平面図に線は引かれ、寸法も入っている。けれどこの配置でいいのかを判断する物差しが、こちら側にない。承認で止まるのは、たいていここです。

レイアウトは、開店してから直すのがいちばん高くつく部分です。什器を動かせば、電気も給排水も床も付いてきます。

決めることは8つ。順番、動かせない条件、ゾーニング、面積配分、通路と動線、什器の寸法、検証、そして将来の変更。

この記事でわかること

  • レイアウトをどの順番で決めると後戻りしないかと、順番を守れない図面の見分け方
  • 物件のどこが「動かせない条件」なのかを6項目で洗い出し、図面に落として選択肢を絞る手順
  • 客席・売場・作業・裏方・通路の5区分でゾーニングする方法と、どこから決めるかの順序
  • 面積配分を比率ではなく積み上げで決める計算と、労働安全衛生規則の気積から出す1人あたりの下限
  • 「通路は何センチ」という業界の目安に出典がない理由と、代わりに使える条文・指針・実測の3段構え
  • 什器・カウンター・テーブルの高さと奥行を、国土交通省の建築設計標準の数値を要求水準として使って決める方法
  • 図面を受け取ったあと、専門家でなくても机の上でできる6段階の検証手順と、直せる期限
国土交通省が平成30年11月から平成31年1月にかけて調べた2,000平方メートル未満の店舗2,992件のうち、バリアフリー法施行令の移動等円滑化経路の基準に適合していたのは576件、19.3%。用途別では銀行の支店等が33.3%、百貨店・マーケット・物品販売店舗が26.3%、飲食店が19.2%、日用品販売店舗が15.3%、物品販売業を営む店舗以外の店舗が12.6%、食堂又は喫茶店が9.5%、理髪店・美容院等が8.9%。
小さい店ほど、出入口と通路が絞られている|義務がかからない規模では、8割の店舗が出入口80センチメートル・通路120センチメートル・段差なしを満たしていません。面積の取り合いで最初に削られるのが通路だからです。

この配置でよいのかを判断する物差しがない

止まる理由は3つあります。そのうち2つは、その場で外せます。残る1つが、本当に考えるべきことです。

図面を渡されたときに判断が止まる3つの理由と、その場で外せるもの
止まる理由 何が起きているか 図面の上で自分で確認できること
比べる相手がない 1枚しか図面がないため、その配置が良いのか悪いのかを相対的に判断できない。設計者は複数案を検討したうえで1案に絞っているが、その過程は渡されない 「この配置にした理由を、採らなかった案と比べて説明してください」と口頭で聞き、要点をその場でメモに書き取る
数値の根拠がわからない 通路が900ミリメートルと書かれていても、それが法令なのか、設計者の経験なのか、単なる余りなのかが読み取れない 図面に入っている寸法のうち、法令由来のものに丸を付けてもらう。丸が付かない寸法は、すべて交渉できる寸法だと考える
使う場面が想像できない 静止した平面図には、ピーク時に何人がどこに立っているかが描かれていない。動きは図面に現れないため、混雑は着工後まで見えない ピーク時間帯に店内にいる最大人数を紙に書き、その人数分の丸を図面のコピーに鉛筆で置いてみる

通路を削った店で何が起きているかを、統計で確かめる

厚生労働省の労働災害発生状況に、事故の型別の死傷者数が出ています。転倒と激突は、レイアウトで触れる部分です。通路幅を削る判断は、ここに直結します。

令和6年の事故の型別の休業4日以上の死傷者数と、レイアウトで触れる部分(厚生労働省「令和6年 労働災害発生状況について」より)
事故の型 令和6年の死傷者数と割合 図面の上で自分で確認できること
転倒 36,378人・26.8%。全体の4分の1を超え、事故の型では最多 床に段差が生じる箇所(厨房と客席の境、トイレの入口、床上げした部分)に印を付け、段差の数を数える
動作の反動・無理な動作 22,218人・16.4%。腰痛などが含まれる 重い物を持ち上げる場所(納品の受け取り口、ゴミの一時保管、大型什器の下段)と、そこから運ぶ距離を図面上で測る
墜落・転落 20,699人・15.3% 高い棚の最上段に何を置く予定かを書き出し、脚立を立てる床の余地が確保されているかを確認する
はさまれ・巻き込まれ 13,550人・10.0% 扉の開く向きと、開いた先に人が立つ場所が重なっていないかを、扉ごとに円弧を描いて確認する
切れ・こすれ 7,420人・5.5% 作業台の角、什器の出っ張り、通路にはみ出す取っ手の位置を、通路を歩く人の肩の高さで確認する
激突 6,947人・5.1% 見通しの利かない角(レジ裏、厨房の出入口)を数え、そこに立つ人の目線が交わるかを確認する

