カウンターの寸法も照明の色も、決めるのはそのあとです。先に決めるのは「何時まで開けるか」と「何階か」。この2つで、内装の自由度が変わります。
午前0時を超えて酒を出すなら、飲食店の許可のほかにもう1つ届出が要ります。届出には、客室の面積や照度といった構造の条件が付いてきます。
決めることは8つ。知らずに図面を進めると、引き直しになります。
この記事でわかること
- 午前0時を超えて酒を出すときに要る届出の期限と、提出先
- 愛知県内で深夜営業ができない用途地域と、地番で区分が変わる区域
- 届出だけで済む場合と、許可が要る場合を分ける「接待」の線
- 客室の広さ・見通し・照度・音の4つの構造設備基準と、そのまま図面に落とす方法
- 地階を選んだときに変わる内装材と自動火災報知設備の条件
- お客様の席から収容人員を数える計算式と、点検の義務がかかる境目
図面より先に、閉店時刻を決める
午前0時を超えるかどうかで、届出も構造も変わります。
居酒屋・バーの内装で決める8つのこと
遅れると、図面ではなく工事を直すことになります。
| 決めること | いつまでに決めるか | 解説 |
|---|---|---|
| 1. 午前0時を超えて営業するか | 物件を探す前 | くわしく |
| 2. その用途地域で深夜営業ができるか | 賃貸借契約の前 | くわしく |
| 3. 接待をするかどうか | 物件を探す前 | くわしく |
| 4. 客室の広さと見通し | 基本設計(平面図)の段階 | くわしく |
| 5. 照明の照度 | 実施設計(照明計画)の段階 | くわしく |
| 6. 音の対策 | 実施設計の段階(着工後は高くつく) | くわしく |
| 7. 階と内装材・自動火災報知設備 | 物件を決めた直後 | くわしく |
| 8. 収容人員と点検の義務 | 席の配置が固まった段階 | くわしく |
決めること1|午前0時を超えて営業するか
深夜における酒類提供飲食店営業の届出を、所轄の警察署に出します。
| 項目 | 内容 | 確かめること |
|---|---|---|
| 提出先 | 営業所の所在地を管轄する公安委員会(窓口は所轄警察署の生活安全課) | 物件が区の境目にあるときは、どの警察署の管轄か |
| 期限 | 深夜営業を始めようとする日の10日前まで | 10日は営業日ではなく暦日。開店日から逆算する |
| 添える書類 | 営業の方法を記載した書面/営業所の平面図/本籍または国籍の記載がある住民票の写し/法人なら定款・登記事項証明書と役員分の住民票 | 平面図は内装会社から早めにもらう。客室の寸法が読める図であること |
| 手数料 | 愛知県手数料条例に、この届出の項目はありません | 金額を求められたら、何の手数料か確かめる |
| 対象から外れる場合 | 営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むもの | 自店が当てはまるかは、メニュー構成を示して事前に相談する |
| 変更・廃止 | 変更は10日以内(法人の名称・住所・代表者氏名は20日以内)、廃止は10日以内 | 店名変更や内装工事で客室の構造を変えたときも届出が要る |
出典:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第13条第1項・第33条、同法施行規則第103条・第104条、愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」。書類の一覧は県警のページに記載されているものです。県警のページには更新日の記載がありません。手続きの前に必ず所轄警察署へ確認してください。
決めること2|その用途地域で、深夜営業ができるか
用途地域によっては、そもそもできません。住所が決まった時点で調べられます。契約前に確かめてください。
決めること3|接待をするかどうか
接待をするなら届出ではなく許可になり、審査の期間も構造の条件も変わります。
| 営業の形 | 手続き | 内装への影響 |
|---|---|---|
| 午前0時までに閉める。接待なし | 飲食店営業許可のみ | 風営法の構造設備基準はかかりません |
| 午前0時を超える。接待なし | 飲食店営業許可+深夜の届出 | 客室9.5平方メートル以上・見通し・照度20ルクス・音の4点 |
| 接待をする | 飲食店営業許可+風俗営業の許可(1号営業) | 営業所の場所の制限が加わり、営業時間も制限されます |
| 照度10ルクス以下で営む | 風俗営業の許可(2号営業) | 照明計画そのものが手続きの対象になります |
| 見通しが困難で5平方メートル以下の客席 | 風俗営業の許可(3号営業) | 個室・ブースの寸法と見通しの設計が手続きを決めます |
出典:風営法第2条第1項第1号〜第3号、第2条第3項、第3条第1項、第33条第1項。自店がどれに当たるかは、営業の実態で判断されます。メニューと接客の方法を具体的に示して、所轄警察署へ事前に相談してください。
