店舗の色は、内装会社に相談すれば自由に決められるとは限りません。住所によっては、色そのものに市への届出が要ります。
外壁を塗り替えるだけだから色は自由——そう思って着工した店舗が、名古屋市の都市景観形成地区で工事を止められることがあります。この条例は、色彩の変更そのものを届出の対象にしているためです(名古屋市都市景観条例第11条の6)。
届出が要らない場所でも、看板の色には屋外広告物条例という別の規制がかかります。誘導灯や誘導標識の色は消防の告示で色そのものが指定されており、店舗側では選べません。
動かせない部分と、自分で決められる部分を分けて、色を決めるときに確認することは7つあります。
この記事でわかること
- 自分の物件が、色の届出が要る都市景観形成地区に入っているかの調べ方
- 地区ごとに定められた色相・彩度の数値の読み方
- 看板の色にかかる屋外広告物条例の基準
- 誘導灯・誘導標識など、色を動かせない安全上の決まり
- 内装の配色を迷わず決めるための実務上の順番
- 色の見え方を左右する照明との関係(くわしくは別記事へ)
看板・外装本体の工事は店舗の看板・外装で確認する7つのこと、照明の色温度は店舗の照明計画で決める7つのことで扱っています。この記事は色の決め方と規制に絞ります。
決め1|自分の店が、景観条例の届出地区に入っていないか確認する
名古屋市には都市景観条例があり、一定規模を超える建築物・工作物の外観を変えるときは、市への届出が要ります(名古屋市都市景観条例第11条の6)。届出の対象になる「修繕等」には色彩の変更そのものが含まれています。
全市共通の基準は高さ31m超または延べ面積10,000㎡超(店舗等は3,000㎡超)が対象で(同条例第2条第2号)、ほとんどの小規模店舗は対象外です。
| 項目 | 基準 | 確認すること |
|---|---|---|
| 建築物の高さ | 31m超 | 物件の階数・高さを確認する |
| 建築物の延べ面積 | 10,000㎡超(店舗等の集客施設は3,000㎡超) | テナントの床面積ではなく建物全体の延べ面積で見る |
| 増築等の規模 | 修繕等をする外壁面積が、当該外壁面積の10分の1超 | 外壁のどこまで塗り替えるかを図面で確認する |
出典:名古屋市都市景観条例(昭和59年条例第17号)、名古屋市「都市景観条例の届出制度」(2025年4月改定)。数値は物件の階数・延べ面積の登記情報や図面で確認してください。
この基準を下回っていても、次に説明する都市景観形成地区に入っていれば、まったく別の、はるかに厳しい基準がかかります。まずは自分の物件の住所を、名古屋市住宅都市局に確認してください。
決め2|都市景観形成地区なら、色相・彩度の数値を確認する
名古屋市は、良好な景観を形成する必要がある地区を都市景観形成地区として指定しています(同条例第11条の4)。白壁・主税・橦木、久屋大通、広小路・大津通など、地区ごとに指定されています。
地区の中では、届出の面積の基準が全市共通の基準よりずっと小さくなります。たとえば白壁・主税・橦木地区では、外壁の修繕等が10㎡を超えると届出が要ります。色相・彩度も地区ごとに数値で決められています。
| 対象 | 基準 | 読み方 |
|---|---|---|
| 建築物の色彩 | 色相10R〜5Y・彩度4以下、それ以外の色相は彩度1以下 | マンセル値で塗装色・仕上材の色を確認する |
| 届出の基準 | 外壁の修繕等が10㎡を超える場合 | 塗り替える面積を図面で先に出す |
| 広告物の色彩 | 彩度14を超える色は使用しない | 看板の色見本をマンセル値で確認する |
出典:名古屋市「白壁・主税・橦木都市景観形成地区の景観形成基準」(2025年4月改定)。地区・基準は今後改定される可能性があるため、着工前に最新版を名古屋市住宅都市局で確認してください。
久屋大通、広小路・大津通、名古屋駅、四谷・山手通/築地の各地区にも、それぞれ別の彩度の上限があります。自分の物件がどの地区に入るかを、着工前に必ず確認してください。
決め3|看板の色は、屋外広告物条例で別の基準がかかる
名古屋市屋外広告物条例は、都市景観条例とは別の法令です。市内共通で、信号機や道路標識に類似する色の広告物を禁止しています(同条例第6条の2)。
都心の眺望景観保全エリアでは、広告物の色にも数値の基準があります。彩度8を超える色は表示面積の2分の1未満に抑え、地色の明度は9.0以下にする必要があります。
