消防の検査は、内装がすべて仕上がってから受けます。そこで「これでは通りません」と言われると、天井を開け直す工事に戻ります。
賃料30万円の物件で開店が2週間遅れれば、賃料だけで14万円。日商15万円なら、売上の機会は210万円です。※編集部が仮に置いた数字による試算例です。
確認することは8つ。用途の項、収容人員、必要な設備、防炎、届出、検査、開業後の義務、そして費用。どれも図面ができた時点で確かめられます。
この記事でわかること
- 自分の店がどの区分になるかの調べ方。 区分が変わると、必要な設備も費用も変わります(消防法施行令別表第一の「項」)
- 何人まで入れる店として扱われるかの数え方。 飲食店は客席、物販店は床面積で数えます。この人数で防火管理者が要るかどうかが決まります
- 消火器・自動火災報知設備・誘導灯・避難器具が、何平方メートルから必要になるか
- カーテンやじゅうたんを買う前に確認するラベル。 燃えにくいものでないといけない業種があります(防炎物品)
- 消防署に出す3つの書類を、誰が・いつ・どこに出すか。名古屋市の提出先つき
- 検査で落ちやすい場所を、着工前・天井を閉じる前・仕上げ前の3回に分けて潰す順番
- 開店したあとも続く点検と報告。6か月ごと、1年ごと、3年ごとに何をするか
開業に必要な届出の全体像(税務署・保健所・警察・労働保険なども含む9つ)は 店舗開業に必要な届出と許認可|内装の着工前に確認する9つの手続きで扱っています。 内装制限に適合する仕上げ材の選び方は 店舗の内装材の選び方|法規と運用コストで決まる7つの基準、 電気容量やガスの容量は 店舗の電気容量が足りない物件を避けるには|契約前に確認する7つの設備条件、 厨房の設計そのものは 飲食店の厨房設計で決める9つのこと|面積配分・排気・給排水を着工前に固める、 着工後から引き渡しまでの施主の確認は 内装工事は着工後が勝負|施主が自分で確認する9つのポイントにあります。 この記事はそれらに重ならないよう、消防の手続きと消防用設備、そして消防検査だけに絞ります。 内装制限についても材料選定の話はせず、消防の側から何を求められるかという一点だけを扱います。
なぜ消防だけ、いつも最後になるのか
内装会社の工事範囲に入っていないことが多く、誰の担当でもないまま図面が進むからです。後から問題になる経路は4つあります。
| 経路 | 実際に何が起きるか | 自分で先に確かめること |
|---|---|---|
| 見積書が「一式」で中身が見えない | 消防設備工事の金額が何で決まっているのか読み取れず、後から設備が増えても増額の妥当性を判断できない | 見積書の「消防設備工事」の行を指して、対象の設備名と数量を書いた内訳をもらう。内訳がなければ「何項の何平方メートルで積算したか」を聞く |
| 間取りが決まらないと設備が確定しない | 実施図面ができてから設備が増え、天井を閉じる日程に間に合わなくなる | 基本図面(間仕切りの位置と客席数が入った平面図)ができた時点で、いったん消防署へ持って行く。実施図面を待たない |
| 居抜きで用途区分が変わる | 前の店にあった設備では足りず、追加工事が発生する。逆に不要な設備の点検費を払い続けることもある | 前の店の業態と自分の業態を、別表第一の項番号に置き換えて紙に書く。項が変わるなら必ず消防署に確認する |
| 誰も聞かれない限り教えない | 相談しなければ、検査の日まで誰も基準を教えてくれない。指摘は工事が終わってから来る | 物件の申込みを入れる前に、所轄の消防署予防課へ電話を1本入れる。住所と用途と面積を伝えるだけで、相談の予約が取れる |
火事の原因を見ると、手をかける場所が決まる
消防庁の消防白書に、出火原因の上位が出ています。こんろ、電気機器、配線器具。どれも内装工事で手を打てる場所です。
統計には限界もあります。使えるところと、使えないところを分けました。
| 出火原因(件数) | 店舗で当てはまる場面 | 工事段階でできること |
|---|---|---|
| たばこ 3,058件 | 喫煙可能な区画、店外の灰皿、ごみ置場での消し忘れ | 喫煙区画を設けるなら、灰皿の置き場所と可燃物の距離を平面図に描く。屋外の灰皿はごみ置場から離す |
| こんろ 2,718件 | 厨房のガスこんろ、フライヤー、鉄板 | 調理油過熱防止装置の付いた機器を選ぶ。消火器の位置を厨房の出口側(逃げながら取れる側)に決める |
| 電気機器 1,804件 | 冷蔵庫、製氷機、業務用電子レンジ、看板の電源 | 機器ごとに専用回路を引くかを設備図で確認する。裏に埃がたまる位置に大型機器を押し込まない |
| 電灯電話等の配線 1,636件 | 天井裏の配線、什器の裏を通した配線、後付けの引き回し | 竣工時に配線の写真を撮っておく。後から増設した配線は、必ず有資格者に施工してもらう |
| 配線器具 1,527件 | コンセント、延長コード、テーブルタップ | 什器レイアウトを先に決め、必要な位置にコンセントを仕込む。延長コードを前提にした図面を承認しない |
| 放火・放火の疑い 3,393件 | 店外に置いたごみ、段ボール、閉店後の裏口 | 可燃物を屋外に置かない収納を計画に入れる。裏口周りの照明と施錠を設計段階で決める |
| 確認できた数値 | 出典・時点・対象と限界 | 自店でどう使うか |
|---|---|---|
| 建物火災20,972件/出火原因は配線関係が計3,163件 | 令和7年版消防白書。令和6年1月〜12月に発生した火災を消防機関の火災報告で集計。全国が対象 | コンセントの数と位置を什器レイアウトから逆算する。延長コード前提の図面を承認しない |
| 防火管理者の選任率84.5%/消防計画の作成率80.0% | 令和7年版消防白書。令和7年3月31日現在。防火対象物実態等調査は延べ面積150平方メートル以上等が対象で、小規模な店は含まれない | 自店の収容人員を数え、選任義務があるかを先に判定する。義務があるなら講習の日程を開業日から逆算して押さえる |