レイアウトに関係する法令と、その「かかり方」

避難、通路、気積、収容人員。条文で下限が決まっている項目があります。自店にかかるかどうかの確かめ方も表にしました。

店舗のレイアウトに関係する主な条文と、自店にかかるかどうかの確かめ方
条文 定めている内容と、かかる範囲 図面の上で自分で確認できること
建築基準法施行令
第117条第1項
第5章第2節(廊下、避難階段及び出口)の適用範囲。特殊建築物、階数三以上、無窓の居室がある階、延べ面積1,000平方メートル超に限って適用される 物件の延べ面積と階数、建物全体の用途を賃貸借契約書または重要事項説明書で確認し、4つの条件のどれかに当たるかを判定する
建築基準法施行令
第119条
廊下の幅。両側に居室がある廊下で1.6メートル、その他で1.2メートル。対象は病院の患者用、共同住宅の共用、居室の床面積合計200平方メートル(地階は100平方メートル)超の階など 自区画の居室の床面積合計を図面から拾い、200平方メートルを超えるかどうかを計算する。地階なら100平方メートルで判定する
建築基準法施行令
第120条第1項
居室から直通階段の一に至る歩行距離の上限。その他の居室では、主要構造部が準耐火構造である場合などで50メートル、それ以外の場合で40メートル 店内のいちばん奥の位置から階段までの経路を図面上でなぞり、実際の歩行距離をメートルで出す(直線距離ではない)
建築基準法施行令
第126条の2第1項
排煙設備の設置。別表第一(い)欄(一)項から(四)項までの特殊建築物で延べ面積500平方メートル超、階数三以上で延べ面積500平方メートル超など 天井まで届く間仕切りを新たに立てる予定があるかを図面で数える。区画を増やすと排煙の検討が要る場合がある
建築基準法施行令
第128条
敷地内の通路。屋外避難階段や第125条第1項の出口から道等に通ずる幅員1.5メートル(階数三以下かつ延べ面積200平方メートル未満の建築物では0.9メートル)以上 建物の外に出てから道路までの通路に、自店の看板・置き什器・ゴミ置き場を置く計画がないかを確認する
労働安全衛生規則
第600条・第601条
気積は労働者1人について10立方メートル以上(設備の占める容積と床面から4メートルを超える高さの空間を除く)。換気は開口部の面積を床面積の20分の1以上、ただし換気設備があればこの限りでない 作業する場所の床面積に天井高を掛けて気積を出し、そこで同時に働く最大人数で割って1人あたりの立方メートルを計算する
労働安全衛生規則
第540条・第542条・第543条
作業場に通ずる場所と作業場内に安全な通路を設け常時有効に保持すること、屋内通路は用途に応じた幅とし通路面から高さ1.8メートル以内に障害物を置かないこと、機械間などの通路は幅80センチメートル以上 厨房や作業場の機器と機器のあいだ、機器と壁のあいだを図面で測り、80センチメートルを下回る箇所に印を付ける
バリアフリー法施行令
第19条第2項
移動等円滑化経路の基準。出入口の幅80センチメートル以上、廊下等の幅120センチメートル以上、50メートル以内ごとに車椅子の転回に支障がない場所、経路上に階段や段を設けない 道路から店内の主要な場所までを図面上で一本の線としてなぞり、その線上に段差と80センチメートル未満の開口がないかを確認する
消防法施行規則
第1条の3第1項
収容人員の算定方法。飲食店では従業者の数に、固定式のいす席の数と、その他の部分の床面積を3平方メートルで除して得た数を加える。物品販売店舗では飲食・休憩部分を3平方メートル、その他を4平方メートルで除す 面積配分の案ができた時点で、この式に自店の数字を入れて収容人員を計算し、30人・50人の区切りに近いかどうかを見る
消防法施行令
第26条
誘導灯及び誘導標識。避難口誘導灯・通路誘導灯は別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項などの防火対象物に設置する 避難口と、そこへ向かう通路の位置を図面で確認し、その正面に高い什器や垂れ幕を置く計画がないかを見る

