電気代が去年より高いことは分かる。けれど何が高いのかは分からない。内訳を知らないまま「LEDにすれば」と言われても、判断できません。
月8万円の光熱費なら年96万円、10年で960万円です。そのうち月2万円下げられれば、10年で240万円。内装工事の一部が、これで賄えます。
そして光熱費の大半は、工事のときに決まってしまいます。契約電力、空調、断熱、厨房、冷蔵設備。開店後にできるのは運用の調整だけです。
この記事でわかること
- 公的統計で確かめた業務部門のエネルギーの使われ方と、そこから自店の優先順位をどう決めるか
- 検針票の基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金を分けて読み、1キロワット時あたりの実質単価を自分で計算する手順
- 契約電力・空調・照明・断熱・厨房給湯・冷蔵冷凍・計測の7つの対策それぞれで、工事のときにしか決められないこと
- 機器の銘板と検針票だけで、削減額を月いくらと見積もる計算のやり方
- 投資額を「回収まで何か月」「1日◯円」「1日◯人分」に翻訳して、やる・やらないを判断する方法
- 省エネ補助金と中小企業経営強化税制の使う順番と、発注前にやっておかないと使えなくなる手続き
電気代が読めないのは、内訳を知らないから
よくある誤解が5つあります。「LEDにすれば下がる」「基本料金は変えられない」など。どれも半分は正しく、半分は違います。
| よくある誤解 | 実際に起きていること | 自店で確かめる方法 |
|---|---|---|
| こまめに消せば電気代は下がる | 下がるのは使用量に応じた部分だけで、契約の大きさで決まる固定の部分は変わらない。努力の割に請求額が動かず、続かなくなる | 検針票の「基本料金」の欄を12か月分並べ、金額がほぼ一定であることを確認する。一定なら、そこは運用では下がらない部分 |
| LEDにすれば電気代は解決する | 照明が占める割合は業種と営業時間で大きく違う。空調や冷蔵冷凍が大きい店では、照明だけを替えても体感できるほど下がらない | 店内の照明器具の消費電力を銘板から拾って合計し、1日の点灯時間を掛けて、月の使用電力量に占める割合を計算する |
| 古い空調でも動いていれば十分 | 能力が落ちた機器は、同じ室温にするために長く運転する。カタログ上の消費電力が同じでも、運転時間が延びれば電気代は増える | 真夏の営業中に、設定温度と実際の室温を1時間おきに測って記録する。差が縮まらない時間帯があれば能力不足を疑う |
| 単価が上がったのだから仕方がない | 単価の変動は自店では動かせないが、使用量と契約は動かせる。単価が上がる局面ほど、同じ削減量の金額的な効果は大きくなる | 検針票の「燃料費調整額」と「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を12か月分書き出し、単価要因と使用量要因を分けて眺める |
| 工事のときの省エネ仕様は贅沢 | 開業後に同じことをやると、天井や壁を開ける工事と休業・時短が加わる。工事中にやれば内装工事の一部として吸収できる項目が多い | 見積書の省エネ関連の項目について、「これを後から単独でやると総額いくらで何日休業ですか」と内装会社に書面で質問する |
店舗のエネルギーは、何に使われているのか
業務部門のエネルギー消費は公的統計で確認できます。ただし建物用途別の集計で、店舗1軒の内訳ではありません。自店の判断にどう使えるかを表に整理しました。
| 統計で確かめられること | 自店の判断にどう使うか | 確かめるための具体的な行動 |
|---|---|---|
| 業務他部門で動力・照明用が48%(2023年度) | 照明とコンセント系は、部門全体では最大の用途。ただし事務所・ビルの比重が大きい平均値なので、自店に当てはまるとは限らない | 店内の照明器具と、常時通電している機器(冷蔵ケース、券売機、サイネージ、POS)を数え、銘板の消費電力を書き出す |
