設備の容量が足りないと分かるのは、たいてい物件を契約したあとです。そこからできるのは、増設工事をするか、機器を減らすかの二択しかありません。

不動産会社は電気の容量やガスの供給圧を営業の材料に持っていません。管理会社に聞けば分かることでも、聞かれなければ調べません。借りる側は聞くべき項目を知らないので聞けない。ここがずれの原因です。

確認するのは7つ。電気・動力・増設の可否・ガス・空調・換気・給排水です。どれも専門知識ではなく、分電盤とメーターを写真に撮って、機器の数字を足せば自分で確かめられます。

この記事でわかること

  • 使う予定の機器の入力を足し合わせ、電力会社の契約要綱に定められた係数を使って、その店に必要な契約電力を自分で計算する手順
  • 分電盤・電力量計・共用部のどこを見れば、動力(三相200V)が来ているかと余力があるかを内覧の場で判断できるか
  • 容量を増やす4つの方法と、賃貸・区分所有それぞれで誰の承諾が必要になるか、どこに問い合わせれば見積もりが取れるか
  • 厨房のガス機器の合計消費量から、建築基準法施行令と告示の式を使って法令上の必要換気量を計算する方法
  • 給水器具の数と同時使用水量から、いまの給水管の口径で足りるかどうかを判定する方法
  • 契約前に必ず確認すべきことと、契約後でも間に合うことの線引き
業務用エアコン室外機が5.600kWで最も大きく、冷凍冷蔵庫の圧縮機が2.750kW、製氷機が1.500kW、食器洗浄機が0.938kW、厨房排気ファンが0.500kW。
容量の大半は上位2つで決まる|空調と冷凍冷蔵で全体の7割以上を占めます。銘板に「出力」と書かれた三相誘導電動機は、そのまま足さずに入力へ換算してから合計してください。

足りないと分かるのが遅いほど、選択肢が減る

いつ気づいたかで、残る手が変わります。内覧のうちなら別の物件を選べますが、契約後は工事で埋めるしかありません。

容量不足が発覚したタイミングと、その時点で残っている選択肢
発覚のタイミング そのとき起きていること その時点で残っている選択肢
内覧の当日 分電盤を開けて主幹の値を見た、電力量計が一つしかないことに気づいた 見送る/条件付きで申し込む/管理会社に増設の可否を照会してから判断する
申込みから契約まで 管理会社と電力会社への照会で、増設に共用部の工事が必要だと分かった 工事費の負担区分を特約に書き込む/フリーレントの延長を求める/申込みを撤回する
契約直後・設計中 機器リストを作った内装会社から、契約電力が足りないと指摘された 機器を減らす/単相仕様の機種に替える/増設費用を払う(賃料は発生済み)
見積もり提示のとき 引込工事とダクト工事が別項目で計上され、想定していた総額を超えた 他の項目を削って総額を合わせる/開店時期を後ろにずらして資金を用意する
着工後 天井を開けたら想定した経路にダクトが通らない、排水の勾配が取れないと判明した 設計変更(追加費用と工期延長が同時に発生)/機器の配置を変えて運営で吸収する
開店後 ピーク時にブレーカーが落ちる、油の臭いが上階から苦情になる 営業しながらの改修/営業を止めての改修/機器の同時稼働を運用で制限する
契約前に確認する7つの設備条件と、確認先の一覧
条件 確認する数字・状態 誰に何と聞くか/自分で見る場所
条件1|電気の容量 区画の契約電力・契約容量と、建物全体の受電設備の余力 分電盤の主幹ブレーカーと電力量計を自分で見る。管理会社に「建物全体の受電設備に空き容量はありますか」と聞く
条件2|動力(三相200V) 三相200Vの引込みがあるか、なければ共用部まで来ているか 電力量計が2つあるか、分電盤に3本の太い線が入っているかを見る。管理会社に「動力の引込みはありますか」と聞く
条件3|増設の可否と費用 増やせるか、誰の承諾が要るか、工事費負担金がいくらか 管理会社に承諾の要否、電力会社と電気工事店に見積もりを依頼する
条件4|ガス 都市ガスかLPガスか、供給圧、メーターの容量、ボンベ置き場 ガスメーターの銘板を撮影し、ガス事業者に「この機器構成で足りますか」と聞く
条件5|空調 既設機の年式と能力、室外機の置き場、冷媒管の経路と長さ 室内機と室外機の銘板を撮影する。管理会社に室外機置き場の指定と屋上使用の可否を聞く
条件6|換気 必要換気量、給気の取り入れ口、排気ダクトの経路と屋外の出口 天井裏の既設ダクトと外壁のガラリを見る。管理会社に「排気はどこから外に出せますか」と聞く
条件7|給排水 給水管とメーターの口径、排水の勾配と縦管の位置、阻集器の設置スペース 水道メーターの口径表示を見る。自治体の上下水道局に阻集器と排水設備の基準を確認する

