カフェの開業で最初に迷うのが「喫茶店営業許可」という言葉です。この許可は2021年6月の法改正で廃止され、今は飲食店営業許可に統合されています。

許可が1つに整理された一方で、内装の決め方までが1つに決まるわけではありません。客席中心の喫茶店的な業態にするか、フード比重の高いカフェレストランにするかで、厨房に必要な面積も設備も変わります。

業務用のエスプレッソマシンや製氷機の電気容量は、あとから変えようとすると配管・配線をやり直すことになる部分です。

着工前に決めておくことは7つあります。

この記事でわかること

  • 喫茶店営業許可が今どうなっているか、必要な許可の数
  • 厨房として扱われる範囲と、簡易な設備で足りる条件
  • 客席とカウンター・厨房の面積配分の考え方
  • コーヒー機器に必要な電気容量・給排水の確認事項
  • カウンターと客席の動線を分ける理由
  • 酒類を出す場合に許可が増えるかどうかの分かれ目

内装費を抑える判断はカフェ開業で内装費を抑える7つの判断、テイクアウト専門にする場合はテイクアウトを始めるときに決める7つのことで扱っています。この記事は内装の決め方に絞ります。

カフェの業態別に必要な許可を示した図。イートイン中心でもテイクアウト専門でも飲食店営業許可1つで足り、酒類を持ち帰り用に小売する場合のみ酒類販売業免許が別途必要になる。
「イートインかテイクアウトか」では、許可の数は変わりません|許可の数が増えるのは酒類を持ち帰り用に小売するときだけです。

決め1|必要な許可は「飲食店営業許可」1つ(喫茶店営業は廃止された)

食品衛生法の改正(令和3年6月1日施行)により、営業許可の業種は34業種から32業種に再編されました(食品衛生法施行令第35条)。このとき喫茶店営業許可は飲食店営業許可に統合され、単独の許可区分ではなくなりました。

そのため今カフェを開業するときに取得する許可は、業態がイートイン中心でもテイクアウト中心でも飲食店営業許可の1つです。「喫茶店だから別の許可」という考え方は、現在の制度には当てはまりません。

ただし後述するとおり、酒類の持ち帰り販売をする場合など、飲食店営業許可以外の許可が別途必要になる場面はあります。

カフェの業態別に必要な許可
業態必要な許可確認すること
イートインでコーヒー・軽食を提供飲食店営業許可(1つ)旧・喫茶店営業許可は2021年6月の法改正で飲食店営業許可に統合された
テイクアウト専門で客席を置かない飲食店営業許可(1つ)客席の有無にかかわらず、その場で調理・加工した食品を提供する営業は飲食店営業に当たる
アルコール入りドリンクをその場で提供追加の許可は不要酒類の小売・卸売をする場合にのみ酒類販売業免許が別途要る
瓶・缶入りの酒類を持ち帰り用に小売飲食店営業許可+酒類販売業免許「その場で飲む分」と「持ち帰り用の小売」は許可の区分が違う

出典:食品衛生法施行令第35条(営業許可業種の区分)。各自治体「食品衛生法改正による営業許可業種の再編(令和3年6月1日施行)」。旧法34業種は新法32業種に再編され、喫茶店営業は飲食店営業に統合された。

決め2|厨房として扱う範囲と、簡易な設備で済む条件

飲食店営業許可の施設基準は、都道府県・保健所設置市ごとの条例で定められています(食品衛生法第54条)。共通するのは、調理を行う場所を客席と区画し、手洗い設備や洗浄設備を備えることです。

提供するメニューがドリンクと簡単な軽食に限られる場合、フルサービスのレストランほど広い厨房面積を求められないことがありますが、これは自治体の運用によって差があります。

厨房の面積と設備は、保健所への事前相談で図面を見せて確認するのが最も確実です。着工前の内装図面の段階で相談してください。

厨房の範囲を確認する順番
確認先確認する内容このタイミングで
所轄の保健所厨房として区画すべき範囲、必要な設備(洗浄槽の数など)内装図面ができた段階、着工前
内装会社・設計者厨房設備の配置と、給排水・換気ダクトのルート保健所への相談と並行して
保健所メニュー構成(ドリンクのみか、軽食を調理するか)による基準の違いメニューを固める段階