決めること1〜3|順番・動かせない条件・ゾーニング

レイアウトには決める順番があります。先に什器の位置を決めると、あとで全部やり直しになります。

先に図面へ落とすのは、動かせないものです。柱、梁、PS、入口、窓、既存設備。内覧のときに自分で測れます。

そのうえでゾーニングです。客席・売場・作業・裏方・通路の5区分を、原則に沿って置いていきます。

レイアウト設計で決める8つのことと、それぞれが何を決定づけるか
決めること これを決めると、何が確定するか 図面の上で自分で確認できること
1|決める順番 後戻りの回数。順番を守れば、あとの工程で前の工程をやり直す必要がなくなる すでに出ている図面が、どの段階から描かれたものかを設計者に聞く。仕上げのイメージ画から入っていたら要注意
2|動かせないものを図面に落とす 選択肢の範囲。制約を先に描くと、置ける場所が自動的に絞られる 柱・梁・パイプスペース・分電盤・既存排水・入口・窓が、平面図にすべて描き込まれているかを数える
3|ゾーニング エリアの位置関係。什器の位置ではなく、塊としてどこに何を置くか 図面に5色の蛍光ペンで、客席・売場・作業・裏方・通路を塗り分ける。塗れない場所があれば用途が決まっていない
4|面積配分 席数・収納量・収容人員。消防法上の区分もここで動く 塗り分けた5色の面積を概算し、合計が全体面積と一致するかを確かめる。合わなければ通路が計上されていない
5|通路幅と動線の交差 ピーク時の詰まり方。幅より交差の数のほうが効く 入店から退店までの線と、スタッフの動きの線を別々の色で引き、交わった点に丸を付けて数える
6|什器・カウンター・テーブルの寸法 座り心地と作業のしやすさ、そして車椅子やベビーカーで使えるかどうか カウンターの上端・下端の高さと、下部の奥行が図面の断面または展開図に記載されているかを確認する
7|図面ができたあとの検証手順 着工前に見つかる問題の数。机の上でかなりの数が見つかる 6段階の検証を1回通す。所要はおよそ1時間で、費用はかからない
8|将来の変更に備える 3年後・5年後に手を入れるときの費用。固定した分だけ高くなる 図面上の什器を「動かせるもの」と「固定するもの」に分け、固定の数を数える
レイアウトを決める6段階と、それぞれの段階で動かせるもの・動かせないもの
段階 この段階で固定するものと、あとから動かす費用 図面の上で自分で確認できること
1|動かせない条件 排水、排気ルート、分電盤、柱・梁、パイプスペース、入口、窓。動かすには建物本体や共用部分に手を入れることになり、貸主やビルの管理規約の承諾も要る これらが平面図に描かれているかを1つずつ数え、描かれていないものを設計者に追記してもらう
2|ゾーニング エリアの位置関係。図面の段階なら鉛筆で動かせるが、着工後は壁の解体からやり直しになる 5色に塗り分けたときに、隣り合ってはいけない組み合わせ(ゴミ置き場と客席など)が接していないかを見る
3|面積配分 各エリアに割り当てる面積。ここが決まると席数と収納量が決まり、消防法上の収容人員も決まる 面積の合計が区画面積と一致するかを電卓で確かめる。差が出たら、その差が通路である場合が多い
4|通路と動線 通路の幅と経路。壁を立てる前なら図面上で変更できるが、下地が組み上がると解体が必要になる お客様の線とスタッフの線を別の色で引き、交差した点を数える。交差の数が減る配置に描き直してみる
5|什器の寸法 カウンターの高さ、テーブルの寸法、棚の奥行。造作なら製作前まで、既製品なら発注前まで変更できる 造作か既製品かを什器ごとに分け、既製品の型番と外寸が図面に反映されているかを確認する
6|仕上げ・照明・装飾 床材、壁材、器具。発注前なら差し替えられ、6段階のなかでは最も遅くまで動かせる 床材の選定が、1から4で決めた段差の有無と滑りにくさの要求に合っているかを確認する
レイアウトを縛る6つの条件と、内覧時に自分で測れること
条件 なぜ動かせないか、動かすと何が起きるか 図面の上で自分で確認できること
柱・梁 建物の構造体なので変更できない。梁の下端の高さが、その位置での天井高の上限を決める。柱は什器の割付と通路の通り芯を分断する 柱の位置と断面寸法、梁の下端の高さを図面に書き込む。梁下2.1メートルを下回る場所には、人が立って通る計画を置かない
パイプスペース(PS) 上下階の配管が通る縦の空間。建物全体の設備であり、1区画の都合では移設できない。位置がトイレと厨房の置き場所を規定する 天井を見上げて点検口の位置を写真に撮り、その真下に什器を置く計画がないかを確認する
既存の排水位置と勾配 排水は自然勾配で流すため、排水口から遠ざけるほど床下に高さが要る。床を上げると段差ができ、段差は転倒につながる 既存の排水口の位置に印を付け、そこから水を使う設備までの距離をメートルで測る。距離が長いほど床上げが要る
排気ダクトのルート 屋外まで導く経路が建物側で決まっている。ビルの管理規約で外壁への開口が禁じられていることもある 既存のダクトの立ち上がり位置と、外部への出口を写真で記録する。厨房や作業場をその近くに置けるかを図面で確認する
分電盤・引込みの位置 電気配線の起点。移設には電気工事が必要で、幹線をやり直す場合は費用が大きく変わる 分電盤の前に、法令上あけておくべき操作スペースが確保されているかを確認する。什器で塞ぐ計画になっていないかを見る
入口・窓の位置 入口は動線の起点で、変更は外装工事とファサードの作り直しを伴う。窓は採光と、外から中がどう見えるかを決める 入口の有効幅を実測し、80センチメートルを確保できているかを見る。入口の正面に何が見えるかを、立って写真に撮る
ゾーニングの5区分と、配置を決めるときの原則
区分 業種による呼び方と、配置の原則 図面の上で自分で確認できること
お客様が過ごす場所 客席、待合、売場、施術スペース、執務スペース。採光と外からの見え方が良い場所に置く。面積の中心になるが、ここを最大化した図面がいちばん運営しにくい図面になることがある この区分を蛍光ペンで塗り、外部に面した部分がどのくらいあるかを見る。塗った面積を席数で割って1席あたりの面積を出す
作業する場所 厨房、シャンプー台、診察室、施術室、カウンターの中。給排水・排気・電気の制約が最も強い。ここから位置を決める 既存の給排水と排気の位置に、この区分が重なっているかを確認する。重なっていなければ、その差の分だけ工事費が増える
受付・会計 レジ、受付、カウンター。入口から見えて、店内全体を見渡せる位置に置く。防犯上もここが要になる 受付に立ったときに見えない死角を図面上で塗りつぶし、死角に何を置く予定かを書き出す
裏方 バックヤード、更衣室、休憩、収納、ゴミの一時保管。お客様から見えず、作業する場所からすぐ行ける位置に置く。最後に回すと場所が残らない 客席や売場から、裏方の入口が直接見える位置関係になっていないかを、視線の線を引いて確認する
通路 お客様が通る主通路、スタッフだけが通る裏動線、搬入経路、避難経路。売上を生まないため最初に削られるが、削ると他の4区分がすべて使いにくくなる 通路を独立した色で塗り、塗り残しがないかを見る。塗れない細い隙間が出てきたら、そこは通路として計画されていない

