仕上げ表を「好み」で決めることはできません。使える材料は、法規で先に絞られています。サンプルを見るのは、そのあとです。

「お任せします」と答えると、二つのことが起きます。ひとつは、消防の事前相談で仕上げの変更を求められ、決まっていた工程が後ろにずれること。材料の手配をやり直すと納期が伸びます。

もうひとつは、開店してから毎日効いてくることです。掃除に何分かかるか、何年で張り替えになるか、滑って転ぶ人が出ないか。見た目は初日だけ、それ以外は毎日です。

この記事でわかること

  • 自分のお店が建築基準法の内装制限に該当するかどうかを、用途・階・床面積・火気・窓の5点から自分で仮判定する手順
  • 不燃・準不燃・難燃の違いを加熱時間(20分・10分・5分)で理解し、仕上げ表のどの欄を見れば確認できるかの見分け方
  • カーテンやじゅうたんに消防法の防炎規制がかかる業種とかからない業種の分かれ目と、防炎ラベルの確認のしかた
  • ホルムアルデヒド発散建築材料の第一種・第二種・第三種の区分と面積制限、そしてF☆☆☆☆でも換気設備が要る理由
  • 清掃・滑り・傷という毎日の条件を、仕上げ表と見積書で確認できる語に翻訳したチェックの手順
  • 安い床材と高い床材を、初期費用ではなく張り替え周期を入れた年あたりコストで比べる計算例
材工単価5,000円/平方メートルの材料Aは1回33万円だが6年周期で15年に3回、合計99万円。12,000円/平方メートルの材料Bは1回79.2万円で15年に1回、合計79.2万円。安い材料のほうが15年では高くつく。
1回あたりは2.4倍の差、15年では逆転します|張り替え周期が材料A6年・材料B15年だからです。さらに材料Aには張り替えのたびの休業(15年で計4日)が加わります。単価ではなく、使う年数で割った金額で比べてください。

仕上げ表を「好み」で決められない理由

内装材を決める要因は3つあります。法規、運用、費用。好みが入る余地は、この3つを満たした残りの範囲です。順番を逆にすると、あとで作り直しになります。

内装材を決める3つの要因と、それぞれに対して読者ができること
要因 何が起きているか 自分で確認・実行できること
物件で決まるもの 建物の主要構造(耐火・準耐火・その他)、入居する階、地階かどうか、建物全体の延べ面積、建物全体の用途。これらは契約した時点で確定しており、内装工事では変えられない。内装制限がかかるかどうかの半分以上はここで決まる。 仲介会社または貸主に「建物の確認済証と検査済証の写しはありますか」「この建物は耐火建築物ですか、準耐火建築物ですか」と聞く。答えが出ない場合は建物の登記事項証明書と建築計画概要書を法務局・所管行政庁で取得する。
設計で調整できるもの 厨房を独立した室にするか売場と一体にするか、火を使う設備を置くか電気だけにするか、間仕切りをどこまで立ち上げるか、窓に面する部分をどれだけ確保するか。同じ物件でも設計次第で規制の当たり方が変わる。 設計担当者に「この間取りで内装制限はかかりますか。かかる場合、間取りを変えれば外れる可能性はありますか」と聞く。外れる可能性があるなら、外すために何を諦めるのかを聞いて比較する。
最後まで選べるもの 色、柄、質感、価格帯、メーカー。ここだけが本来の「好み」の領域だが、上の2つが決まっていないと、この領域も決められない。サンプルを見せられて迷うのは、たいてい上の2つが未確定だから。 サンプルを見る前に「この部屋で使える材料の条件は何ですか。不燃ですか、準不燃ですか、条件なしですか」と聞き、条件を満たす候補だけを並べてもらう。条件を先に聞けば、選択肢は数十から数個に減る。

基準1〜2|法規で選べる材料が先に絞られる

建築基準法の内装制限がかかると、壁と天井に不燃・準不燃・難燃のいずれかが求められます。用途、階と床面積、火気を使うか、地階か、窓がないか。この5点で仮判定できます。