出典:食品衛生法第54条(都道府県等が条例で施設基準を定める根拠規定)。具体的な基準は自治体ごとに条例で定められているため、面積の目安は各保健所の窓口で確認してください。

決め3|客席と厨房・カウンターの面積配分を決める

客席を何坪にするかについて、公的な配分比率の目安があるわけではありません。この記事では、根拠のない配分比率の数字は書きません。

実務では、客単価と回転数から必要な席数を先に決め、そこから客席面積を逆算する順番で考えます。厨房・カウンターは、決めたメニューを提供できる最小限の設備が入る面積を先に確保し、残りを客席に充てます。

席数を詰め込みすぎると、通路幅が消防法上の避難基準を満たせなくなることがあります(消防法施行令別表第一)。客席レイアウトは内装図面の段階で確認してください。

客席・厨房の面積を決める順番
決め方の順番内容確認すること
1. メニューと客単価を決めるドリンクのみか、フードも出すか厨房・カウンターに必要な設備が変わる
2. 必要な客席数を逆算する目標の売上・回転数から席数を試算する席数はあくまで自店の試算で、公的な目安はない
3. 厨房・カウンターの最小面積を確保する決めた設備が入る面積を先に押さえる客席を先に決めると厨房が入らないことがある
4. 通路幅を確認する客席の間隔・避難経路の幅消防法施行令別表第一の基準を満たしているか内装会社に確認する

決め4|エスプレッソマシン・グラインダー・製氷機の電気容量と給排水

カフェの厨房機器は、飲食店の中でも電気容量への要求が大きくなりやすい設備です。業務用のエスプレッソマシンは、機種によって単相200V・20A前後の専用回路を必要とします。

製氷機・冷蔵ショーケースなども合わせると、契約電力そのものを見直す必要が出てくることがあります。電気容量が足りない物件は、契約前に確認しないと着工後に追加の引き込み工事が発生します。

給排水も、エスプレッソマシンやシンクの数だけ経路が増えます。機器の型番を先に決めてから、内装会社に電気・給排水の設計を依頼してください。電気容量の全体の考え方は店舗の電気容量が足りない物件を避けるにはで扱っています。

コーヒー機器の電気・給排水の確認事項
機器確認すること決めるタイミング
エスプレッソマシン電圧・アンペア数(単相200V・20A前後の機種が多い)機種選定と同時に、専用回路が引けるか確認する
グラインダー消費電力、設置スペースエスプレッソマシンと同時に確認する
製氷機給水・排水の経路、設置場所の耐荷重厨房レイアウトを決める段階
冷蔵・冷凍ショーケース電気容量、結露への対策客席から見える位置に置く場合はデザインとあわせて検討する

機種ごとの正確な電気仕様は機種・メーカーによって異なるため、購入前にメーカー・代理店に確認してください。

決め5|カウンターと客席の動線を分ける

カウンターとレジ待ちの動線、客席への動線、スタッフが厨房と客席を行き来する動線が交差すると、ピーク時に渋滞します。

特にテイクアウトとイートインを両方受け付ける店舗では、レジに並ぶ列と客席のお客様の動線が重ならないようにレイアウトを分けます。

動線は図面上の矢印だけでなく、実際の人の流れを内装会社とシミュレーションしてから什器の配置を確定してください。

動線を分ける確認ポイント
動線交差すると起きること分け方
レジ待ちの列と客席への動線列が伸びると客席への通路をふさぐレジをエントランス側に寄せ、客席への動線と交差させない
テイクアウトの受け渡しとイートインの配膳スタッフの動きが重なり提供が遅れる受け渡し口を分けるか、時間帯で運用を分ける
厨房とバックヤードの往復客席の前を頻繁に横切るバックヤードの動線は客席から見えない位置に通す