決めること4〜5|面積配分と、通路幅

面積は比率ではなく積み上げで決めます。裏方に置くものを書き出せば、必要な面積が出ます。

通路幅は、国土交通省の建築設計標準に寸法が示されています。ただし義務ではなく指針です。自分で決めるための実測手順も載せました。

動線の交差は、減らすべき種類が決まっています。お客様同士、お客様とスタッフ、そして物と人。

労働安全衛生規則第600条の気積から、天井高別に1人あたりの床面積を出した編集部の試算例
天井高 1人あたりの床面積(10立方メートル÷天井高) 図面の上で自分で確認できること
2.2メートル 約4.55平方メートル。設備の占める容積を除く前の値なので、実際にはこれより広く要る この天井高になっている場所(梁下、ダクト下)が作業スペースに含まれていないかを図面で確認する
2.4メートル 約4.17平方メートル。テナント区画で最も多い天井高の一つ 作業する場所の床面積を、そこで同時に働く最大人数で割り、4.17平方メートルを上回っているかを計算する
2.7メートル 約3.70平方メートル。天井が高いほど1人あたりの床面積は小さくて済む計算になる 天井を上げる余地があるかを、梁下とダクトの位置から確認する。上げられれば同じ床面積で人数を増やせる
3.0メートル 約3.33平方メートル 高い天井の下に、高さのある収納を置く計画があるかを確認する。気積の計算では設備の容積を除く
裏方に置くものを書き出して面積を積み上げる手順
積み上げる対象 数え方と、見落としやすい点 図面の上で自分で確認できること
在庫 発注の単位(ケース・箱)と、次の納品までの日数で決まる。週1回の納品なら1週間分、月1回なら1か月分を置く場所が要る 納品の頻度を決めてから、1回の納品で届く箱の数と外寸を書き出し、棚の段数で割って必要な棚の延長メートルを出す
備品・消耗品 レジロール、包材、洗剤、タオル類。単価が安いためまとめ買いされやすく、想定より場所を取る まとめ買いの単位を先に決める。決めないと、開業後に「安いから」で買った分が通路に出る
清掃用具 掃除機、モップ、バケツ、脚立。縦に長いものが多く、棚には収まらない。立てて置く場所が別に要る いちばん長い用具(脚立やモップ)の全長を測り、その高さが確保できる収納が図面にあるかを見る
ゴミの一時保管 営業日数分をためることになる。分別の種類だけ容器が要る。臭いと衛生の面から、客席と接する位置には置けない ゴミの容器の数と外寸を書き出し、その面積を裏方の面積に加える。搬出経路が客席を通らないかを線で確認する
スタッフの私物 着替え、かばん、上着。人数分のロッカーまたは棚が要る。ここを削ると、私物が作業場に置かれる ピーク時に同時に入るスタッフの最大人数を書き、その人数分の収納が図面にあるかを数える
書類・現金の保管 伝票、契約書、レジの釣銭準備金。防犯上、鍵のかかる場所と、外から見えない位置が要る 金庫を置く位置が、入口や窓から直接見えないかを、視線の線を引いて確認する
消防法施行規則第1条の3第1項が定める収容人員の算定方法(抜粋)
防火対象物の区分 算定方法 図面の上で自分で確認できること
令別表第一(三)項
(飲食店など)のうち遊技場以外のもの
従業者の数と、客席の部分ごとに算定した数の合計。固定式のいす席はその数、長いす式は正面幅を0.5メートルで除した数、その他の部分は床面積を3平方メートルで除した数 客席部分のうち、固定式でない部分の面積を図面から拾って3で割り、従業者数を足して収容人員を計算する
令別表第一(四)項
(物品販売店舗など)
従業者の数と、主として従業者以外の者の使用に供する部分について、飲食又は休憩の用に供する部分は床面積を3平方メートルで、その他の部分は床面積を4平方メートルで除した数の合計 売場の面積を4で割り、イートインなど飲食部分があればその面積を3で割って足す。従業者数を加えて収容人員を出す
令別表第一(六)項イ
(病院・診療所など)
医師、歯科医師、助産師、薬剤師、看護師その他の従業者の数と、病室内にある病床の数と、待合室の床面積の合計を3平方メートルで除した数の合計 待合の面積を3で割り、そこにスタッフ数を足す。待合を広げると収容人員が増えることを確認する
令別表第一(十五)項
(前各項に該当しない事業場)
従業者の数と、主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積を3平方メートルで除した数の合計 自店がこの区分に当たる場合、お客様が入る部分の面積を3で割った数に従業者数を足す
国土交通省「小規模店舗に係る建築設計標準 概要版」(令和2年度)が示す寸法と、その位置づけ
部位 示されている数値(義務ではなく指針) 図面の上で自分で確認できること
出入口 有効幅80センチメートル以上、自動式ガラス引き戸等、戸の前後に高低差なし(改修の場合は段差解消) 入口の有効幅(戸を開けたときに実際に通れる幅)を図面から拾う。枠の内寸ではなく、戸が開いた状態の寸法で見る