消防には別のルールがあります。カーテンやじゅうたんの防炎は、燃えにくさとは別の規制です。業種によって当たり方が変わります。

不燃・準不燃・難燃の区分と、仕上げ表・見積書での確認のしかた
区分 法令上の内容 仕上げ表・見積書で確認する語/工事会社への質問文
不燃材料 建築基準法第2条第九号。施行令第108条の2により、加熱開始後20分間、燃焼しない・防火上有害な変形等を生じない・避難上有害な煙やガスを発生しない、の3要件を満たすもの。国土交通大臣が定めたもの、または大臣認定を受けたもの。 確認する語:「不燃」「不燃認定」「認定番号」。質問文:「この材料は不燃材料ですか。国土交通大臣の認定を受けたものであれば、認定番号を教えてください」。認定品なら認定書の写しを提出してもらう。
準不燃材料 施行令第1条第五号。加熱開始後10分間、第108条の2各号の要件を満たすもの。通路の壁・天井、地階の居室、内装の制限を受ける調理室等、無窓居室で求められる水準。 確認する語:「準不燃」「準不燃認定」。質問文:「この部屋に求められる水準は準不燃ですか、難燃ですか。根拠となる施行令の条項も併せて教えてください」。回答をメールで残す。
難燃材料 施行令第1条第六号。加熱開始後5分間、第108条の2各号の要件を満たすもの。制限を受ける特殊建築物の居室の壁・天井(3階以上の階に居室を有する建築物の当該居室の天井は準不燃)で求められる水準。 確認する語:「難燃」「難燃合板」「難燃処理」。質問文:「この難燃材料は、下地の構成を含めて認定の条件を満たしていますか。指定された下地以外に張っても認定は有効ですか」と聞く。
下地との組み合わせ 大臣認定は材料単体ではなく、下地を含めた構成に対して与えられていることがある。指定された下地・厚み・張り方から外れると、認定の条件を満たさなくなる可能性がある。 確認する語:「下地」「認定仕様」「施工要領」。質問文:「認定の条件になっている下地の種類と厚みを教えてください。現場の下地はそれと同じですか」。図面の断面詳細で確認する。
床面から1.2m以下の壁 施行令第128条の5第1項は、居室の壁のうち床面からの高さが1.2メートル以下の部分を除外している。腰壁までは制限のかからない材料を使える余地がある。 確認する語:「腰壁」「H=1,200」「見切り」。質問文:「腰から下に木を使いたいのですが、この部屋で1.2メートル以下の緩和は使えますか。使える場合、見切りの高さは何ミリになりますか」。
回り縁・窓台 施行令第128条の5第1項は、室内に面する部分から回り縁、窓台その他これらに類する部分を除いている。細部の造作は制限の対象外として扱われる余地がある。 確認する語:「回り縁」「窓台」「額縁」。質問文:「回り縁と窓台に木を使いたいのですが、この規模なら制限の対象外という理解で合っていますか」と確認する。
業種別に見た防炎規制の当たり方と、確認のしかた
業種・入居形態 消防法施行令別表第一での位置づけ 確認する語/所轄消防署・工事会社への質問文
飲食店・カフェ (三)項ロ「飲食店」。施行令第4条の3第1項の列挙に含まれるため、防炎対象物品には防炎性能が求められる。席のクッション地そのものではなく、カーテン・じゅうたん等が対象。 確認する語:「防炎」「防炎ラベル」「防炎物品」。質問文:「この店舗は防炎防火対象物ですか。カーテンとフロアマットは防炎物品で見積もられていますか」。
物販店・アパレル (四)項「百貨店、マーケツトその他の物品販売業を営む店舗又は展示場」。同じく列挙に含まれる。試着室のカーテン、売場の敷物、ディスプレイ用の合板が問題になりやすい。 確認する語:「試着室カーテン」「展示用の合板」。質問文:「試着室のカーテンとディスプレイ什器の合板は、防炎の表示が付いたものですか」と什器業者にも確認する。
バー・スナック・遊技場 (二)項イ「キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの」、(二)項ロ「遊技場又はダンスホール」。いずれも列挙に含まれる。 確認する語:「暗幕」「布製のブラインド」。質問文:「間仕切りに使う布と暗幕は防炎物品ですか。ラベルの写真を工事写真に残してもらえますか」。