| 床面積あたりの原単位は飲食店が最も大きい(2018年) | 飲食店は同じ坪数でも他業種よりエネルギーを使う。厨房・給湯・換気を工事のときに詰める価値が最も高い業種 | 自店が飲食業なら、厨房機器の一覧表を作り、ガス・電気の別と、1日の稼働時間を機器ごとに書き込む |
| 熱源と照明・コンセントの比率はどの用途でも高い | 業種を問わず、空調と照明・コンセントの2つは必ず検討対象になる。ここを外して細部から始めると効率が悪い | 分電盤を開けて回路の一覧を写真に撮り、空調用・照明用・コンセント用・厨房用に色分けした表を作る |
| ホテル・病院では給湯・蒸気の比率が高い | お湯を大量に使う業態(美容室、飲食店、宿泊)では、給湯方式の選択が空調と同じくらい効く | 1営業日にお湯を使う場面をすべて書き出し、同時に何か所で何分使うかを実測して、給湯器の号数の根拠にする |
| 電気料金の平均単価は年度ごとに大きく変動する | 単価は動かせない前提で計画を立てる。単価が上がれば同じ削減量の金額効果は大きくなり、回収期間は短くなる | 投資回収の試算を、いまの単価と、単価が1割下がった場合の2通りで計算し、どちらでも成立するかを確認する |
自店の電気代を、検針票から分解する
まず検針票を12か月分そろえます。基本料金、電力量料金、燃料費調整、再エネ賦課金。項目ごとに、どの対策で動くかが違います。
夏と冬の差を見れば空調の比重が、深夜の使用量を見れば冷蔵設備の比重が分かります。
| 検針票の項目 | 何で決まっているか | 検針票のどこを見て、何を控えるか |
|---|---|---|
| 基本料金(最低料金) | 契約電力または契約容量で決まる固定部分。機器の合計容量と同時使用が根拠になる。運用では下がらず、契約と設備構成の見直しでしか動かない | 「契約電力」「契約容量」「契約電流」と書かれた欄の数値を控える。12か月ぶんの基本料金が一定かどうかも確認する |
| 電力量料金 | 使用電力量に単価を掛けたもの。機器の効率と運転時間で動く。7つの対策のうち2から7までが、ここに効く | 「使用電力量」の欄と、その月の電力量料金を控える。時間帯別の契約なら、昼夜それぞれの使用量も分けて控える |
| 燃料費調整額 | 燃料価格(原油・LNG・石炭)の変動に応じて毎月調整される。自店では動かせない要素で、プラスにもマイナスにもなる | 12か月分の金額を書き出し、符号(プラスかマイナスか)と大きさの推移を眺める。単価要因と使用量要因の切り分けに使う |
| 再生可能エネルギー発電促進賦課金 | 使用電力量に単価を掛けてかかる。自店では単価を選べないが、使用量を減らせばこの部分も減る | 金額を使用電力量で割って、1キロワット時あたりの賦課金単価を確認する。削減の試算に必ず含める |
| 請求額合計 | 上記の合計。これを使用電力量で割ったものが、自店の実質単価になる | 合計÷使用電力量を12か月分計算し、平均・最高・最低を控える。以降の試算はこの実質単価で行う |
| 力率(記載がある場合) | 電気がどれだけ有効に使われているかを示す値。契約によっては割引・割増しの対象になる | 記載があれば数値を控え、契約している事業者に「この力率で割引・割増しはどうなっていますか」と問い合わせる |
自店の電気代を検針票から分解する手順
- 検針票(またはウェブ明細)を12か月分そろえる。電灯契約と電力契約の両方がある場合は、それぞれ12か月分。
- 紙に12行の表を作り、月ごとに「使用電力量(kWh)」「基本料金」「電力量料金」「燃料費調整額」「再エネ賦課金」「請求額合計」を書き写す。
- 各月について、請求額合計を使用電力量で割り、1キロワット時あたりの実質単価を計算して欄外に書く。12か月の平均も出す。
- 使用電力量の列を眺め、一年で最も少ない月を見つける。その月の使用量が、営業していれば必ずかかる「底」の目安になる。
