15坪にセット面を何台入れられるか。答えは坪数ではなく、目標月商から出ます。必要な台数が先で、入る台数はそのあとです。

セット面1台が1日4人・客単価7,000円・月25日営業なら、1台あたりの売上は月70万円。台数を1台間違えると、年で800万円以上ずれます。

決めることは8つ。席数、セット面の寸法、シャンプー台、給湯と電気、通路と動線、面積配分、保健所の基準、そして増席の余地。

この記事でわかること

  • セット面の台数を売上目標と回転から逆算する手順と、その計算に必要な数字を自店のどこから取るか
  • セット面1台の占有幅を、鏡・椅子を引く分・施術者が立つ分・ワゴン・通路の5つに分解して実測する方法
  • シャンプー台の台数を1週間分の予約表から積み上げる手順と、位置を先に固めなければならない理由
  • 給湯器の号数が冬に何割落ちるかを自分で計算する方法と、電気容量を機器の銘板から積み上げる手順
  • 名古屋市が示す美容所の基準(作業所は美容椅子2台まで13平方メートル、1台増すごとに3平方メートル)から、面積の上限台数を計算する方法
  • 法令の上限台数と、実際に成立する台数の差が何に食われているかと、その差を図面上で見つける手順
  • 増席の余地を残すかどうかを、家賃と将来の工事と保健所への届出の3つから判断する考え方
セット面エリアが40〜50%、シャンプーエリアが15〜20%、受付・待合が10〜15%、バックヤードが10〜15%、残りが通路・その他。
セット面とシャンプーで6割を超える|残る4割で受付・待合・バックヤード・通路をまかないます。シャンプーエリアは給排水の位置に縛られるため、席数を増やしたくなったときに動かせるのはセット面のほうです。

「15坪に何台入るか」に答えが出ない理由

理由は4つ。そのうち3つは、図面を頼む前に自分で決められます。目標月商、客単価、そして施術者の人数です。

「何台入るか」に答えが出ない4つの理由と、図面を頼む前に自分で決めておくこと
答えが出ない理由 何が起きているか 図面を頼む前に自分で決めること
「1台あたり」の範囲が揃っていない 鏡とミラー台だけの正味面積と、通路・待合・裏方を頭割りした面積が、同じ数字として流通している 正味(鏡・椅子・施術者・ワゴン)と共用(通路・待合・裏方)を紙の上で二つに分け、どちらの数字を話しているかを毎回明示する
法令の下限と、使える条件を混同している 条例の面積基準を満たした図面が、施術しにくい配置になっていても誰も止めない 管轄保健所の基準で計算した上限台数と、寸法から積み上げた台数の両方を出し、小さいほうを採用する
席数と人数を混同している スタイリストが3人の店に8台つくり、使わない面積の家賃を払い続ける 開業時と3年後のスタイリスト数・アシスタント数を数字で書き出し、そのうえで必要な台数を決める
シャンプー台の制約を後回しにしている セット面の配置を決めたあとにシャンプー台を押し込み、動線が交差する 内覧時に既存の排水位置を写真で記録し、そこからの距離を図面に落としてからセット面を並べる

美容所の数と美容師の数を、統計で確かめる

衛生行政報告例に、施設数と従業美容師数が出ています。1施設あたりの美容師数から、自店の席数計画の位置が見えます。

美容所の施設数と従業美容師数(令和6年度末現在・衛生行政報告例)と、席数計画への読み替え
区分 施設数と従業美容師数 自分の計画と突き合わせること
全国 美容所277,752施設/従業美容師588,291人/1施設あたり2.12人 自分の想定人数が2人台なら平均的、5人以上なら上位の規模。規模に応じて管理美容師の要否も変わる
愛知県 美容所14,325施設/従業美容師33,022人/1施設あたり2.31人 県内の平均像は2人から3人。この人数で回る台数を先に置き、そこから増席の余地を考える
名古屋市(再掲) 美容所4,992施設/従業美容師13,695人/1施設あたり2.74人 市内は全国平均より1店あたりの人数が多い。同じ商圏の競合が何人体制かを、店頭の掲示や求人から数える
理容所との比較 理容所は全国107,995施設で前年度比2.1%減、美容所は1.3%増 店舗数が増えている業種であることを前提に、席数ではなく通いたくなる理由で差をつける計画になっているか確認する

