解体が終わった日に「床の下地がやり直しになります」と言われる。追加80万円。この種の追加は、なくすことはできません。できるのは、出る場所を先に知っておくことです。

80万円という金額は、単体では大きいのか小さいのか分かりません。客単価3,000円・粗利率60%の飲食店なら、1人あたりの粗利は1,800円。80万円を1,800円で割ると約445人分。月25日営業で1日18人の店なら、約25日ぶんの粗利がまるごと消えます。

追加費用は3種類に分かれます。最初から見積に入っていなかったもの、開けてみて分かったもの、途中で仕様を変えたもの。防ぎ方はそれぞれ違います。

この記事でわかること

  • 契約後に増える費用を3つの類型に分けて、どれが避けられずどれが防げるかを見分ける考え方
  • 追加工事について建設業法と民法が何を決めているかを、条・項・号まで特定した形で
  • 解体・改修工事にかかる石綿(アスベスト)の事前調査と、労働基準監督署・都道府県への報告の義務が、どの規模から発生するか
  • 見積書の「一式」と他業者との工事範囲の境目で認識が食い違う場所を、あらかじめ潰す質問のしかた
  • 追加を求められたときに着手前の書面で合意を取る手順と、そこで必ず聞く5つのこと
  • 予備費を「工事費の何パーセント」ではなく自分の案件から決める4段階の手順
  • 80万円の追加を「客単価いくらのお客様が何人分」に翻訳する計算のしかた
追加80万円は、客単価3,000円・粗利率60%なら約445人分。1日18人の店なら約25日分にあたる。工期が7日延びれば賃料で約5.8万円が加わり、合計は約85.8万円になる。
「80万円の追加です」と言われても、高いかどうかは判断できません|1人あたりの粗利で割ると人数になり、1日の客数で割ると日数になります。工期の延長分も同じ単位に直して足すと、飲むかどうかを数字で決められます。

物件内覧で見るべき項目の全体像は店舗物件の選び方|内装工事の視点で内覧時に確認する10のポイント、 居抜きで引き継ぐ造作と設備の扱いはスケルトンと居抜きの違い|費用・工期・退去で変わる7つの判断材料で扱っています。

追加費用は3種類に分かれる

同じ「追加」でも、責任の所在も、防ぎ方も違います。見積に入っていなかったものは依頼のしかたで防げます。開けてみて分かったものは防げませんが、予備費で受けられます。

追加費用の3類型と、それぞれに効く準備
類型 なぜ起きるのか 自分で実行できること
① 解体後に判明するもの
(ケース1・2・3)
壁の内側、床下、天井裏は解体しないと見えない。過去の改修で図面と現物がずれていることもある。事前調査には物理的な限界がある 内覧の時点で天井点検口と床下を開けさせてもらい、写真を撮る。竣工年と改修履歴を貸主に文書で確認する。見積前にどこまで調査したかを工事会社に聞く
② 範囲の解釈違い
(ケース4・5・6)
見積書の「一式」が指す範囲、他業者との境目、行政の指導内容について、施主と工事会社が別々の前提を持っている 「この見積に含まれていないものを一覧で出してください」と書面で依頼する。工事区分表と見積書を1行ずつ突き合わせる
③ 施主都合の変更
(ケース7・8)
着工後の仕様変更、決定の遅れによる手戻り、それにともなう工期の延長。同じ変更でも工程が進むほど高くつく 工程ごとの「変更できる期限」の一覧を工事会社からもらい、期限の前に現場に立ち会う日を予定表に入れる
「最初から見積に入っていない費目」と「契約後に増える費用」の違い
見分ける観点 最初から入っていない費目 契約後に増える費用(この記事)
気づくタイミング 見積書を読んだ時点、または資金計画を組んだ時点で気づける 解体後、行政協議のあと、他業者が現場に入ったあとに初めて分かる
代表例 什器備品、厨房機器本体、看板本体、テナントビルのB工事、保証金、開店広告費 下地の作り直し、石綿の分析調査と除去、設備の引き直し、消防・保健所の指導による仕様変更
自分でやること 契約前に開業予算の全体表を作り、内装工事費と工事以外の費用を分けて並べる 契約書に変更手続きの定めがあるかを確認し、着手前の書面合意を運用として徹底する