クリニック・診療所 (六)項イ。患者の収容施設の有無などで細分されるが、(六)項全体が列挙に含まれる。診察室の間仕切りカーテンが直接該当する。 確認する語:「プライバシーカーテン」「防炎」。質問文:「診察室と処置室の間仕切りカーテンは防炎物品ですか。洗濯を繰り返しても性能は維持されますか」。
美容室・サロン・事務所 (十五)項「前各項に該当しない事業場」に分類されるのが一般的で、施行令第4条の3第1項の列挙には含まれない。ただし高さ31メートルを超える高層建築物内、地下街、複合用途の建物では扱いが変わり得る。 確認する語:「高層建築物」「複合用途」「(十五)項」。質問文:「この建物の防火対象物の項別は何ですか。当店の区画に防炎規制はかかりますか」を所轄消防署に確認する。
工事期間中 施行令第4条の3第1項は「工事中の建築物その他の工作物(総務省令で定めるものを除く。)」も対象としている。防炎対象物品には工事用シートも含まれる。 確認する語:「工事用シート」「養生シート」。質問文:「外部足場に張る養生シートは防炎のものを使いますか」と施工会社に確認する。
自分の店が内装制限に該当するかを判断する手順
  1. 手順1|自分のお店の用途が、法別表第一(い)欄のどの項に当たるかを確認する。 飲食店・料理店・待合・公衆浴場・物品販売業を営む店舗(床面積10平方メートル以内のものを除く)は、 施行令第115条の3第三号により(四)項に類するものとされています。 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場も(四)項です。 病院・患者の収容施設がある診療所・ホテル・旅館・共同住宅などは(二)項、 劇場・映画館・公会堂・集会場は(一)項です。 美容室・理容室・クリニック(患者の収容施設がないもの)・事務所・学習塾などは、 (い)欄のどの項にも直接は当たりません。
  2. 手順2|用途に当たる場合、階と床面積を当てはめる。 (四)項の用途では、建物が耐火建築物などで一時間準耐火基準に適合するものなら 「当該用途に供する三階以上の部分の床面積の合計が1,000平方メートル以上」、 一時間準耐火基準に適合しない耐火・準耐火の建築物なら「二階の部分の床面積の合計が500平方メートル以上」、 その他の建築物なら「当該用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートル以上」が制限の対象です。 (二)項の用途では、それぞれ三階以上300平方メートル以上、二階300平方メートル以上、 その他の建築物で200平方メートル以上となります。
  3. 手順3|火を使う設備・器具を置くかどうかを確認する。 施行令第128条の4第4項により、住宅以外の建築物で特定主要構造部を耐火構造としたもの以外に存する 調理室・浴室・乾燥室・ボイラー室・作業室などで、かまど、こんろ、ストーブ、炉、ボイラー、 内燃機関その他火を使用する設備または器具を設けた室は、「内装の制限を受ける調理室等」となります。 裏を返すと、特定主要構造部を耐火構造とした建築物のなかにある厨房は、この項目では対象外になり得ます。 鉄筋コンクリート造のビルに入るか、木造や軽量鉄骨の建物に入るかで結論が変わる部分です。
  4. 手順4|地階かどうかを確認する。 施行令第128条の4第1項第三号は、地階または地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室で、 法別表第一(い)欄(一)項、(二)項または(四)項に掲げる用途に供するものを有する特殊建築物を挙げています。 飲食店や物販店が地階に入る場合、床面積の大小にかかわらず制限の対象になります。 「地階」は施行令第1条第二号で、床が地盤面下にある階で、 床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの3分の1以上のものと定義されています。
  5. 手順5|無窓の居室にならないかを確認する。 施行令第128条の3の2は、天井の高さが6メートルを超えるものを除き、 床面積が50平方メートルを超える居室で、窓その他の開口部の開放できる部分の面積の合計が その居室の床面積の50分の1未満のものを「制限を受ける窓その他の開口部を有しない居室」としています。 開放できる部分は、天井または壁のうち国土交通大臣が定める部分にあるものに限られます。 テナントビルの奥まった区画や、はめ殺しのガラス面しかない区画で問題になりやすい条件です。

