見積書の下のほうにある「造作家具一式 120万円」。何がいくつ含まれているかは書かれていません。この1行を開かないと、比べることも減らすこともできません。

什器・家具に150万円かけ、造作を10年使うとすれば1日あたり500円を什器に払い続ける計算です。毎日効いてくる費目です。

判断することは7つ。動かすかどうか、造作か既製品か、寸法、納期、壊れたときの直し方、法令、そして買い方。

この記事でわかること

  • 見積書の「造作家具一式」に対して、何を書き足してもらえば他社や既製品と比べられるようになるかという具体的な4項目
  • 造作家具と既製品を、価格・納期・寸法自由度・耐久とメンテナンス・撤去のしやすさの5軸で比べる方法
  • カーテン・じゅうたん等に防炎物品の使用義務がかかる建物と、かからない建物を、消防法と施行令の条文で確認する手順
  • テーブル高・座面高・カウンター高・通路幅を、出所の確認できる数値と、確認できていない目安に分けて決める方法
  • 什器を「工事」で買うか「備品」で買うかによって、耐用年数・少額減価償却資産の枠・融資の返済期間がどう変わるか
  • 造作と既製品の差額を、「1日いくら」「客単価いくらの店で1日何人分か」に翻訳する計算手順
  • 退去のときに持ち出せる什器と、置いていくことになる什器の境目を、借地借家法第33条と造作の定義から判断する方法
取得価額が10万円未満なら全額をその年の経費にでき、20万円未満なら一括償却資産として3年で均等償却でき、30万円未満で青色申告書を提出する中小企業者等なら特例で全額を損金算入できる。それ以上は通常の減価償却になる。
「什器一式」と書かれた見積書では、この判定ができません|10万円・20万円・30万円の3つの区切りで扱いが変わります。工事会社に1点ごとの単価を書いてもらってください。

見積書の「造作家具一式」が読めない理由

書き足してもらうのは4項目。品名、数量、寸法、そして仕様。これがあれば、他社と比べられるようになります。

「造作家具一式」に書き足してもらう4項目と、その理由
書き足してもらう項目 なぜそれがないと比べられないか 今日、依頼するときの伝え方
員数(何を何台) 「一式」のままでは、後から1台減らしたときにいくら下がるのかが計算できない。増減の交渉ができない状態になる 「カウンター1台、レジ台1台、待合ベンチ2台のように、数えられる形で分けて書いてください」と依頼する
寸法(幅・奥行き・高さ) 面積と展開長さが分からないと材料費の見当がつかない。高さは使い勝手に直結するのに、図面を見ないと分からない 「各台のW・D・Hをミリ単位で記載してください」と依頼し、届いた数値を自分でメジャーに置き換えて実感する
材料と仕上げ 芯材(ランバーコア・パーティクルボードなど)と表面材(突板・メラミン化粧板・塗装)で、単価も傷への強さも掃除の方法も変わる 「芯材と表面材の名称を書いてください。サンプル片を1枚ずつください」と依頼し、実物を爪で引っかいてみる
現場作業費の位置 搬入・組み立て・調整・養生が家具の行に入っているのか、別の行に入っているのかで、他社比較のときに二重計上や漏れが起きる 「搬入・組立・調整の手間が、家具の金額に含まれているか別建てかを明示してください」と依頼する