法律が「追加」について決めていること

追加は言われるまま払うものではありません。建設業法は、工事内容の変更があったときに書面で取り交わすことを求めています。金額と工期の変更も同じです。

石綿の事前調査のように、やらないこと自体が違反になる調査もあります。この費用は削れません。

追加費用に関係する条文と、施主が使う場面
条文 定めている内容 施主として使う場面
建設業法
第19条第1項
請負契約の締結に際して書面に記載し、署名または記名押印して相互に交付すべき16の事項を列挙している 契約書を受け取ったら、16項目のうち抜けているものがないかを目次のように確認する
建設業法
第19条第1項第6号
設計変更等の申出があった場合の工期の変更、請負代金の額の変更、損害の負担、それらの額の算定方法に関する定め 追加が出たとき、まず契約書のこの条項に戻る。「協議して定める」だけなら、算定の基準を追記してもらう
建設業法
第19条第2項
第1項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、変更の内容を書面に記載し、署名または記名押印して相互に交付しなければならない 「口頭で進めておきました」を断る根拠にする。金額の大小にかかわらず書面を求める
建設業法
第19条第3項
相手方の承諾を得れば、書面に代えて電子情報処理組織を使用する方法など、政令・省令で定める方法を用いることができる 紙にこだわらず、電子契約やメールでの取り交わしを提案する。ただし双方が保存できる形にする
建設業法
第19条の3第1項
注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする契約を締結してはならない 値切りすぎが違法になり得ることを知っておく。無理な減額は品質か工期のどこかで戻ってくる
建設業法
第19条の5第1項
注文者は、通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない 追加が出たのに工期を延ばさないという要求を、自分からしない。開店日は動かせても品質は動かせない
建設業法
第20条第3項
注文者は、契約締結や入札までに第19条第1項各号(第2号を除く)の具体的内容を提示し、政令で定める見積期間を設けなければならない 追加分の見積を頼むときも、条件を書面で提示し、相手に考える時間を与える
建設業法施行令
第5条の9
見積期間を、予定価格500万円未満は1日以上、500万円以上5,000万円未満は10日以上、5,000万円以上は15日以上と定める 大きな追加をその場で即決させられそうになったら、この期間の存在を持ち出して一度持ち帰る
建設業法
第20条の2第1項
発注者は、地中の状態に起因する事象や周辺の環境に配慮が必要な事象が発生するおそれがあると認めるときは、契約締結までに受注予定者へ情報とともに通知しなければならない 貸主から聞いた建物の履歴、過去の漏水、近隣からの苦情などを、隠さず工事会社に渡す
民法
第632条
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって効力を生ずる 請負は「完成」に対して払う契約だと理解する。作業時間ではなく結果に対する対価だと考える
民法
第634条
注文者の責めに帰することができない事由で完成できなくなったとき等、可分な部分の給付で注文者が利益を受けるときは、その部分を完成とみなし割合に応じた報酬を請求できる 途中で工事を止める判断をするとき、出来高分の支払いが発生することを織り込む
民法
第636条
注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じた不適合は、請負人の担保責任を問えない。ただし請負人がその不適当を知りながら告げなかったときは別 施主支給品や施主の強い指定で仕様を決めるときは、リスクが自分に来ることを理解しておく
民法
第637条
注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を通知しないときは、追完請求・報酬減額・損害賠償・解除ができない 引き渡し後に不具合を見つけたら、直してもらう交渉と並行して、まず通知した記録を残す
民法
第641条
請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる 途中解約という選択肢は法律上あるが、損害賠償が伴う。最後の手段として位置づける
石綿の事前調査が必要になる工事
  1. 建築物の解体工事(当該工事に係る部分の床面積の合計が80平方メートル以上であるものに限る。)
  2. 建築物の改修工事(当該工事の請負代金の額が100万円以上であるものに限る。)
  3. 工作物(第3条第4項ただし書の厚生労働大臣が定める工作物に限る。)の解体工事又は改修工事(当該工事の請負代金の額が100万円以上であるものに限る。)
  4. 船舶(総トン数20トン以上の船舶に限る。)の解体工事又は改修工事

統計で確かめられること、確かめられないこと

「追加費用は平均◯%」という数字は書きません。その集計を持つ公的統計がないからです。確認できたのは、工事の規模の分布と、紛争になった件数だけです。

建築物リフォーム・リニューアル調査(国土交通省、令和6年度計。令和7年6月13日公表)から読み取れること
数値 内容 自分の案件に引きつけて考えること
非住宅の受注高
9兆6,984億円
令和6年度計。前年度比7.7%増。うち改装・改修工事と維持・修理工事が9兆941億円で、増築・一部改築より圧倒的に多い 店舗の内装工事は「既存建物に手を入れる工事」の一部だと位置づける。既存を触る以上、開けてみないと分からない部分が必ず残る
用途別で飲食店
2,388億円
令和6年度計、非住宅の用途別受注高。前年度比44.2%増。物販店舗は8,358億円で同13.8%減 飲食店の改装は動きが大きい年度だった。工事会社の手が埋まっている時期は工期の余裕が減る。日程は早めに押さえる
工事目的に
「アスベスト対策」がある
令和6年度第4四半期、非住宅の工事目的別受注件数(複数回答)で「アスベスト対策」が8,274件。主たる工事目的としても7,627件 石綿対策が独立した工事目的として集計されるほど日常的だと理解する。自分の物件でも他人事にしない
古い建物が現役で
改修されている
令和6年度第4四半期、非住宅の建築の時期別受注高で、1981〜1990年が1,616億円、1971〜1980年が1,123億円、1961〜1970年が792億円、1950年以前が198億円 候補物件の竣工年を必ず確認する。石綿含有建材が使われ得る年代かどうかで、事前調査の重みが変わる
工事部位は
内装と設備に集中
令和6年度第4四半期、非住宅の工事部位別受注件数(複数回答)で電気設備15万632件、内装11万4,546件、給水給湯排水衛生器具設備9万4,789件 追加が出やすいのは、まさにこの内装と設備の領域。見積書でこの部分の内訳がどこまで開いているかを確認する
建設工事紛争審査会の処理状況(国土交通省、令和7年度。令和8年7月15日公表)
項目 数値 この数字から自分が決めること
全国の申請件数 116件(前年度比7件増)。前年度からの繰越が94件、令和7年度の終了件数は111件、次年度繰越は99件 正式な紛争処理まで進む件数は全国で年間100件台だと知る。多くはそこに至る前に決着するか、泣き寝入りになっている
紛争類型(中央25件) 工事瑕疵6件(24%)、工事代金の争い6件(24%)、下請代金の争い6件(24%)、契約解除3件(12%)、工事遅延1件(4%) 「工事代金の争い」が工事瑕疵と同数あることを踏まえ、金額の合意を先送りしない運用にする
請求額(中央、令和7年度) 5,000万円以下が9件(36%)で最多。100万円以下が2件、1億円超も5件 店舗の内装工事の規模でも紛争は起きうる。金額が小さいから揉めないという前提を置かない
平均所要月数
(令和3〜7年度の終了事件)
あっせん約9.7か月・平均3.4回、調停約11.4か月・平均4.5回、仲裁約24.4か月・平均9.0回 争いになった場合の時間を見積もる。調停でも1年近くかかる。その間、店は開いているか閉じているかを想像する
あっせん・調停の成立割合 令和7年度は56%。過去5年平均は46%、過去10年平均は47% 手続きに乗せても半分程度しか合意に至らない。争う前提ではなく、争わずに済む段取りに時間を使う