| 点検報告率49.2%(1,000平方メートル未満の特定用途は45.7%) | 消防庁検討部会配布資料。平成29年(2017年)3月31日時点の速報値で、8年以上前の数字。最新値は今回確認できなかった | 点検と報告を「開業後の固定費」として事業計画に最初から入れる。報告の周期を開業月から数えてカレンダーに入れる |
| 立入検査回数75万9,676回(令和6年度) | 令和7年版消防白書。全国の消防機関が令和6年度中に行った立入検査の回数。違反件数の合計は白書本文では確認できなかった | 立入検査は珍しい出来事ではないと理解する。消防計画・点検結果報告書・防火管理者選任届の控えを1つのファイルにまとめておく |
| 火災の総損害額 約999億円(令和6年) | 令和7年版消防白書。前年比6.1%増。建物火災が損害額全体の77.0%。1件あたりの平均損害額は白書本文では確認できなかった | 火災保険の補償額を決めるとき、内装・什器・在庫の再取得価格を自分で積み上げる。店舗開業で入る保険は何か|内装と休業を守るために確認する9つのことを参照する |
確認1〜2|自分の店が「何項」か、収容人員は何人か
消防法施行令別表第一のどの項に当たるか。ここがすべての起点です。項が変われば、必要な設備も届出も変わります。
次に収容人員を数えます。数え方は施行規則に定められていて、業種によって計算式が違います。
収容人員が一定数を超えると、防火管理者を定める義務が生じます。講習の日数と受講料も表にしました。
| 項 | 条文が掲げる用途 | 自店が当たるかの確かめ方 |
|---|---|---|
| (一)項イ・ロ | イ=劇場、映画館、演芸場または観覧場/ロ=公会堂または集会場 | 客席を設けて観覧させる形態か。ライブハウスや小劇場を計画しているなら、席の設け方を含めて消防署に判定を仰ぐ |
| (二)項イ〜ニ | イ=キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの/ロ=遊技場またはダンスホール/ハ=性風俗関連特殊営業を営む店舗等/ニ=カラオケボックス等 | 接待を伴うか、個室で遊興させるかが分かれ目。風営法上の許可の要否とあわせて、業態の実態を紙に書き出して相談する |
| (三)項イ・ロ | イ=待合、料理店その他これらに類するもの/ロ=飲食店 | 一般的な飲食店、カフェ、居酒屋、ラーメン店は(三)項ロ。この項は火を使う場合に消火器具が面積不問で必要になるため、必ず確認する |
| (四)項 | 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗または展示場 | 物を売る店はここ。アパレル、雑貨、書店、食品販売など。ギャラリーやショールームは展示場に当たるかを相談する |
| (五)項イ・ロ | イ=旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの/ロ=寄宿舎、下宿または共同住宅 | 宿泊させるなら(五)項イ。民泊やゲストハウスを計画しているなら、旅館業法の許可区分とあわせて確認する |
| (六)項イ〜ニ | イ=病院、診療所または助産所/ロ=要介護者を入所させる施設等/ハ=老人デイサービスセンター等/ニ=幼稚園または特別支援学校 | クリニックを開くならイ。イはさらに(1)から(4)に細分され、入院設備の有無等で扱いが変わるため、必ず消防署で確認する |
| (七)項 | 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの | 学習塾や教室が(七)項か(十五)項かは所轄の判断が分かれる。学習塾・教室の内装で決める9つのこと|1人あたり面積から法令までで扱っている |
| (八)項 | 図書館、博物館、美術館その他これらに類するもの | ブックカフェのように販売や飲食を伴う形は(八)項ではなく他の項になり得る。主たる用途がどれかを整理して相談する |
| (九)項イ・ロ | イ=公衆浴場のうち蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの/ロ=イ以外の公衆浴場 | サウナを設けるとイに当たり得る。イは(三)項や(四)項と同じ規制の系統に入るため、規模が小さくても影響が大きい |
| (十二)項イ・ロ | イ=工場または作業場/ロ=映画スタジオまたはテレビスタジオ | 製造や加工が主なら(十二)項イ。工房兼販売店は、面積の按分と主たる用途で判定されるため相談が必要 |
| (十三)項イ・(十四)項 | (十三)項イ=自動車車庫または駐車場/(十四)項=倉庫 | 店舗に併設する駐車場の扱いは、屋内か屋外か、独立しているかで変わる。店舗の駐車場計画で決める7つのこと|必要台数・寸法・条例の付置義務とあわせて確認する |
| (十五)項 | 前各項に該当しない事業場 | 美容室、理容室、整体院、ネイルサロン、事務所、教室などが入り得る。「どれにも当たらないからここ」という消去法の項であることを理解する |
| (十六)項イ・ロ | イ=複合用途防火対象物のうち、その一部が(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イの用途に供されるもの/ロ=イ以外の複合用途防火対象物 | 雑居ビルに入る場合、建物全体が(十六)項イか(十六)項ロかを管理会社に確認する。自分の区画の項だけを見て判断しない |
| (十六の二)項・(十六の三)項 | (十六の二)項=地下街/(十六の三)項=建築物の地階で地下道に連続するもの等 | 地下街の区画に出るなら該当する。名古屋は地下街が多いため、駅直結の区画では管理者に建物全体の区分を確認する |
| 持って行くもの | なぜ必要か | 用意する方法 |
|---|---|---|
| 区画の平面図(間仕切りと客席が入ったもの) | 用途と面積と収容人員のすべてが、この1枚から読み取られる。図面がないと会話が進まない | 内装会社の基本図面をA3で1部印刷する。まだなければ、貸主からもらった区画図に手書きで間仕切りを描く |
| 建物全体の概要(階数・延べ面積・他テナントの業態) | (十六)項イかロか、直通階段が何本あるかで、自分の区画の設備が変わる | 管理会社に「建物の消防法上の用途区分」と「直通階段の数」をメールで問い合わせ、回答を印刷して持参する |