造作家具と既製品は、5つの軸で違う

金額だけではありません。寸法の自由度、納期、修理、退去時の扱い、そして税務。軸ごとに、有利なほうが入れ替わります。

造作家具と既製品を比べる5つの軸
比べる軸 造作家具と既製品でどう違うか 自店で今日確かめる方法
価格 造作は1台ごとの製作になるため、同じ形の既製品が存在する場合はほぼ確実に既製品のほうが安い。ただし特殊な寸法・形状では、既製品を加工する費用のほうが高くつくことがある 造作で見積もられた1台ごとに、同じ用途の既製品をカタログで探し、価格と寸法を紙に並べて書く
納期 造作は設計・製作図の承認・工場加工・現場搬入という工程を踏むため、内装工事の工程表に組み込まれる。既製品は在庫品なら数日、受注生産品なら数週間から数か月と幅が大きい 内装会社に「造作家具の製作図の承認期限はいつか」を聞き、その日付を自分の手帳に書き写す
寸法の自由度 造作は現場の柱型・梁下・配管の逃げに合わせて1ミリ単位で作れる。既製品は決まった寸法しかないため、壁との間に隙間が出たり、通路幅が想定より狭くなったりする 図面に既製品の外形寸法を鉛筆で書き込み、壁との隙間が何ミリ空くかを実際に計算する
耐久とメンテナンス 造作は壊れた部分だけの交換が難しく、同じ職人・同じ材料での補修になる。既製品はメーカーに補修部品があり、天板や脚だけの交換や、同型の追加購入ができる 候補の既製品について、メーカーサイトで補修部品の取り扱いと、その型番の販売開始年を確認する
撤去のしやすさ 造作は床・壁に固定されるため、移動もレイアウト変更も原則できず、退去時は解体して撤去する対象になる。既製品は動かせるうえ、退去時に持ち出して次の店で使える 賃貸借契約書の原状回復の条項を開き、「造作」「附属物」という語が出てくる箇所に付箋を貼る

什器にかかる法令|防炎物品と内装制限

カーテン、じゅうたん、暗幕。建物の条件によっては、防炎物品でなければ使えません。什器まわりの物品の位置づけを表にしました。

什器まわりで扱う物品と、防炎規制上の位置づけ
物品 防炎規制上の位置づけ 今日、自店で確かめること
カーテン、布製ブラインド、暗幕 消防法施行令第4条の3第3項が指定する防炎対象物品。対象となる防火対象物で使う場合、防炎性能を有するものでなければならない 既に付いているカーテンの裾やタグを裏返し、防炎ラベルが縫い付けられているかを見る
じゅうたん等(人工芝・合成樹脂製床シートを含む) 同じく防炎対象物品。消防法施行規則第4条の3第2項が、じゅうたん、毛せん、タフテッドカーペット、ござ、人工芝、合成樹脂製床シートなどを列挙している タイルカーペットの裏面と、納品書・仕様書に防炎の表示または認定番号があるかを確認する
展示用の合板 展示用パネル、掲示板、バックボード、仕切用パネル等に使用される合板が該当する。壁の一部となっているものと黒板に使用される合板は該当しないと解説されている 売場やイベント什器に使っている合板パネルが、壁の一部か独立したパネルかを図面で確認する
テーブル、椅子、カウンター、棚 消防法施行令第4条の3第3項の列挙に含まれていないため、防炎物品としての使用義務はかからない 「防炎の家具にしないといけない」と言われた場合、根拠となる条文または条例を書面で示してもらう
布張りのソファ・ベンチ 義務ではないが、公益財団法人日本防炎協会が任意の認定制度として「防炎製品」を運用しており、布張家具等がその種類に含まれている ソファを検討する際、メーカーに防炎製品ラベルの有無を質問し、回答を見積書に残してもらう
木製等ブラインド、ローパーテイションパネル 布製ブラインド以外のブラインドやローパーテイションパネルも、義務ではないが防炎製品の種類として掲げられている 間仕切りパネルを買うとき、防炎製品ラベル付きの型番があるかをカタログで探す
法令の義務がかかる物品を先に外す手順
  1. 物件の住所・階数・建物の高さと、開業する業種を紙に書き出す
  2. 所轄の消防署(予防課)に電話し、消防法施行令別表第一の該当項を確認する
  3. 防炎物品の使用義務の有無と、市町村の火災予防条例による上乗せの有無を確認する
  4. 担当者の所属・氏名・確認日をメモに残し、内装会社にも同じ内容を共有する
  5. カーテン・じゅうたん等の見積書に「防炎ラベル付き」と明記してもらい、納品時にラベルを実物で確認する