追加が出る8つのケース

出る場所は決まっています。解体後の下地、石綿、図面と違う設備、「一式」の解釈違い、他業者との境目、行政の指導、施主都合の変更、工期の延長。

ケースごとに、契約前にできる確認を表に入れました。全部は潰せませんが、半分は潰せます。

解体後に見つかりやすい下地・躯体の問題と、契約前にできる確認
見つかるもの なぜ事前に分からないのか 内覧・契約前に自分でやること
木下地の腐朽・
シロアリ被害
仕上材の下にあり、表面からは分からない。給排水の配管まわりや外壁に接する部分で起きやすい 床を歩いて沈む場所がないかを確認する。壁際と水まわりの床を強めに踏み、音と感触の違う場所を写真に記録する
床の不陸
(水平でない)
既存の床材で吸収されていると気づけない。什器を置いて初めて分かることが多い スマートフォンの水平器アプリでよいので、部屋の四隅と中央で床の傾きを測り、数値をメモに残す
コンクリート床の
ひび割れ・浮き
塩ビタイルやカーペットの下に隠れている。前の店の解体時に生じていることもある 既存床の一部をめくらせてもらえるか貸主に相談する。難しければ、めくった時点で連絡をもらう約束を工事会社と交わす
天井裏の梁・ダクト
による天井高の不足
既存天井が張られていると、その上の状態が見えない。図面と実物がずれていることもある 天井点検口を開けて、脚立に上がって覗く。梁の下端までの高さをメジャーで測り、写真と数値を残す
前の店の残置物 「撤去済み」の範囲が口頭でしか決まっておらず、天井裏や床下に配管や配線が残っている 造作譲渡や現状有姿の条件を、譲渡対象物のリストとして書面でもらう。リストにないものの扱いを明記する
防火区画・
防火設備の欠損
過去の改修で貫通部の処理が不十分なまま塞がれていることがある。天井裏に多い 用途変更や消防の手続きが必要になりそうな物件かを、契約前に所轄の消防本部と特定行政庁に相談しておく
石綿に関する義務の段階と、施主がやること
段階 根拠条文と内容 施主が自分でやること
① 事前調査
(規模を問わず必須)
石綿障害予防規則第3条第1項。解体・改修の作業を行うときは、あらかじめ石綿等の使用の有無を調査しなければならない。第2項で設計図書等の確認と目視の両方 見積書に事前調査費が計上されているかを確認する。載っていなければ「含まれているのか、別途か」を書面で聞く
② 竣工年による
簡略化
石綿障害予防規則第3条第3項第3号。新築工事の着工日が平成18年9月1日以降なら、着工日を設計図書等の文書で確認する方法によることができる 物件の竣工年と着工日を貸主・管理会社に文書で確認する。確認申請書や検査済証の写しをもらえないか相談する
③ 分析調査 石綿障害予防規則第3条第5項。事前調査で使用の有無が明らかにならなかったときは分析調査。ただし使用されているものとみなして措置するときは不要 分析に回すか、あるものとして扱うかで金額と工期がどう変わるかを、両方の見積で出してもらう
④ 労働基準監督署
への報告
石綿障害予防規則第4条の2第1項第2号。建築物の改修工事で請負代金の額が100万円以上のものは、あらかじめ電子情報処理組織で報告。第5項により元請が行う 報告の予定日を工程表に書き込ませる。GビズIDの取得が必要なのは工事会社側だが、進捗は確認する
⑤ 発注者への
書面説明
大気汚染防止法第18条の15第1項。元請業者は調査結果等を記載した書面を交付して発注者に説明しなければならない。第2項で発注者は調査費用を適正に負担し協力する 説明の書面を必ず受け取り、保管する。口頭で「問題ありませんでした」と言われて終わりにしない
⑥ 都道府県知事
への報告
大気汚染防止法第18条の15第6項。元請業者または自主施工者は、調査を行ったときは遅滞なく結果を都道府県知事に報告しなければならない 労働基準監督署への報告と環境部局への報告が両方済んでいるかを、工程表の節目で確認する
⑦ 除去作業の
届出と措置
石綿障害予防規則第5条第1項で様式第1号の2による届出、第6条で隔離・負圧・前室洗身室更衣室の設置。大気汚染防止法第18条の17第1項で発注者が作業開始日の14日前までに都道府県知事へ届出 14日前の届出の義務者が自分(発注者)であることを認識する。届出の準備を誰が行うかを工事会社と決めて書面に残す
⑧ 記録の保存
と現場掲示
石綿障害予防規則第3条第7項で調査終了日から3年間の記録保存、第8項で作業場への掲示。大気汚染防止法第18条の15第5項で現場に記録の写しを備え置き公衆に見やすく掲示 現場に掲示が出ているかを、着工後の巡回のときに自分の目で確認する。掲示物の写真を撮って残す
図面と現物がずれやすい設備と、契約前の確認方法
設備 ずれると何が起きるか 契約前に自分でやること