- 各月の使用量から「底」を引く。残った分が、季節によって増減する部分(主に冷暖房と、外気温に影響される冷蔵冷凍の負荷)の目安になる。
- 店内を一周し、電気を使う機器をすべて書き出す。照明器具、空調の室内機と室外機、冷蔵・冷凍設備、厨房機器、給湯器、換気扇、レジまわり、サイネージ、看板、自動ドア、防犯設備まで漏らさず数える。
- 機器ごとに銘板を写真に撮り、定格消費電力(ワット)と、1日の稼働時間を書き添える。銘板に電流(アンペア)しかない場合は、電圧を掛けておおよそのワット数にする。
- 機器ごとに「消費電力(キロワット)×1日の稼働時間×月の営業日数」を計算し、月の推定消費電力量を出す。
- 全機器の推定値を合計し、検針票の実際の使用電力量と比べる。合計が実際より大きくなるのが普通なので、比率で按分して「用途別のおおよその割合」を作る。
- できあがった割合を、金額に直す。用途別の割合に、月の請求額合計を掛ければよい。ここで初めて「空調に月◯円」「照明に月◯円」という数字が手元に出る。
- ガスと水道についても、同じ要領で12か月分の使用量と金額を書き写す。ガスは給湯と厨房、水道は厨房と清掃に分かれることが多い。
- できた表を1枚にまとめ、内装会社や設備業者に相談するときは必ずこの紙を持っていく。「電気代が高い」ではなく「空調に月◯円かかっている」と言えるようにする。
工事のときに決まる7つの対策
契約電力とデマンド、空調、照明、断熱と開口部、厨房と給湯、冷蔵・冷凍、そして計測と運用。
このうち契約電力の見直しは工事なしでできます。夏の最も使った日の数字を見て、契約が過大なら下げられます。
空調と断熱は逆で、あとからだと解体が要ります。工事のときに決めるしかありません。
| 決めること | 判断の考え方 | 検針票・現場で確かめる方法 |
|---|---|---|
| いまの契約の根拠 | 契約の大きさが機器の容量で決まっているのか、実際の使用実績で決まっているのかで、対策がまったく変わる | 検針票の「契約電力」「契約容量」「契約電流」の欄を控え、契約している小売電気事業者に「この数値はどう決まっていますか」と問い合わせる |
| ピークが立つ時間帯 | 空調の立ち上がり、厨房機器の同時使用、開店前の一斉起動が重なると山ができる。山の高さが基本料金を決める方式では、この重なりを崩すだけで効果が出る | ウェブ明細で30分ごとの使用量が見られるか確認する。見られない場合は、開店準備で何を何時に入れるかを1週間書き出す |
| 開店前の起動順序 | 空調、厨房、給湯、照明を同時に立ち上げると山ができる。10分ずつずらすだけで山が崩れることがある。費用はかからない | 開店前の作業手順を紙に書き、機器ごとの電源投入時刻を決めてバックヤードに貼る。1か月続けて検針票を比べる |
| 機器の容量の合計 | 設計時の想定より機器が増えていることが多い。逆に、使わなくなった機器がつながったままのこともある | 店内の全機器の銘板から定格容量を拾って合計し、契約の大きさと突き合わせる。使っていない機器は撤去して申告する |
| 料金メニューの適合 | 時間帯によって単価が変わるメニューは、夜の営業が長い店では有利になることがある。逆に昼の営業だけなら不利になる | 12か月分の時間帯別使用量を持って、契約している小売電気事業者に「別のメニューにした場合の年額」を試算してもらう |
| 力率の改善余地 | 契約によっては力率で割引・割増しがある。モーターや古い蛍光灯器具が多い店では検討の余地がある | 検針票に力率の記載があるか確認し、なければ事業者に「力率による割引・割増しの有無」を書面で問い合わせる |
| 決めること | 判断の考え方 | 現場で確かめる・内装会社に聞く内容 |
|---|---|---|
| 能力の根拠 | 面積だけで選ばない。人数、照明、厨房・冷蔵の発熱、窓からの熱を積み上げる。足りない機器は全力運転を続けて電気を食う | 「同時在店の最大人数、照明の合計ワット数、厨房機器の一覧、窓の向きと面積」を書いた紙を渡し、この条件での必要能力を計算してもらう |
