「うちは小さいから法律の対象外」。それは事実かもしれませんが、対象外であることと、やらなくていいことは別です。決まっていないのは、義務ではなく判断のほうです。

入口の段差を解消するスロープも、扉を引き戸に変えるのも、数十万円の工事です。着工前なら図面を直すだけ、開店後なら壊してやり直しになります。同じ工事でも、決める時期で金額が変わります。

小さな店で決めることは8つ。入口、扉、通路幅、トイレ、床、照明、案内表示、そして運用。このうち半分は、工事をしなくてもできます。

この記事でわかること

  • 自店がバリアフリー法の適合義務にかかるか、努力義務にとどまるかを、条文の数値(2,000平方メートル・500平方メートル・100平方メートル)で判定する手順
  • 愛知県の条例では店舗に面積の下限がないこと、着工30日前までの届出が必要なこと、どこに確認すればよいか
  • 2024年4月1日から義務になった合理的配慮の提供が、具体的に何を求めているのかと、設備の整備との違い
  • 入口・扉・通路・トイレ・床・照明・案内表示・運用の8項目それぞれで、義務基準の数値と、実際に使える数値がどう違うか
  • スロープ40万円・自動ドア80万円といった金額を、「客単価◯円なら延べ何人分、1日1人増えれば何か月で回収」に翻訳する計算
  • メジャーと車椅子の幅の紙テープだけで、自店を1時間で点検する12の手順
勾配1/12でスロープを作る場合、段差5センチメートルには水平距離60センチメートル、15センチメートルには180センチメートル、30センチメートルには360センチメートルが必要。
段差が2倍になると、必要な距離も2倍になる|二段の階段ぶん(30センチメートル)を1/12で解消するには3.6メートルの水平距離が要ります。歩道までの距離が足りるかを、契約前にメジャーで測ってください。

「義務ではない」と「やらなくていい」は違う

設計者が「義務ではありません」と言うとき、答えているのは法令の適用範囲だけです。どこまでやるかは、そのあとに自分で決めることです。

「義務ではない」と言われたときに、実際には何が決まっていないのか
言われること それが答えていない問い 自分で確かめる方法
「2,000平方メートル未満なので適合義務の対象外です」 建築確認で止まらないという意味であって、条例の届出が要るかどうか、努力義務がかかるかどうかには答えていない 自治体の建築指導担当窓口に「この用途・この面積で、条例の整備計画の届出は必要ですか」と平面図を持って聞く
「基準は満たしています」 下限を下回っていないという意味であって、実際に上れるか・通れるか・使えるかには答えていない 完成予定の寸法を床に養生テープで実寸で描き、その中を実際に歩いてみる。什器の位置も同時に描く
「バリアフリーにすると客席が減ります」 減る席数は答えているが、入口で帰っているお客様の人数には答えていない 1週間、入口の前で立ち止まって入らなかった方を数える。時間帯と、そのときの様子をメモに残す
「必要になったらスタッフが対応します」 その場の対応は答えているが、来店前に判断できる情報が公開されているかには答えていない 自店のウェブサイトと地図サービスの店舗情報を開き、入口の段差・扉の形式・トイレの有無が書かれているか確認する