排水の位置と
竪管までの経路
勾配が取れず、床を上げるか、厨房のレイアウトを変えることになる。床を上げれば天井高が下がり、段差もできる 既存の排水口の位置を実測し、写真に収める。竪管がどこにあるかを管理会社に図面で示してもらう
給水の口径と
元栓の位置
同時使用時に水量が足りない。厨房と手洗いを同時に使うと湯温が安定しない メーターの口径を現地で確認する。飲食店なら想定する同時使用の器具数を紙に書いて工事会社に渡す
電気の引込み容量
と分電盤の空き
容量が足りず幹線の引き直しになる。電力会社との協議に時間がかかり、工期が延びる 分電盤の扉を開けて主幹ブレーカーの容量を写真に撮る。使う機器の消費電力を一覧にして合計する
ガスの種類と
メーター容量
都市ガスとプロパンで機器が変わる。容量不足で厨房機器が同時に使えない ガスの種類とメーターの号数を現地で確認する。導入予定の厨房機器のガス消費量を合計する
排気ダクトの
経路と排出口
外部に出す経路がなく、共用部を通す許可が要る。近隣への影響で位置の変更を求められる 建物の外側を歩いて、既存の排気口がどこに出ているかを写真に撮る。真上の窓や隣接する住戸を確認する
空調の既存機と
室外機置場
既存機が能力不足または故障している。室外機を置く場所が確保できず、共用部の使用許可が必要になる 既存機の型番と製造年をプレートで確認する。室外機置場の広さと、そこまでの配管経路を目で追う
「一式」の解釈が割れやすい項目と、事前に潰す質問
項目 どこで解釈が割れるか 見積を受け取ったら聞くこと
解体工事一式 どこまで壊すか。天井裏の既存配管、床下の残置物、外部に出ている看板の下地まで含むかどうか 「解体後の状態を写真か図で示してください」と依頼する。残置物が出た場合の処分費の扱いを文章で書いてもらう
電気設備工事一式 幹線の引込み、分電盤の更新、弱電(通信・防犯・音響)の配線が含まれるか。器具本体は別途か コンセントとスイッチの数を図面で数え、見積の数量と一致するか確認する。照明器具の本体費が入っているかを聞く
給排水衛生設備
工事一式
器具本体(便器・手洗い・シンク)が含まれるか。給湯器の交換、既存配管の更新が入っているか 器具を1つずつ品番で指定し、その品番が見積に載っているかを照合する。載っていなければ別途かを確認する
空調換気工事一式 既存機の再利用か新設か。室外機の設置費と配管、既存ダクトの清掃と更新が入っているか 既存機を使うのか新品を入れるのかを明記させる。再利用なら故障時の扱いを文章にしてもらう
内装仕上工事一式 下地の状態が想定どおりであることを前提にしているか。下地補修が別途になっていないか 「下地がどういう状態であることを前提にした金額ですか」と聞く。前提が崩れたときの単価を先に決めておく
諸経費・現場管理費 何に対する費用か。追加工事が出たときに諸経費も比例して増えるのか 追加が出た場合に諸経費を上乗せするのか、しないのかを契約前に決める。決めた内容を契約書か覚書に書く
申請・届出の費用 消防、保健所、ビル管理会社への手続きを誰が行い、誰が費用を持つか 必要な申請を一覧にし、それぞれ「誰が作成し、誰が提出し、費用は誰が持つか」の3列で表を埋めてもらう
石綿の事前調査費 調査費が計上されているか。分析調査に回った場合の費用が別途か ケース2の表を持って、①事前調査、③分析調査、⑦除去のどこまでが見積に入っているかを段階で確認する
他業者との境目で抜けやすい作業と、埋め方
境目 抜けやすい作業 自分でやること
厨房機器 搬入と据付は機器業者、ガス・給排水・電気への接続は誰か。機器の重量に対する床の補強も宙に浮きやすい 機器リストに「搬入/据付/接続/試運転」の4列を作り、各行を誰が行うかで埋める。埋まらない行を関係者全員に共有する
看板・サイン 本体製作は看板屋、取付下地の補強と電源の引き込みは内装側か。屋外広告物の許可申請は誰が出すか 看板の設置位置を図面に書き込み、そこに下地と電源があるかを内装会社に確認する。許可申請の要否を自治体に問い合わせる
通信・ネットワーク 回線の引込みは通信会社、屋内のLAN配線とコンセントは内装側か。決済端末の設置場所の電源が足りない レジ、決済端末、券売機、防犯カメラの位置を図面に落とし、それぞれに電源と通信の口があるかを1つずつ確認する
防犯設備 カメラ本体は警備会社、配線ルートと天井の開口は内装側か。天井を塞いだ後では配線が通らない 天井を塞ぐ日を工程表で確認し、その前に配線を通す日を警備会社と決める。日程を工程表に書き込ませる
什器・家具 造作か既製品か。既製品を壁に固定する場合の下地補強、可動棚のレール取付が誰の範囲か 什器の一覧を作り、「造作/既製品」「固定する/置くだけ」の2列で分類する。固定するものの下地を内装会社に伝える