| 室外機の設置環境 | 置ける場所ではなく、熱が抜ける場所を選ぶ。狭い囲い、向かい合わせ、庇の下は効率が落ちる | 真夏の昼に室外機の吸込側と吹出側に手をかざし、吹き出した熱がすぐ吸込側に回っていないかを確かめる。周囲を写真に撮る |
| ゾーンの分け方 | 客席、厨房、バックヤード、更衣室で必要な温度が違う。1系統でまとめると、どこかが必ず不快になり、無理な設定で運転することになる | 平面図に「ここは何度にしたい」を書き込み、1台で何ゾーンを見る設計になっているかを図面上で確認する |
| 吹き出しと戻りの位置 | 冷気が客席に直接当たると設定温度を上げざるを得ず、当たらないと下げざるを得ない。戻りの位置が悪いと室温が均一にならない | 営業中に、客席の複数箇所と、レジ前と、厨房入口で温度計を置いて同時に測り、差を記録する |
| 外気の取り入れ経路 | 外気をそのまま入れれば、その熱を空調で処理することになる。排気と給気で熱をやり取りする方式は天井裏の余裕が要る | 「給気と排気はどこから、どのくらいの量ですか。図面に空気の流れを矢印で描いてください」と内装会社に依頼する |
| 後から替えるときの条件 | 更新には天井の開口、配管の入れ替え、室外機の入れ替えが伴う。営業中の工事は時間帯が限られ、割高になる | 「この機器を10年後に更新する場合、天井のどこを開けますか。営業しながらできますか」と着工前に確認して議事録に残す |
| 決めること | 判断の考え方 | 現場で確かめる・図面で確認する内容 |
|---|---|---|
| 必要な明るさの水準 | 先に「どこで何を見せるか・何をするか」を決め、そこから明るさを決める。消費電力から逆算しない | 照度計(スマートフォンのアプリでも傾向は分かる)でレジ、客席、商品棚、厨房の照度を測り、平面図に数値を書き込む |
| 回路の分け方 | 営業中に必要な灯り、閉店後の清掃用、納品用、看板用を分ける。分けていないと常に全灯するしかない | 電気図面のスイッチ系統図を見て、「この回路を切ると店内はどうなりますか」を1回路ずつ内装会社に説明してもらう |
| 什器照明の扱い | ショーケース、棚下、サイネージ、看板は常時点灯になりやすい。台数が多いと合計は無視できない | 什器に付いている照明の数を数え、銘板または仕様書から消費電力を拾って合計する。什器の発注前に行う |
| 調光と時間帯制御 | ランチとディナー、開店直後と閉店前で必要な明るさは違う。調光は雰囲気づくりと省エネを両立できる数少ない対策 | 「調光を入れる場合、器具と調光器の追加費用はいくらですか」と見積もりの明細で確認する |
| 既存器具を替えるときの方式 | 器具ごと交換するか、中身だけ替えるかで費用と危険性が変わる。安易な中身交換は器具の種類によって制約がある | 既存器具の型番と、内部の安定器の型番を写真に撮り、電気工事店に「この器具はどの方式で交換すべきか」を判断してもらう |
| 照明の発熱と空調の関係 | 照明の発熱はそのまま空調の負荷になる。消費電力の削減は、電気代と空調負荷の両方に効く | 店内の照明の合計ワット数を出し、空調の選定条件としてその数値を内装会社に渡す |
| 決めること | 判断の考え方 | 現場で測る・確かめる内容 |
|---|---|---|
| ガラス面の大きさと向き | 見せたい面積と入ってくる熱はトレードオフ。西向きの大きなガラスは夏の午後に最も効く | 店の向きを方位磁石で確認し、夏の15時前後に店内の床面に手を当てて、直射が当たる範囲を平面図に描く |
| 日射を遮る方法 | 外側で遮るほうが室内で遮るより効く。庇、袖看板、樹木は意匠と兼ねられる | 近隣の同じ向きの店を歩いて、庇やスクリーンの有無と、店内の暑さの違いを体感して写真に撮る |
| 出入口の構成 | 風除室、二重扉、自動ドアの開放時間設定。開閉の頻度が少ない店では過剰投資になる | 営業中の1時間、扉が開いた回数と、開いていた秒数を数える。ピークの時間帯と閑散の時間帯の両方で行う |