| 営業の実態を書いたメモ | 同じ「バー」でも、接待の有無、席の形、営業時間で項が変わる。図面だけでは判定できない | 営業時間、提供するもの、接待の有無、客席の形、想定するお客様の人数をA4半分に書く |
| 前のテナントの用途(居抜きの場合) | 既存の消防用設備等がどの基準で入っているかが分かり、流用できる範囲が判定できる | 貸主または前の借主に、業態と、消防用設備等の点検結果報告書の写しがあるかを聞く |
| 数える対象 | 条文の数え方 | 自店での具体的な作業 |
|---|---|---|
| 従業者 | 従業者の数 | ピーク時のシフト人数を書き出す。ホール、キッチン、レジ、洗い場を分けて数える。オーナーが店に立つなら自分も含める |
| 固定式のいす席 | 当該部分にあるいす席の数に対応する数 | 床に固定した椅子、カウンタースツールを図面上で数える。動かせる椅子は「その他の部分」の扱いになる可能性があるので消防署に確認する |
| 長いす式のいす席 | 当該いす席の正面幅を0.5メートルで除して得た数(1未満の端数は切り捨て) | ベンチシートの長さをミリメートル単位で図面から拾い、0.5メートルで割る。長さ2,700ミリメートルなら5人(2.7÷0.5=5.4→5) |
| その他の客席部分 | 当該部分の床面積を3平方メートルで除して得た数 | 立ち飲みスペース、テラス席、待合など、固定席でない客席の床面積を平面図から拾い、3で割る |
| 数える対象 | 条文の数え方 | 自店での具体的な作業 |
|---|---|---|
| 従業者 | 従業者の数 | ピーク時のシフト人数を数える。土日と平日で違うなら多いほうを使う |
| 飲食・休憩の用に供する部分 | 当該部分の床面積を3平方メートルで除して得た数 | イートイン、試飲・試食のカウンター、休憩ベンチの置かれた区画の面積を平面図から拾い、3で割る |
| その他の部分(売場) | 当該部分の床面積を4平方メートルで除して得た数 | 売場の床面積を4で割る。バックヤード・事務室・スタッフ更衣室は含めず、区画ごとに面積を出す |
| 数えない部分 | 主として従業者以外の者の使用に供する部分ではない部分 | バックヤード、事務室、スタッフ用トイレの面積を平面図で色分けし、売場と明確に分ける |
| 区分と収容人員 | 条文が挙げる用途 | 自店での判定手順 |
|---|---|---|
| イ|10人以上 | (六)項ロ、および(十六)項イ・(十六の二)項・(十六の三)項のうち(六)項ロの用途部分が存するもの | 要介護者を入所させる施設等が対象。一般の店舗では通常は該当しないが、同じビルに該当施設があるかは管理会社に確認する |
| ロ|30人以上 | (一)項〜(四)項、(五)項イ、(六)項イハニ、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項(イに該当しないもの) | 飲食店・物販店舗はここ。客席数+ベンチの換算数+従業者数を足し、30に届くかを計算する。届くなら講習の日程を押さえる |
| ハ|50人以上 | (五)項ロ、(七)項〜(十五)項、(十六)項ロ、(十七)項 | 美容室・整体院・事務所などはここ。50人に届く規模かを、売場面積÷4などの算定式で確かめる |
| どれにも当たらない | 上記の人数に満たない防火対象物 | 防火管理者の選任義務はないが、消防用設備等の設置義務は面積で別に決まる。ここで安心して確認3を飛ばさない |
| 講習の種別 | 日数と受講料(公表値) | 申し込み前にやること |
|---|---|---|
| 甲種防火管理新規講習(名古屋市消防局) | 2日間・5,200円(手数料2,000円+資料費3,200円)。連続して2日間の受講が必要。※掲載ページの更新日は2023年5月22日 | 連続2日空けられる人を先に決める。店長候補が決まっていないなら、開業日から逆算して採用の期限も決める |
| 乙種防火管理講習(名古屋市消防局) | 1日・4,200円(手数料1,500円+資料費2,700円)。※同上 | 自店の延べ面積が300平方メートル(特定用途)または500平方メートル(その他)未満かを契約書で確認してから申し込む |
| 甲種防火管理新規講習(日本防火・防災協会) | 8,000円(税込) | 名古屋市の講習の日程が合わない場合の代替として、開催地と日程を確認する |
| 乙種防火管理講習(日本防火・防災協会) | 7,000円(税込) | 同上。受講後の修了証は全国で有効なので、他県で受けても問題ないかを念のため所轄に確認する |
| 甲種防火管理再講習(名古屋市消防局/協会) | 名古屋市消防局は半日・3,100円。協会は7,000円(税込) | 再講習が必要になる条件を消防署で確認し、必要なら次回の受講時期をカレンダーに入れる |
確認3〜4|必要な設備の面積と、防炎
消火器具、自動火災報知設備、避難のための設備。それぞれ必要になる規模が条文で決まっています。自分の面積と項を当てはめれば、必要かどうかが分かります。
カーテンとじゅうたんは防炎物品を選びます。発注前に確認することを表にしました。
内装制限と防炎規制は、別の制度です。混同すると、必要のない材料を選ぶことになります。
| 号と面積の基準 | 対象となる用途 | 自店で確かめること |
|---|---|---|
| 第1号ロ|面積に関係なく必要 | (三)項(料理店・飲食店)で火を使用する設備または器具を設けたもの(防火上有効な措置が講じられたものを除く) | 厨房に置く機器を一覧にし、調理油過熱防止装置の有無をメーカー仕様書で確認する。IHのみでも消防署に判定を仰ぐ |
| 第1号イ|面積に関係なく必要 | (一)項イ、(二)項、(六)項イ(1)〜(3)・ロ、(十六の二)項〜(十七)項、(二十)項 | バー・スナック・カラオケ店は(二)項に入るため、面積に関係なく必要。自店の項が(二)項かを確認1で確定させる |