「工事」で買うか「備品」で買うかで、税と融資が変わる

造作として工事に含めると建物附属設備、備品として買えば器具及び備品。耐用年数が違うので、経費になる速さが変わります。

既製品で買うときは30万円・20万円・10万円の区切りが効きます。1台あたりの金額しだいで、その年に落とせる額が変わります。

店舗の什器・家具に関係する法定耐用年数(国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」より)
資産の区分・細目 耐用年数 今日、自店で確かめること
その他の家具(接客業用のもの) 5年 客席のテーブル・椅子が「接客業用」に当たるかを、税理士に1行の質問で確認する
その他の家具(その他のもの・主として金属製)/(その他のもの) 15年/8年 バックヤードのスチール棚と木製棚で年数が違うことを前提に、購入リストに材質を書き添える
応接セット(接客業用のもの)/(その他のもの) 5年/8年 待合のソファとテーブルを1組として発注し、納品書でも1組として記載してもらう
事務机、事務いす、キャビネット(主として金属製)/(その他のもの) 15年/8年 スタッフルームの机・椅子を、客席用と分けて購入リストに記載する
陳列だな、陳列ケース(冷凍機付・冷蔵機付)/(その他のもの) 6年/8年 ショーケースの見積書に、冷凍機・冷蔵機の有無が明記されているかを確認する
カーテン、座ぶとん、寝具、丹前その他これらに類する繊維製品 3年 カーテンを部屋ごとの合計金額で発注し、その合計額を記録しておく
じゅうたんその他の床用敷物(小売業用・接客業用・放送用・レコード吹込用・劇場用)/(その他のもの) 3年/6年 売場と事務室でカーペットの発注を分け、それぞれの金額を分けて記録する
室内装飾品(主として金属製)/(その他のもの) 15年/8年 飾り棚やアートフレームを家具と混ぜず、別項目で購入リストに書く
看板、ネオンサイン、気球 3年 什器と一体で作る看板部分の金額を、家具の金額と分けて見積書に記載してもらう
(参考)建物附属設備 店用簡易装備 3年 造作の内容が「簡易装備」に当たり得るかを、写真と図面を添えて税理士に確認する
什器を既製品で買うときに効いてくる3つの金額の区切り
区切り 制度の内容(国税庁タックスアンサーの記載) 購入リストを作るときに今日やること
10万円未満 少額の減価償却資産として、事業の用に供した事業年度に取得価額の全額を損金経理できる。取得価額は通常1単位として取引される単位ごとに判定する 購入リストに「1単位」の欄を作り、テーブルと椅子を組で買うのか単品で買うのかを書き分ける
20万円未満 一括償却資産として、全部または一部を一括した取得価額の合計額を3年間で償却する規定を選択できる 10万円以上20万円未満の品目だけを抜き出した一覧を作り、税理士に選択の可否を確認する
30万円未満 中小企業者等の特例。青色申告書を提出する一定の中小企業者等が令和8年3月31日までに取得等して事業の用に供した場合、取得価額の合計額のうち年300万円までを損金算入できる 開業年に買う什器の合計額を集計し、300万円の枠に対して余裕があるかを開業前に把握する
消費税の経理方式 取得価額の判定に際し消費税の額を含めるかどうかは納税者の経理方式による。税込経理なら消費税を含んだ金額で、税抜経理なら含まない金額で判定する。免税事業者の経理方式は税込経理になる 自分の経理方式を確認し、購入リストの金額を税込・税抜のどちらで並べるかを最初に決める
貸付けの用に供したもの 令和4年4月1日以後に取得などして貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものは、上記の各制度の対象から除かれる 什器を他の事業者に貸す予定がある場合は、その予定を先に税理士へ伝える

