表にしました。

業種別|7項目のうちどれを優先するかと、確かめ方
業種 優先する項目と、その理由 自分の店で確かめること
飲食店(夜が主体) 【4】配光と【3】演色性が最優先。テーブル面を明るく、周囲を落とす。料理の色が沈まない光を選ぶ。【5】調光でランチとディナーを切り替える 実際の皿を1枚テーブルに置いて、席に座って見る。同時に、テーブル面の照度をアプリで測って10ルクスとの距離を把握する
カフェ(昼夜の両方) 【1】照度と【5】調光。読書やパソコン作業ができる手元の明るさが要る一方、夕方以降は落としたい。外光との調和も課題になる テーブルに本とノートパソコンを置き、午前・午後・日没後の3回、同じ席で読めるかを確かめる
美容室・理容室 【3】演色性と【4】配光。カラーの確認に演色性が要り、鏡に映る顔に影が出ない配光が要る。天井だけでは足りない セット面に座って自分の顔を見る。目の下と顎の影を確認し、施術後に自然光の下でも色を見比べる
クリニック・歯科 【4】配光と【2】色温度。仰向けになる方の視線に器具が入らないこと。待合は落ち着き、診察室は明快にという切り替えが要る 診察台に自分が寝てみて、視界に何が入るかを確かめる。待合の椅子に座って天井を見上げても同じことをする
物販店(アパレル・雑貨) 【3】演色性と【4】配光。商品の色を正確に見せ、重点照明で見せたい商品を際立たせる。什器の下段に光が届くかが分かれ目 色違いの商品を持って店の外に出て見比べる。閉店後に什器の前にしゃがみ、下段の値札が読めるかを確認する
オフィス・事務所 【1】照度と【4】配光。事務所衛生基準規則第10条がかかる。モニターへの映り込みを避ける配光が要る 各席のキーボードと書類の上で照度を測る。モニターの正面に立って、画面に器具や窓が映っていないかを見る
学習塾・教室 【1】照度と【4】配光。板面と机上の照度、そして板面と画面への映り込み。学校環境衛生基準が参考値になる 後方の席に座って板書を読む。板面の正面の天井に器具が並んでいないかを見上げて確認する
ジム・スタジオ 【4】配光と【1】照度。鏡が大きく、天井が高い。仰向けやうつ伏せの姿勢で天井を見る時間が長い マットの上に仰向けになって天井を見る。まぶしい器具がないか、鏡に器具が映っていないかを確認する
サロン・整体・リラクゼーション 【4】配光と【5】調光。うつ伏せと仰向けで見えるものが変わる。施術中は落とし、カウンセリング時は上げたい 施術ベッドに仰向けで寝て天井を見る。同じベッドでうつ伏せになり、床が見える範囲も確認する
照明に関する決定の期限と、過ぎた場合に必要になること
決めること 期限と、過ぎた場合に必要になること その時点で自分ができること
電気の容量・天井高・天井裏の余裕 物件の契約前。過ぎると引込みからの工事か、天井を下げる工事になる。物件を替えるという選択肢も消える 内覧時に天井裏の点検口を開けて写真を撮り、分電盤の扉を開けて回路の空きを数える
場所ごとの照度(決めること1) 基本設計の段階。過ぎると器具の数と種類が変わり、見積もりのやり直しになる 平面図に「見る面」を丸で囲み、番号を振って設計者に渡す。図面が出る前でも紙に書ける
色温度・演色性(決めること2・3) 器具の発注前。過ぎると器具ごと交換になる。同じ器具の色違いがある場合は光源だけの交換で済むこともある 候補の器具またはランプを1個取り寄せ、自店の商品や料理を実際に照らして見る
器具の位置(決めること4) 天井の下地を組み、配線を通す前。過ぎると天井を開ける工事になる 下地が組み上がった段階で現場に立ち会い、実際の空間で器具の位置に立って確認する
回路の分け方(決めること5) 配線工事の前。過ぎると壁と天井を開けて配線を追加することになる スイッチ系統図を印刷し、営業中・閉店後・清掃時の3つの状態で点けたい回路に色を塗る
調光の有無(決めること5) 器具の発注前。器具と調光器の両方に関わるため、あとから入れると器具ごと交換になることがある 「調光を入れる場合、器具と調光器の追加費用はいくらですか」を見積もりの明細で確認する
間接照明の下地(決めること6) 造作工事の前。過ぎると天井や壁を作り直すことになり、器具代より造作費のほうが高くつく 断面図と展開図に、間接照明を仕込む溝が描かれているかを確認する
器具の機種(決めること1〜4の帰結) 納期から逆算。ダウンライトは開口寸法が機種によって違うため、下地の割り付けにも影響する 器具リストの品番ごとに納期を聞き、いちばん遅いものを工程表に書き込む

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よくある質問

照明の相談で繰り返し出てくる質問を4つ挙げます。 いずれも、答えが「数値」ではなく「どの文書に何が書いてあるか」で決まる質問です。

照明の話が混乱しやすいのは、法令の下限と規格の推奨値と、業界の慣習が同じ場所で語られるからです。 出どころを分けて読むだけで、判断はかなり楽になります。

以下では、確認できた条文と規格番号を示しながら答えます。 確認できなかったことは、確認できなかったと書きます。

なお、ここで挙げる数値はすべて2026年8月23日時点で確認したものです。 法令も規格も改正されるので、実際の設計では設計者に最新の状態を確認してください。

店舗の照明に「何ルクス以上」という法律の決まりはありますか?