基準3|化学物質の規制と換気設備

ホルムアルデヒドを出す建材は、使える面積が決まっています。建築基準法施行令第20条の7が区分ごとの係数を定めていて、使う面積によっては換気設備が必要になります。仕上げ表の記号で確認できます。

ホルムアルデヒド発散建築材料の区分と、住宅等以外の居室に適用される面積の係数(建築基準法施行令第20条の7)
区分 発散量と面積の係数(住宅等の居室以外の居室) 仕上げ表・見積書で確認する語/工事会社への質問文
第一種 夏季において表面積1平方メートルにつき毎時0.12ミリグラムを超える量を発散させるものとして大臣が定める建築材料。居室の内装の仕上げには使用できない。 確認する語:「第一種」「使用不可」。質問文:「第一種ホルムアルデヒド発散建築材料は使っていませんね。使用建築材料表を見せてもらえますか」。
第二種 毎時0.02ミリグラム超〜0.12ミリグラム以下。換気回数0.7以上の機械換気設備等がある居室では床面積の0.88倍、0.5以上0.7未満では1.4倍、その他の居室では3.0倍を乗じた面積が制限の基準となる。 確認する語:「F☆☆☆」「第二種」「換気回数」。質問文:「第二種を使う場合、この居室の換気回数はいくつで計算していますか。面積制限の計算書はありますか」。
第三種 毎時0.005ミリグラム超〜0.02ミリグラム以下。換気回数0.7以上の居室では0.15倍、0.5以上0.7未満では0.25倍、その他の居室では0.50倍を乗じた面積が基準となる。 確認する語:「F☆☆☆☆以外」「第三種」。質問文:「第二種と第三種を併用する場合、合計面積は居室の床面積を超えていませんか」と計算根拠を求める。
規制対象外 告示対象建築材料のうちF☆☆☆☆等級のものは「規制対象外建築材料」とされ、居室の内装の仕上げや天井裏等に本規制を受けることなく用いることができる(国土交通省の説明による)。 確認する語:「F☆☆☆☆」「規制対象外建築材料」。質問文:「全面F☆☆☆☆で仕上げる想定ですか。造り付け家具と什器も含めてですか」。
換気設備 内装の仕上げ等にホルムアルデヒド発散建築材料を使用しない場合であっても、家具等からも発散されるため、居室を有するすべての建築物に機械換気設備の設置が原則として義務付けられている(施行令第20条の8)。 確認する語:「24時間換気」「機械換気設備」「有効換気量」。質問文:「常時換気の設備は入っていますか。図面のどこに描かれていますか。電気代は月いくらの想定ですか」。
天井裏等 天井裏等は、下地材をホルムアルデヒドの発散の少ない建築材料とするか、機械換気設備を天井裏等も換気できる構造とする必要がある(平成15年国土交通省告示第274号第1第三号)。 確認する語:「天井裏」「下地材」「告示274号」。質問文:「天井裏の下地材はどちらの方法で対応していますか。図面と仕様書で示してください」。

基準4〜5|毎日の清掃と、滑り

目地の数、巾木の形、床材の継ぎ目。ここで毎日の清掃時間が決まります。1日10分の差は、年60時間の差です。

滑りは事故に直結します。国土交通省の建築設計標準に滑り抵抗の推奨値があり、水や油がかかる場所は別の値が示されています。厨房の出入口と入口まわりは、ここを確認してください。