美容所の構造設備は、誰が決めているのか

美容師法、施行規則、衛生管理要領、そして自治体の運用。層が分かれていて、数値を決めているのは主に自治体です。確認先を表にしました。

美容所の構造設備をめぐる層の分かれ方と、確認先
層 定めていること 自分で確認する方法
法律(美容師法) 第11条で開設の届出、第12条で検査と確認を受けるまで使用禁止、第13条で講じるべき措置の枠組み、第18条第3号で罰則 e-Gov法令検索で第11条から第13条までを通して読み、「構造設備」という語がどこに出てくるかに印を付ける
省令(美容師法施行規則) 第19条で開設届の記載事項(第4号に「美容所の構造及び設備の概要」)、第26条で床・腰板・洗場・汚物箱、第27条で照度100ルクスと炭酸ガス濃度 照度計を借りて、いま使っている店または見学した店のセット面で作業面の照度を測ってみる
条例・自治体の指導基準 作業所と待合所の面積、美容椅子の台数と面積の関係、区画の方法、消毒設備の種類など、図面に直接効く数値 管轄保健所の「開設のしおり」を入手し、面積に関する項目だけを抜き出して図面に赤で書き込む
通知(衛生管理要領) 厚生労働省が技術的助言として示す望ましい水準。作業面照度300ルクス、炭酸ガス5,000ppm以下、温度17〜28℃など 法令の下限と要領の望ましい値の差を一覧にし、どこまで自店で満たすかを設計者と決める