決め6|アルコールを出すなら、追加の許可が要るかを確認する

お店で提供したアルコールをその場で飲んでもらう分には、飲食店営業許可の範囲内で追加の許可は不要です。

許可が変わるのは、瓶や缶に入った酒類を持ち帰り用に小売する場合です。この場合は酒類販売業免許が別途必要になります(酒税法第9条)。

「店内で飲む分」と「持ち帰り用に売る分」は許可の区分が違うことを、メニューと物販の計画を立てる段階で整理しておいてください。

アルコール提供の許可の分かれ目
提供方法必要な許可根拠
店内で飲んでもらう(グラス提供)飲食店営業許可のみ(追加なし)食品衛生法上、飲食店営業の範囲内
瓶・缶入りを持ち帰り用に小売する飲食店営業許可+酒類販売業免許酒税法第9条(酒類販売業免許)

酒類販売業免許の申請・審査は所轄の税務署が窓口です。小売を予定する場合は、什器計画(酒類の陳列棚など)を決める前に税務署へ相談してください。

決め7|内装材と照明は「長居」と「回転」のどちらを取るかで変わる

内装材や照明の色温度は、好みだけで決めると、狙った客層と逆の使われ方をすることがあります。

ゆっくり過ごしてもらう店にしたいなら、座り心地の良い椅子と暖かみのある照明で長居を促す設計になります。逆に回転を重視するなら、椅子は簡易なものにして照明もやや明るめにするのが一般的な考え方です。

照明の色温度・照度の基準は店舗の照明計画で決める7つのこと、内装材の選び方は店舗の内装材の選び方で扱っています。ここでは「長居」か「回転」かをまず決めることだけを押さえてください。

よくある質問

喫茶店営業許可は今も取得できますか?

取得できません。2021年6月の法改正で喫茶店営業許可は廃止され、飲食店営業許可に統合されました。今カフェを開業する場合は、業態にかかわらず飲食店営業許可を取得します。

間借りカフェ・間借り営業でも飲食店営業許可は必要ですか?

必要です。営業する場所や時間が限られていても、調理・提供を行う営業である以上、飲食店営業許可の対象になります。物件の貸主がすでに許可を持っていても、営業者ごとに許可が必要です。

テイクアウト専門のカフェも同じ許可でよいですか?

同じ飲食店営業許可で営業できます。客席の有無は許可の要否を左右しません。テイクアウト専門ならではの内装の決め方はテイクアウトを始めるときに決める7つのことで扱っています。

客席にソファ席を混ぜると、席数は減りますか?

ソファ席は椅子席より1席あたりの床面積を取るため、同じ客席面積なら席数は減る傾向があります。回転数を重視するか、居心地を重視するかを先に決めてから配分してください。

カフェとレストランの内装で厨房面積の目安は違いますか?

公的に定められた面積の目安はありません。提供するメニューの調理工程が多いほど厨房に必要な設備が増える、という考え方で決めます。フード比重が高いカフェは、飲食店の厨房設計と同じ考え方で計画してください。

まとめ|許可は1つ、決めることは内装の中身

カフェの内装|7つの決めごとのまとめ
決めること要点確認すること
決め1 必要な許可飲食店営業許可の1つ(喫茶店営業は廃止)保健所に事前相談する
決め2 厨房の範囲自治体の条例で施設基準が決まる図面段階で保健所に確認する
決め3 客席の配分公的な比率の目安はない。メニューと客単価から逆算する通路幅は消防法施行令別表第一を満たす
決め4 機器の電気容量エスプレッソマシン等は専用回路が要ることが多い契約前に電気容量を確認する
決め5 動線レジ・客席・厨房の動線を交差させないシミュレーションしてから什器を確定する
決め6 アルコール提供店内提供は追加許可不要、持ち帰り小売は酒類販売業免許が必要小売予定なら税務署に相談する
決め7 内装材・照明「長居」か「回転」かで選び方が変わる狙う客層に合わせて先に方針を決める

喫茶店営業許可という言葉に惑わされず、まず飲食店営業許可1つを前提に計画してください。決めることは許可の数ではなく、客席と厨房の配分、機器の電気容量、動線という内装そのものです。

図面ができた段階で保健所と内装会社の両方に確認を取り、着工後の手戻りを防いでください。

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