物販店舗の店内通路 有効幅120センチメートル、片側商品棚の場合は90センチメートル以上。床に段差を設けない 棚が両側にある通路と片側だけの通路を図面上で分け、それぞれの幅を測って120と90に照らす
飲食店舗の店内通路 有効幅90センチメートル以上。床に段差を設けない。濡れても滑りにくい仕上げ 椅子を引いた状態での通路幅を図面上で描き直す。椅子の背が通路にはみ出す分を引いた実効の幅で判定する
サービス店舗の店内通路 有効幅90センチメートル以上。床に段差を設けない 施術台やセット面のあいだの通路を、器具を出した状態の寸法で測る
転回スペース 通路の端部やレジ前等に、車椅子使用者の転回スペースとして140センチメートル角以上 図面上に140センチメートル角の正方形を描いた紙を置いてみて、通路の端とレジ前に収まるかを確かめる
レジ・会計 複数のレジカウンターの場合、車椅子使用者等が通れる有効幅員90センチメートル以上を確保。利用者から金額表示が見えるレジ レジが複数ある場合、そのうち少なくとも1か所の通り抜け幅を測る。金額表示の向きを図面の展開図で確認する
敷地内の通路 有効幅120センチメートル以上、段差なし。道から出入口やインターホンまで視覚障害者誘導用ブロック等を連続して敷設 道路から入口までの経路に、看板・置き什器・傘立て・のぼりを置く計画がないかを確認する
車椅子使用者用駐車施設 幅350センチメートル以上、出入口からできるだけ近い位置、見やすい位置に標識 駐車場がある物件では、区画の幅を測って350センチメートルを確保できるかを見る
通路の幅を自分で決めるための実測手順(3段目)
手順 やること 図面の上で自分で確認できること
1|通路を分類する お客様が通る通路、スタッフだけが通る通路、搬入経路、避難経路の4つに図面上で色分けする。要求される幅がそれぞれ違う 4色に塗り分けたあと、同じ通路が2色以上になっている場所を数える。兼用の通路ほど広さが要る
2|通る物を1つ挙げる 通路ごとに「ここを通る最大の物」を1つだけ挙げる。ワゴン、台車、脚立、ベビーカー、大型の段ボールなど 挙げた物の外寸(幅・奥行・高さ)を実測してメモする。カタログの寸法ではなく、実物を測る
3|持つ余裕を足す 物を持つ人の手が両側に出る分を足す。押す物なら手前に、抱える物なら左右に余裕が要る 実測値に余裕を足した数値を、図面の該当する通路に鉛筆で書き込む。これが自店の下限になる
4|すれ違いの有無を決める その通路ですれ違いが起きるかを、時間帯ごとに考える。起きるなら2人分、起きないなら1人分でよい すれ違いが起きる通路に印を付け、印の付いた通路だけ幅を2人分にできるかを検討する
5|什器の可動部を引く 引いた椅子、開いた扉、引き出し、開いた冷蔵庫の扉が通路にはみ出す分を引く。図面の寸法は閉じた状態で描かれている 扉と引き出しの位置に、開いた状態の円弧と矩形を鉛筆で描き足す。描いたあとに残る幅が実効の通路幅
6|床置きの物を引く 傘立て、ゴミ箱、消火器、のぼり、季節商品の平台。図面に描かれないものが、開業後に通路に出る 置く予定のものを図面に描き足す。描き足したあとで通路が下限を割るなら、置き場所を別に作る
減らすべき交差の種類と、減らし方
交差の種類 起きていることと、減らす方向 図面の上で自分で確認できること
入店するお客様と、会計を待つお客様 入口の近くにレジがあると、列が入口を塞ぐ。入ろうとした方が引き返す原因になり、売上に直接効く ピーク時の列の長さを人数×0.5メートルで見積もり、その長さの線を入口から引いて、入口を塞ぐかを確認する
お客様の移動と、スタッフが物を運ぶ動き 提供や補充のたびに、スタッフがお客様の後ろを横切る。ぶつかると事故になり、料理や商品も損なう 厨房や倉庫の出口から、提供先・補充先までの線を引く。その線が客席や売場の通路と重なる長さを測る
スタッフ同士(作業する場所の中) 調理と洗浄、施術と受付が同じ通路を使うと、ピーク時に止まる。労働安全衛生規則第543条の80センチメートルは、すれ違いの寸法ではない 作業する場所の中で、2人が同時に立つ位置を図面上に置き、そのあいだを人が通れるかを確認する
清潔なものと使用済みのもの 提供前の食器と下げた食器、洗濯前後のタオル、未使用と使用済みの器具。同じ経路を逆向きに流れると、接触の機会が増える 「行き」と「帰り」を別の線で引き、重なる区間を数える。重なりをゼロにできない場合は、時間で分ける方法を検討する
搬入・搬出と、営業中のお客様の動き 納品とゴミ出しが営業時間に重なると、台車が客席の横を通る。搬入口が入口と同じ物件では避けられない 納品時刻とゴミの搬出時刻を書き出し、営業時間と重なるかを確認する。重なるなら経路を図面上でなぞる
滞留する場所と、通り抜ける動き 会計待ち、順番待ち、商品を選んで立ち止まる位置。滞留が通路の上で起きると、通り抜けが止まる 人が立ち止まる場所に印を付け、その印が通路の線の上にあるかを見る。上にあるなら、通路から外す配置を考える