| エリア | 彩度の上限 | 確認すること |
|---|---|---|
| 名古屋城眺望景観保全エリア | 彩度8超は表示面の1/2未満、地色の明度9.0以下 | 看板の色見本をエリア内の基準と照合する |
| 久屋大通地区 | 彩度14以下(表示面積の2/3以上は彩度10以下) | 地区ごとの施行細則を確認する |
| 広小路・大津通地区 | 彩度14以下(表示面積の1/2以上は彩度10以下) | 同上 |
| 市内共通 | 信号機・道路標識に類似する色は不可 | 赤・黄・緑の組み合わせ方に注意する |
出典:名古屋市「屋外広告物のしおり」(2024年10月版)・同条例施行細則別表第1の2(2025年4月改定)。看板単体の許可申請の流れは店舗の看板・外装で確認する7つのことで扱っています。
決め4|誘導灯・誘導標識・安全色は、動かせない
避難口誘導灯は緑色の地、通路誘導灯は白色の地と、色そのものが消防庁告示で定められています(消防法施行規則第28条の2、消防庁告示第2号)。色度座標まで指定されているため、内装会社の提案でも変更できません。
消火器の位置表示や危険表示にも、JIS Z 9103の安全色(赤=防火・禁止、黄=警告、緑=安全・避難、青=指示)が慣用的に使われます。内装の配色を決める前に、この部分は「動かせない色」として先に確保してください。
| 表示 | 色 | 根拠 |
|---|---|---|
| 避難口誘導灯・誘導標識 | 緑色の地 | 消防庁告示第2号(消防法施行規則第28条の2・第28条の3) |
| 通路誘導灯・誘導標識 | 白色の地 | 同告示 |
| 安全色(禁止・防火) | 赤 | JIS Z 9103 |
| 安全色(警告) | 黄 | JIS Z 9103 |
決め5|色を固定する順番を決める
ここまでの4つは動かせない色です。ここからは自分で決められる範囲になりますが、決める順番を間違えると、あとで手戻りが起きます。
実務では、ブランドカラー(ロゴ・看板)→外装の基調色→内装の背景色→什器の色の順に固定していきます。看板の色を内装より先に決めるのは、屋外広告物の許可申請が先に動き出すためです。
色を決める前に準備する5つ
- ロゴ・看板の色見本を用意する。すでに使っている色があれば、マンセル値かCMYK値で内装会社に渡します
- 自分の物件の住所を、名古屋市住宅都市局へ確認する。都市景観形成地区・眺望景観保全エリアに入っているかを聞きます
- 看板のサイズと設置位置の案を作る。屋外広告物の許可申請は、色より先に面積と位置で審査されます
- 避難口誘導灯・誘導標識の設置位置を、図面で先に確保する。あとから内装の配色に合わせて動かせません
- 床材・壁材のサンプルを、実際の照明の下で見る。ショールームの照明と自店の照明では色の見え方が変わります
決め6|内装の配色は、面積の大きい順に決める
内装の配色に、公的な数値基準はありません。実務では面積が大きい部分ほど、主張を抑えた色から決めていく考え方がよく使われます。
床は最も面積が大きく、後から変えにくい部分です。天井は照明の効果を左右します。壁は最もブランドカラーを載せやすい面で、什器は動かせる分、いちばん自由度が高くなります。
| 面 | 役割 | 決め方の目安 |
|---|---|---|
| 床 | 面積が最も大きく、後から変えにくい | 汚れが目立ちにくい中間の明るさから選ぶ |
| 天井 | 照明の効果と一体で見える | 明るい色にして、照明計画とあわせて決める |
| 壁 | ブランドカラーを載せやすい面 | 1〜2面に絞り、残りは背景に回す |
| 什器・サイン | 最も動かしやすく、自由度が高い | 入れ替えや季節替えを想定して最後に決める |
これは実務でよく使われる考え方であり、効果を数値で示す公的なデータはありません。自店の業態・客層に合わせて調整してください。
決め7|色の見え方は、照明の色温度で変わる
同じ塗装サンプルでも、照明の色温度によって見え方が変わります。ショールームの照明と自店の照明が違えば、仕上がりの印象もずれます。
色温度・演色性・配光の具体的な決め方は店舗の照明計画で決める7つのことにまとめています。色のサンプルは、必ず自店に近い照明環境で最終確認してください。
よくある質問
外壁の色を変えるだけでも、名古屋市への届出は要りますか?