法令上、どこからが義務か

関係する決まりは3つあります。バリアフリー法(施行令第5条に対象の用途と規模)、愛知県の人にやさしい街づくり条例、そして障害者差別解消法の合理的配慮です。

3つ目は規模を問いません。小さな店でも、求められれば応じることが前提になっています。工事とは別の話です。

バリアフリー法施行令第5条に挙げられた店舗系の用途と、自店の位置づけ
施行令第5条の号と用途 2,000平方メートル未満の店舗にとっての意味 自店で確認すること
第2号|病院又は診療所 クリニック・歯科医院はここに入る。面積が届かなくても努力義務の対象であり、来院される方の年齢層を考えると実質的な必要度は高い 自院の延床面積を確認し、2,000平方メートルに届かないことを確かめたうえで、条例側の届出が必要かを窓口に聞く
第6号|百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗 物販店はすべてここ。売場の通路幅と、レジ前の通路幅が論点になる 什器を置いた後の通路の実測値を、商品棚の間・レジ前・入口付近の3か所で測る
第14号|飲食店 飲食店はここ。客席が固定席か可動席かで、対応できる幅が大きく変わる 客席の椅子に人が座った状態で、通路の残り幅を測る。図面の寸法ではなく実際に座らせて測る
第15号|理髪店、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、銀行その他これらに類するサービス業を営む店舗 理容室、美容室、クリーニング店、各種サービス業がここ。施術椅子やカウンターの高さが論点になる カウンターの下端・上端の高さと、下部の奥行きをメジャーで測って控える
第11号|体育館、水泳場、ボーリング場又は遊技場 フィットネス・スポーツ施設系がここに入る場合がある。用途の判断は所管行政庁による 建築確認申請上の用途が何になっているかを、確認済証または設計者に確認する
愛知県「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」で、店舗の規模ごとに何がかかるか
自店の床面積の合計 条例上の扱い 着工前にやること
100平方メートル以下(約30坪以下) 条例第11条第1項第2号により別表第2(小規模特定施設の基準)が適用される。敷地内通路の有効幅員1.4メートル以上・段なし、出入口の有効幅員90センチメートル以上・段なしが中心 入口の有効幅と、道路から入口までの通路の幅・段の有無を実測し、平面図に書き込んで届出前に窓口へ相談する
100平方メートル超〜1,000平方メートル以下 別表第1が適用される。ただしエレベーターや車椅子使用者用便房の設置義務は規則上1,000平方メートル超が要件のため、この帯ではかからない 規則の別表第1のどの項目が自店の用途に該当するかを、窓口で1項目ずつ確認して一覧にする
1,000平方メートル超 規則第19条によりエレベーター、規則第21条により車椅子使用者用便房の設置が対象になる。乳幼児用いす・乳幼児用ベッドも同じ帯から この規模なら設計事務所に条例対応を明示的に発注し、届出図書の作成まで含めて見積もりを取る
2,000平方メートル以上 条例に加えて、バリアフリー法第14条第1項の適合義務がかかる。建築確認の対象(法第14条第4項により建築基準関係規定とみなされる) 建築確認申請と条例の届出は別の手続き。両方のスケジュールを工程表に書き込む
既存の店舗(改装しない場合) 条例第17条により、事業者は現に存する特定施設を整備基準に適合させるための措置を講ずるよう努めなければならない(努力義務) 改装の予定がなくても、後述する点検手順で自店の現状を測り、記録として残しておく
3つの法令が、それぞれ何を求めているか
法令と条文 小規模な店舗にとっての意味 自店でとる行動
バリアフリー法第14条第1項/施行令第9条 床面積の合計2,000平方メートル以上の建築に適合義務。小規模な店舗は対象外で、建築確認でも止まらない 自店の延床面積を確認し、対象外であることを確定させたうえで、次の条例の確認に進む
バリアフリー法第14条第5項 対象外の建築主等にも、基準に適合させるための措置を講ずる努力義務がある。罰則はないが「関係がない」ではない 施行令第19条の数値(出入口80センチメートル、通路120センチメートル、勾配1/12)を目安として設計者に共有する
バリアフリー法第14条第3項/各自治体の条例 自治体が2,000平方メートル未満で義務をかけられる。愛知県はこの条例を持たないが、別建ての独自条例で店舗に面積下限を設けていない 着工30日前までの届出が要るかを窓口に確認する。他県で出店する場合は、その自治体の条例を一から確認し直す
障害者差別解消法第8条第2項(令和6年4月1日施行の改正後) 申し出があったときの個別対応が法的義務。設備がないこと自体ではなく、対応しないことが問題になる 申し出を受け取る手段(呼び鈴・電話番号・メッセージ)を店頭に明示し、対応した内容を記録に残す仕組みを作る
障害者差別解消法第5条 施設の構造の改善・設備の整備・職員研修は「環境の整備」として努力義務。改装のタイミングで織り込むのが最も安い 次の改装計画に、この記事の対策5・6・7(床・照明・案内表示)を仕様として書き込む

対象になるお客様の規模を、統計で確かめる

「そんなお客様は来ない」という前提が正しいかは、数字で確かめられます。車椅子、歩行器、白杖。どの用具を使う方が何人いて、店のどこに効くかを表にしました。

日常生活用具等を利用している方(5,031人)が使っている用具の内訳と、店舗の設計に効く場所
用具(人数・割合) 店舗のどこで問題になるか 自店で確かめる方法
歩行器・歩行補助杖
2,054人(40.8%)
最も多い。杖は床が濡れていると滑る。段差では体重が一点にかかるため、段鼻の欠けや見切り材の出っ張りが直接転倒につながる 雨の日の営業中に入口付近の床を手のひらで触り、濡れているか確かめる。見切り材の段差を指でなぞって出っ張りを探す
車椅子・電動車椅子・座位保持装置
1,419人(28.2%)
幅と転回スペースが要る。入口の有効幅、通路幅、什器の間隔、トイレの内法寸法のすべてに効く 幅70センチメートルに切った段ボールを持って、入口から店内、トイレまで実際に歩いてみる
補聴器
1,026人(20.4%)
店内のBGMや調理音が大きいと、店員の声が聞き取りにくくなる。マスク越しの発話や、口元が見えない配置も影響する ピーク時間帯にレジの位置でスマートフォンの騒音計アプリを起動し、数値を記録する。BGMを消した状態とも比較する
義肢(義手・義足)・装具
522人(10.4%)
段差の上り下りと、長時間の立位が負担になる。待ち時間に座れる場所があるかが効く 店内に、注文待ちや会計待ちの間に座れる椅子が1脚でもあるか確認する。なければ折りたたみ椅子を1脚置く
遮光眼鏡・弱視用眼鏡
229人(4.6%)
まぶしさが問題になる。スポットライトの直射、鏡面仕上げの床や什器の反射、窓からの逆光が見えづらさを生む 店内を、自分の目線の高さで一周歩き、直接光源が目に入る位置がないか確認する
白杖
223人(4.4%)
床の素材の変化と、壁からの突出物が手がかりになる。逆に、宙に浮いた突出物は白杖で検知できず危険 床から高さ65センチメートル以上の位置で、壁から10センチメートルより外に出ている物がないか、壁沿いを歩いて確かめる