お客様のための明るさを定めた法令はありません。 ただし、働く人のための最低基準と、避難のための基準は法令にあります。

労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第六百四条は、労働者を常時就業させる場所の作業面の照度について、精密な作業は三百ルクス以上、普通の作業は百五十ルクス以上、粗な作業は七十ルクス以上と定めています。

事務作業を行う労働者が主として使用する室、つまり事務所衛生基準規則(昭和四十七年労働省令第四十三号)第一条にいう事務所については、同規則第十条第一項が一般的な事務作業は三百ルクス以上、付随的な事務作業は百五十ルクス以上と定めています。

この二区分は令和三年厚生労働省令第百八十八号による改正後のもので、照度に関する部分は令和四年十二月一日から施行されています。

避難のための基準としては、建築基準法施行令第百二十六条の五第一項第一号イが非常用の照明装置について床面において一ルクス以上と定め、昭和四十五年建設省告示第千八百三十号第四第一号が、蛍光灯またはLEDランプを用いる場合は二ルクス以上としています。

屋内駐車場については、駐車場法施行令第十三条が建築物である路外駐車場の車路の路面を十ルクス以上、駐車の用に供する部分の床面を二ルクス以上と定めています。

いずれも「働く人が安全に作業できる」「停電時に避難できる」ための下限であって、商品や料理をよく見せるための基準ではありません。 売場の推奨照度は日本産業規格の側にあり、屋内の具体的な要求事項はJIS Z 9125(屋内照明基準)に整理されています。

雰囲気を出すために暗くしたいのですが、どこまで暗くしてよいですか?

三つの下限が同時にかかります。 第一に、働く人の作業面です。

労働安全衛生規則第六百四条の区分に照らして、レジ、厨房、バックヤードなど従業員が常時就業する場所の作業面が基準を割らないようにしてください。

第二に、飲食店では風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第一項第二号があります。

喫茶店やバーのように設備を設けて飲食をさせる営業のうち、国家公安委員会規則で定めるところにより計った営業所内の照度を十ルクス以下として営むものは、風俗営業に当たると定められています。

同法施行規則第二条は、食卓その他の飲食物を置く設備がある客席ではその設備の上面、それ以外では椅子の座面、椅子がない客席では床面の水平面で計ると定めています。

つまり「テーブル面で十ルクス」が分かれ目で、雰囲気づくりのつもりで一律に落とすと許可の要否の話になります。

第三に、避難です。 非常用の照明装置と誘導灯は常用の照明とは別系統で、消灯や調光の対象にできません。

実務的には、全体を落とすのではなく、テーブル面と手元だけを部分的に上げる多灯分散にしてください。 全体照度を下げても、見るべき面の照度が確保されていれば、暗い印象と実用性は両立します。

照明はいつまでに決めればよいですか。あとから変えられないのはどこですか?

期限は三つに分かれます。 もっとも早いのは電気の幹線と分電盤で、契約電力や盤の回路数が足りなければ、器具の話に入る前に物件側の条件で決まってしまいます。

次が天井の下地と配線で、下地を組んで配線を通したあとに器具の位置を動かすと、天井を開け直す工事になります。

ダウンライトの開口寸法は機種によって違うため、位置だけでなく機種の候補も下地を組む前に絞っておく必要があります。

最後が器具の発注で、これは納期から逆算します。 調光を入れるかどうかは器具と調光器の両方に関わるため、器具の発注前に確定させてください。

あとから変えにくいのは、天井内に隠れるもの全部です。

具体的には、回路の分け方、調光用の配線、間接照明を仕込む折り上げ天井や壁の下地、ダクトレールを支える下地、非常用の照明装置の専用配線がこれに当たります。

逆に、あとから変えやすいのはダクトレール上のスポットライトの数と向き、電球色から温白色への光源の入れ替え、そして家具に置く器具です。

工事段階では変えにくいものにお金と時間を使い、変えやすいものは開店後の調整に回すのが順序として正しい進め方です。

照明の費用はどのくらい見ておけばよいですか。削るならどこからですか?

照明にかかるお金は三つの財布に分かれます。 器具と設置工事の初期費用、毎月の電気代、そして交換と清掃の手間です。

初期費用の相場について、出典をたどれる公的な統計は見つからなかったため、この記事では「工事費の何パーセント」という数値は書きません。

かわりに、見積書の照明に関する行を合計し、償却年数で割って一日あたりに直し、粗利で割って「一日何人分」に翻訳する手順を本文に載せました。

電気代については、資源エネルギー庁が家庭向けに公表している試算で、六十八ワットの蛍光灯器具を三十四ワットのLED照明器具に交換した場合、年間二千百八円の節約になるとされています。

ただしこれは年間二千時間使用という家庭の前提での例で、営業時間の長い店舗にそのまま当てはまるものではありません。

削る順番は、演出照明、器具の装飾性、器具の数の順です。 削ってはいけないのは、レジや厨房の手元の照度と、商品や料理を照らす光の演色性、そして回路の分け方です。

回路を分ける工事は着工前ならほぼ追加費用なしでできますが、あとから分けるには壁と天井を開ける必要があります。

まとめ|照明計画で決める7つのこと

照明の初期費用も電気代も、「1日何人分の売上か」に翻訳できます。手順を一覧にしたので、自店の数字を入れてみてください。

図面に「ダウンライト12灯」とあったら、「レジの手元は何ルクスになりますか」と聞いてください。答えられる設計なら、そのあとの話は早く進みます。

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