テナントビルの
工事区分
A工事・B工事・C工事の境目。とくにB工事は施主が費用を持ちながら業者を選べない 貸主から工事区分表をもらい、内装会社の見積と1行ずつ突き合わせる。B工事の概算を早い段階で貸主に出してもらう
行政協議で仕様が変わりやすい場面と、前倒しの方法
場面 何が変わりうるか 自分でやること
消防用設備の判定 間仕切りの追加で感知器の数が増える。誘導灯の位置が変わる。用途区分の判定次第で必要面積の基準が動く 平面のたたき台を持って所轄の消防本部の予防課へ事前相談に行く。相談日を工程表に入れ、内装会社に同行を依頼する
保健所の施設基準 手洗いの数と位置、区画の仕方、床壁の材質、更衣スペースの確保。条例で定まるため自治体ごとに違う 管轄の保健所で事前相談を受け、指摘事項をその場でメモにして持ち帰る。指摘を図面に反映してから見積を確定させる
用途変更の
確認申請
もとの用途と違う用途にする場合、規模によっては確認申請が必要になる。設計費と審査期間が上乗せされる 物件の用途と面積を確認し、特定行政庁または指定確認検査機関に該当性を問い合わせる。契約前に確認する
屋外広告物の許可 看板の大きさや位置が条例の基準を超え、縮小や位置変更を求められる。許可までの日数もかかる 看板の寸法と設置位置を決めた時点で、自治体の屋外広告物担当に図面を持って相談する
建物管理側の
審査
ビル管理会社の内装制限、工事時間帯の制限、共用部の使用条件。工事の生産性が落ちて費用が増える 入居前に「内装工事に関する規則」の書面をもらう。作業できる時間帯と搬入経路を工事会社に先に渡す
バリアフリー・
駐車場の付置義務
規模や用途によっては条例で設置が求められる。あとから面積を割くと客席が減る 用途と面積を自治体の建築指導担当に伝え、条例上の義務がかかるかを契約前に確認する
工程ごとの「変更できる期限」と、決めておくこと
工程 この時点を過ぎると変更が高くなるもの その前に自分がやること
実施図面の確定前 間取り、区画の位置、厨房と客席の面積配分、出入口の位置。ここまでは紙の上の作業 営業時のオペレーションを1日ぶん頭の中で通し、動線が詰まる場所を洗い出して図面に赤で書き込む
解体完了時 躯体に手を入れる工事の範囲。床を上げるかどうか。この時点なら追加も部分的で済む 解体が終わった日に現場へ行く。その日を工程表に予定として入れておく。写真を全方向から撮る
墨出し・
間仕切り下地の前
壁の位置、開口の幅、什器の据付位置。実寸の空間を見て最終判断できる最後のタイミング 床に描かれた墨(線)の上を実際に歩く。什器の予定位置に立ち、手を伸ばして届く範囲を確かめる
配線・配管を
壁内に納める前
コンセント、スイッチ、給排水の位置。塞いだ後は壁を開けることになる 使う機器を1つずつ挙げ、その置き場所に電源があるかを図面と現場で照合する。将来の追加も1口余分に見る
材料の発注前 床材、壁材、塗装色、照明器具、建具の品番。発注後のキャンセルは費用が発生する 仕様書に品番が並んだ時点で、承認の期限を工事会社に確認する。期限をカレンダーに入れる
天井を塞ぐ前 天井裏を通る配線・配管・ダクト。防犯カメラや音響の配線もここが最後 天井を塞ぐ予定日を確認し、その前日までに関係業者の配線が済んでいるかを自分で確認する
工期が1週間延びたときに増える費用と、確認方法
費目 どういう性質の費用か 自分でやること
仮設・養生の
リース延長
足場、仮囲い、養生材、仮設電気と仮設水道。日数または月数で課金されるものが多い 見積の仮設工事の欄に日数の記載があるかを確認する。ないなら「何日ぶんの計上ですか」と聞いて記録する
現場管理費・
人件費
現場代理人や監督が現場に張り付く期間が延びる。職人の再手配が必要なら段取り替えの費用も出る 延長になった原因が誰の側にあるかを、その場で事実として整理する。責任の所在で負担者が変わる
警備・交通誘導 道路使用の関係で誘導員を置いている場合、日数分が積み上がる 誘導員が必要な作業日を工程表で確認し、その日数が見積に何日で入っているかを照合する
施主側の賃料 工事期間中も賃料は発生する。フリーレントの期間が設定されている場合、その終了日を過ぎると自己負担になる 賃貸借契約のフリーレント終了日を確認し、工程表の完了予定日との差を日数で計算しておく
施主側の人件費 採用したスタッフの給与。開店前研修に振り替えられれば投資になるが、待機なら純粋な損失になる 開店が延びた場合に研修へ振り替えるプログラムを先に用意しておく。待機を作らない段取りにする
告知の作り直し 開店日を刷ったチラシ、予約サイト、看板の日付。撮影や印刷をやり直す実費が出る 告知物に開店日を入れるのは、工事の完了検査が終わってからにする。それまでは「近日開店」で通す