清掃の手間を決める部位と、仕上げ表・見積書での確認のしかた
部位 毎日の清掃で何が起きるか 仕上げ表・見積書で確認する語/工事会社への質問文
床の目地 タイルの目地、塩ビタイルの継ぎ目、長尺シートの溶接部分。目地幅が広いほど、また目地材が吸水性を持つほど汚れが入り込む。厨房やシャンプー台まわりでは油分と洗剤が混じって黒く固着し、通常の洗剤では落ちなくなる。 確認する語:「目地幅」「エポキシ目地」「熱溶接」「シームレス」。質問文:「この床の目地は何ミリですか。目地材は水と洗剤に強いものですか。継ぎ目を溶接して一体にする仕様に変えるといくら上がりますか」。
床と壁の入隅 直角に納めると、角に水と汚れが溜まり、そこから下地に染み込む。厨房や洗い場では下地の腐食とにおいの原因になる。曲げて立ち上げる納まりにすると、モップが素直に届く。 確認する語:「立ち上げ」「巾木一体」「R入隅」「シート巻き上げ」。質問文:「床材を壁に何センチ立ち上げますか。入隅は丸めますか、直角ですか」と断面図で確認する。
幅木 後付けの木製幅木は、床との間に1〜2ミリの隙間ができる。そこに水が入ると膨れ、においが出る。ソフト幅木を接着しただけの場合は、モップが当たり続けると端から剥がれてくる。 確認する語:「ソフト幅木」「木製幅木」「シーリング」。質問文:「幅木と床の取り合いにシーリングを打ちますか。水を使う場所は幅木ではなく床材の立ち上げにできますか」。
壁の下部 掃除機やモップ、カートが当たる高さ。塗装仕上げは擦れて下地が見え、クロスは端が浮く。飲食店の厨房と美容室の作業場では、法令上も不浸透性材料での腰張りが求められる。 確認する語:「腰張り」「キッチンパネル」「不浸透性材料」「H=900」。質問文:「腰張りは床から何ミリの高さまでですか。パネルの継ぎ目はどう処理しますか」。
天井 厨房の天井は油分を含んだ蒸気が付着する。表面に凹凸のある吸音板は油を吸い、拭き取れなくなる。売場の天井でも、空調の吹き出し口まわりはほこりで黒く筋がつく。 確認する語:「不燃化粧板」「拭き取り」「防カビ」。質問文:「厨房の天井は水拭きできる材料ですか。吹き出し口まわりの汚れを想定した仕上げになっていますか」。
洗剤への耐性 床材ごとに使える洗剤が違う。アルカリ性の強い洗剤で樹脂ワックスが白化する、酸性洗剤で目地が痩せる、といったことが起きる。開店後に清掃業者が別の洗剤を使い始めて劣化が早まる例もある。 確認する語:「メンテナンス方法」「推奨洗剤」「ワックス」。質問文:「この床材のメンテナンス方法の資料をください。使ってはいけない洗剤はありますか。ワックスは必要ですか、頻度はどのくらいですか」。
国土交通省の建築設計標準に示された滑り抵抗の推奨値(案)と、店舗での確認のしかた
場所 推奨値(案) 仕上げ表・見積書で確認する語/工事会社への質問文
敷地内の通路、建築物の出入口、屋内の通路、階段の踏面・踊場、便所・洗面所の床 履物を履いて動作する床・路面についてC.S.R=0.4以上。 確認する語:「C.S.R」「滑り抵抗係数」「JIS A 1454」。質問文:「この床材の滑り抵抗値はいくつですか。メーカーの試験データを見せてください」。
傾斜路(傾斜角θ) C.S.R-sinθ=0.4以上。傾斜がある分だけ、平場より高い数値が必要になる。 確認する語:「スロープ」「勾配」「防滑」。質問文:「スロープの勾配は何分の1ですか。その勾配で推奨値を満たす床材ですか」。
客室の床 履物着用時でC.S.R=0.3以上。通路より低い水準に設定されている。 確認する語:「客室」「居室」。質問文:「通路と席まわりで床材を変える場合、境目で滑りの差が大きくなりませんか」。
浴室(大浴場)、プールサイド、シャワー室・更衣室の床 素足で大量の水や石鹸水などがかかる床についてC.S.R・B=0.7以上。 確認する語:「C.S.R・B」「JIS A 1509-12」「素足」。質問文:「素足で水がかかる場所の試験値はいくつですか。履物着用の値とは別ですよね」。
客室の浴室・シャワー室の床 素足で大量の水や石鹸水などがかかる床についてC.S.R・B=0.6以上。 確認する語:「シャワーブース」「防水」。質問文:「シャワーまわりの床材は素足前提の試験値で選んでいますか」。
同一の床での材料の切り替え 建築設計標準は、突然滑り抵抗が変化すると滑ったりつまずいたりする危険が大きいため、同一の床において滑り抵抗に大きな差がある材料の複合使用は避けることが望ましいとしている。 確認する語:「見切り」「異種床材」。質問文:「床材が変わる位置で、滑り抵抗の差はどのくらいありますか」と見切り位置ごとに確認する。