| 扉まわりの温度差 | 入口付近だけ寒い・暑い店は、その不快さを打ち消すために空調を強く回すことになる | 冬の朝、扉の内側1メートルと店の奥に温度計を置き、開店から2時間の差を30分おきに記録する |
| 天井の扱い | 天井を張らないと高さは稼げるが、空調する体積が増え、屋根や上階からの熱を受けやすくなる | 点検口を開けて天井裏を見て、断熱材の有無と、屋根直下かどうかを写真に撮る。夏の昼に天井面に手をかざす |
| 後から手を付けるときの重さ | 開口部の工事は外観に関わるため、貸主の承諾や近隣への説明が必要になることがある。営業中の施工も難しい | 賃貸借契約書の造作の条項を読み、「ガラス面に内窓を追加する場合、承諾が要りますか」と管理会社に書面で質問する |
| 決めること | 判断の考え方 | 実測する・確かめる内容 |
|---|---|---|
| 給湯の同時使用のピーク | 能力は平均ではなくピークで決まる。ピークだけを満たす能力を選び、それ以上は求めない | 1営業日、お湯を使うたびに「場所・開始時刻・分数」を記録する。3日分取れば同時使用の山が見える |
| 給湯器と使用場所の距離 | 配管が長いと、湯が来るまでに捨てる水と熱が毎回発生する。平面計画の段階でしか短くできない | 平面図に給湯器の位置と、湯を使うすべての蛇口を印で入れ、配管の経路の長さを図面上で測る |
| フードの排気風量 | 必要な風量は火気の種類と大きさで決まる。過大な風量は空調した空気を捨てることになる | 「この厨房機器の構成で必要な排気風量はいくつですか。根拠を計算書で示してください」と設備業者に依頼する |
| 給気の経路 | 排気した分は必ずどこかから入る。給気口がなければ客席や扉から引っ張られ、客席が不快になる | 厨房の排気を全開にした状態で、客席の扉や窓の隙間に薄い紙を当てて、空気が引っ張られていないか見る |
| 排気の風量切り替え | 調理が集中する時間とそうでない時間で必要量が違う。切り替えは工事のときに仕込むほうが安い | 「排気ファンを2段階または無段階で切り替える場合、追加費用はいくらですか」と見積もりの明細で確認する |
| 食器洗浄の方式と台数 | 1日の洗い物のピーク量から決める。回数が少なければ待機中の保温にエネルギーを使うだけになる | 1営業日に出る食器の量をラック数で数え、時間帯ごとに記録する。3日分の平均とピークを出す |
| 決めること | 判断の考え方 | 現場で確かめる内容 |
|---|---|---|
| 設置場所と離隔距離 | 放熱できない場所に置くと効率が落ちる。取扱説明書の離隔距離が図面に反映されているかが分かれ目 | 機器の取扱説明書から背面・側面・上面の必要寸法を書き出し、平面図の寸法と突き合わせる |
| 熱源との距離 | 厨房のコンロやフライヤーの近くに置くと、冷やす負荷が常に上乗せされる | 営業中に冷蔵設備の周囲の室温を測り、店内の他の場所と比べる。差が大きければ配置の見直しを検討する |
| 扉の有無とタイプ | オープンタイプは取りやすいが常に外気と接する。扉付きは光熱費に有利だが、手に取る動作が一つ増える | 売場での滞在時間と手に取る回数を30分観察して数え、扉を付けた場合の影響を見積もる |
| 扉を開けている時間 | 開けている時間の合計が、冷やし直すエネルギーを決める。作業の順番を変えるだけで短くできる | 1営業日、業務用冷蔵庫の扉が開いた回数と秒数をスタッフに記録してもらい、合計時間を出す |
| 庫内の設定温度と実温度 | 必要な温度帯は商品で決まる。設定と実温度がずれていれば、無駄に冷やしているか、危険な状態のどちらか | 庫内に温度計を置いて実温度を測り、機器の表示と比べる。差があれば点検を依頼する |