什器・家具を決める7つの判断

まず動かす什器と動かさない什器を仕分けます。平面図を印刷して、毎日動かすものに印を付ける。それだけです。

寸法は、感覚ではなく数値で決まります。カウンターの高さ、テーブルの奥行き、椅子の座面。出所のある数値を表にしました。

納期は3つの日付で押さえます。発注、製作完了、そして搬入。ここが遅れると、開店日そのものが動きます。

7つの判断の全体像と、それぞれで決めること
判断 この判断で決めること 終わったと言える状態
判断1|動かす什器と動かさない什器を仕分ける 店内の什器を「毎日動かす」「たまに動かす」「一生動かさない」の3つに分ける 平面図に3色で色を塗り、動かさないものだけが造作の候補として残っている
判断2|寸法を先に決める テーブル高・座面高・カウンター高・通路幅・棚のピッチを数値で決める 各寸法をミリで書いた一覧があり、既製品のカタログ寸法と照合できている
判断3|納期から逆算する 造作の製作図承認日と、既製品の発注期限を工程表の日付で押さえる 手帳に「製作図承認」「什器発注」「什器搬入」の3つの日付が書き込まれている
判断4|耐久性とメンテナンスで決める 壊れやすい部位ごとに、直す方法と直す人を決める 天板・脚・キャスター・張地の4部位について、補修の手段が書き出されている
判断5|法令の義務がかかる物品を先に外す カーテン・じゅうたん等・展示用合板について、防炎の要否を確定させる 所轄消防署に確認した日付と担当者名がメモに残っている
判断6|買い方を決める 品目ごとに、新品購入・中古購入・レンタル・リースのどれにするかを決める 購入リストの各行に買い方が書かれ、初期費用と月額の両方が集計されている
判断7|出口から逆算する レイアウト変更と退去のときに、何が動かせて何が残るかを確定させる 契約書の原状回復条項を読んだうえで、造作にする台数が確定している
什器の寸法を決めるときの数値と、その出所
決める寸法 数値と出所(確認できたもの/できなかったもの) 今日、自店で確かめる方法
机・テーブルの高さ JOIFAは、1971年にJISで700mmが標準と規定され、1999年に寸法規定が参考扱いになり、現在は720mmを推奨していると公開している いま使っている机の高さを実測し、700mmか720mmかを確認してから新しい什器を選ぶ
椅子の座面の高さ JIS S 1011は事務用いすの座位基準点の高さを380mm以上410mm以下と規定している(上下調節式はこの範囲を含んで調整できること) 候補の椅子の座面高が380〜410mmの範囲に入るかをカタログで確認し、範囲外なら理由を確認する
天板下の空き(膝が入る高さ) JIS S 1031附属書B(参考)は、高さ700mmまたは720mmの机・テーブルで下肢のための空間の高さを620mm以上としている 造作カウンターの製作図で、天板下面から床までの寸法が620mm以上あるかを定規で確認する
一人当たりの席幅 JIS S 1031附属書B(参考)は会議用テーブルで一人当たりの領域を560mm以上としている。JOIFAは連結タイプのデスクで一人あたりの幅を最低1m以上に設定することが望ましいとしている 客席の長テーブルに、想定している人数を560mmずつで割り付けられるか図面上で試す
車いすが近づける天板下の高さ JOIFAは、大型の車いすの肘までの高さが床から670mmであり、机の高さ720mmなら車いすの肘が天板下に入り込むと説明している 客席のうち1台を高さ720mm以上にできるかを検討し、その席の位置を平面図に印を付ける
カウンター高・立ち作業台の高さ 店舗のレジカウンターや立ち作業台の高さについて、出所を確認できる公的な規格は見つかりませんでした。実際に使うスタッフの身長で決めてください 段ボールで仮の高さを作り、レジ操作と会計動作を実際にやってみて、肘の角度で判断する
客席まわりの通路幅 店舗の客席通路幅について、出所を確認できる公的な数値は見つかりませんでした。建物としての避難経路の幅は建築基準法・消防法の対象になるため、設計者に確認してください 什器を置いたつもりでマスキングテープを床に貼り、トレイを持って実際に歩いてすれ違ってみる