契約書で確認する条項と、追加が出たときの進め方

追加に直結する条項は5つです。着工前に読んでおけば、その場で判断できます。

現場で追加を求められたら、返事の前に聞くことがあります。内容と金額を書面でもらうこと、それをやらないとどうなるかを確認すること。その場で即答しなくて構いません。

追加費用に直結する5つの条項と、確認のしかた
条項 根拠と、なぜ重要か 自分で確認すること
① 設計変更時の
金額と工期の算定方法
建設業法第19条第1項第6号が要求している事項。「協議して定める」だけだと、協議が決裂したときの基準がない 算定の基準(当初見積の単価を適用するのか、都度見積か)が書かれているかを読む。書かれていなければ追記を依頼する
② 事前承諾の
取り決め
施主の承諾なしに追加工事へ着手しない旨の定め。ガイドライン第8版が着工後の書面化を違反事例としていることの裏返し この一文があるかを探す。なければ「追加工事は施主の書面承諾後に着手する」の一文を覚書で足す
③ 工期変更の扱い 建設業法第19条第1項第6号と第7号。追加が出て工期が延びるとき、どう変更するかの手順がないと宙に浮く 工期が延びる場合の手続きと、延長にともなう費用の負担者が書かれているかを確認する
④ 中止・一時停止の
ときの費用
ガイドライン第8版が、一時中止期間中の現場維持・体制縮小・再開準備の費用も契約変更の対象としている 工事が止まる可能性(行政協議、資材の遅延)を想定し、その間の費用の扱いを聞いて書面に残す
⑤ 支払いの時期と
出来高の考え方
建設業法第19条第1項第5号・第12号。民法第634条は可分な部分の給付で注文者が利益を受けるときの割合的報酬を定めている 着手金の割合が過大でないかを確認する。追加分の支払時期を、本体の支払スケジュールに合わせられるか相談する
追加を求められた場でその場で聞く5つのこと
聞くこと なぜ聞くのか 聞き方の例
① やらなかったら
どうなるか
必須の工事と、望ましいだけの工事を分ける。分けられれば、後回しにできるものが見つかる 「これをやらずに進めた場合、いつ、どういう形で問題が出ますか」と具体的な時期で聞く
② いつまでに
決めればよいか
工期に影響しない返答期限を知る。期限が3日後なら、その3日で他の会社に相見積を取れることもある 「工程に影響しない範囲で、いつまでに返事をすればよいですか」と日付で確認する
③ 金額の根拠と
単価
当初見積の単価と比べられるようにする。同じ工種の単価がすでに契約に入っていることが多い 「当初見積の◯◯の単価と、この追加分の単価は同じですか」と当初見積を開きながら聞く
④ 安く済ませる
選択肢
仕様を落とす、範囲を狭める、開店後に回すという代案を並べる。並べれば選べる 「これより安く収める方法があるとしたら、何を諦めることになりますか」と聞く
⑤ 工期への影響 何日延びるかで、賃料・人件費・告知の作り直しが決まる。ケース8の費用がここで確定する 「引き渡し日は動きますか。動くなら何日ですか」と日数で聞き、その場で工程表に書き込んでもらう
追加を求められたときの進め方
  1. 内容と金額を書面で出してもらう。紙でもメールでも構いません。建設業法第19条第3項は、相手方の承諾を得れば電子的な方法を使えるとしています
  2. 当初見積と単価を照合する。同じ工種の単価が当初見積にあれば、それと比べます
  3. 持ち帰って判断する。金額が大きければ、必要に応じて設計者や別の会社の意見を聞きます
  4. 承諾を書面で返す。「承諾します」の一言と日付を残します。ここが着手のスタートラインです
  5. 着手してもらう。着手前に書面がある状態を作る。これがガイドライン第8版の求める形です
  6. 金額が確定できないときは、3項目だけ先に書面化する。作業内容、契約変更の対象になることと変更の時期、契約単価の額。この3つです

予備費の考え方

予備費は「なんとなく1割」ではなく、自分の案件の条件から決めます。築年数、スケルトンか居抜きか、設備をどこまで触るか、図面が残っているか。条件が悪いほど、厚くします。