| 凝縮器の清掃頻度 | 熱を捨てる部分にほこりが付くと効率が落ちる。清掃は費用がかからず、効果が持続する対策 | 機器の背面や下部の網目部分を懐中電灯で照らし、ほこりの状態を写真に撮る。清掃の頻度を決めて掲示する |
| 決めること | 判断の考え方 | すぐに実行できる行動 |
|---|---|---|
| 分電盤の回路名 | 何を止めると何が止まるかが分からなければ、対策の効果も測れない。費用はほぼかからず、効果は全対策の前提になる | 閉店後にブレーカーを1つずつ落として何が止まるかを記録し、正しい名前のラベルを作って貼り直す |
| 計測器を付ける余地 | 主要な回路の使用量が個別に見えると、どの対策が効いたかを検証できる。工事のときに場所を空けておくと後が楽 | 「分電盤に回路ごとの計測器を後から追加できますか。そのためのスペースを残せますか」と電気工事店に確認する |
| スケジュール制御の対象 | 看板、サイネージ、換気扇、保温、バックヤード照明。消し忘れが起きやすいものを自動で切る | 閉店後に店内を一周し、まだ点いている・動いているものをすべて書き出す。それが制御の候補になる |
| 制御用の配線経路 | 後から制御を追加するには配線が要る。工事のときに空配管を通しておけば、後の費用が大きく変わる | 「将来、照明と換気に制御を入れる可能性があります。空配管を通しておけますか」と着工前に依頼する |
| 効果の検証方法 | 対策の前後で比べる。ただし気温が違えば使用量も違うので、前年同月と比べるのが基本 | 対策を実施した日付を記録し、前年同月の検針票と使用電力量を並べた表を作る。金額ではなく使用量で比べる |
| 診断制度の活用 | 自力での分析が難しければ、国の事業として実施されている省エネ診断を使う。診断結果は補助金申請の材料にもなる | 省エネ診断のサイトで比較表とフローチャートを確認し、自店に合うメニューと診断機関を選んで申し込む |
投資回収を「1日◯円」に翻訳する
削減額を月単位で見ると小さく感じますが、10年で見ると内装工事の一費目に匹敵します。
対策ごとに「後からやるとどれだけ重くなるか」も表にしました。重いものから、工事のときに決めてください。
| 投資額と月の削減額(仮定) | 回収期間と1日あたりの金額 | 客単価1,000円の店なら1日何人分か |
|---|---|---|
| 30万円/月6,000円 | 50か月=4年2か月。1日あたり200円(月30日で計算) | 0.2人分。粗利率50%なら0.4人分。ほぼ判断に迷わない水準 |
| 60万円/月1万2,000円 | 50か月=4年2か月。1日あたり400円 | 0.4人分。粗利率50%なら0.8人分。設備寿命が10年なら回収後に約84万円が残る |
| 150万円/月2万円 | 75か月=6年3か月。1日あたり667円 | 0.7人分。粗利率50%なら1.3人分。設備寿命との差が小さく、判断が分かれる水準 |
| 300万円/月2万5,000円 | 120か月=10年。1日あたり833円 | 0.8人分。粗利率50%なら1.7人分。回収に10年かかるため、光熱費だけを理由にすると判断が難しい |
| 300万円/月2万5,000円+故障停止の回避 | 光熱費だけなら10年。ただし夏に空調が止まって1日休業する損失を加えると評価が変わる | 1日の売上が10万円で年1回の停止を避けられるなら、その分を削減額に加えて再計算する |
| 300万円/月2万5,000円+補助金 | 補助を受けられれば自己負担が下がり、回収期間はその比率で短くなる | 補助額は年度と公募要領で決まるため、必ず自分の申請条件で計算し直す |
| 対策 | 後から実施する場合に追加で発生すること | 着工前に確認しておくこと |
|---|---|---|
| 対策1|契約電力とデマンド | 工事を伴わないため、いつでも着手できる。ただし契約の変更に条件や期間の制約がつくことがある | 契約している小売電気事業者に「契約の変更に条件や違約金はありますか」と確認する |