決めること1〜2|席数と、セット面まわりの寸法

目標月商を客単価と営業日数で割る。そこから1日の必要人数が出て、必要な台数が決まります。5段階の逆算を表にしました。

セット面1台の占有幅は、鏡の幅ではありません。椅子、施術者が立つ位置、後ろを通る幅まで含めて、5つに分解して実測します。

目標月商からセット面の必要台数を逆算する5段階
段階 計算(編集部の試算例) 自分の店の数字をどこから取るか
1|目標月商を決める 家賃30万円+人件費90万円+借入返済10万円+その他30万円=固定費160万円。粗利率60%として月商267万円 物件の賃料は募集図面、人件費は想定する体制の給与、返済額は金融機関の返済予定表から書き写す
2|客単価で割る 267万円 ÷ 客単価7,000円 = 月間381人 勤務していた店のレジ締めか、開業予定エリアの競合のメニュー表から、カット・カラー・パーマの構成比で加重平均を出す
3|営業日数で割る 381人 ÷ 月25日 = 1日16人 定休日と自分が休む日を先にカレンダーに入れ、実際に営業する日数を数える
4|必要な施術者数を出す 1日16人 ÷ 1人あたり5人 = 3.2人。スタイリスト4人体制が必要 1人あたりの人数は、直近1か月の自分の施術記録から「入客数 ÷ 出勤日数」で算出する
5|セット面の台数を決める スタイリスト4人+放置・待機用2台 = 6台 放置用の台数は、カラーの比率と放置時間の合計をピーク時間帯に重ねて必要数を数える
セット面の台数と施術者数の関係|何台が同時に動いているか
構成 同時に動く台数と余る台数 図面で確認すること
スタイリスト1人・4台 常時動くのは1台。残る3台は放置と待機。1人でカラーを回すには最低2台必要 1人で受付・施術・会計をこなす前提で、レジから全席が見えるか、鏡越しに入口が見えるかを平面図で確かめる
スタイリスト2人・アシスタント1人・5台 常時動くのは2台。放置2台、予備1台。アシスタントはシャンプーとカラー塗布で移動し続ける アシスタントの移動経路が、お客様の入退店の経路と交差していないかを線で引いて確認する
スタイリスト4人・アシスタント2人・6台 常時動くのは4台。放置と待機で2台。6人が同時に店内にいる前提で通路幅を決める 6人が同時に立った状態で、すれ違いが発生する場所を平面図に丸で囲み、その場所の幅を測る
スタイリスト4人・8台 常時動くのは4台。4台が余る。売上は増えないのに家賃と内装費だけが増える 余る台数分の面積に賃料単価を掛け、その金額を毎月払い続ける理由を紙に書けるか試す
セット面1台の占有幅を5つに分解して実測する
分解する要素 何のための寸法か 自分で実測する方法
鏡とミラー台の幅 隣の席との視線の切れ方と、ドライヤー・アイロンの置き場所を決める。物販の陳列を兼ねる場合はさらに幅が要る 採用したいミラー台の商品ページから外寸を控え、上に置く道具を実際に並べて必要な幅を測る
椅子を後ろに引く分 お客様が座る・降りるときに必ず生じる移動量。ここを取らないと、毎回椅子を持ち上げることになる いま使っている椅子で、お客様が実際に座るときの位置と施術中の位置の差を巻尺で測り、床にテープで印を付ける
施術者が立つ範囲 カット時に椅子のまわりを回る動き。正面・左右・背後の4方向すべてで必要になる 施術者役の人に椅子の背後へ回ってもらい、背中から鏡までの距離を測る。かがむ動作も含めて測る
ワゴンの置き場 薬剤・タオル・道具を載せる台。施術中は施術者の手が届く位置に固定される 使っているワゴンの外寸(幅・奥行)を測り、施術者が立つ範囲のどちら側に置くかを決めて図面に描き込む
背後を通る幅 アシスタントがタオルを運び、お客様がシャンプーへ移動するための通路。施術者が立つ範囲と兼用しない 自分の肩幅に冬の上着の厚みを足した数値を出し、ワゴンを押した状態ですれ違えるかを実際に試す
セット面の配置3類型と、それぞれで先に確認すること
配置の型 向く物件と、注意する点 図面が出てきたら確認すること
壁付け(一列) 間口が狭く奥行のある区画に向く。鏡を壁に固定するので配線を隠しやすく、奥行も取りやすい。背後が全席共通の通路になる 背後の通路が、施術者が立つ範囲と兼用になっていないか。図面上で施術者の立ち位置を丸で描き足して確かめる
対面(両側の壁) 幅のある区画で台数を稼げる。ただし中央の通路を両側の施術者が同時に使うため、幅が足りないと背中がぶつかる 両側の施術者が同時に背後へ回った状態を想定し、中央通路の幅から施術者2人分を引いて残りが通れるか計算する
島型(中央に独立設置) 意匠性は高いが、鏡の裏に配線と給電の経路が要るため造作費が上がる。1台あたりの占有面積も大きくなる 鏡の裏に通す電源の系統と、コンセントの数・位置が電気図面に描かれているか。あとから足せない部分なので着工前に確認する