小さな店舗で決める8つのこと

段差の高さで必要なものが変わります。スロープの勾配1/12は上限であって目標ではありません。上りきったところに平らな部分がないと、扉が開けられません。

通路幅は、全部を広くする必要はありません。すれ違う場所を1か所作れば足ります。トイレも、面積を奪わずにできることから順に手を付けられます。

照明と案内表示は、費用が小さいわりに効きます。文字の大きさは、見る距離から逆算して決まります。

入口の段差解消|段差の高さごとに、何が必要になるか
段差の高さ 勾配1/12で必要な水平距離と、法令上の扱い 自店で確かめること
5センチメートル 1/12なら60センチメートル。施行令第13条第1号の手すりの要件(勾配1/12超または高さ16センチメートル超)には該当しない 入口前の歩道側に60センチメートル分の余地があるか、メジャーで測る。歩道は道路管理者の管轄なので、置ける範囲を先に確認する
15センチメートル 1/12なら180センチメートル。1/15なら225センチメートル。高さ16センチメートル以下なので、施行令第19条第2項第4号ロのただし書により1/8(120センチメートル)まで認められる場面もある 店頭に180センチメートルのスロープを置いたとき、通行の妨げにならないかを、実際に養生テープで床に描いて確かめる
30センチメートル(二段の階段程度) 1/12なら360センチメートル。1/15なら450センチメートル。高さ16センチメートル超なので施行令第13条第1号により手すりが必要になる 360センチメートルは店頭にまず取れない。折り返しにできるか、段差解消機が置けるか、店内側で床を上げられるかを設計者と検討する
75センチメートル超(半階分) 施行令第19条第2項第4号ハにより、高さ75センチメートル以内ごとに踏幅150センチメートル以上の踊場が必要 この高さになると、スロープではなく昇降設備の検討になる。物件を選ぶ段階なら、この条件の物件を候補から外す判断もある
上りきった先の平場 施行令第19条第2項第2号ロは、出入口に戸を設ける場合「その前後に高低差がないこと」と定めている。傾斜の途中に扉があってはならない 扉の前に、車椅子が止まって扉を開けるだけの平らな場所(目安として150センチメートル角)があるか、床に描いて確かめる
扉の形式ごとの特徴と、小規模な店舗での選び方
扉の形式 何が起きるか 自店で確かめる方法
手前に開く開き戸 最も条件が厳しい。扉を開くために身体を後ろに引く必要があり、車椅子・ベビーカー・両手がふさがっている方は自力で通れないことがある。扉の前に扉が開く分の空きも要る 両手に荷物を持った状態で、自分で扉を開けて入ってみる。何回持ち替えたかを数える
奥に開く開き戸 手前開きよりは通りやすいが、押す力が必要。ドアクローザーの閉まる力が強いと、通過の途中で背中や車輪に当たる 扉を開けて、手を離してから完全に閉まるまでの秒数をストップウォッチで測る。5秒未満なら調整を依頼する
引き戸(手動) 身体を前後に動かさずに開けられ、途中で止められる。床にレールがあると、その段差がつまずきの原因になるので上吊り式が望ましい 全開にしたときの有効幅を、最も狭い箇所で測る。床のレールの高さを指でなぞって確認する
自動ドア 最も通りやすいが、費用が大きく、電源と定期点検が要る。センサーの検知範囲が高い位置だと、車椅子に座った方や子どもを検知しないことがある 座った姿勢の高さ(床から120センチメートル程度)で近づいて、扉が開くかを確かめる
扉なし(オープンな入口) 通行という点では最も容易。ただし空調と防犯の問題があり、飲食店では虫や臭気の問題も出る エアカーテンや風除室で代替できるか、空調の負荷が何割増えるかを設計者に確認する
通路幅の使い分け|どこを何センチメートルにするか
場所と目標寸法 その数値が意味すること 自店で確かめる方法
主要な通路|90センチメートル以上 車椅子使用者が通過できる寸法。施行令第26条の読み替えで条例対象小規模特別特定建築物に適用される値でもある。建築設計標準では飲食店舗・サービス店舗の主要経路の推奨値 幅70センチメートルに切った段ボールを両手で持ち、入口からレジ・トイレまで通り抜けてみる。引っかかった位置を平面図に印を付ける
飲食店の客席まわり|座った状態で90センチメートル以上 建築設計標準は「椅子に座った状態でも90センチメートル以上」と明記している。図面の寸法ではなく、人が座って椅子が引かれた状態の残り幅が基準 ピーク時間帯に、実際にお客様が座っている状態で通路の残り幅を測る。営業後ではなく営業中に測ることが重要