条件1|電気は「区画の上限」と「建物の総量」の二段階

照明とレジだけなら問題になりません。業務用エアコン、冷凍冷蔵、製氷機、食器洗浄機、シャンプー台の給湯器が入ると、家庭用とはまったく違う容量になります。

電気にはその区画で契約できる上限と建物に引き込まれている総量があり、どちらが詰まっていても増やせません。内覧では分電盤の主幹ブレーカーと電力量計を写真に撮ってください。

内覧の場で電気の状態を判断するために見る場所
見る場所 そこから分かること 自分でやること
分電盤の主幹ブレーカー その区画にまとめて流せる電流の上限。表示されているアンペア値が現状の枠 扉を開けて一番左(または一番上)の大きいブレーカーの表示を撮影する
分岐ブレーカーの数と空き 回路をあと何本増やせるか。空きがなければ分電盤の交換が必要になる 並んでいる小さいブレーカーの数と、何も付いていない空きスペースの数を数える
電力量計(メーター)の数 電灯だけか、動力も引き込まれているか。2つ並んでいれば両方の可能性がある メーターボックスを開けて、その区画に対応するメーターの数と表示を撮影する
分電盤に入ってくる電線 単相か三相か。3本の太い線が主幹に入っていれば三相の可能性が高い 写真を撮り、電気工事店に「三相が来ていますか」と写真ごと送って確認する
共用部の電気室・キュービクル 建物全体の受電方式と規模。屋外にキュービクルがあれば高圧受電の建物 建物の裏手や屋上に鉄製の箱がないかを見て、管理会社に受電方式を確認する
既設機器の銘板 いま入っている機器がどれだけ電気を使っているか。居抜きなら実績値の手がかりになる エアコン室外機・冷蔵庫・給湯器の銘板シールを撮影し、消費電力の表示を控える
計算例①|動力側(低圧電力)の契約電力を求める(機器の数値は仮の例)
機器(入力の大きい順) 銘板の表示と入力換算 第一段階の係数を掛けた値
業務用エアコン室外機 消費電力5.60kWと表示 → そのまま5.600kW 最大から1台目:5.600 × 100% = 5.600kW
冷凍冷蔵庫の圧縮機 三相誘導電動機 出力2.2kW → 2.2 × 125.0% = 2.750kW 2台目:2.750 × 100% = 2.750kW
製氷機 消費電力1.50kWと表示 → そのまま1.500kW 3台目:1.500 × 95% = 1.425kW
食器洗浄機 三相誘導電動機 出力0.75kW → 0.75 × 125.0% = 0.938kW 4台目:0.938 × 95% = 0.891kW
厨房排気ファン 三相誘導電動機 出力0.4kW → 0.4 × 125.0% = 0.500kW 5台目:0.500 × 90% = 0.450kW
第一段階の合計 5.600 + 2.750 + 1.425 + 0.891 + 0.450 11.116kW
第二段階の係数 最初の6kW × 100% = 6.000/残り5.116kW × 90% = 4.604 合計10.604kW → 端数を四捨五入して契約電力11kW

条件2|動力(三相200V)が来ているか

業務用エアコンの室外機、冷凍機、大型ファン、業務用洗浄機は三相200ボルトで動きます。単相では動きません。動力が来ていない物件は、そのままでは業務用の設備が入らないということです。