基準6〜7|傷と荷重、そして音

床材は初期費用ではなく、年あたりの費用で比べます。安い材料が5年で張り替えになり、高い材料が15年もつなら、15年で見た金額は逆転します。

音は、開店してから直すのがいちばん難しい項目です。会話が聞き取れない、上階から苦情が来る。どちらも仕上げの段階で手を打つしかありません。

傷と荷重の原因別に見た、床材選定と確認のしかた
原因 床に何が起きるか 仕上げ表・見積書で確認する語/工事会社への質問文
キャスター什器 同じ経路に線状の摩耗が出る。表層が薄い床材では2〜3年で下の層が見えることがある。回転しない硬いキャスターほど傷が深い。 確認する語:「表層厚」「耐キャスター性」「摩耗等級」。質問文:「この床材の表層は何ミリですか。キャスター什器を毎日動かす前提でも問題ありませんか」。
什器・椅子の脚 細い脚の接地点に荷重が集中し、へこみが残る。とくに床暖房下地や発泡層のある材料では顕著。フェルトを貼っても点荷重は変わらない。 確認する語:「残留へこみ」「圧縮強さ」。質問文:「什器1脚あたりの荷重は何キロを想定していますか。その荷重でへこみは戻りますか」。
重量物の設置 冷蔵ショーケース、業務用洗濯機、シャンプー台などの据え付け・移動で、一度きりの深い傷やめくれが生じる。下地の不陸があると割れることもある。 確認する語:「養生」「敷板」「下地不陸調整」。質問文:「重量物の搬入経路はどこですか。その経路の床は先に施工しますか、後で施工しますか」。
部分補修のしやすさ タイル状の材料は傷んだ箇所だけ交換できるが、ロット違いで色が合わないことがある。シート状の材料は面での交換になり、一部だけの補修は跡が残る。 確認する語:「予備材」「ロット」「部分張り替え」。質問文:「予備の材料を何平方メートル分残してもらえますか。何年後まで同じ品番は入手できますか」。
下地の状態 上に張る材料が同じでも、下地の平滑さと乾燥状態で寿命が変わる。既存床の上に重ね張りすると、下の目地が浮き上がって見えてくることがある。 確認する語:「不陸調整」「セルフレベリング」「重ね張り」「撤去」。質問文:「既存の床は撤去しますか、重ね張りですか。重ね張りの場合、下の目地は出てきませんか」。
張り替え時の休業 床の張り替えには什器の移動・撤去、既存材の撤去、下地調整、施工、養生が必要で、範囲によっては数日かかる。営業を止める日数がそのまま損失になる。 確認する語:「工期」「夜間施工」「分割施工」。質問文:「将来この床を張り替えるとき、営業しながら区画を分けて施工できますか。夜間施工は可能ですか」。
【試算例】20坪(66平方メートル)の売場で、材料Aと材料Bを15年で比較する
項目 材料A(安い床材) 材料B(高い床材)
材工単価(仮定) 5,000円/平方メートル 12,000円/平方メートル
1回あたりの工事費 5,000円 × 66平方メートル = 330,000円 12,000円 × 66平方メートル = 792,000円
張り替え周期(仮定) 6年 15年
15年間の施工回数 開店時+6年目+12年目=3回 開店時のみ=1回
15年間の工事費合計 330,000円 × 3回 = 990,000円 792,000円 × 1回 = 792,000円
張り替え時の休業(仮定) 1回につき2日休業 × 2回 = 4日 0日
休業による粗利の損失 1日売上15万円 × 粗利率65% = 1日97,500円。4日で 390,000円 0円