物販の商品棚の間|120センチメートル以上(片側棚は90センチメートル以上、140センチメートル以上が望ましい) 建築設計標準の物販店舗の推奨値。120センチメートルは、人が横向きになれば車椅子使用者とすれ違える寸法 棚の前に商品カゴや販促什器がはみ出していないか、営業時間中に確認する。図面ではなく実際の状態を見る
正対するカウンター前|140センチメートル以上(やむを得ない場合120センチメートル以上) 建築設計標準の店舗内部の推奨値。従業員とお客様が向き合う位置で、車椅子が斜めに入れる余地が要る レジの前に立ち、後ろの壁や什器までの距離をメジャーで測る。ここが最も削られやすい
転回スペース|140センチメートル角以上を店内に1か所 建築設計標準は店舗内部の転回スペースを原則140センチメートル角以上としている。車椅子使用者が180度方向転換できる寸法 140センチメートル角の正方形を養生テープで床に描き、什器を置いた状態でもその範囲が空いているか確認する
壁からの突出物|高さ65センチメートル以上の部分は10センチメートル以下 建築設計標準の店舗内部および廊下等の推奨。宙に浮いた突出物は白杖で検知できないため、ぶつかる危険がある 壁沿いを歩き、床から65センチメートル以上の高さで壁から10センチメートルより外に出ている物(消火器・掲示物・棚板・照明器具)を探す
トイレ|面積を奪わずにできることから順に
対応 効果と制約 自店で確かめる・実行する方法
情報を公開する(費用0円) 扉の形式・有効幅・近隣の多機能トイレの場所を店舗情報に書く。来店前に判断できるようになる。面積も工事も不要 今日、便房の扉を全開にして最も狭い箇所を測り、その数値をウェブサイトと地図サービスの店舗情報に書き込む
中の物を減らす(費用0円) 掃除用具・ストック・ゴミ箱を移動するだけで、有効な空間が広がることがある。車椅子が入れなくても、杖の方が中で向きを変えられるようになる 便房の中に置いてある物を一度すべて出し、本当に必要なものだけを戻す。戻す位置は入口から遠い側にする
手すりを設置する(数万円) 立ち座りの補助になる。杖を使う方、膝に痛みがある方、高齢の方に効く。壁の下地がなければ補強が必要になる 便器の側面の壁を軽く叩いて、下地があるか確認する。ない場合は下地補強の費用を含めて見積もりを取る
扉を外開きまたは引き戸に変える(十数万円〜) 中で倒れた際に外から開けられるようになる。車椅子が入るときに扉が邪魔にならない。ただし外側に扉が開く空間が要る 便房の外側に、扉が開く分の空間があるか測る。なければ引き戸を検討し、上吊り式にして床のレールをなくせるか確認する
乳幼児用いす・ベッドを設置する(数万円〜) 壁付け折りたたみ式なら既存便房にも入ることがある。ベビーカーのお客様が多い立地では効果が大きい。設置後の耐荷重の点検が要る 便房の壁の空いている面の幅と高さを測り、製品カタログの必要寸法と照らし合わせる
車椅子使用者用便房を新設する(数十万円〜百万円超) 建築設計標準は内法200センチメートル×200センチメートル以上を基本とし、直径150センチメートル以上の円が内接できるスペースを求める。約1.2坪を客席・売場から差し引く 200センチメートル角を養生テープで床に描き、その面積を差し出しても営業が成立するかを、席数または陳列量で確認する
床で見る3つの論点と、確認の方法
論点 基準と考え方 自店で確かめる方法
滑り(乾いた状態) 施行令第11条第1号は「粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げること」。建築設計標準の付録は、日本建築学会の推奨値(案)としてC.S.R 0.4以上を紹介している 候補の床材のサンプルを取り寄せ、メーカーのカタログに滑り抵抗値の記載があるか確認する。ない場合は「滑り抵抗値を教えてください」と書面で問い合わせる
滑り(濡れた状態) 入口付近と、飲食店の厨房まわり・客席の通路は、水や油で濡れる前提で選ぶ必要がある。乾いた状態の数値だけでは判断できない サンプルに霧吹きで水をかけ、靴底で押しながら前後に動かしてみる。同時に、店内の実際の床でも雨の日に同じことをする
つまずき(見切り・レール・マット) 素材が変わる境目、床点検口の縁、扉の下枠、マットの端。いずれも図面に現れない数ミリメートルの段差 入口から店内の主要な動線を、床だけを見ながらゆっくり歩き、指で段差をなぞって高さを記録する
段差の見え方 施行令第12条第3号・第13条第3号は、明度・色相・彩度の差により段や傾斜を識別できるようにすることを求めている 店内の写真をスマートフォンで撮り、画像編集アプリで白黒(グレースケール)に変換する。白黒にして段が見えなければ、色だけに頼った段差表示になっている
段鼻の形状と階段の手すり 施行令第12条第4号は段鼻の突き出しを設けない構造を求める。建築基準法施行令第25条第1項は階段への手すりの設置を義務づけている(同条第4項により高さ1メートル以下の部分を除く) 階段の段鼻を横から見て、踏面より前に出ていないか確認する。手すりの有無と、握れる太さかどうかを実際に握って確かめる