動力(三相200V)の有無を確認する方法
確認する対象 動力がある場合に見られる状態 自分で確認する方法・聞き方
電力量計の数 その区画に対応するメーターが2つ並んでいる(電灯用と動力用) メーターボックスの区画番号を確認し、自分の区画のメーターが何個あるかを数える
分電盤の主幹 3本の電線が入る主幹ブレーカーが、電灯用とは別に設けられている 扉を開けて盤内を撮影し、電気工事店に写真を送って判定してもらう
既設のエアコン室外機 銘板に「三相200V」「3φ200V」と表示されている 室外機の側面の銘板シールを撮影し、電源の表示を控える
厨房の壁のコンセント 丸い3極または4極の動力用コンセント(家庭用と形が違う)が付いている 厨房予定エリアの壁と床の立ち上がりを一通り見て、形の違うコンセントを撮影する
共用部の幹線 区画には来ていないが、共用部のパイプスペースまで三相の幹線が来ている 管理会社に「共用部まで動力の幹線は来ていますか。区画まで分岐できますか」と聞く
前の借主の業種 飲食店・美容室・クリーニング店など、動力を使う業種が入っていた 不動産会社に前テナントの業種と、設備をどこまで残して退去したかを聞く
動力が来ていない物件で取れる3つの対応
対応 成立する条件と注意点 誰に何を依頼するか
動力を新たに引き込む 共用部まで三相の幹線が来ているか、道路側から引き込める経路があることが前提。共用部の工事を伴う場合は建物所有者の承諾が要る 電力会社に供給の可否と工事費負担金を照会し、電気工事店に区画内の配線工事の見積もりを依頼する
単相仕様の機種に置き換える 小型の業務用エアコンや小容量の冷凍機には単相仕様がある。ただし選べる機種が限られ、能力の上限も下がる 厨房機器商社と空調業者に「この面積・この用途で単相仕様の選択肢はありますか」と聞く
機器の構成そのものを見直す 製氷機を氷の仕入れに替える、冷凍設備を減らして仕入れ頻度を上げるなど。運営の手間と仕入れ原価に跳ね返る 自分でメニューと仕込みの流れを書き出し、内装会社と厨房業者に代替案を出してもらう

条件3|増やせるか、いくらかかるか

「増やせるか」と「いくらかかるか」は別の問いで、聞く相手も違います。増やせるかは電力会社と建物側、金額は工事の内容で決まります。

この記事では増設工事の金額を書きません。物件ごとに必要な工事が違い、根拠のある相場がないからです。見積もりを取る手順と、金額以外に発生する負担を表に整理しました。

電気の容量を増やす4つの方法
方法 どういうときに成立するか 誰に何と依頼するか
契約内容だけを変更する 既存の引込線と幹線に余裕があり、主幹ブレーカーの交換だけで済む場合。区画内の工事で完結することがある 小売電気事業者に契約変更を申し込み、電気工事店に主幹と分電盤の交換を依頼する
引込線を増設する 建物または敷地に余力があり、電柱から新たに引き込める経路がある場合。屋外工事と足場が伴うことがある 電力会社に供給可否と工事費負担金を照会し、建物所有者に外壁への取り付け承諾を得る
幹線を張り替える 引込みは足りているが、メーターから区画までの電線が細い場合。共用部の天井やパイプスペースを開ける工事になる 管理会社に共用部の工事可否と作業時間帯の制限を確認し、電気工事店に経路調査を依頼する
高圧受電に切り替える 建物全体として50キロワットの枠を超える場合。受変電設備(キュービクル)の設置場所が要る 建物所有者と協議する。テナント単独では原則として選べない。電気保安法人にも相談する
建物の形態別・増設工事に必要な承諾
建物の形態 承諾が必要になる相手と範囲 契約前に自分が確認すること
賃貸のテナントビル 建物所有者(貸主)。実務は管理会社が窓口になる。共用部を通す工事は原則すべて対象 「共用部の天井を開けて幹線を通す工事は可能ですか。申請から承諾までどのくらいかかりますか」と聞く
区分所有のビル 専有部分の所有者に加え、共用部分の変更は管理組合の決議が要ることがある 管理規約の写しをもらい、共用部分の変更にどの決議が必要かを確認する。総会の開催時期も聞く
一棟貸し・戸建て 建物所有者のみ。ただし外壁や屋根への工事は原状回復の範囲と結びつくため合意が要る 「増設した設備は退去時にどうしますか。撤去義務がありますか、置いていってよいですか」と聞く
商業施設内の区画 施設の運営会社。工事の時間帯・搬入経路・使用できる業者が指定されることがある 出店者向けの工事マニュアルをもらい、指定業者の有無と作業可能時間を確認する