什器の納期で押さえる3つの日付と、遅れたときに起きること
押さえる日付 遅れると何が起きるか 今日、確認する相手と質問文
造作家具の製作図の承認日 承認が遅れた日数だけ工場加工と搬入がずれ、他の職種の工程も後ろにずれる。工期延長の理由として施主側の責任になり得る 内装会社へ「造作家具の製作図はいつ届き、いつまでに承認すればよいですか」と聞く
既製品の発注期限 在庫品と受注生産品で納期が大きく違う。張地や色を後から変更すると、その時点で納期が再計算される 家具販売店へ「この型番・この張地で、いま発注した場合の納品予定日」を書面でもらう
搬入日と搬入経路の確認 エレベーターに入らない、階段が曲がれない、共用部の養生許可が下りないといった理由で、当日に搬入できない ビル管理会社へ「搬入時の養生とエレベーター使用に事前申請が必要か」を確認する
検収と手直しの予備日 搬入した什器に傷やがたつきがあったとき、手直しの時間がないまま開店することになる 工程表の搬入日と開店日のあいだに、何日の余裕があるかを数えて書き出す
什器で壊れやすい部位と、直し方を先に決めておく方法
部位 起きること/造作と既製品の違い 発注前に決めておくこと
天板の表面 熱い皿、水滴、洗剤で表面が変色・膨れする。既製品はメラミン化粧板が多く拭き取りに強い。造作の突板や塗装は風合いが良い一方で水と熱に弱い場合がある 使う洗剤の種類を先に決め、その洗剤で拭いてよい仕上げかをメーカーまたは施工者に確認する
脚と接地部 床との摩擦で脚先が削れ、がたつきが出る。既製品はアジャスターやフェルトを交換できる。造作の固定脚は現場での調整になる 脚先の部材が交換できるかを確認し、交換できる場合は予備を発注時にまとめて買う
引出し・スライドレール 開閉の繰り返しでレールが摩耗する。JIS S 1031はファイル引出しで40,000サイクル、それ以外で20,000サイクルの耐久性試験を規定している 造作の場合は金物のメーカー名・型番・保証開閉回数を見積書に記載してもらう
キャスター 髪の毛や糸くずが巻き付き、動きが重くなる。既製品は交換部品がある。造作に後付けしたキャスターは荷重条件が不明なことがある キャスター付きの什器について、想定積載量とキャスターの耐荷重を数字で照合する
椅子の張地 座面の前縁が最初に擦り切れる。既製品は張り替えサービスがあることが多い。造作のベンチは現場で外して張り替える手間がかかる 張り替えの単価と所要日数を、購入前に販売店へ質問して書面でもらう
同型の追加購入 席を増やすとき、既製品は同じ型番を追加できる(廃番のリスクはある)。造作は同じ職人・同じ材料で再製作することになり、単価が上がる 候補の既製品について、その型番が何年前から販売されているかをメーカーサイトで確認する
什器の4つの買い方と、向いている場面
買い方 特徴と向いている場面 決める前に確認すること
新品購入 総額は最も読みやすく、同型の追加や補修部品の入手もしやすい。長く使う客席のテーブル・椅子に向く 1単位あたりの金額が10万円・20万円・30万円のどの帯に入るかを、発注前に集計する
中古購入 初期費用を大きく下げられる。同じ型番をまとめて確保できれば見た目も揃う。傷や色あせは避けられない 同一型番・同一色で必要台数がそろうかを在庫で確認し、実物を見てから決める
レンタル 使用期間が最初から決まっている場合に合う。催事出店、期間限定店舗、繁忙期だけの増席など 最低利用期間、往復の運搬費、破損時の負担額を、見積書の中で数字として確認する
リース 初期費用を抑えつつ長期で使う手段。保守がセットになる契約もある。中途解約は原則できない契約が多い 総支払額と購入総額を並べ、途中解約の条件と期間終了後の扱い(返却・再リース・買取)を書面で確認する
造作(工事として発注) 寸法の自由度が最も高い。建物の凹凸を吸収でき、店の顔になる面を作れる。動かせず、撤去に費用がかかる その台を造作にする理由(配管を隠す、特殊寸法など)を1行で説明できるかを自分に問う