| 第2号|延べ面積150平方メートル以上 | (一)項ロ、(四)項、(五)項、(六)項イ(4)・ハ・ニ、(九)項、(十二)項〜(十四)項、および(三)項のうち第1号ロに当たらないもの | 物販店舗は45.4坪が目安。契約書の面積が150平方メートルを超えるかを確認する。共用部を含む面積との違いに注意 |
| 第3号|延べ面積300平方メートル以上 | (七)項、(八)項、(十)項、(十一)項、(十五)項 | 美容室・整体院・事務所は90.7坪が目安。ここに届かない小規模店でも第5号の階の条件を確認する |
| 第5号|床面積50平方メートル以上 | 前各号に該当しない防火対象物の地階、無窓階または3階以上の階 | 物件が地階か無窓階か3階以上かを先に確認する。無窓階かどうかは開口部の大きさで決まるため自己判断せず消防署に聞く |
| 号と基準 | 対象となる用途・階 | 自店で確かめること |
|---|---|---|
| 第3号|延べ面積300平方メートル以上 | (一)項、(二)項イ〜ハ、(三)項、(四)項、(六)項イ(4)・ニ、(十六)項イ、(十六の二)項 | 飲食店・物販店舗はここ。約90.7坪。(十六)項イに該当すると建物全体で判定されるため、区画面積だけで安心しない |
| 第4号|延べ面積500平方メートル以上 | (五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項、(十二)項、(十三)項イ、(十四)項 | 約151.2坪。学校・教室系がここに入るかは所轄の判断次第なので、(七)項か(十五)項かを先に確定させる |
| 第6号|延べ面積1,000平方メートル以上 | (十一)項、(十五)項 | 約302.5坪。美容室・事務所系。面積では不要でも、下の階・無窓階の条件に当たらないかを必ず確認する |
| 第7号|面積に関係なく必要 | (一)項〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イの用途部分が避難階以外の階にあり、直通階段が2(屋外階段等なら1)未満 | 管理会社に「この建物の直通階段は何本か」「屋外階段はあるか」を書面で確認する。2階以上・地下の区画では最優先 |
| 第10号|床面積100平方メートル以上 | (二)項イ〜ハ、(三)項、(十六)項イの地階または無窓階 | 地下の飲食店は約30.2坪で必要になる。地下の区画を検討しているなら、この線を先に計算する |
| 第11号|床面積300平方メートル以上 | 前各号に該当しない防火対象物の地階、無窓階または3階以上の階 | 3階以上の区画を検討しているなら、区画の床面積が300平方メートルに届くかを確認する |
| 第14号|面積に関係なく必要 | 11階以上の階 | 高層ビルの上層階に出るなら、面積に関係なく必要。建物側で既に整備されていることが多いので、既存設備の有無を管理会社に確認する |
| 設備と根拠 | 必要になる条件 | 図面を承認する前に確かめること |
|---|---|---|
| 避難口誘導灯・通路誘導灯(第26条第1項第1号・第2号) | (一)項〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項、(十六の三)項は面積不問。(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項〜(十五)項、(十六)項ロは地階・無窓階・11階以上の部分 | 天井伏図に誘導灯の位置が入っているかを確認する。入っていなければ「消防用設備の位置を図面に落としてほしい」と依頼する |
| 客席誘導灯(第26条第1項第3号) | (一)項、および(十六)項イ・(十六の二)項のうち(一)項の用途に供される部分 | ライブハウスやミニシアターを計画しているなら、客席の照度をどう確保するかを設計者と先に決める |
| 誘導標識(第26条第1項第4号) | (一)項から(十六)項までに掲げる防火対象物 | 誘導灯が不要な用途でも標識は必要。貼る位置が什器の裏に隠れないよう、什器レイアウトと重ねて確認する |
| 非常警報器具(第24条第1項) | (四)項、(六)項ロハニ、(九)項ロ、(十二)項で収容人員20人以上50人未満 | 物販店舗は収容人員20人から対象。売場面積÷4+従業者数で20人に届くかを計算する |
| 非常ベル等(第24条第2項) | (五)項イ、(六)項イ、(九)項イは収容人員20人以上。それ以外は50人以上、または地階・無窓階の収容人員20人以上 | 地階の区画では20人が線になる。地下の物件を検討しているなら収容人員を先に計算する |
| 避難器具(第25条第3号・第5号) | 第3号=(一)項〜(四)項、(七)項〜(十一)項の2階以上の階または地階で収容人員50人以上。第5号=3階以上(一部2階)で直通階段が2未満、収容人員10人以上 | 2階以上の区画では、直通階段の数と収容人員の両方を確認する。第5号の10人は非常に低い線であることを理解しておく |
| スプリンクラー設備(第12条第1項) | 第3号=(一)項〜(四)項等で地階を除く階数11以上。第4号=床面積3,000または6,000平方メートル以上。第12号=11階以上の階 | 既設のヘッドがある物件では、天井の意匠でヘッドを塞がないこと、間仕切りで散水を遮らないことを図面段階で確認する |
| 屋内消火栓設備(第11条第1項) | (一)項は延べ面積500平方メートル以上、(二)項〜(十)項・(十二)項・(十四)項は700平方メートル以上、(十一)項・(十五)項は1,000平方メートル以上、(十六の二)項は150平方メートル以上 | 既設の消火栓がある物件では、扉の前に什器を置かない計画にする。開閉に必要な前面のスペースを平面図に明示する |
| 条文が挙げる物品 | 店舗で実際に該当するもの | 発注前に確認すること |
|---|---|---|
| カーテン | 窓のカーテン、間仕切りとして吊る布、更衣スペースの目隠し | 見積書またはカタログに「防炎」の表示があるか。納品時に防炎ラベルが縫い付けられているかを現物で確認する |