物件が名古屋市の全市共通の基準(高さ31m超または延べ面積10,000㎡超、店舗等の集客施設は3,000㎡超)に該当するか、都市景観形成地区に入っている場合は、外壁面積10㎡超などの地区ごとの基準に該当すると、届出が要ります。両方に該当しなければ、色の変更自体に届出は要りません。まず自分の物件の住所を名古屋市住宅都市局へ確認してください(名古屋市都市景観条例第11条の6)。
居抜き物件で、看板だけ色を変える場合はどうなりますか?
看板の色の変更は、屋外広告物条例の許可・届出の対象になります。都心の眺望景観保全エリアや久屋大通地区などでは、彩度の数値基準もあります。看板単体の許可申請の流れは店舗の看板・外装で確認する7つのことで扱っています。
誘導灯の色を、内装のデザインに合わせて変えることはできますか?
できません。避難口誘導灯は緑色の地、通路誘導灯は白色の地と、消防庁告示第2号で色度座標まで指定されています。内装のデザインより先に、設置位置と色を確定させてください。
マンセル値の彩度が分からない場合、どうやって確認すればよいですか?
塗装会社・広告物の製作会社は、マンセル値での色見本を用意していることが多いため、依頼時に「マンセル値で色相・彩度が分かる資料がほしい」と伝えてください。地区の基準に該当するかどうかの最終判断は、必ず名古屋市住宅都市局に確認してください。
色彩計画は、内装会社への初回相談の前に決めておくべきですか?
ロゴ・看板の色見本があれば準備しておくとよいですが、細部まで決めておく必要はありません。物件の住所と業態を伝えれば、届出の要否は内装会社・広告物の製作会社が確認できます。初回相談の準備全般は店舗内装会社への初回相談で準備する8つのもので扱っています。
まとめ|色は、法令で決まる部分と、自分で決められる部分がある
| 決めること | 動かせるか | 確認先 |
|---|---|---|
| 1. 届出地区への該当 | 動かせない(住所で決まる) | 名古屋市住宅都市局 |
| 2. 地区の彩度基準 | 動かせない | 名古屋市住宅都市局 |
| 3. 屋外広告物の色基準 | 動かせない | 名古屋市住宅都市局 |
| 4. 誘導灯・安全色 | 動かせない | 消防庁告示第2号 |
| 5. 色を固定する順番 | 自分で決められる | 内装会社と相談 |
| 6. 内装の配色 | 自分で決められる | 内装会社と相談 |
| 7. 照明との関係 | 自分で決められる | 照明計画の記事へ |
色を「動かせない部分」と「自分で決められる部分」に分けると、内装会社への相談もスムーズになります。まず物件の住所で、届出の要否を確認してください。
そのうえで、ブランドカラーから内装の背景色、什器の色へと順番に固定していけば、着工後の変更を防げます。