決めること6〜8|什器の寸法、検証、将来の変更

什器の寸法は、使う人の動作から決めます。座る、立つ、しゃがむ、抱える。手順を表にしました。

図面ができたら、6段階で検証します。指でなぞる、寸法を当たる、ピーク時を想像する。

そして将来の変更に備えます。増席や配置替えの余地を、部位ごとに残しておきます。

什器・カウンター・テーブルの寸法を決めるときの基準と手順
部位 基準にできるもの、または決め方の手順 図面の上で自分で確認できること
ローカウンター・テーブル 国土交通省の建築設計標準(小規模店舗向け概要版)は、下端の高さ65〜70センチメートル程度、上端の高さ70〜75センチメートル程度、下部の奥行45センチメートル以上を示している。義務ではなく指針 展開図または断面図に、上端・下端の高さと下部の奥行が記載されているかを見る。記載がなければ書き足してもらう
受付・記載台 同資料は、サービス店舗の受付・記載台についても下端65〜70センチメートル程度、上端70〜75センチメートル程度、下部の奥行45センチメートル以上を示している 受付の高さが1種類しかない図面なら、低い部分を1か所設けられるかを検討する。全部を低くする必要はない
商品棚の奥行 数値の基準はない。載せる商品の最大奥行を実測し、それに手を入れる余裕を足して決める。奥行を深くすると通路が狭くなる 棚に載せる商品のうち、いちばん奥行のあるものを実測する。その寸法が図面の棚の奥行に収まっているかを見る
棚の高さと段数 数値の基準はない。上段に何を置くかで決める。手が届かない段には、頻度の低い物しか置けない。労働安全衛生規則第542条第3号は、通路面から高さ1.8メートル以内に障害物を置かないことを求めている 最上段の高さを図面から拾い、スタッフの身長で手が届くかを確認する。届かないなら脚立を置く床の余地を図面に確保する
テーブルの寸法と席の間隔 数値の基準はない。提供する物を実際にテーブルに並べて必要な面積を出す。椅子を引いた状態の後ろに、通路として何センチメートル残るかで席の間隔が決まる 椅子を引いた状態の輪郭を図面に描き足し、その外側に残る通路幅を測る。この幅が実効の通路幅になる
レジカウンター 同資料は、複数のレジカウンターの場合に車椅子使用者等が通れる有効幅員90センチメートル以上の確保と、利用者から金額表示が見えるレジを示している レジの背面に立つスタッフの後ろに、別のスタッフが通れる幅があるかを確認する。ここが詰まると会計が止まる
作業台 数値の基準はない。立って使うか座って使うかで高さが変わる。労働安全衛生規則第543条は、機械間などの通路を幅80センチメートル以上と定めている 作業台と背面の機器のあいだの寸法を図面で測り、80センチメートルを下回っていないかを確認する
車椅子使用者用トイレ 同資料は、出入口の有効幅80センチメートル以上、広さは原則として内法寸法200センチメートル以上×200センチメートル以上、かつ径150センチメートルの円が内接できるスペースを示している トイレの内法寸法を図面から拾い、200センチメートル角が確保されているかを見る。確保できないなら、その理由を確認する
図面を受け取ったあとの6段階の検証手順
段階 やることと、見つかりやすい問題 図面の上で自分で確認できること
1|ピーク時の人を置く ピーク時間帯に店内にいる最大人数を、お客様とスタッフに分けて数える。その人数分の丸を図面に置く。置ききれないなら、その時点で面積が足りない 丸を置いたあと、通路の上に立っている丸がいくつあるかを数える。通路の上に人が立つのは、滞留の場所がない証拠
2|1人ずつ動かす 入店から退店まで、指でなぞる。スタッフは開店から閉店までの主な移動をなぞる。線が交わった点に丸を付ける 交差の丸の数を数え、配置を入れ替えた図面と比べる。入れ替えで丸が減るなら、その配置のほうが良い
3|物を持たせる トレー、ワゴン、台車、段ボール、掃除機を持った状態で同じ線をなぞる。ここでいちばん多く問題が見つかる 持った物の幅を図面の縮尺で紙に切り出し、通路に沿って動かしてみる。引っかかる場所に印を付ける
4|収納を数える 決めること4で書き出した品目と数量が、確保した収納に収まるかを確かめる。収まらない分は、開業後に通路と客席に出る 必要な棚の延長メートルと、図面上の棚の延長メートルを足し算で比べる。足りない分をメートルで書き出す
5|座って見える景色を確認する 客席の各位置から何が見えるかを、視線の線を引いて確かめる。裏方の入口、ゴミ置き場、作業場の乱雑な部分が見えていないか いちばん条件の悪い席(トイレの真正面、厨房の出入口の横)を特定し、その席を作るかどうかを判断する
6|将来を想定する スタッフが1人増えたら、席を1つ足したら、什器を1台入れ替えたらどうなるかを図面上で試す。動かせない図面は、3年後に作り直しになる 席を1つ足す余地がある場所を図面上で探し、そこに電源とコンセントの計画があるかを確認する
将来の変更に備えるために、部位ごとに決めること
部位 固定と可動の選び方 図面の上で自分で確認できること
客席・テーブル 可動にしておくと、人数の組み合わせを変えられる。固定のベンチは席数を稼げるが、2人席と4人席の入れ替えができなくなる 図面の席を「動かせるもの」と「固定するもの」に分けて数え、固定の割合を出す。半分を超えていたら理由を確認する
間仕切り 天井まで届く固定の間仕切りを立てると、区画が増える。区画が増えると、排煙・空調・照明・警報設備の検討が要る場合がある 新たに立てる間仕切りの数を数え、そのうち天井まで届くものがいくつあるかを確認する
電源とコンセント あとから増やすのがいちばん高くつく部分。将来席を足したい位置に、先に配線だけ通しておくと、そのときの工事が軽くなる 図面上でコンセントの位置に印を付け、席を1つ足したい場所の近くに印があるかを見る
給排水の位置 最も動かしにくい。将来シンクや手洗いを増やす可能性があるなら、その位置まで先に配管を出しておく選択がある 既存の排水位置と、将来の増設候補の位置の距離を測る。距離が長いほど、あとからの工事が高くなる
照明 ダクトレールにしておくと、器具の位置を後から変えられる。埋め込みの器具は、位置を変えると天井の補修が必要になる 照明の位置が什器の位置に合わせて決まっているかを確認する。什器を動かすと照明が合わなくなる配置になっていないか
収納 造作の棚は寸法がぴったり合うが、置くものが変わると使えなくなる。可動棚にしておくと段の高さを変えられる 棚が可動式(棚受けのダボやレールがある)かどうかを、図面の詳細図または仕様書で確認する
床の下地 あとから什器を固定したくなったとき、下地がないと止められない。将来の候補位置に下地を入れておく選択がある 将来什器を置きたい位置を図面に書き込み、そこに下地を入れてもらえるかを設計者に相談する