退去とレイアウト変更のときに、何が残るか

造作は建物に付いたものとして扱われることがあります。そうなると、退去時に自分で撤去する義務が生じます。契約前に、造作の扱いを確認してください。

退去のときに什器がどう扱われるか
什器の種類 退去時の扱い 契約前・発注前に確認すること
置いて使うテーブル・椅子・ワゴン 自分の所有する動産として持ち出せる。次の店舗で再利用したり、売却したりできる。全日本不動産協会の解説は、飲食店舗内に設置されたテーブルやいす、什器類は造作ではないとしている 購入時の請求書と型番を保管し、資産台帳に載せておく(売却時の価格交渉の材料になる)
壁・床に固定した造作家具 建物と一体になっていれば建物所有者の所有物となり、造作買取請求権の対象にならないと解説されている。原状回復の範囲に入れば自費で解体・撤去することになる 賃貸借契約書の原状回復条項と造作買取請求権の条項を読み、造作にする台数を先に確定する
賃貸人の同意を得て付加した設備 借地借家法第33条の要件を満たせば時価での買取請求ができる。ただし特約で放棄していれば行使できない 造作を追加する際、賃貸人の同意を書面(メール可)で残し、日付とともに保管する
特殊な目的のために付加した設備 賃借人がその建物を特殊な目的に使用するため特に付加した設備は造作に含まれないと判断されている(最高裁昭和29年3月11日判決) その業種でしか使えない特殊什器は、最初から「持ち出す前提」で置き型にできないか検討する
次のテナントへ譲渡する場合 居抜きで次の借主に造作を譲渡できれば、撤去費を回避し、譲渡代金を得られる可能性がある 契約書で造作の譲渡が禁止されていないかを確認する(詳細は造作譲渡の記事を参照)

あわせて読みたい

よくある質問

什器の相談でよく出てくる質問を4つ取り上げます。 いずれも、答えが「場合による」で終わりがちなものばかりです。 そこで、この記事では確認できた一次情報に沿って、判断の手順まで書きます。

なお、税務と法律の個別判断については、 この記事の内容をそのまま自店に当てはめず、必ず税理士・弁護士にご相談ください。 ここで示すのは、相談するときに何を持っていけばよいかが分かる程度の整理です。 それだけでも、相談の時間は大きく短くなります。

見積書に「造作家具一式」とだけ書かれています。何を聞けばよいですか?

聞くべきことは4つです。 1つめは、その一式に何が含まれているかを、物ごとの員数(何を何台)で書き出してもらうこと。 カウンター1台、レジ台1台、待合ベンチ2台、というように数えられる形にします。

2つめは、それぞれの寸法です。 幅・奥行き・高さの3つが書かれていない項目は、金額の根拠を確認できません。 3つめは、材料と仕上げです。

芯材が何で、表面が突板なのかメラミン化粧板なのか塗装なのかで、単価も耐久性もメンテナンスの方法も変わります。 4つめは、現場で組み立てる作業が金額のどこに入っているかです。 造作家具は工場で加工した部材を現場で組み立てるため、 大工手間・搬入・養生・調整といった作業費が必ず発生します。

この4点を書き足してもらうと、他社の見積書や既製品のカタログ価格と同じ土俵で比べられるようになります。 書き足しを断られる場合は、その会社が金額の内訳を説明する体制を持っていないということなので、 その事実自体が判断材料になります。

既製品だけで揃えると、安っぽく見えてしまいませんか?

安っぽく見える原因は、既製品であること自体ではなく、寸法と色と高さが揃っていないことにあります。 実際に確かめられる寸法の目安があります。

一般社団法人日本オフィス家具協会(JOIFA)は、机の高さについて、 1971年にJISで700mmが標準と規定されたこと、1999年にJISの寸法規定が参考扱いになったこと、 そして現在は720mmを推奨していることを公開しています。

この720mmという数字は、身長の変化、A4書類の収納、 車いすの肘までの高さが床から670mmであることの3点を理由としています。 つまり、既製品でも規格に沿った寸法で揃えれば、座り心地と使い勝手はそろいます。

安っぽく見える店で起きているのは、脚の色がバラバラである、テーブルの高さが数センチずつ違う、 椅子の座面高が合っていない、といった不揃いです。 現実的な進め方は、お客様の視線が最初に集まる部分(正面のカウンター、レジまわり、入口から見える1面)だけを造作にして、 残りは既製品で寸法と色を揃えることです。

この配分なら、費用を抑えたまま、まとまりのある見え方を作れます。

什器はリースやレンタルで揃えたほうがよいのでしょうか?