予備費を自分の案件から決める4段階
段階 考えること 自分でやること
① 3類型に分ける 自分の工事が、解体後に判明するもの・範囲の解釈違い・施主都合の変更のどれをどれだけ含むかを分ける ケース1から8を読み、自分の案件に当てはまるものに印をつける。8つのうち何個に印がついたかを数える
② ①の不確かさを
段階で評価する
解体後に判明する分の読みにくさは、物件の条件で決まる。築年数、改修履歴、図面の有無、居抜きかスケルトンか、天井裏と床下を見たか 5つの条件をそれぞれ「読める・やや読めない・読めない」の3段階で自己評価し、「読めない」が何個あるかを数える
③ ②③を減らした分
だけ薄くする
範囲の解釈違いと施主都合の変更は、契約前の確認と決定の前倒しで減らせる。減らした分は予備費を持たなくてよい ケース4・5・6の表の右列と、ケース7の期限表を実行済みかで確認する。実行済みの項目にチェックを入れる
④ 上限額を
資金計画から決める
予備費は、運転資金と開業後の生活費を削らずに出せる範囲の中から確保する。工事費の割合ではない 手元資金と融資額から、運転資金と当面の固定費を先に抜く。残った額のうち、いくらまでなら追加に回せるかを決める

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よくある質問

ここまでで、追加費用が出る8つのケースと、契約・進め方・予備費の考え方を見てきました。 最後に、実際に相談を受けることの多い4つの質問に答えます。 いずれも、その場で判断を迫られる場面の質問です。

答えの多くは条文に戻ります。 感覚や慣習ではなく、書いてあるものを根拠にできると、交渉の温度が下がります。 温度が下がれば、双方が代案を出しやすくなります。

なお、個別の案件については、条文だけで結論が出ないことも多くあります。 契約書の文言、現場の状況、これまでのやり取りの記録が判断材料になるためです。 以下は一般的な考え方として読んでください。

解体後に「下地がやり直しになる」と言われました。断ることはできますか?

断れるかどうかは、その工事の性格によって変わります。 建物の安全や法令適合に関わるもの、たとえば床の傾きが大きく什器が水平に置けない、防火区画を壊してしまっている、石綿含有建材が見つかったといった場合は、やらないという選択肢が実質的にありません。

石綿については、石綿障害予防規則第3条第5項が、事前調査で使用の有無が明らかにならなかったときは分析調査を行わなければならないと定めています。 飛ばすことができない手続きです。

一方で「このままでも使えるが、直したほうが長持ちする」という種類の提案は、範囲と時期を選べます。 判断のためにまず聞くべきは、やらなかった場合に何が起きるか、いつまでに決めれば工期に影響しないか、仕様を落とす選択肢はあるか、の三つです。

そして金額の多少にかかわらず、着工前に書面で内容と金額の合意を取ってください。 建設業法第19条第2項は、請負契約の内容のうち同条第1項各号に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければならないと定めています。

国土交通省の「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」も、追加工事等について工事に着手した後または工事が終了した後に書面で契約変更を行った場合を、建設業法上違反となる行為事例として挙げています。

予備費は工事費の何パーセントを見ておけばよいですか?

この記事では、予備費の割合を数値では示しません。 店舗の内装工事で追加費用が総額の何パーセント発生するか、予備費を何パーセント確保すべきかを示した公的な統計や調査を、一次情報で確認できなかったためです。

二次情報には「5パーセントから10パーセント」といった数字がよく出ますが、出典をたどると根拠のある調査に行き着きません。 割合の数字を覚えるより、自分の案件で予備費を決める手順を持つほうが実用的です。

手順は四つです。 第一に、自分の工事が解体後に判明するもの、範囲の解釈違い、施主都合の変更のどれをどれだけ含むかを分けます。

第二に、解体後に判明する分については、築年数、過去の改修履歴、図面の有無、スケルトンか居抜きか、天井裏や床下を見られたかという条件で、不確かさの大きさを段階で評価します。 第三に、範囲の解釈違いと施主都合の変更は、契約前の確認と決定の前倒しで減らせるので、減らした分だけ予備費を薄くできます。

第四に、工事会社に「この物件で起こりうる追加項目」を列挙してもらい、それぞれの概算金額を出してもらったうえで、合計額と自分が飲める上限額を突き合わせます。 予備費は工事費から逆算する数字ではなく、運転資金を削らずに払える上限から決める数字です。

アスベストの調査費用は施主が負担するのですか。工期はどれくらい延びますか?