図面を頼む前に、自分の手で紙に書くこと

ピーク時に店内にいる最大人数を、お客様とスタッフに分けて書く。この1行があるだけで、図面の精度が変わります。

図面を頼む前に紙に書くこと
  1. ピーク時間帯に店内にいる最大人数を、お客様とスタッフに分けて書く。在籍者数や1日の来客数ではなく、同じ時間に同じ空間にいる人数を書く
  2. 置くものを品目と数量で書き出し、いちばん大きい物の外寸を実測する。在庫、備品、消耗品、清掃用具、ゴミ、私物、書類の7種類
  3. 通路ごとに「そこを通る最大の物」を1つずつ挙げ、外寸を実測する。ワゴン、台車、脚立、ベビーカー、段ボール
  4. 納品の頻度と時刻、ゴミの搬出の頻度と時刻を書く。営業時間と重なるかどうかで、搬入動線の要求が変わる
  5. 自店の客単価と粗利率を書く。この2つがないと、面積の取り合いを金額で比べられない
  6. 3年後に変えたいかもしれない部分を、部位の名前で書く。席の構成、什器、間仕切り、収納のどれかを挙げる
  7. 物件の動かせない条件を6項目、図面に鉛筆で書き込む。柱・梁、パイプスペース、既存排水、排気ルート、分電盤、入口と窓

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よくある質問

ここまでで扱えなかった論点のうち、相談の場で実際に聞かれることの多い4つをまとめます。 いずれも、答えの一部が法令に、一部が自店の条件にあるものです。 だから「一般的にはこう」という答えだけでは足りません。

以下では、条文を示せる部分は条・項・号まで特定して書きます。 示せない部分は、示せないと書いたうえで、自分で決めるための手順を置きます。 数字を作らないことを、この記事の方針にしているためです。

なお、いずれの回答も一般論です。 実際の判定は、物件の条件と所轄の行政機関の運用で変わります。 契約や着工の前に、必ず現物の図面を持って相談してください。

相談先は、消防なら所轄の消防本部の予防課、建築なら特定行政庁または指定確認検査機関です。 どちらも、図面を持っていけば事前に相談に応じてくれます。

この4問は、8項目のうち1・5・4・7に対応しています。 詳しくは、それぞれの章に戻って読んでください。

店舗のレイアウトは、何から決めればよいですか?

動かせないものから決めます。 順番は、動かせない条件の書き出し、ゾーニング、面積配分、通路と動線、什器の寸法、仕上げと照明の順です。 この順番に意味があるのは、後ろの工程ほど図面の上で自由に動かせるからです。

排水の位置、排気ルート、分電盤、柱と梁、パイプスペース、入口と窓は、変更に工事費と工期がかかります。 これらを先に図面へ落とすと、置ける場所が自然に絞られ、白紙から考えるより早く決まります。

逆に「入口の横にカウンターを置きたい」という見た目の希望から入ると、 通路と裏方が最後に押し込まれ、開業後に毎日の作業がやりにくくなります。

もう一つ大事なのは、面積配分を決めた時点で消防法上の収容人員が決まるということです。 消防法施行規則第1条の3は、飲食店の収容人員を従業者の数と客席部分から算定すると定めており、 固定式のいす席以外の部分は床面積を3平方メートルで除して得た数を加えます。

席を並べる前に、面積の取り合いが法令上の区分を動かしていることを知っておいてください。

店舗の通路幅は何センチにすればよいですか。法令で決まっていますか?

小規模な店舗の店内通路については、幅を直接定めた法令は、編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。

建築基準法施行令第119条は廊下の幅を定めていますが、同令第117条第1項により、 この節の規定は法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までの特殊建築物、階数が三以上の建築物、無窓の居室がある階、延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物に限って適用されます。

しかも第119条の表が対象としているのは、学校の児童用又は生徒用の廊下、病院における患者用の廊下、共同住宅の共用廊下、 そして居室の床面積の合計が200平方メートル、地階では100平方メートルを超える階の廊下です。 小さなテナント区画の店内通路は、この表のどの行にも当たらないことが多くなります。

したがって「通路は何センチが標準」という業界の目安は、出典をたどれる形では示せません。

代わりに使えるのは3つです。 バリアフリー法施行令第19条第2項が移動等円滑化経路の出入口の幅を80センチメートル以上、廊下等の幅を120センチメートル以上と定めていること。

労働安全衛生規則第543条が機械間などに設ける通路を幅80センチメートル以上としていること。 そして、国土交通省の建築設計標準が示す小規模店舗向けの数値です。

これらを要求水準として使い、自店の通路を通る人と物の幅を実測して足し上げてください。

バックヤードや作業スペースの面積は、どう決めればよいですか?