照明|明るくする4か所と、まぶしさへの対応
場所・論点 何が起きるか 自店で確かめる方法
段差・階段の足元 暗いと段の存在が見えず、影が段のように見えることもある。踏面と段鼻の境目が判別できるかが基準 営業中の照明の状態で、階段を上から撮影し、画像をグレースケールに変換して段が見えるか確認する
入口付近(屋外との明るさの差) 晴天の屋外から入ると、目が慣れるまで数秒間ほとんど見えない。その数秒間に段差やマットの端がある配置は危険 晴れた日の昼に、屋外に3分立ってから店内に入り、足元が見えるようになるまでの秒数を数える
レジ・カウンター 建築設計標準は「机上の照度を十分に確保することが望ましい」「手元照明がより望ましい。なお、スポットライトは避ける」としている。店員の顔と口元が見えるかも関わる レジの前にお客様の位置で立ち、店員の顔に影が落ちていないか、逆光になっていないかを目で確認する
トイレ 便器と床、手すりと壁の境目が見えるかが安全に直結する。人感センサーの反応が遅いと、入った直後が暗くなる 便房に入り、扉を閉めた状態で照明が点灯するまでの秒数を数える。3秒以上かかるなら常時点灯を検討する
まぶしさ(グレア) 光源が直接目に入る配置、鏡面仕上げの床や什器の反射、窓からの逆光。遮光眼鏡・弱視用眼鏡を使う方に強く影響する 店内を、座った高さと立った高さの両方で一周し、光源が直接目に入る位置を平面図に印を付ける
案内表示|視距離から文字の大きさを決める
表示の種類と視距離 建築設計標準が示す文字高の参考値 自店で実行すること
手に取って読むメニュー・価格表(1〜2メートル) 和文0.9センチメートル以上/英文0.7センチメートル以上。おおむね26ポイント相当 現在のメニューの文字高をものさしで測る。0.9センチメートル未満なら、拡大版を1部作ってレジ横に置く
壁付けの案内サイン・注意書き(4〜5メートル) 和文2センチメートル以上/英文1.5センチメートル以上 トイレの場所、段差の注意、営業時間の表示について、現物の文字高を測って2センチメートルを下回っていないか確認する
案内サインの見出し(10メートル) 和文4センチメートル以上/英文3センチメートル以上 店内の一番奥から入口方向を見て、レジやトイレの位置が示されているかを確認する
店頭サイン・誘導サイン(20メートル以上) 和文8センチメートル以上/英文6センチメートル以上(30メートルなら12センチメートル/9センチメートル) 店の前の道路の反対側に立ち、何の店で何が買えるかが読み取れるかを確認する
配色(すべての表示に共通) 施行令が求めるのは「明度、色相又は彩度の差」。建築設計標準は誘導用ブロックについて輝度比2.0以上の確保が望ましいとしている メニューとサインの写真を撮り、画像編集アプリでグレースケールに変換して、文字が読めるかを確認する
運用でできること|費用と、今日からの実行手順
やること なぜ効くのか 今日から実行する方法
申し出を受け取る手段を店頭に出す 法第8条第2項は「意思の表明があった場合」を条件にしている。申し出る方法がなければ、そもそも配慮の機会が生まれない 店頭に呼び鈴を1つ設置し、「入口の段差にお手伝いが必要な方は、こちらを押してください」と書いた札を付ける
設備の状況を数値で公開する 来店前に判断できる。法第14条第6項も情報提供の努力義務を定めている。費用は0円 入口の段差の高さ、扉の形式と有効幅、トイレの扉の形式と有効幅を測り、ウェブサイトと地図サービスの店舗情報に書き込む
近隣の多機能トイレの場所を案内する 自店に作れなくても、近くにあれば来店できる。駅、公共施設、商業施設の位置を調べておく 半径500メートル以内の多機能トイレの場所を地図で調べ、その一覧を店舗情報とレジ横の掲示に載せる
対応した内容を記録する 合理的配慮は場面ごとに違うため、記録しないと毎回ゼロから考えることになる。改装の優先順位を決める材料にもなる ノートを1冊用意し、いつ・どんな申し出があり・何をして・何ができなかったかの4項目だけを書く欄を作る
断るときの返し方を決めておく 過重な負担にあたる場合でも、理由の説明と代替案の提案が求められる。決めておかないと、その場で「できません」と言ってしまう 「その方法は◯◯のため難しいのですが、代わりに△△ができます」という型を紙に書いて、スタッフ全員に共有する
事前の連絡を歓迎する旨を書く 来店前に連絡があれば、店側も準備できる。テーブルの配置を変える、通路を空けておくといった対応が可能になる 店舗情報に「お手伝いが必要な場合は、ご来店前にお電話いただければ準備いたします」と1行加え、電話番号を併記する