決めること4|客室を9.5平方メートル以上にするか、1室だけにするか
個室を作るなら、この基準が間取りを縛ります。
| 基準(施行規則第99条) | 条文の要点 | 図面でどう表すか |
|---|---|---|
| 第1号|客室の広さ | 1室あたり9.5平方メートル以上。ただし客室が1室のみなら適用されない | 客室ごとに面積を記入する。分けるか1室にするかを先に決める |
| 第2号|見通し | 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けない | 間仕切りの高さを記入する。ついたて・カーテン・観葉植物の位置も落とす |
| 第3号|風俗環境 | 善良の風俗または清浄な風俗環境を害するおそれのある写真・広告物・装飾を設けない | 内装のイメージ図で、壁面の装飾の内容を示す |
| 第4号|施錠 | 客室の出入口に施錠の設備を設けない(営業所外に直接通じる出入口を除く) | 建具表に錠の有無を書く。個室の扉は特に注意 |
| 第5号|照度 | 営業所内の照度が20ルクス以下とならないよう維持できる構造または設備 | 照明計画に照度計算を添える(決めること5) |
| 第6号|騒音・振動 | 条例で定める数値に満たないように維持できる構造または設備 | 壁・床・天井の遮音仕様と、扉の気密を書く(決めること6) |
出典:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則第99条(深夜における飲食店営業の営業所の技術上の基準)。条文はe-Gov法令検索の本文で確認しました。愛知県の条例に、深夜酒類提供飲食店営業の構造設備基準を定めた条文はありません。この基準は全国共通で、国家公安委員会規則が定めています。
決めること5|照度は20ルクスを下回れない
暗い店にしたくても、下限があります。照明計画を決める前に、この数字を設計者に伝えてください。
決めること6|音は、2つの条例で別々に測られる
騒音の規制と、風営法系の規制が同時にかかります。測る場所も基準値も違うので、両方を満たす必要があります。
| 条例 | 時間帯と測る場所 | 数値 |
|---|---|---|
| 風営法施行条例 | 深夜(0時〜6時)/規制基準の測定方法による | 第一種・第二種地域 40dB/第三種地域 50dB/第四種・第五種地域 50dB(振動は一律55dB) |
| 県民の生活環境の保全等に関する条例 | 夜間(22時〜6時)/営業所の敷地の境界線 | 住居系8用途地域 40dB/近隣商業・商業・準工業 50dB/工業 60dB/工業専用 70dB/その他 50dB |
| 同条例 第50条(音響機器) | 深夜(23時〜6時)/住居系8用途地域内 | カラオケ装置・音響再生装置・楽器・拡声装置の使用が禁止(音が外部に漏れない措置を講じた場合を除く) |
出典:愛知県警察例規集「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」第7条・第26条・第27条、愛知県「深夜営業騒音に係る規制」(2024年2月13日更新)。風営法施行条例の地域区分(第一種〜第五種)と、生活環境保全条例の用途地域区分は別の分け方です。第五種地域は千種区今池・内山、中区栄・新栄・錦の一部が地番で指定されており、隣の建物と区分が違うことがあります。防音の考え方は店舗の防音で決める7つのことで扱っています。
決めること7|地階を選ぶと、内装材と自火報の条件が変わる
内装制限と自動火災報知設備。賃料が安い理由は、ここにあることがあります。
| 場所 | 自動火災報知設備が要る面積 | 内装制限 |
|---|---|---|
| 1階など避難階 | 延べ面積300平方メートル以上 | 耐火建築物等以外は、用途部分200平方メートル以上でかかる |
| 地階・無窓階 | 床面積100平方メートル以上 | 面積に関係なくかかる。壁・天井は準不燃材料 |
| 3階以上の階 | 床面積300平方メートル以上 | 耐火建築物等以外は、用途部分200平方メートル以上でかかる |
| 直通階段が1つの階(1階・2階を除く) | 面積に関係なく必要 | 階に応じて上記のとおり |
| 11階以上の階 | 面積に関係なく必要 | 階に応じて上記のとおり |
| 厨房(火気使用室) | — | 建物が耐火構造でなければ、壁・天井は準不燃材料 |
出典:消防法施行令第21条第1項第3号イ・第7号・第10号・第11号・第14号、建築基準法施行令第128条の4・第128条の5。居酒屋・バーは消防法施行令別表第一の(3)項ロ「飲食店」に当たり、特定防火対象物です(消防法第17条の2の5第2項第4号、同法施行令第34条の4第2項)。接待を伴う店は(2)項イになり、条件が変わります。材料の選び方は店舗の内装材の選び方、消防の手続きは店舗の消防手続きで確認する8つのことで扱っています。
決めること8|収容人員を数えて、点検の義務がかかるか確かめる
収容人員が一定数を超えると、防火管理者の選任と定期点検の義務が生じます。席数を決める前に数えてください。