| 布製のブラインド | ロールスクリーン、プリーツスクリーン、調光ロールスクリーン | アルミブラインドと布製で扱いが違う。布製を選ぶなら防炎品の型番かを発注前にメーカーに確認する |
| 暗幕 | プロジェクターを使う個室、撮影スペースの遮光幕 | 遮光のために後から吊る布も対象になり得る。開店後に追加する布も防炎品を選ぶ運用にする |
| じゅうたん等 | タイルカーペット、ラグ、玄関マット、置き敷きのカーペット | 施工用のタイルカーペットは防炎品が一般的だが、後から買い足すラグやマットが抜けやすい。備品リストに防炎の欄を作る |
| 展示用の合板 | 什器の背板、ディスプレイ用のパネル、季節ごとの装飾ボード | 造作什器の材料に何を使うかを内装会社に確認する。既製品の什器を持ち込む場合は仕様書を取り寄せる |
| どん帳その他の舞台において使用する幕・大道具用の合板 | ステージのある店、イベントスペースの舞台幕と背景パネル | ステージを設ける計画なら、幕と背景の材料を設計段階でリストにして消防署に相談する |
| 工事用シート | 工事期間中に開口部を養生するシート、足場のシート | 工事会社が用意するものだが、契約前に「防炎の工事用シートを使うか」を確認しておく |
| 比べる観点 | 内装制限 | 防炎規制 |
|---|---|---|
| 根拠となる法律 | 建築基準法第35条の2、同法施行令第128条の3の2以下 | 消防法、消防法施行令第4条の3 |
| 対象になるもの | 壁および天井の室内に面する部分の仕上げ材 | カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゅうたん等、展示用の合板、舞台幕、大道具用合板、工事用シート |
| 相談・確認する先 | 建築主事または指定確認検査機関。名古屋市では住宅都市局建築審査課 | 所轄の消防署予防課 |
| 確定するタイミング | 実施設計の段階。仕上げ表に材料の等級が書かれる | 備品の発注段階。工事とは別のタイミングで決まることが多い |
| 抜けたときの直し方 | 仕上げ材の張り替え。壁と天井をやり直すため費用と日数が大きい | 物品の買い替え・作り直し。オーダーのカーテンは納期がかかる |
| 自分でできる確認 | 仕上げ表を受け取り、各部屋の壁・天井の欄に材料の不燃等級が書かれているかを見る | 納品された布製品と敷物に防炎ラベルが付いているかを、開店前に1点ずつ現物で確認する |
確認5〜6|出す書類と、検査で落ちる理由
名古屋市の場合、関係する届出は4つあります。期限が決まっているものがあります。
検査で指摘を受けやすい箇所も決まっています。3段階で潰せます。図面の段階、下地の段階、そして仕上げ前。
| 届出の名称と根拠 | 誰が・いつ・どこに出すか | 自分が用意・確認すること |
|---|---|---|
| 防火対象物使用開始届出書(名古屋市火災予防条例第66条) | 関係者が、その用途に使用するときに、区の消防署予防課へ。手数料なし。副本返却が不要なら郵送可。期限の日数は名古屋市の公表資料では確認できなかった | 所轄の予防課に電話で期限を確認する。様式と記入例を市のページからダウンロードし、平面図を用意する |
| 防火対象物工事計画届出書(名古屋市火災予防条例第66条の2) | 新築・増築・改築・移転・修繕・模様替え・用途変更の工事について。建築の確認申請が必要なら住宅都市局建築審査課または指定確認検査機関、不要なら区の消防署予防課へ。郵送不可。手数料なし。期限の日数は確認できなかった | 自分の工事が確認申請を伴うかを先に判定する。伴うなら提出先が変わるため、設計者に確認する |
| 工事整備対象設備等着工届出書(消防法第17条の14) | 甲種消防設備士が、工事に着手しようとする日の10日前までに、区の消防署予防課へ。郵送不可。手数料なし | 消防設備工事を請け負う会社に甲種消防設備士がいるかを確認し、工程表に届出日が入っているかを見る |
| 消防用設備等設置届出書(消防法第17条の3の2、施行規則第31条の3) | 関係者が、工事が完了した日から4日以内に、区の消防署予防課へ。郵送不可。手数料なし。適合すれば検査済証が交付される | 工事完了日を工程表で確定させ、そこから4日以内に届出、その後に検査という日程を開店日から逆算する |
| 防火・防災管理者選任(解任)届出書(消防法第8条第2項) | 管理について権原を有する者が、防火管理者を定めたとき遅滞なく、建物の所在する行政区の消防署本署(予防課)へ。受付は平日午前8時45分から午後5時15分 | 講習の修了証の写しを用意する。講習日程を開業日から逆算して押さえる |
| 消防計画の届出(消防法施行令第3条の2第1項) | 防火管理者が作成し、所轄消防長または消防署長へ届け出る | 消防法施行規則第3条第1項第1号の列挙項目に沿って、自店の運営を文章にする。避難通路に物を置かない運用が図面上成立するかを確認する |
| 指摘の内容 | なぜ起きるか | どの段階で自分が潰すか |
|---|---|---|
| 必要な消防用設備等が入っていない | 用途の項、延べ面積、収容人員、階の条件のいずれかを取り違えた。とくに無窓階の判定と(十六)項イの判定で誤りやすい | 着工前。基本図面の段階で消防署予防課に持ち込み、必要な設備の一覧を口頭でも確認しておく |
| 感知器の数・位置が基準に合わない | 間仕切りを増やしたのに感知器を追加していない。垂れ壁で区画が分かれたのに反映していない | 天井を閉じる前。間仕切り変更があったら、そのつど消防設備業者に伝わっているかを施工会社に確認する |
| 誘導灯が什器で見えない | 図面上は問題なかったが、背の高い棚や垂れ幕で視線が遮られた | 什器搬入後・検査前。入口に立ち、しゃがんだ姿勢からも誘導灯が見えるかを自分で確認する |
| 消火器の位置が不適切/物に隠れている | 設置はしたが、什器の裏や倉庫の奥に置かれ、標識も見えない状態になった | 什器搬入後・検査前。消火器の前に立てるか、標識が見えるかを1本ずつ確認する |
| 避難通路の幅が確保されていない | テーブルと椅子を実際に並べたら、椅子を引いた状態で通路が塞がった | 什器搬入後・検査前。全席に椅子を引いた状態を作り、入口から非常口まで実際に歩いてみる |