条件4|ガスは「来ている」と「足りる」が別

都市ガスかLPガスかで、置き場も配送も料金の仕組みも変わります。供給圧が低ければ能力の大きい機器が仕様どおりに燃えず、メーターの容量が足りなければ全部同時に使ったときに供給が追いつきません。

厨房機器の合計消費量は、条件6の換気量をそのまま決める数字です。先に足しておいてください。

都市ガスとLPガスの違いと、店舗側で確認すること
項目 都市ガスとLPガスでどう違うか 内覧の場で自分が確認すること
供給の方法 都市ガスは道路下の導管から建物に引き込む。LPガスはボンベまたはバルク容器を敷地内に置いて配送を受ける 建物の外周を一周して、ガスメーターとボンベ置き場らしきスペースがあるかを確認する
機器の適合 ガスの種類ごとにノズルが違い、都市ガス用とLPガス用の機器は互換性がない。中古機器の転用時は特に注意 既設のガス機器の銘板に「13A」「LPG」などの表示があるかを撮影し、厨房機器業者に見せる
ボンベの置き場 LPガスは容器の設置場所、配送車の接近経路、火気からの距離が必要。都市ガスは不要 裏手や側面に容器を置ける平場があるか、配送のトラックが停められるかを見る
料金の決まり方 都市ガスは小売事業者の料金メニュー、LPガスは販売事業者との個別の取引条件で決まる LPガスの場合は複数の販売事業者に単価と保安料の見積もりを取り、条件を書面でもらう
建物側の制約 商業施設や区分所有ビルでは、指定のガス事業者しか使えない場合がある 管理会社に「ガス事業者の指定はありますか。切り替えは可能ですか」と聞く
供給圧 低圧供給が一般的だが、能力の大きい機器を並べる場合は圧力が足りないことがある 機器リストを持参してガス事業者に「この構成で供給圧は足りますか」と照会する
計算例②|厨房のガス機器の合計消費量(機器の数値は仮の例)
機器 ガス消費量の表示(仮) 確認方法
ガステーブル(2口) 14.0kW 厨房機器業者に仕様書を出してもらい、ガス消費量の欄を控える
ガスフライヤー 12.0kW 同上。都市ガス用とLPガス用で数値が異なるため、種類を指定して取り寄せる
ガススープレンジ 8.0kW 同上
ガス炊飯器 6.0kW 同上
合計 40.0kW この数値をガス事業者と内装会社の両方に伝える
計算例③|合計40.0kWのガス機器を1時間フル稼働させたときの使用量
ガスの種類 計算 この数字で何を確かめるか
共通(熱量に換算) 40.0kW × 3.6MJ/kWh = 144.0MJ/h 1時間あたりに必要な熱量。ここから種類ごとの体積・重量に割り戻す
都市ガス(13A)の場合 144.0MJ/h ÷ 45MJ/Nm³ = 約3.2Nm³/h ガスメーターの最大流量の表示と見比べる。足りるかどうかをガス事業者に確認する
LPガスの場合 144.0MJ/h ÷ 50.2MJ/kg = 約2.9kg/h 1日10時間の営業なら約29kg/日。ボンベの本数・置き場・配送頻度を販売事業者に確認する

条件5|天井に付いている空調は、たいてい流用できない

年式、能力、室内機と室外機の組み合わせ、冷媒の種類、配管の状態、そしていまの店の使い方に合っているか。どれか一つ外れると入れ替えになります。

入れ替えになった瞬間、室外機の置き場と冷媒管の経路という建物側の制約が出てきます。

既設の業務用エアコンを流用できなくなる条件
条件 なぜ流用が成り立たなくなるか 内覧の場で自分が確認すること
年式が古い 部品の供給が終わっていると、故障時に修理できず全交換になる。開業直後の故障は営業を止める 室内機と室外機の銘板の製造年を撮影し、空調業者に部品供給の状況を確認してもらう
能力が用途に合わない 前の店が物販で今回が飲食なら、厨房の熱と客数が増えて必要な能力が変わる 前テナントの業種と席数を不動産会社に聞き、自分の計画と比べる
室内機の位置が計画に合わない レイアウトを変えると吹き出しの向きが客席や厨房に直撃する。移設には配管の延長が要る 天井の室内機の位置を平面図に書き込み、自分のレイアウト案と重ねる
冷媒の種類が違う 古い冷媒の機器は、室内機だけ・室外機だけの交換ができず、対になった入れ替えになる 銘板の冷媒表示(R22、R410Aなど)を撮影して空調業者に見せる
室外機が撤去されている 室内機だけ残っていても動かない。前の借主が室外機だけ持ち出している例がある 室内機の台数と室外機の台数を数えて一致しているかを確かめる
電源が確保できない 能力の大きい機種は三相200Vが要る。条件2で動力がないと分かった時点で選択肢が狭まる 条件2で撮影した分電盤の写真とあわせて、空調業者に電源の可否を判断してもらう