費用を「1日何人の来店増」に翻訳する

工事費を延べ人数に置き換えると、判断できる大きさになります。ただしすべてを回収計算にかけるべきではありません。合理的配慮にあたる部分は、採算で決める話ではないからです。

回収で判断してよい対策と、そうでない対策を分けました。

工事費を「延べ人数」と「1日1人増えた場合の月数」に置き換える(金額はすべて仮の例)
対策と仮の工事費 客単価1,200円なら(仮の計算) 読者が実行できること
呼び鈴の設置と店頭の掲示:仮に5,000円 延べ約5人分。1日1人増えれば約1週間で説明がつく 今日買って今日付ける。回収計算をするより先に終わる金額なので、迷う時間のほうがもったいない
手すりを1本足す:仮に5万円 延べ約42人分。1日1人増えれば約1.4か月 入口・トイレ・段差のうち、お客様が実際に壁に手をついている場所を1か所だけ選んで見積を取る
案内表示とメニューの作り直し:仮に8万円 延べ約67人分。1日1人増えれば約2か月 作り直す前に、現物を実際の視距離まで離して読めるか確かめる。読めていれば作り直さなくてよい
暗い場所への照明の増設:仮に12万円 延べ約100人分。1日1人増えれば約3.3か月 改装の予定があるなら単独工事にせず、そのときの電気工事にまとめて入れて金額を下げる
開き戸を引き戸に変える:仮に30万円 延べ約250人分。1日1人増えれば約8.3か月 戸を引き込む壁が確保できるかを先に確認する。確保できなければ金額が変わるので、見積の前提として伝える
入口の段差解消:仮に40万円 延べ約334人分。1日1人増えれば約11.1か月 上りきった先の平らな場所まで含めた見積かどうかを確認する。そこが抜けていると使えないものが出来上がる
自動ドアへの変更:仮に80万円 延べ約667人分。1日1人増えれば約22.2か月 引き戸への変更で足りないかを先に検討する。金額差の50万円が延べ417人分に相当することを見積書の余白に書き込む
回収計算にかける対策と、回収では判断しない対策の分け方
区分 なぜその扱いになるのか 読者が実行できること
条例の整備基準と届出【回収では判断しない】 愛知県の条例では店舗に面積の下限がなく、整備基準の遵守義務と着工30日前までの届出義務が発生する。回収できるかどうかで選べる項目ではない 平面図を持って所管の窓口に確認し、着工30日前の届出に間に合う日程を工事日程から逆算して先に押さえる
合理的配慮の提供【回収では判断しない】 申し出があったときの個別の対応であって、あらかじめ何かを設置する話ではない。分子に置く工事費が存在せず、割り算が成立しない 呼び鈴と、断るときの返し方の型を紙に書いてスタッフ全員に共有する。対策8の表の内容を今週中に一度実行する
安全に直結する部分【回収では判断しない】 滑る床、見えない段差、出っ張った見切り材は、転倒が起きてからでは金額で取り返せない。増えるお客様の人数とは別の軸で判断する 雨の日に自分で入口から席まで歩き、濡れた床で靴が滑らないか、つま先が引っかかる箇所がないかを1周で確かめる
情報の公開【回収計算が不要】 段差の高さ、扉の形式と有効幅、トイレの状況を書き出すだけなので、費用がほぼ発生しない。計算する手間のほうが大きい 入口・通路・トイレの3か所を実測し、その数値をウェブサイトと地図サービスの店舗情報に書き込む
設備の改善【回収計算にかける】 段差解消・引き戸・自動ドア・照明・案内表示は、やるかどうかも、いつやるかも自分で決められる。順位づけの物差しが要る 見積書の項目ごとに金額を分けてもらい、1行ずつ「延べ◯人分」「1日1人で◯か月」を余白に書き込んで並べ替える
面積を削る改修【回収計算+失う売上】 トイレの新設などは工事費だけでは判断できない。削った客席や売場が生んでいたはずの売上を、費用側に足す必要がある 削る面積が全体の何%かを出し、その割合を月商に掛けて「月あたりいくら失うか」を先に計算してから工事費と足す