| 対策2|空調 | 天井の開口、配管の入れ替え、室外機の搬入。営業中は夜間工事になりやすく、割高になる | 「更新時に天井のどこを開けますか。営業しながらできますか」を議事録に残す |
| 対策3|照明 | 器具の交換だけなら比較的軽い。ただし回路を分け直すには壁と天井を開ける必要がある | スイッチ系統図をもらい、回路の分け方を着工前に決める。追加費用を明細で確認する |
| 対策4|断熱と開口部 | 外観に関わるため貸主の承諾が要ることがある。足場や近隣への説明が必要になる場合もある | 賃貸借契約書の造作の条項を読み、開口部に手を入れる場合の承諾要否を書面で確認する |
| 対策5|厨房・給湯 | 厨房を止める必要があり、飲食店では実質的に休業になる。ダクトの経路変更は天井を開ける | 厨房機器の配置と給湯の同時使用を、レイアウト確定前に実測データで固める |
| 対策6|冷蔵・冷凍設備 | 什器の入れ替えは売場の停止を伴う。放熱スペースが足りなければ、什器の配置全体を組み替えることになる | 取扱説明書の離隔距離を平面図に反映させ、寸法が確保されているか着工前に確認する |
| 対策7|計測と運用 | 分電盤の整理はいつでもできる。制御の追加は配線が要るため、空配管がなければ壁と天井を開ける | 「将来の制御追加に備えて空配管を通せますか」と着工前に依頼し、見積もりに入れる |
補助金・税制の使いどころ
省エネ設備には補助金と税制の優遇があります。ただし、申請の前に発注すると対象外になるものがあります。いつ何をするかの順序が決まっています。
| 段階 | この段階でやること | やらないと何が起きるか/確認先 |
|---|---|---|
| 設備の検討を始めた時点 | その年度の公募要領を探し、対象設備の区分と締切、交付決定の時期を確認する | 締切を過ぎてから知ると、次の公募まで工事を待つか、補助を諦めるかの二択になる。確認先は執行団体のウェブサイト |
| 機種を絞り込む時点 | 候補の型番が補助対象設備として登録されているかを確認する。税制なら工業会等の証明書が出る機種かを確認する | 登録されていない型番を選ぶと、後から変更が必要になり、工期に影響する。確認先は執行団体の対象設備一覧と設備メーカー |
| 見積もりを取る時点 | 補助対象になる部分とならない部分を、見積書の明細で分けてもらう | 一式表示のままでは申請書類が作れず、差し戻される。確認先は内装会社と設備業者 |
| 申請する時点 | 必要書類をそろえ、締切に間に合うよう提出する。金融機関の確認書による加点措置があるかを確認する | 書類の不備は差し戻しと審査の遅延につながる。確認先は執行団体の申請の手引きと、取引のある金融機関 |
| 交付決定を待つ時点 | 交付決定が出るまで、対象設備の発注・契約を行わない | 先に発注すると補助の対象外になる。工期が押す場合は、対象外の工事から先行させる段取りを内装会社と相談する |
| 工事・支払いの時点 | 実績報告に必要な書類(契約書、請求書、振込控、設置後の写真)を漏れなく保管する | 書類が揃わないと補助金が支払われないことがある。確認先は執行団体の交付規程と実績報告の手引き |
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よくある質問
光熱費の相談で実際によく出る質問を4つ挙げます。 いずれも「いくら下がりますか」という形で聞かれることが多いのですが、 その問いには一律の答えがありません。 削減額は、いま何が付いていて、それを何時間動かしていて、 自店の単価がいくらかという三つで決まるからです。
ここでは、答えの数値を出す代わりに、 自分でその数値を出すために何を見ればよいかを書きました。 料金や制度の細部は契約している小売電気事業者やガス事業者、 補助金の窓口によって異なるため、最終的な確認はそれぞれの発表元で行ってください。
電気代が高いと感じています。まず何から手をつけるべきですか?