| 非常口の前に物が置かれている | 倉庫が足りず、段ボールや予備の椅子が非常口の前に積まれた | 着工前。バックヤードの収納量を什器計画の段階で確保する。足りなければ席を減らしてでも収納を作る |
| スプリンクラーヘッド・排煙口が塞がれている | 天井の意匠、垂れ壁、背の高い什器で、既設の設備の機能が妨げられた | 天井を閉じる前。天井伏図に既設設備の位置が落ちているかを確認し、意匠と干渉していないかを見る |
| カーテン・じゅうたんが防炎品でない | 備品を別ルートで購入し、防炎ラベルの確認をしていなかった | 発注前。備品購入リストに防炎ラベルの欄を作り、納品時に現物で確認する |
| 防火管理者が選任されていない/消防計画が未提出 | 設備のことだけを追いかけ、人と書類の手続きが抜けた | 着工前。収容人員を計算し、選任義務があるなら講習の日程を先に押さえる |
確認7〜8|検査が終わっても義務は続く/費用と相談の順番
点検と報告は、開業後もずっと続きます。根拠条文と、自店での運用を表にしました。
費用は、金額が公表されているものと、そうでないものに分かれます。公表されていないものは、見積を取るしかありません。
相談に行くタイミングも決まっています。その時点で決められることが違うので、早すぎても答えが出ません。
| 義務の内容と根拠 | 周期と対象 | 自店でやること |
|---|---|---|
| 機器点検(平成16年消防庁告示第9号 第3) | 6月ごと。外観から、または簡易な操作により機器の配置・損傷・機能を確認する | 開業月を起点に、6か月後の月をカレンダーに登録する。点検業者と年間の契約にするか都度依頼にするかを決める |
| 総合点検(同告示 第3) | 1年ごと。設備の全部または一部を実際に作動させて総合的な機能を確認する。消火器具・誘導灯等は機器点検のみ | 営業時間中に警報が鳴る可能性があるため、実施日を定休日または営業前に設定できるか業者に相談する |
| 点検結果の報告(消防法施行規則第31条の6第3項第1号) | 1年に1回。(一)項〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項、(十六の三)項=飲食店・物販店舗はここ | 開業月を起点に毎年の報告月を決める。名古屋市では区の消防署予防課へ、窓口提出は写し1部を添えた合計2部 |
| 点検結果の報告(同項第2号) | 3年に1回。(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項〜(十五)項、(十六)項ロ、(十七)項、(十八)項 | 3年周期は忘れやすい。開業年から3年ごとの年をカレンダーに登録し、担当者が変わっても引き継がれる形にする |
| 有資格者による点検(消防法施行令第36条第2項) | 延べ面積1,000平方メートル以上の特定用途など。それ未満は条文上は自ら点検可 | 自店が1,000平方メートル未満なら、点検の委託は義務ではなく選択であると理解したうえで見積もりを比較する |
| 防火対象物点検(消防法第8条の2の2、施行令第4条の2の2) | 収容人員300人以上等。防火対象物点検資格者が点検し、名古屋市では1年に1回報告と案内されている | 収容人員300人に届く規模かを確認2の計算で判定する。消防用設備等の点検とは別制度である点を担当者に共有する |
| 消火訓練・避難訓練(消防法施行規則第3条第10項) | (一)項〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項の防火管理者は年2回以上 | 年間の営業カレンダーに訓練日を2日入れる。実施記録を残し、消防計画の控えと同じファイルに保管する |
| 費目 | 公的な金額データの有無 | 自分で金額を確定させる方法 |
|---|---|---|
| 届出の手数料(使用開始届・工事計画届・着工届・設置届) | あり。名古屋市消防局の各ページに「必要ありません」と明記されている | ゼロ円として予算に計上する。書類の作成を設計者や業者に代行してもらう場合の手間賃は別途確認する |
| 防火管理講習の受講料 | あり。名古屋市消防局は甲種5,200円・乙種4,200円、日本防火・防災協会は甲種8,000円・乙種7,000円(税込)と公表 | 甲種か乙種かを延べ面積から判定し、実施機関の最新の案内で金額と日程を確認して申し込む |
| 消防設備士試験の手数料 | あり。消防試験研究センターが甲種6,600円・乙種4,400円と公表 | 店舗側が取得する必要はないが、点検を自社で行う体制を考えるなら参考にする |
| 消防用設備等の工事費(自動火災報知設備・誘導灯・消火器等) | なし。公的機関が示した費用データは確認できなかった | 見積書の「消防設備工事」を設備名と数量に分解してもらい、2社以上から取る。店舗内装の見積もり比較で見る7つのポイント|3社の見積書を突き合わせる手順の手順を使う |
| 消防用設備等の点検費(開業後) | なし。公的な費用データは確認できなかった | 点検業者から年間の見積もりを取る。1,000平方メートル未満なら委託は義務ではないため、条件を比較できる立場にある |
| 防炎品への切り替え費用(カーテン・じゅうたん等) | なし。公的な費用データは確認できなかった | 見積もり時点で「防炎品で」と指定して金額を出してもらう。後から差額を請求される形を避ける |
| 相談のタイミング | その時点で確認できること | この時期を逃すと失うもの |
|---|---|---|
| 物件の申込み前 | 用途の項、無窓階かどうか、直通階段の条件、必要になる消防用設備等の見通し | 物件を替える選択肢。階段が1本のビルの2階、地下の区画などを避ける判断ができなくなる |
| 賃貸借契約の前 | 上記に加え、既存設備の流用可否、追加工事のおおまかな範囲 | 賃料や造作譲渡の金額を交渉する材料。追加工事が必要と分かれば、条件の見直しを申し入れられる |