面積比の目安から決めるのではなく、二方向から積み上げて決めます。 一つ目は労働安全衛生規則第600条です。 事業者は労働者を常時就業させる屋内作業場の気積を、設備の占める容積と床面から4メートルを超える高さにある空間を除き、労働者1人について10立方メートル以上としなければならないと定めています。

天井高2.4メートルの区画なら、10を2.4で割って1人あたり約4.17平方メートル、 天井高2.7メートルなら約3.70平方メートルが下限の目安になります。 ここから設備が占める容積を引く必要があるため、実際にはこれより広く要ります。

二つ目は、置くものの実測です。 在庫、備品、消耗品、清掃用具、ゴミの一時保管、スタッフの私物、それぞれの箱の寸法と数量を書き出し、棚の段数で割って必要な棚の延長を出します。

あわせて労働安全衛生規則第601条第1項は、屋内作業場の窓その他の開口部で直接外気に向かって開放できる部分の面積を、 常時床面積の20分の1以上とすることを求めており、 換気が十分行われる性能を有する設備を設けたときはこの限りでないとしています。

窓のない区画を裏方にするなら、換気設備が必要になります。

図面を受け取ったあと、専門家でなくても確認できることはありますか?

あります。 しかも、机の上でかなりの数が見つかります。 手順は、ピーク時間帯の人数を図面の上に置く、1人ずつ入店から退店まで指でなぞる、物を持たせた状態で通す、収納量を数える、座った位置から見える範囲を確かめる、1人増えたときと席を1つ足したときを想定する、の6つです。

このうち最も効くのは3番目です。 図面の上で人が通れることと、トレーやワゴンや段ボールを持った人が通れることは別だからです。 通路の幅は、通る人の肩幅ではなく、通る物の最大幅で決まります。

厚生労働省が公表した令和6年の労働災害発生状況では、休業4日以上の死傷者数135,718人のうち、 事故の型別で最も多いのが転倒の36,378人で、全体の26.8%を占めました。 同資料は、転倒による平均休業見込日数を47.5日としています。

通路の幅、床の段差、床材の滑りやすさは、開業後に人が1人抜ける日数として跳ね返ります。 図面の段階なら、これらは無料で直せます。

まとめ|レイアウトで決める8つのこと

開業後の作り直しも、転倒による休業も、「1日何人の来店にあたるか」に翻訳できます。通路を削る判断は、この数字と並べて決めてください。

図面が届いたら、まず指でなぞってください。つっかえた場所が、直すべき場所です。

開業後に客席まわりを作り直したときの費用を、来店人数に翻訳した編集部の試算例
段階 計算 図面の上で自分で確認できること
1|工事費を出す 内装費450万円のうち、客席まわりの2割を作り直すとして90万円。解体と処分が加わるため、新規に作るより単価は上がる 図面のうち、あとから変える可能性が高い部分に色を付け、その面積が全体の何割かを概算する
2|休業の損失を足す 工事に7日かかるとして、日商6万円・粗利率60%なら1日3万6,000円、7日で25万2,000円。合計115万2,000円 営業しながら工事できる範囲か、止めるしかない範囲かを図面上で分ける。厨房と水回りは止めることが多い
3|1人あたりの粗利で割る 客単価3,000円・粗利率60%なら1人あたり1,800円。115万2,000円÷1,800円で640人分の粗利 自店の客単価と粗利率を書き出す。この2つがわからないと、レイアウトの判断も投資の判断もできない
4|営業日数で割る 月25日営業・年300日で割ると、640÷300で1日あたり約2.1人。1年間、毎日2人多く来ていただいてようやく埋まる この「1日2人」を、図面の段階で直せる範囲と比べる。図面の修正なら、この2人は発生しない
転倒で1人が休業した場合の影響を、来店人数に翻訳した編集部の試算例
項目 計算と前提 図面の上で自分で確認できること
休業日数 厚生労働省の資料が示す転倒による平均休業見込日数47.5日。全産業の平均であり、店舗に限った数値ではない 床の段差の数と、滑りやすい仕上げになる場所(水を使う場所の周囲)を図面上で数える
抜ける労働力 時給1,200円×1日6時間×47.5日=34万2,000円。採用・教育・残業の費用は含めていない その人が担当していた作業が、図面上のどの範囲で行われるかを塗り、代わりに入る人の動線を引いてみる
来店人数への翻訳 34万2,000円÷1,800円(客単価3,000円・粗利率60%)=190人。月25日営業なら約7.6日分 段差解消・床材変更・手すりの追加にかかる見積額を取り、190人分の粗利と比べる
工事段階での費用 段差の解消、滑りにくい床材への変更、収納の追加。いずれも図面の段階なら、仕様の差し替えで済むことが多い 床材の仕様が図面に書かれているかを確認し、書かれていなければ滑りにくさの等級を指定してもらう

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