条件6|換気は、後から動かせない

電気とガスは工事で増やせますが、排気を屋外に出す経路は建物の構造で決まります。7つのなかで、物件の可否をいちばん左右する項目です。

必要な換気量は感覚ではなく、建築基準法の告示に計算式があります。入れる数字は厨房機器の合計消費量と排気フードの形だけ。条件4で出した数字がそのまま使えます。

計算例④|ガス機器の合計40.0kWに対する法令上の必要換気量
排気の形 計算(K=0.93、Q=40.0kW) この数字をどう使うか
排気口・排気筒に換気扇(フードなし) V=40 × 0.93 × 40.0 = 1,488m³/h 最も大きい値になる。フードを付けない計画は換気設備が過大になると理解する
火源等を覆うフード(N=30) V=30 × 0.93 × 40.0 = 1,116m³/h 一般的なフードの想定値。ファンの能力とダクト径の検討はここから始まる
周囲まで覆い垂下りと傾斜を持つフード(N=20) V=20 × 0.93 × 40.0 = 744m³/h フードの形を告示の要件に合わせると必要換気量が下がる。設計者に形状を確認する

条件7|給排水は、太さと勾配まで見る

給水管の口径が1段階違うだけで、ピーク時に湯が出ません。食器洗浄機が止まることもあります。

排水は縦管から遠いほど床下に勾配の高さが要り、床が上がって天井が下がります。グリストラップは置く場所と掃除の動線まで確保してください。

計算例⑤|飲食店の同時使用水量から給水管の口径を判定する(器具構成は仮の例)
給水用具 口径と標準流量の合計 確認方法
厨房シンク 2台 20mm × 40L/min × 2 = 80L/min 厨房のレイアウト図に給水を要する器具をすべて書き出す
食器洗浄機 1台 20mm × 40L/min × 1 = 40L/min 機器の仕様書で必要な給水圧と流量を確認する
給湯器 1台 20mm × 40L/min × 1 = 40L/min 号数と必要水圧を仕様書で確認する
手洗い 1台 13mm × 17L/min × 1 = 17L/min 保健所の指導で必要になる手洗いの数を先に確認しておく
大便器(洗浄水槽)2台 13mm × 17L/min × 2 = 34L/min 洗浄弁式にすると必要流量が大きく変わるため方式を決めておく
洗面器 2台 13mm × 17L/min × 2 = 34L/min 同上
合計と計算 全使用水量245L/min ÷ 給水用具9個 = 27.2L/min
27.2 × 同時使用水量比2.9 = 約79L/min
この値を内装会社と指定給水装置工事事業者に伝えて口径を判定してもらう
給排水で契約前に確認すること
確認項目 足りないと何が起きるか 誰に何と聞くか/自分で見る場所
給水管とメーターの口径 ピーク時に湯が出ない、食器洗浄機が給水待ちで止まる、複数の蛇口を同時に使えない メーターボックスを開けて口径の表示を撮影し、指定給水装置工事事業者に見せる
排水縦管の位置 厨房を置ける場所が限られる。遠いほど床が上がり、天井高とダクトの余地が減る 床の点検口や既設の排水口の位置を平面図に書き込み、内装会社に勾配の検討を依頼する
阻集器の設置スペース 置く場所がないと厨房の外や通路に置くことになり、掃除の動線と衛生管理に響く 厨房予定エリアの床下・ピット・屋外の空きを見て、内装会社に設置位置の案を出してもらう
通気管の経路 封水が切れて臭気が室内に上がる。開店後に原因不明の臭いとして現れる 管理会社に通気管が屋外に開放されているかを確認し、設備図面の有無を聞く
給湯の能力 シンクとシャワーと食器洗浄を同時に使うと湯温が下がる。冬場に顕在化する 使う湯栓の数と同時使用の場面を書き出し、給湯器業者に必要な号数を判定してもらう
自治体の排水基準 基準を満たせないと除害施設が必要になり、設置費用と維持管理が発生する 名古屋市なら上下水道局の給排水設備課に、業種と排水の内容を伝えて確認する