| 基本図面ができた時点 | 感知器・誘導灯・消火器の位置、避難通路の幅、間仕切りの配置の可否 | 図面を変える自由度。実施設計に入ってからの変更は設計費の追加を伴う |
| 実施図面の確定前 | 着工届の内容、工事計画届の要否、提出先(建築審査課か消防署か) | 着工日の余裕。着工10日前という着工届の期限に間に合わなくなる |
| 天井を閉じる前 | 感知器の実際の位置、配線の経路、既設設備との干渉 | 天井を開けずに直せる機会。閉じた後は解体からやり直しになる |
| 什器搬入後・検査前 | 誘導灯の視認性、消火器の取り出しやすさ、通路幅の実測 | 検査当日の指摘を避ける最後の機会。ここで見ておけば、当日は確認だけで済む |
内装の予定に、消防を重ねる
工程表に消防の手続きを重ねると、いつ動けばよいかが1本の線になります。印刷して、内装会社と共有してください。
| 内装工事の段階 | この段階の消防の作業 | 自分が動くこと |
|---|---|---|
| 物件を探している | 確認1(用途区分)と、無窓階・直通階段の条件の見通しを立てる | 候補物件ごとに、階・面積・建物の用途区分・階段の本数を表にする。管理会社への問い合わせ文面を1つ作り、使い回す |
| 物件を申し込む前 | 所轄消防署予防課へ1回目の相談。必要な消防用設備等の見通しを得る | 区画図に手書きで間取りを描き、想定業態のメモを添えて訪問する。回答を書き取り、担当者名を控える |
| 賃貸借契約を結ぶ | 既存設備の状況、点検結果報告書の有無を貸主・前借主に確認する | 契約書の使用目的欄に、消防署で確認した用途と齟齬がないかを見る。店舗の賃貸借契約書で確認する9つの条項|内装工事の前に読むの項目と突き合わせる |
| 基本設計・レイアウト検討 | 確認2(収容人員の算定)を自分で行い、防火管理者の要否を確定させる | 客席数・ベンチ長さ・売場面積・従業者数を式に入れて計算する。義務があれば講習の日程を押さえる |
| 実施設計 | 確認3(設備の確定)と確認4(防炎・内装制限)。2回目の相談で図面を見てもらう | 天井伏図に消防用設備等の位置が入っているかを確認する。仕上げ表に不燃等級が書かれているかを見る |
| 見積もり・業者決定 | 消防設備工事の内訳を確認し、甲種消防設備士の在籍を確かめる | 見積書の「一式」を設備名と数量に分解してもらう。工程表に着工届の提出日が入っているかを見る |
| 着工の10日以上前 | 確認5のうち工事整備対象設備等着工届(甲種消防設備士が提出)。工事計画届も必要に応じて | 届出が出されたことを工事会社に確認し、控えの写しをもらう。自分のファイルに綴じる |
| 天井を閉じる前 | 感知器・配線・既設設備との干渉の確認 | 現場に行き、天井裏の写真を撮る。間仕切り変更があった場合、消防設備業者に伝わっているかを口頭で確認する |
| 什器搬入後 | 確認6の事前確認。誘導灯の視認性、消火器の取り出しやすさ、通路幅 | 全席に椅子を引いた状態を作り、入口から非常口まで実際に歩く。防炎ラベルを1点ずつ現物で確認する |
| 工事完了から4日以内 | 確認5のうち消防用設備等設置届出書を提出 | 工事完了日を明確にし、届出日と検査希望日を消防署と調整する。開店日との間隔を確保する |
| 消防検査 | 確認6の本番。適合すれば検査済証が交付される | 届出の控え一式と図面を持参する。指摘が出たら内容・担当・期限・費用負担の4つをその場でメモする |
| 使用開始・開店 | 確認5のうち防火対象物使用開始届。防火管理者選任届と消防計画も提出 | 提出期限を所轄に電話で確認したうえで、逆算して書類を準備する。控えを1つのファイルにまとめる |
| 開業6か月後・1年後 | 確認7の点検(機器点検6月、総合点検1年)と報告(特定用途は1年に1回) | 開業月を起点にカレンダーに登録する。点検業者との契約形態(年間か都度か)を決める |
よくある質問
消防の手続きについて、開業前のご相談で繰り返し出てくる質問を4つ挙げます。 いずれも、条文を確認すれば答えの方向は出るものの、 最終的な判断は所轄の消防本部の運用によって分かれるものばかりです。
消防法令は全国共通の部分と、市町村の火災予防条例で定める部分の二階建てになっており、 後者は自治体ごとに内容が違います。 ここでは、確認できた条文と、名古屋市消防局が公開している手続きの案内を示したうえで、 どこから先が自己判断できない領域なのかを明示します。
一次情報で数値を確認できなかった部分については、その旨をそのまま書いています。 推測で日数や金額を置くことはしていません。
内装工事が終わってから消防署に相談しても間に合いますか?
間に合わないことがあります。 理由は三つあります。 第一に、消防用設備等の工事には着工届が必要で、 消防法第17条の14は、甲種消防設備士が同法第17条の5の規定に基づく政令で定める工事をしようとするときは、 その工事に着手しようとする日の10日前までに届け出なければならないと定めています。
内装が仕上がってから自動火災報知設備が必要だと分かれば、 この10日を待ったうえで、閉じた天井を開け直して配線を通すことになります。 第二に、内装の仕上げそのものが規制の対象になります。
消防法施行令第4条の3第3項は、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゅうたん等、展示用の合板、 どん帳その他の舞台幕、大道具用の合板、工事用シートを防炎対象物品と定めており、 同条第1項が挙げる用途の防火対象物では防炎性能を持つものを使わなければなりません。
発注済みのカーテンが防炎品でなければ作り直しになります。 第三に、設備の位置は間仕切りの位置で決まります。 誘導灯も感知器も消火器も、間仕切りが決まらなければ位置が決まらず、 間仕切りが決まって天井を閉じてからでは手が入りません。
名古屋市消防局の中消防署も、テナント入居や改装の際は消防署への事前相談をお願いしますと案内しています。 物件の賃貸借契約を結ぶ前、遅くとも図面を確定させる前に、 所轄の消防署予防課へ平面図を持って行ってください。
15坪ほどの小さな飲食店でも消防用設備は必要ですか?