最初にやることは設備の入れ替えではなく、検針票を12か月分そろえて内訳を分けることです。 電気の料金は大きく基本料金と電力量料金に分かれ、 そこに燃料費調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金が乗ります。
基本料金は契約電力または契約容量で決まる固定の部分なので、 使用量をいくら減らしても契約を見直さないかぎり下がりません。 一方で電力量料金は使った分だけかかるので、機器の効率と運転時間で動きます。 この二つを分けずに「電気代が高い」と言っている状態では、どの対策が効くかを判断できません。
12か月分を並べて、基本料金がほぼ一定であること、 電力量料金が夏と冬に膨らむことを自分の目で確認してください。 そのうえで、夏冬の増分が大きければ空調と断熱、 年間を通じて底が高ければ照明と冷蔵冷凍というように、優先順位を決めます。
無料または低額で受けられる省エネ診断の制度もあるので、 自力での分解が難しければそちらを使う方法もあります。
LED照明に替えれば電気代はどのくらい下がりますか?
何パーセント下がるという一般論は、この記事では書きません。 削減額は、いま付いている器具の消費電力と台数、1日の点灯時間、 そして自店の電力量料金の単価で決まるため、店ごとにまったく違うからです。 計算に必要な数字は自分で集められます。
器具本体または安定器に貼られた銘板から消費電力を読み、台数を数え、 1日の点灯時間を掛けると1日の消費電力量が出ます。 これを新しい器具の消費電力で置き換えて差を取り、 月の営業日数と検針票から逆算した1キロワット時あたりの単価を掛ければ、月いくら下がるかが出ます。 注意点が二つあります。
ひとつは、照明は明るさを確保することが目的なので、 消費電力だけを下げて必要な照度を割ってはいけないこと。 もうひとつは、蛍光灯器具の中身だけを直管LEDに替える方式は、 器具の種類によっては安全上の制約があるため、 器具ごと交換する方式と費用と危険性を比べて選ぶ必要があることです。
空調は古くても動いていれば、替えないほうが得ですか?
動いているかどうかではなく、能力が出ているかどうかで判断してください。 業務用空調は年数が経つと、熱交換器の汚れ、冷媒の減少、室外機の設置環境の悪化などによって、 同じ設定温度にするために長く強く運転するようになります。 カタログ上の消費電力が変わらなくても、運転時間が延びれば電気代は増えます。
判断の材料になるのは、夏場に設定温度まで下がりきるか、 真夏日に室外機が停止していないか、修理の頻度が上がっていないか、 部品の供給期間が終わっていないかの四つです。 とくに部品の供給が終わっている機種は、真夏に壊れると営業を止めるしかなくなります。
その日の売上を失う損失を考えれば、計画的に更新するほうが安く付くことがあります。 更新を決めたら、単に同じ能力の新品に替えるのではなく、 室外機の置き場所、吹き出しの向き、外気を取り入れる経路まで含めて見直してください。 ここは工事のときにしか触れない部分です。
補助金を使えば、省エネ設備の費用はどのくらい安くなりますか?
補助率も上限額も対象設備も、年度ごとの予算と公募要領で変わるため、固定の数字はありません。 この記事の執筆時点では、経済産業省資源エネルギー庁の省エネ補助金は 令和7年度補正予算のもとで公募が行われ、 執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブが窓口になっています。
設備単位型では、電気式パッケージエアコン、ガスヒートポンプエアコン、高性能ボイラ、変圧器、 電気冷蔵庫・電気冷凍庫、冷凍機内蔵形ショーケース、産業用モータ、制御機能付きLED照明器具といった 区分ごとに省エネルギー量の計算手引きが用意されています。
重要なのは、対象になるのは指定された型番の設備であること、 そして原則として交付決定の前に発注や契約をしてしまうと対象外になることです。 工事のスケジュールを先に固めてしまうと申請できなくなるため、 設備の選定と同時に公募要領を読み、締切から逆算して発注時期を決めてください。
まとめ|光熱費を下げる7つの対策
光熱費は、開店してから頑張る費目ではありません。工事の図面が固まるまでに、ほとんど決まります。
まずは検針票を12か月分そろえてください。何が高いのかが分かれば、次にやることは自動的に決まります。