リースは、機械や情報通信機器では広く使われていますが、 店舗の家具そのものを対象にした統計は公表されていません。

公益社団法人リース事業協会のリース統計(2024年度)では、 リース取扱高5兆847億円のうち、情報通信機器が2兆580億円で最も多く、 商業及びサービス業用機器は5,917億円、事務用機器は3,608億円です。

家具単独の内訳は公表されていないため、家具のリースがどの程度使われているかは、この統計からは分かりません。 判断の実務としては、次の3点で分けてください。 第一に、故障して営業が止まる設備(冷蔵ショーケース、POS、券売機など)は、 保守がセットになったリースやレンタルの価値が高い分野です。

第二に、テーブルや椅子のように壊れても部分的に交換できるものは、購入したほうが総額は下がりやすくなります。 第三に、催事出店や期間限定店舗のように使用期間が最初から決まっている場合は、レンタルが合理的です。

なお、リース料は原則として全額を経費として処理できるとされる一方、 所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産は、 国税庁の少額減価償却資産の特例の対象にもなります。 どちらの処理になるかは契約内容で変わるため、契約書を持って税理士に確認してください。

退去するとき、造作家具は買い取ってもらえますか?

借地借家法第33条は、建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合、 賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときに、 賃借人は賃貸人に対しその造作を時価で買い取るべきことを請求できると定めています。 ただし、この権利は使いやすいものではありません。

公益社団法人全日本不動産協会が公開している弁護士の解説によれば、 買取義務が生じるには、対象が造作であること、賃貸人の同意を得て付加したものであること、 賃貸借が終了することの3要件が必要とされ、 さらに造作とは建物に付加されたもので賃借人が所有し、 かつ建物の使用において客観的に便益を与えるものとされています。

同じ解説は、飲食店舗内に設置されたテーブルやいす、什器類は造作ではないと明記しています。 加えて、平成4年8月1日施行の借地借家法では造作買取請求権は任意規定とされ、 契約で放棄する特約があれば行使できません。

実務上は、買取請求をあてにせず、 契約書の造作買取請求権に関する条項と原状回復の範囲を契約前に読み、造作にする範囲を決めてください。

まとめ|什器・家具で決める7つの判断

造作と既製品の差額は「1日いくらか」に翻訳できます。1日500円の差なら、毎日それだけの価値があるかを考えればいい。

見積の「一式」は、そのままにしないでください。品名と数量を出してもらうだけで、判断できるようになります。

造作と既製品の差額を1日あたりに翻訳する手順(すべて仮の例)
手順 計算の内容(仮の例) 自店の見積書で今日やること
手順1|差額を出す 造作80万円 − 既製品25万円 = 差額55万円 造作で見積もられた1台ごとに、同用途の既製品の価格を調べて引き算する
手順2|使用年数で割る 55万円 ÷ 10年 = 年5万5,000円 賃貸借契約の残存年数と、造作を使うつもりの年数のうち短いほうで割る
手順3|1日あたりにする 年5万5,000円 ÷ 12か月 = 月4,583円 ÷ 25日 = 1日183円 自店の月間営業日数で割り、1日あたりの金額を紙に書く
手順4|売上に換算する 1日183円 ÷ 粗利率60% = 1日あたり約305円の売上 自店の粗利率を直近の決算書または試算表から拾って割る
手順5|人数に換算する 305円 ÷ 客単価1,000円 = 1日あたりお客様0.3人分 自店の客単価で割り、「1日◯人分」という形にして声に出して読む
手順6|買い替えを織り込む 既製品を5年で買い替えるなら10年間で25万円×2回=50万円。造作80万円との差は30万円に縮む 既製品の想定使用年数を決め、買い替え回数を掛けて10年間の総額を出し直す
手順7|撤去費を足す 造作は退去時に解体・撤去の費用が発生する。既製品は持ち出すか売却できる 原状回復の見積を取っている場合、その中の造作解体費を差額に足して計算し直す

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