公的統計で見る、酒を出す店の数
経済センサスで事業所数と規模が分かります。多くが小規模です。
| 産業小分類 | 事業所数/従業者数 | 売上高/1事業所当たり |
|---|---|---|
| 765 酒場,ビヤホール | 84,595/384,580人 | 1兆6,541億円/約1,956万円 |
| 766 バー,キャバレー,ナイトクラブ | 60,217/178,975人 | 6,418億円/約1,066万円 |
| 76 飲食店 計 | 430,360/2,908,548人 | 13兆272億円/約3,027万円 |
出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査 産業別集計(サービス関連産業に関する集計)結果の概要」(2023年3月28日公表)、警察庁生活安全局保安課「令和7年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」(2026年4月公表)。1事業所当たりの売上高は、公表されている売上高を事業所数で割った編集部の計算値です。調査時点は2021年6月1日、売上高は2020年の1年間(新型コロナウイルス感染症の影響を受けた年)のもので、時系列の比較はできません。公的統計に、居酒屋・バーの客単価は存在しません。経済センサスは飲食サービス業の客数を調査していないためです。
8つを決める順番と、間に合わなくなる日
閉店時刻 → 階と用途地域 → 接待の有無 → 間取り。この順です。逆から決めると、必ずどこかで戻ります。
着工前に確かめること(そのまま内装会社へ渡せます)
- 閉店時刻を午前0時より前にするか、超えるか
- 接待に当たる接客をするかどうか(所轄警察署に営業の方法を説明して確認済みか)
- 物件の用途地域(住居系8地域なら深夜営業はできない)
- 物件の地番(栄・錦・今池など、地番で騒音の規制区分が分かれる区域か)
- 客室を何室にするか。分けるなら1室9.5平方メートル以上を確保できるか
- 間仕切りの高さと、見通しを妨げないことの説明
- 客室の扉に錠を付けていないか(建具表で確認)
- 調光を絞りきったときの照度が20ルクスを下回らないか(照度計算書)
- 壁・床・天井の遮音仕様と、扉の気密の仕様
- 音響機器を使う場合、音が外部に漏れない措置を講じているか
- 階(地階・無窓階かどうか)と、直通階段の数
- 地階なら、壁と天井の仕上げが準不燃材料になっているか
- 厨房の壁と天井が準不燃材料になっているか
- 自動火災報知設備の要否(面積・階・階段の数から判定)
- 収容人員の計算(従業者+固定席+長椅子÷0.5m+その他床面積÷3平方メートル)
- 収容人員30人以上なら防火管理者の選任者を決めているか
- 保健センターへの事前相談は済んでいるか(開店20日前までに申請)
- 深夜の届出用に、客室の寸法が読める平面図を用意できているか
よくある質問
ラーメン店で深夜まで酒を出す場合も、届出は要りますか?
条文には、「営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むもの」は酒類提供飲食店営業から除くと書かれています(風営法第2条第13項第4号)。
主食を出すことが営業の常態であれば、深夜まで開けても届出の対象から外れる、という考え方です。ただし判断は営業の実態で行われます。メニュー構成を示して、所轄警察署へ事前に相談してください。
個室のあるダイニングバーを作りたいのですが、深夜営業はできますか?
できますが、条件があります。客室が2室以上になるなら、1室あたり9.5平方メートル以上が要ります(風営法施行規則第99条第1号)。
さらに「見通しを妨げる設備を設けない」という基準もあります。個室の考え方そのものと合いにくいので、設計の段階で所轄警察署に図面を持ち込んで相談するのが確実です。見通しが困難で5平方メートル以下の客席にすると、風俗営業の許可が要る営業になります。
居抜きで前の店も深夜まで営業していました。届出は引き継げますか?
引き継げません。届出は営業者ごとに出すもので、前の営業者の届出は廃止の届出が出されます。
構造設備が基準を満たしていた実績は、判断の助けにはなります。ただし内装を変えるなら、変えた後の図面で確かめてください。居抜きの設備の流用は居抜き物件の設備は流用できるかで扱っています。
音の苦情が出たら、あとから防音工事はできますか?
できますが、高くつきます。営業しながらの工事になり、休業の損失も加わります。
構造設備基準にも「騒音又は振動の数値が…条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること」と書かれています(風営法施行規則第99条第6号)。着工前に仕様を決めておくのが、結局いちばん安い方法です。
まとめ|内装の自由度は、階と閉店時刻で決まる
カウンターの寸法や照明の色は、8つが決まったあとなら自由に決められます。
先に決めるのは、閉店時刻と階。この2つだけは、あとから変えられません。