調査費用について、大気汚染防止法第18条の15第2項は「解体等工事の発注者は、当該解体等工事の元請業者が行う前項の規定による調査に要する費用を適正に負担することその他当該調査に関し必要な措置を講ずることにより、当該調査に協力しなければならない」と定めています。

つまり発注者、すなわち施主が負担する前提で法律が書かれています。

見積書に事前調査費が計上されていないときは、含まれていないのか、諸経費に紛れているのかを必ず確認してください。

工期については、何日延びるという一律の答えはありません。 事前調査だけで済むのか、分析調査に回るのか、除去まで必要になるのかで段階が変わるためです。

石綿障害予防規則第4条の2第1項は、建築物の解体工事で床面積の合計が80平方メートル以上のもの、建築物の改修工事で請負代金の額が100万円以上のものなどについて、あらかじめ電子情報処理組織を使用して所轄労働基準監督署長に報告しなければならないと定めており、店舗の内装工事の多くがこの100万円の基準を超えます。

さらに吹き付け石綿等の除去や封じ込め、囲い込みの作業に至ると、石綿則第5条第1項による労働基準監督署長への届出、同第6条による隔離と負圧管理が必要になります。

加えて大気汚染防止法第18条の17第1項の届出対象特定工事に該当する場合は、発注者または自主施工者が作業開始の日の14日前までに都道府県知事に届け出なければなりません。

この14日という日数は法律で決まっているため、短縮できません。 物件を決めた直後に、いつ建てられた建物かを確認し、工事会社に事前調査の段取りを聞いてください。

追加分の見積が高い気がします。何を根拠に交渉すればよいですか?

根拠は三つあります。 第一に、当初契約書の中身です。 建設業法第19条第1項第6号は、当事者の一方から設計変更などの申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更、損害の負担、そしてそれらの額の算定方法に関する定めを、契約書に記載すべき事項として挙げています。

追加分の単価をどう決めるかが契約書に書いてあれば、まずそこに戻って読みます。

第二に、当初見積書の単価です。 同じ材料、同じ工種の単価が当初見積に載っているのなら、追加分もその単価を基準に置くのが自然です。

国土交通省のガイドライン第8版は、追加工事等に伴う変更契約でも当初契約と同様に適正な見積り手続きが必要であるとし、着工前に書面またはメール等の電磁的方法で見積依頼を行うこととしています。

第三に、選択肢の有無です。 仕様を落とす、範囲を狭める、開店後に回すという代案を出してもらい、それぞれの金額を並べます。 並べた時点で、その追加が本当に必要な工事なのか、望ましいだけの工事なのかが見えます。

なお、値切ること自体が正しいわけではありません。 建設業法第19条の3第1項は、注文者が自己の取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする契約を締結してはならないと定めています。 無理に押し込んだ金額は、結局どこかの品質で払うことになります。

まとめ|追加費用が出る8つのケース

追加費用をゼロにすることはできません。けれども出る場所は決まっていて、半分は契約前に潰せます。残りは予備費で受けます。

この記事では、数値を書かなかった項目とその理由も表にしました。根拠のない相場を書かないこと自体が、判断の材料になると考えています。

追加費用を現場の感覚に翻訳する計算手順(編集部の試算例)
手順 計算(試算例の数値) 自分の数字で置き換えること
1. 1人あたりの
粗利を出す
客単価3,000円 × 粗利率60% = 1人あたり粗利1,800円 事業計画の客単価と原価率を使う。原価率が分からなければ、直近3か月の実績から出す
2. 何人分かに
直す
追加80万円 ÷ 1,800円 = 約445人分 提示された追加額を1人あたり粗利で割る。端数は切り上げて考える
3. 何日分かに
直す
445人 ÷ 1日18人 = 約25日分。月25日営業なら約1か月分の粗利 想定している1日あたりの客数で割る。開店直後は想定より少ない前提で計算する
4. 回収の側から
見る
80万円 ÷ 12か月 = 月6.7万円。÷25日 = 1日2,700円。÷1,800円 = 1日1.5人 回収したい期間を自分で決める。融資の返済期間に合わせると判断しやすい
5. 工期延長も
金額に直す
賃料25万円 ÷ 30日 = 1日約8,300円。7日延びれば約5.8万円。人件費と告知の作り直しは別途 自分の賃料を日割りする。共益費と光熱費の基本料も足す
6. 2つを足して
判断する
80万円 + 5.8万円 = 約85.8万円。1人あたり粗利1,800円なら約477人分 工事費だけでなく工期延長分も足した総額で、予備費の残高と突き合わせる
この記事で数値を書かなかった項目と、代わりに置いたもの
書かなかった数値 書かなかった理由 代わりに読者ができること
追加費用は工事費の
何パーセント発生するか
店舗の内装工事について、追加費用の発生率を調べた公的な統計や調査を一次情報で確認できなかった。二次情報の数字は出典をたどれない 追加費用の3類型で自分の案件がどの類型を含むかを数え、ケースごとの表の右列を実行する
予備費は
何パーセント見るべきか
同上。物件の条件によって不確かさの量がまったく違うため、割合で示すこと自体に無理がある 予備費の考え方の4段階で、自分の物件条件と資金計画から上限額を決める
解体後に想定外が
見つかる確率
この種の統計が存在しない。工事会社ごとの経験則はあるが、公表された調査として確認できなかった ケース1の表で内覧時に自分で確かめ、見積前に「開けてみないと分からない部分」を工事会社に列挙してもらう
石綿の調査・除去で
工期が何日延びるか
事前調査で終わるか、分析調査に回るか、除去まで行くかで段階が変わり、一律の日数を示した公的資料を確認できなかった ケース2の表で8段階のどこまで進むかを工事会社と確認する。大気汚染防止法第18条の17第1項の14日前届出だけは日数が確定している

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