契約前に確かめること、借りてからでよいこと

7つすべてを契約前に確定させることはできません。機器の型番が決まるのは設計が進んでからです。分けるべきなのは「物件を手放せるうちに確かめること」と「借りてからでも間に合うこと」です。

前者を落とすと選択肢がなくなり、後者に時間をかけすぎると物件を逃します。

時期別・確認すべきことと、間に合わなかったときに起きること
時期 この時期にやること 間に合わなかったときに起きること
内覧の当日 分電盤・電力量計・水道メーター・既設機器の銘板・外壁のガラリ・室外機置き場を撮影する。天井裏の点検口を開けられるか聞く 後から見に行く手間が増える。他の申込者に先を越されると二度と見られない
申込みの前 想定する機器の入力を足して契約電力を概算する。ガス機器の合計消費量から必要換気量を概算する そもそも成立しない物件に申込金を入れてしまう
申込みから契約まで 管理会社に建物全体の余力・共用部の工事可否・排気の出口を文書で照会する。電力会社とガス事業者に容量を照会する 増設できない物件を契約する。工事費の負担区分が曖昧なまま進む
契約の直前 照会の回答を踏まえ、必要な工事の負担区分と原状回復の範囲を特約に書き込めるか交渉する 増設した設備の撤去義務を退去時に負う。工事費を全額自己負担することになる
契約後・設計中 機器の型番を確定させ、設計者に正式な計算を依頼する。電力会社への契約変更の申し込み時期を決める 着工直前に容量変更が間に合わず、開店日がずれる
着工前 工事費負担金等相当額の支払い時期を確認し、資金を用意する。共用部の工事日程を管理会社と調整する 前払いの資金が足りず着工できない。共用部の作業日が取れず工期が延びる
契約前に取っておきたい3つの回答
照会先 聞く内容(そのまま使える文言) 回答をどう使うか
管理会社・建物所有者 「建物全体の受電設備に空き容量はありますか」「共用部を通して幹線を増設する工事は可能ですか」「厨房の排気は屋外のどこから出せますか」 不可の回答が一つでもあれば、その時点で物件を見送るか、代替案の検討に切り替える
電力会社・小売電気事業者 「この住所で契約電力を○kWまで増やせますか」「増設に工事費負担金は発生しますか」「申し込みから供給開始までどのくらいかかりますか」 工期の回答は開店日の逆算に使う。工事費負担金の有無は資金計画に反映する
ガス事業者・上下水道局 「合計○kWのガス機器を入れます。いまのメーターと供給圧で足りますか」「この業種で阻集器や除害施設の指導はありますか」 不足の回答が出た場合は、メーター交換や配管更新の可否と時期を追加で確認する

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よくある質問

設備の容量について、相談の場で繰り返し出てくる質問を4つ挙げます。 いずれも、答えを知っているかどうかで契約前の動き方が変わるものです。 金額に関する質問には、根拠のある数字がないため相場をお伝えしていません。 代わりに、金額を確かめるための手順をお示しします。 自分の物件に当てはめて読んでください。

内覧のときに、電気の容量はどこを見れば分かりますか。

見る場所は三つあります。 一つ目は分電盤の扉を開けたときに一番左にある主幹ブレーカーで、そこに書かれているアンペア値が、その区画にまとめて流せる電流の上限です。 二つ目は電力量計で、メーターが一つしかなければ電灯だけ、二つ並んでいれば電灯と動力の両方が引き込まれている可能性があります。

三つ目は分岐ブレーカーの数と空き回路の数で、埋まりきっていれば回路の増設に分電盤の交換が伴います。 ただし、これらはあくまで現状であって、その建物にまだ余力があるかどうかは別の話です。

区画の主幹が足りていても建物全体の受電設備に空きがなければ増やせないため、分電盤とメーターの写真を撮ったうえで、建物全体の余力を管理会社と電力会社に確認してください。

動力(三相200V)が来ていない物件は、あきらめたほうがよいですか。

あきらめる前に、三つの道があることを知っておいてください。 一つ目は動力を新たに引き込む方法で、建物の共用部に三相の幹線が来ているかどうかで難易度が大きく変わります。 二つ目は単相200Vで動く機種に置き換える方法で、小型の業務用エアコンや小容量の冷凍機には単相仕様のものがあります。