必要になります。 消防法施行令第10条第1項第1号ロは、 別表第一(三)項に掲げる防火対象物で火を使用する設備または器具(防火上有効な措置が講じられたものを除く)を設けたものについて、 延べ面積に関係なく消火器具を設置しなければならないと定めています。
15坪はおよそ49.5平方メートルですから面積の基準には届きませんが、 こんろを置く時点で消火器は必要です。 この規定は、平成28年12月22日に新潟県糸魚川市で発生した大規模市街地火災を受けた改正によるものです。
消防庁の広報誌「消防の動き」2018年5月号によれば、 この火災の火元は延べ面積135.8平方メートルの飲食店のガスこんろで、 焼損床面積は30,213平方メートル、焼損棟数は147棟、けが人は17名でした。 改正政令は平成30年政令第69号として公布され、平成31年10月1日に施行されています。
除外される防火上有効な措置は消防法施行規則第5条の2が定めており、 調理油過熱防止装置、自動消火装置、 その他の危険な状態の発生を防止し被害を軽減する安全機能を有する装置の三つです。
あわせて、消防法施行令第26条第1項第1号および第2号により、 別表第一(三)項の防火対象物には避難口誘導灯と通路誘導灯が面積に関係なく必要になります。 小さい店でも、消火器と誘導灯はある前提で予算を組んでください。
防火管理者は誰がなればよいですか。講習はどこで、いくらで受けられますか?
まず必要かどうかを収容人員で判定します。 消防法施行令第1条の2第3項第1号ロは、 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イハニ、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項に掲げる防火対象物で 収容人員が30人以上のものを、防火管理者を定めなければならない防火対象物としています。
同号ハは、(五)項ロ、(七)項から(十五)項まで、(十六)項ロ、(十七)項について50人以上としています。 収容人員には従業者の数が含まれるため、客席の数だけで判断しないでください。 次に資格です。
消防法施行令第3条第1項第2号は、 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イハニ、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項では延べ面積300平方メートル未満、 その他の防火対象物では500平方メートル未満のものを乙種防火対象物とし、 乙種防火管理講習の修了者でも足りるとしています。
これに当てはまらない規模では甲種防火管理者が必要です。 名古屋市消防局が公表している講習案内では、 甲種防火管理新規講習は2日間で受講料5,200円(手数料2,000円と資料費3,200円)、 乙種防火管理講習は1日で4,200円(手数料1,500円と資料費2,700円)とされています。
ただしこのページの更新日は2023年5月22日ですので、申し込み前に最新の案内を確認してください。 一般財団法人日本防火・防災協会の講習では、 甲種防火管理新規講習8,000円、乙種防火管理講習7,000円(いずれも税込)と公表されています。 誰がなるかは、原則としてその店に常時いる人です。
オーナーが複数の店舗を掛け持ちしている場合は、その店の店長に受講してもらってください。
消防検査に落ちると、開店日はどれくらい延びますか?
平均で何日延びるかという統計は、一次情報では確認できませんでした。 ここでは日数の目安を示さず、延びる仕組みだけを説明します。
消防法第17条の3の2第1項は、 特定防火対象物その他の政令で定めるものの関係者は、 消防用設備等を設置したときに消防長または消防署長に届け出て検査を受けなければならないと定めています。 届出の期限は消防法施行規則第31条の3第1項が定めており、工事が完了した日から4日以内です。
同条第4項により、基準に適合していると認められたときに検査済証が交付されます。 つまり検査は工事が終わってから受けるものであり、 指摘があれば直してもう一度見てもらうことになります。
指摘の中身が消火器の位置を移すことであれば当日中に終わりますが、 感知器を追加することであれば天井を開ける工事に戻り、 間仕切りが避難経路をふさいでいることであれば図面からやり直しになります。 損失の大きさは自分で計算できます。
賃料が月30万円、想定日商が15万円の店で開店が2週間遅れれば、 賃料の負担が14万円、売上の機会が210万円です。 いずれも編集部が仮に置いた数字による試算例ですが、 この金額を避けるための費用が、 着工前に消防署へ相談しに行く交通費と半日の時間である、という比較になります。
まとめ|消防で確認する8つのこと
遅れの金額は「1日いくらか」に直せます。その数字を知っていると、相談に行く半日が惜しくなくなります。
まず、自分の店が別表第一の何項かを調べてください。そこが決まれば、あとは表を順に当てはめるだけです。
| 計算する項目 | 試算例(賃料30万円・日商15万円・客単価3,000円・月25日営業) | 自店で入れる数字 |
|---|---|---|
| 1日あたりの賃料 | 30万円÷30日=1万円 | 契約書の月額賃料(共益費を含む)を30で割る |
| 1日あたりの粗利 | 15万円×60%=9万円 | 想定日商に、自業種の粗利率をかける。飲食なら原価率から逆算する |
| 2週間遅れたときの損失 | 賃料14万円+粗利126万円=140万円 | 上の2つの数字に、想定される遅延日数をかけて足す |
| 取り戻すのに必要な客数 | 126万円÷(3,000円×60%)=700人 | 失う粗利を、お一人あたりの粗利で割る |
| 1日あたりに換算すると | 700人÷25日=1か月間、毎日28人の上乗せ | 必要な客数を、1か月の営業日数で割る。自店の席数と回転で可能かを判断する |
| 遅れを避けるためにかかる費用 | 電話代とコピー代と半日の時間(届出の手数料はゼロ) | 実際に消防署へ行く日を決め、カレンダーに入れる |