15年間の合計 990,000円 + 390,000円 = 1,380,000円 792,000円
年あたりコスト 1,380,000円 ÷ 15年 = 年92,000円 792,000円 ÷ 15年 = 年52,800円
音に関する内装材の選択肢と、確認のしかた
部位・目的 何が起きているか 仕上げ表・見積書で確認する語/工事会社への質問文
天井(吸音) 天井は面積が最も大きく、吸音の効果が出やすい部位。クロス張りや塗装仕上げの平滑な天井は音を反射する。吸音板でも、直張りか裏に空気層を取るかで性能が変わる。 確認する語:「吸音率」「JIS A 1409」「厚み」「空気層」「不燃認定」。質問文:「この天井材の吸音率のデータをください。厚みと裏の空気層はどれだけ取りますか」。
床(吸音) じゅうたんやタイルカーペットは高い周波数の音をよく吸うため、話し声の聞き取りやすさに効く。ただし清掃の手間が増え、防炎規制の対象となる建物では防炎性能が必要になる。 確認する語:「タイルカーペット」「防炎」「じゅうたん等」。質問文:「カーペットにした場合、防炎の要件と清掃の頻度はどう変わりますか」。
壁(吸音) 壁は什器で塞がれる部分が多く、天井ほど自由に使えない。有効なのは席の背面と、平行に向き合う2面のうち一方。両側が硬い平行面だと音が往復して残る。 確認する語:「有孔ボード」「背後の吸音材」「グラスウール充填」。質問文:「向かい合う壁の両方が硬い仕上げになっていませんか。どちらか一方を吸音にできますか」。
間仕切り(遮音) 隣の区画やトイレ、バックヤードとの間の音。軽量鉄骨下地に石膏ボードを片面1枚ずつ張っただけの壁は、話し声がそのまま抜ける。ボードの枚数と中の充填材で変わる。 確認する語:「二重張り」「グラスウール充填」「ボード厚」。質問文:「この間仕切りは片面何枚張りですか。中に吸音材を入れますか」と断面図で確認する。
天井裏の回り込み 間仕切りを天井までしか立ち上げていないと、音が天井裏を通って隣へ回り込む。壁の仕様をいくら上げても、この経路が空いていれば効果が出ない。 確認する語:「スラブまで立ち上げ」「天井ふところ」「小壁」。質問文:「この間仕切りは上階のスラブまで立ち上げますか。天井裏で音が回り込みませんか」。
設備からの音 空調の吹き出し、換気扇、冷蔵ショーケースの圧縮機、製氷機。内装材では解決できない音源。席の配置と機器の位置で決まる部分が大きい。 確認する語:「運転音」「dB」「防振」。質問文:「この機器の運転音は何デシベルですか。席から何メートル離れていますか」と機器の仕様書で確認する。

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よくある質問

内装材の相談で繰り返し聞かれる4つの質問をまとめました。 いずれも、材料そのものより「どこまでが決まっていて、どこからが自分の判断か」に関わる内容です。 誰が最終的に判断するのか、床は本当に自由なのか、F☆☆☆☆にすれば換気設備は要らないのか、 そして予算を削るときにどこから落とすのか。

この4つに答えを持っておくと、打ち合わせの席で自分が何を決めるべきかが分かります。 どれも、知らないまま進むと相手の説明をそのまま受け入れることになりがちな論点です。

内装制限がかかるかどうかは、最終的に誰が判断するのですか?