三つ目は機器の構成そのものを見直す方法で、たとえば製氷機を外部からの氷の仕入れに替えれば必要な容量が下がります。 どれを選ぶかは金額と運営のしやすさの比較になりますが、比較するには見積もりが要ります。

物件を押さえる前に、機器リストを持って内装会社と電気工事店に相談し、三つの道それぞれの概算と工期を出してもらってください。

引込みの増設や幹線の張り替えは、いくらぐらいかかりますか。

金額は物件ごとにまったく違うため、相場としてお伝えできる数字はありません。 電柱から建物までの距離、幹線を通す経路の有無、既存の配管が使えるか、共用部の工事が伴うか、作業を夜間や休業日に限定されるかで、必要な工事が入れ替わるからです。

中部電力ミライズの基本契約要綱では、電力会社側の設備工事が必要な場合、工事費負担金等相当額を原則として工事着手前に申し受けると定められており、内装工事とは別の支払いが先に発生します。

したがって、確かめる方法は一つで、機器リストと必要な容量を書いた紙を持って、電力会社と電気工事店の両方に見積もりを依頼することです。 物件の申し込みから契約までのあいだに、この見積もりを取れるかどうかを不動産会社に確認してください。

換気の計算は内装会社に任せてよいのでしょうか。自分でも確認すべきですか。

計算と設計は内装会社と設計者の仕事なので、経営者が自分で図面を書く必要はありません。 それでも自分で概算を出す意味があるのは、必要換気量が物件の可否そのものを決めてしまうことがあるからです。

火を使う室に必要な換気量は建築基準法施行令と告示の式で決まり、厨房機器の合計消費量と排気フードの形だけで大きさが出ます。 その量の空気を屋外に出す経路がその区画にないなら、どれだけ設計を工夫しても成立しません。

使う予定の厨房機器の消費量を足して式に入れ、出てきた数字を内装会社に見せて「この量をどこから出しますか」と聞いてください。 この一問で、契約前に判断できることが増えます。

まとめ|契約前に確認する7つの条件

設備の容量は、内覧では見えず、図面にも書かれず、契約書の対象にもなりにくい項目です。借りる側が自分で確かめるしかありません。

やることは専門知識ではなく手順です。分電盤とメーターを撮影し、機器の入力を足して式に入れ、その数字を持って管理会社・電力会社・ガス事業者・上下水道局・内装会社に問い合わせる。これだけです。

まとめ|契約前に確認する7つの設備条件
条件 この記事で扱った確認の中身 最初にやること
条件1|電気の容量 低圧・高圧の区分、分電盤と電力量計の見方、契約要綱の係数を使った契約電力の計算、合計50kWの壁 分電盤の主幹ブレーカーを撮影し、使う機器の入力を紙に書き出して足す
条件2|動力(三相200V) 契約上の「動力」の定義、三相200Vと単相200Vの違い、動力がない場合の3つの対応 電力量計の数を数え、「単相ですか、三相ですか」と管理会社に聞く
条件3|増設の可否と費用 増やす4つの方法、建物形態別の承諾、工事費負担金の前払い、1年未満の減少による割増精算、高圧受電に伴う主任技術者の選任義務 管理会社に共用部工事の可否を、電力会社に供給可否と工事費負担金を照会する
条件4|ガス 都市ガスとLPガスの違い、厨房機器の合計消費量の出し方、発熱量を使った1時間あたり使用量の換算 ガスメーターの銘板を撮影し、機器の合計kWを添えてガス事業者に照会する
条件5|空調 既設機を流用できなくなる6つの条件、室外機の置き場と冷媒管、目標にする室内環境の数値 室内機と室外機の銘板を撮影し、室外機置き場の候補を写真に残す
条件6|換気 店舗の厨房に換気設備が原則必要な理由、V=NKQによる必要換気量、V=20Af/Nによる居室の換気量、給気と排気の出口 ガス機器の合計kWを式に入れて概算し、「排気はどこから外に出せますか」と聞く
条件7|給排水 同時使用水量からの口径判定、メーター口径と1日使用水量、排水の勾配と縦管の位置、阻集器の設置スペースと容量算出書 水道メーターの口径を撮影し、給水器具を書き出して同時使用水量を計算する

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