自店を1時間で点検する手順

巻き尺とスマートフォンがあれば足ります。測った数字を写真と一緒に残しておけば、そのまま設計者に渡せる資料になります。

点検する場所ごとに、何を測り、どう記録し、どう渡すか
点検する場所 測る・見るところ 内装会社に渡す形
道路から入口まで 段差の高さと段数。斜路がある場合は上り始めから上りきりまでの水平距離。上りきった先に平らな場所があるか 歩道に立って撮った引きの写真1枚と、巻き尺を段に当てた写真1枚。平面図に段差の高さを赤で記入
出入口の扉 扉の形式と、開けきった状態で実際に通れる幅。扉の前後に、止まって扉を開けられる平らな場所があるか 扉を開けた状態で巻き尺を渡して撮った写真1枚。「有効幅◯センチメートル・内開き」と平面図に赤で記入
入口から席までの通路 営業中の状態でのいちばん狭い箇所とその寸法。椅子で通ったときに止まった場所、向きを変えられなかった場所 最狭部に巻き尺を渡した写真1枚と、座った高さからの写真1枚。通れなかった場所に青で×を記入
客席まわり テーブルの天板下に膝が入る高さがあるか。椅子を1脚どければ車椅子が入る席が客席の中にあるか 該当しそうな席を座った高さから撮った写真1枚。平面図でその席を丸で囲み「候補」と記入
床 雨で濡れたときに靴が滑らないか。見切り材の出っ張り。段差の縁が床と同じ色に見えていないか 濡れた状態の入口の床を撮った写真1枚と、見切り材を横から撮った写真1枚。滑ると感じた範囲を青で囲む
照明 段差・階段・レジ・トイレの4か所で、影が濃く出ていないか。まぶしく感じる光源が視線の高さにないか 4か所を目の高さから撮った写真4枚。加工せずそのまま渡す。暗いと感じた場所を平面図に青で記入
案内表示とメニュー 実際の視距離から読めるか。文字と背景の明暗の差が足りているか。矢印や表示が通路のどこから見えるか 実際の視距離から撮った写真1枚(拡大しない)。読めなかったものは現物そのものを打ち合わせに持参する
トイレ 扉の形式、開けた状態で通れる幅、中で扉を閉められるか、手すりの有無、便房内の実寸 扉を開けた状態の写真1枚と、便房内を入口から撮った写真1枚。有効幅と内寸を平面図に赤で記入
自店を1時間で点検する手順
  1. 道具をそろえる。巻き尺、スマートフォン、キャスター付きの椅子、紙のテープ、平面図のコピー、赤と青のペン。平面図がなければ、手書きの間取りで構いません
  2. 道路から入口までの段差を測る。高さと段数を測り、平面図の入口に赤で書き込みます。斜路がある場合は、上り始めから上りきりまでの水平距離も測ってください
  3. 扉を開けて、実際に通れる幅を測る。枠の内側の寸法ではなく、扉を開けきった状態で、戸そのものや取っ手が出っ張っている分を除いた幅を測ります。ここを間違えると、以降の判断がすべてずれます
  4. 扉の前後に平らな場所があるか確かめる。紙のテープを扉の外側と内側の床に置き、椅子に座ったまま扉の前で止まって、実際に扉を開けられるかをやってみます。段の上で止まれない場合は、幅の問題ではなく踊り場の問題です
  5. 入口の外に立ち、初めて訪れた方の目線で店頭を撮る。段差、扉、看板が1枚に入る位置から撮ります。この1枚が、あとで内装会社と共有する最も重要な写真になります
  6. キャスター付きの椅子で、入口から席まで自分で移動する。足で床を押して進み、途中で止まった場所、方向を変えられなかった場所を青でチェックします。ここが一番の発見があります
  7. 通路のいちばん狭いところを測る。什器の角、椅子を引いた状態、荷物が置かれている状態など、営業中に実際に起きている状態で測ります。空の状態の数値では意味がありません
  8. 席まわりを確かめる。テーブルの天板の下に膝が入る高さがあるか、椅子を1脚どければ車椅子が入れる場所が客席の中にあるかを見ます。1か所あるだけで案内の仕方が変わります
  9. 床を確かめる。雨の日に濡れた入口を靴で歩いて滑らないか、見切り材が出っ張っていないか、段差の縁が床と同じ色に見えていないかの3点です
  10. 照明を確かめる。段差・階段・レジ・トイレの4か所を、その場に立った目の高さから撮ります。写真で影が濃く出ている場所は、実際にも見えにくい場所です
  11. 案内表示とメニューを、実際の視距離から見る。手に取って読むものは手元で、店頭のサインは歩道に立って読みます。眼鏡を外した状態でも一度見ておくと判断しやすくなります
  12. トイレを確かめる。扉の形式(内開き・外開き・引き戸)、開けた状態で通れる幅、便房の中で扉を閉められるか、手すりがあるか。ここまでで所要およそ1時間です

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よくある質問

小さな店舗を出す方、あるいは改装する方から、バリアフリーまわりで実際によく出る質問を4つ挙げます。 いずれも「うちの規模ならどこまでやればいいのか」という同じ問いの、別の表れ方です。 法令の条文だけを読んでも答えが出ないのは、条文が下限しか決めていないからです。

ここでは、条文が何を決めていて何を決めていないかを分けたうえで、 決めていない部分をどう判断するかまで書きました。 なお、条例の適用や届出の要否といった個別の判断は、 最終的に所管行政庁および自治体の窓口に平面図を持って確認してください。

20坪の飲食店です。バリアフリー法の対象になりますか?

バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)の 建築物移動等円滑化基準への適合義務は、 同法第14条第1項と同法施行令第9条により、 床面積の合計が2,000平方メートル以上の建築(新築・増築・改築・用途変更)にかかります。

20坪はおよそ66平方メートルですから、この適合義務の対象にはなりません。 ただし同法第14条第5項により、対象外の建築主等にも基準に適合させる努力義務が定められています。 さらに愛知県で店舗を出す場合は、愛知県の人にやさしい街づくりの推進に関する条例が別に働きます。

同条例施行規則第3条では、飲食店や物品販売業を営む店舗に面積の下限が設けられておらず、 条例第11条による整備基準の遵守義務と、 条例第12条による着工30日前までの整備計画の届出義務が発生します。 床面積の合計が100平方メートル以下の場合は、 条例第11条第1項第2号により別表第2の基準が適用されます。

自店が該当するかどうかは、名古屋市内であれば名古屋市住宅都市局建築指導部建築審査課、 市外であれば愛知県建築局住宅計画課に、平面図を持って先に確認してください。

スロープの勾配は1/12にしておけば問題ないですか?

1/12は、バリアフリー法施行令第19条第2項第4号ロが定める上限値です。 条文は「勾配は、十二分の一を超えないこと」とし、 ただし書で「高さが十六センチメートル以下のものにあつては、八分の一を超えないこと」としています。 つまり1/12は満たすべき最低ラインであって、使いやすさの目標値ではありません。

同じ法体系でも、誘導基準を定める省令第11条では 敷地内の通路の傾斜路について1/15を超えないこととされており、 国土交通省の建築設計標準には、国際パラリンピック委員会のアクセシビリティガイドが 屋外傾斜路のベストプラクティスとして1/20以下を挙げていることが紹介されています。

1/12は、高さ15センチメートルの段差に対して水平距離1.8メートルのスロープになります。 この長さを店頭に確保できるか、上りきった先に扉を開くための平らな場所があるか、 雨天時に濡れて滑らないか。 数値を満たすことと、実際にご自身で上がれることは別の話です。

設置後にご自身で車椅子やベビーカーを押して上ってみて、 途中で止まれるかどうかを確かめてください。

多機能トイレを作るスペースがありません。どうすればいいですか?

国土交通省の建築設計標準(令和7年度改正版)では、 車椅子使用者用便房の標準内法寸法を200センチメートル以上×200センチメートル以上を基本とし、 直径150センチメートル以上の円が内接できるスペースを設けるとしています。 4平方メートル、つまり約1.2坪です。

10坪や15坪の店舗でこれを新設すると、客席や売場を確実に削ることになります。 作れないなら作れないで構いません。 重要なのは、作れないことを黙っていないことです。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第8条第2項は、 社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合に、 負担が過重でないときは必要かつ合理的な配慮をしなければならないと定めています。 設備の新設が過重な負担にあたるとしても、代わりにできることは残ります。

既存の便房に手すりを1本足す、扉を内開きから外開きか引き戸に変える、 便房の中の物を減らして車椅子が入る幅を確保する。 そして最も効果が大きいのは、店の情報として 「当店のトイレは幅◯センチメートルの内開き扉です。近くの◯◯に多機能トイレがあります」 と事前に公開しておくことです。

来店前に分かれば、お客様はご自身で判断できます。

合理的配慮の提供が義務化されましたが、具体的に何をすれば「やっている」ことになりますか?

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律は令和3年法律第56号によって改正され、 内閣府の公表によれば改正法は令和6年4月1日に施行されました。 これにより、それまで努力義務だった民間事業者の合理的配慮の提供が法的義務になっています。

ただし同法第8条第2項が求めているのは、あらかじめ何かを設置しておくことではありません。 条文は「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、 その実施に伴う負担が過重でないときは」と条件を置いたうえで、 性別・年齢・障害の状態に応じた個別の対応を求めています。

つまり、申し出があったときに、その場でできる範囲の対応をすることが中心です。 同法第5条は、そうした配慮を的確に行うために 自ら設置する施設の構造の改善や設備の整備、職員研修などの環境の整備に努めることを別に定めています。

店として準備すべきなのは、申し出を受け取る手段を用意すること、 断らずに一緒に方法を探すこと、 そして対応した内容を記録して次に活かすことの3つです。 過重な負担にあたる場合でも、その理由を説明し、代わりにできる方法を提案することが求められます。

まとめ|小さな店舗で決める8つのこと

バリアフリーは、対象かどうかで決まる話ではありません。設計の段階で決めておけば安く、あとからだと高い。それだけです。

まずは自店を測ってください。入口の段差が何センチメートルあるかを知っているだけで、設計者との話は具体的になります。

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