建築基準法の内装制限は、用途・階数・床面積・火を使う設備の有無・窓の大きさといった 複数の条件の組み合わせで決まります。

この記事の手順は自分のお店がどのあたりに位置するかを把握するためのもので、 最終的な判断は建築確認を審査する建築主事または指定確認検査機関が行い、 防炎規制については所轄の消防署が判断します。

内装工事だけで建築確認が不要な規模であっても内装制限そのものは適用されるため、 確認申請の有無と規制の有無は別の話として扱ってください。 設計を依頼した会社に「この物件は内装制限の対象ですか、根拠となる条文はどれですか」と聞き、 回答を書面で残しておくと、後から仕様変更を求められたときに経緯をたどれます。

判断が分かれそうな場合は、着工前に所轄の建築主事と消防署へ図面を持って相談してください。

床材は建築基準法の内装制限の対象外と聞きました。何を選んでもよいのですか?

建築基準法第35条の2は「その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げ」と定めており、 床は条文の対象に入っていません。

ただしこれは床が自由という意味ではなく、じゅうたんや毛せんなどの床敷物は消防法の防炎規制の対象になり、 対象となる建物では防炎性能のあるものを使う必要があります。 さらに飲食店の調理場のように清掃に水を使う場所では、 食品衛生法施行規則の施設基準で床面を不浸透性の材質とすることが求められます。

滑りについても、国土交通省の建築設計標準が滑り抵抗係数の推奨値を示しています。 つまり床は建築基準法以外の複数のルールで縛られており、 「内装制限の対象外」を「制約がない」と読み替えないでください。

F☆☆☆☆の材料だけを使えば、換気設備は不要になりますか?

不要にはなりません。 国土交通省の説明では、内装の仕上げ等にホルムアルデヒド発散建築材料を使用しない場合であっても、 家具等からもホルムアルデヒドが発散されるため、 居室を有するすべての建築物に機械換気設備の設置が原則として義務付けられています。

F☆☆☆☆に相当する等級の告示対象建築材料は「規制対象外建築材料」であり、 面積の制限を受けずに使えるという意味であって、換気設備の義務を外す資格ではありません。

また天井裏などの見えない部分についても、 下地材を発散の少ない建築材料とするか、機械換気設備を天井裏等も換気できる構造とするかのいずれかが必要とされています。 持ち込む什器や造り付けの家具も規制の対象になり得るので、 仕上げ表だけでなく什器の仕様書も合わせて確認してください。

予算を削るとき、内装材はどこから落とすべきですか?

最初に外してよいのは、法規で決まっている部分ではなく、 後から張り替えが簡単で、傷んでも営業に影響しない部分です。 具体的にはバックヤードや事務室の壁の仕上げ、視線が届かない天井の一部、什器の面材といった、 営業を止めずに手を入れられる場所です。

逆に落としてはいけないのは、動線が集中する床、水がかかる場所の床と壁、 そして天井裏に隠れて後から触れなくなる下地と設備です。 床を安い材料に落とすと初期費用は下がりますが張り替えの周期が短くなり、 そのたびに営業を止めることになるため、年あたりで見ると差が消えるか逆転することがあります。

削る順番の考え方は「低予算で店舗内装を進めるときの注意点」で扱っているので、 金額の配分を決める段階で読んでください。

まとめ|内装材を決める7つの基準

材料選びは、センスの問題ではありません。法規で絞り、運用で絞り、費用で決める。残った選択肢のなかから好みで選びます。

仕上げ表が出てきたら、まず「この材料はどの区分ですか」と聞いてください。答えられる会社なら、そのあとの話は早く進みます。

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