決めること3〜4|シャンプー台と、給湯・電気

シャンプー台の台数は自店の予約表から積み上げます。同時にシャンプーが重なる時間帯が、必要台数を決めます。

給湯は号数から実際の湯量を計算できます。電気は機器の銘板から積み上げます。どちらも内覧の場で確かめられます。

シャンプー台の必要台数を自店の予約表から積み上げる手順
手順 何を数えるか 具体的な作業
1|施術の内訳を数える カットのみ、カラー、パーマ、トリートメント、ヘッドスパの件数。シャンプー台を使う回数は施術ごとに違う 直近1週間分の予約表を印刷し、施術ごとにシャンプー台を使う回数を「正」の字で数える
2|1件あたりの占有時間を測る お客様が台に横になってから起き上がるまでの時間。薬剤を流す工程は想定より長い スマートフォンのストップウォッチで、カラー後の流しとカットのみの流しを5件ずつ測り、平均を出す
3|ピーク時間帯に重ねる いちばん混む2時間に、シャンプー台の占有時間の合計が何分になるか 件数×占有時間を足し、その合計が「120分×台数」を超えていないか計算する。超えたら台数が足りない
4|将来の構成変化を織り込む ヘッドスパやトリートメントを増やす計画があるなら、占有時間は伸びる 3年後のメニュー構成を紙に書き、その構成で手順3を再計算して、増える分の台数を出す
シャンプー台の位置を決める前に確認する項目
確認項目 なぜ効くか 内覧・現地で確かめる方法
既存の排水位置 ここから離れるほど床を上げる必要が出る。前の用途が飲食店なら排水は太いが位置が偏っていることが多い 床の点検口とマンホールの位置を写真に撮り、入口からの距離を歩測して図面に書き込む
床を上げる高さ 段差は毎日の移動に効く。上げた分だけ天井高も下がり、圧迫感が出る 内装会社に「排水勾配を取ると床は何ミリ上がるか」を数値で答えてもらい、見積書と図面の両方に記載させる
セット面からの距離 1日に何十回も往復する経路。濡れた髪のまま移動する距離でもある 平面図の上でセット面の中心からシャンプー台までを線で結び、いちばん遠い席からの距離を測る
見せるか、隠すか 区切ると落ち着くが面積を食う。見せると開放感は出るが、横になった姿勢が客席から見える 自分が横になった状態から天井と周囲を見上げ、視界に何が入るかを実際に確かめる
背後の作業スペース 施術者が立つ場所。ここを通路と兼ねると、シャンプー中に人が背後を通ることになる 施術者役の人に台の背後に立ってもらい、その後ろをもう1人が通れるかを実際に試す
洗髪設備の清掃のしやすさ 衛生管理要領は、洗髪器を1日数回洗浄剤を用いて清掃するよう求めている。排水溝も1日1回以上の清掃対象 台の下と排水口に手が届くか、清掃道具を置く場所が近くにあるかを図面で確認する
給湯能力を自分で確かめる手順|号数から実際の湯量へ
確認する項目 なぜ必要か 自分で確かめる方法
既設または設置予定の号数 能力表示の出発点。これがないと計算が始まらない 給湯器本体の型番シールを写真に撮る。型番の中の数字と、メーカーの製品ページの仕様表を突き合わせる
冬の実効湯量 号数 × 25 ÷(設定温度-冬の水温)で、実際に出せる毎分の湯量が出る 冬に蛇口の水を洗面器に受け、温度計で水温を測る。その値を式に入れて計算する
シャンプー1回の使用湯量 1件あたり何リットル使うかが分かれば、同時使用の可否を判定できる 容量が分かるバケツにシャワーの湯を1分間出して量を測り、実際の施術時間を掛ける
同時に使う最大の組み合わせ シャンプー台2台+手洗い+バックヤードの洗い場が重なる瞬間がピーク ピーク時間帯の予約表を見ながら、お湯を使う作業が重なる時刻を洗い出す
増台したときの余力 シャンプー台を1台増やせば、必要な湯量もそのぶん増える 将来の台数で同じ計算をし、機器の交換が必要になる台数を先に把握しておく
電気容量を機器の銘板から積み上げる手順
段階 やること 具体的な作業
1|機器を書き出す 店で電気を使うものをすべて列挙する。空調と給湯(電気式の場合)を忘れない いま使っている店を歩き、コンセントに挿さっているものを片端からメモする
2|銘板の数値を控える 機器の背面や底面に、定格消費電力(W)または定格電流(A)が表示されている 各機器の銘板を写真に撮り、表計算ソフトに「機器名・W数・電圧」の3列で入力する
3|同時使用の組み合わせを作る すべてが同時に動くわけではない。実際に重なる最大の組み合わせを1つ決める ピーク時間帯を思い浮かべ、その時刻に動いている機器だけに印を付けて合計する
4|アンペアに換算する 合計W数を電圧(100Vまたは200V)で割ると、必要な電流が出る 100V機器の合計W ÷ 100 と、200V機器の合計W ÷ 200 を別々に計算して足す
5|物件の容量と突き合わせる 不足していれば引込みからの工事になり、費用と工期が跳ね上がる 契約前に、貸主または管理会社に「この区画の引込容量は何アンペアか」を書面で回答してもらう

決めること5〜6|通路と動線、そして面積配分

通路は何が通るかで幅が決まります。人だけか、ワゴンも通るか。現地で確かめる方法を表にしました。

面積配分には目安があります。削ったときに何が起きるかまで書きました。バックヤードを削ると、材料が客席側に出てきます。

通路の種類ごとに、何が通るかと、現地で確かめる方法
通路の種類 そこを何が通るか 現地・図面で確かめる方法
入口から受付までの主通路 入店するお客様、会計を待つお客様、上着や荷物。ベビーカーや車椅子で来られる方も通る 実際にベビーカーを借りて通してみる。曲がる場所での回転半径も確かめる
セット面の背後の通路 アシスタントとタオル、施術者、シャンプーへ移動するお客様。施術者が立つ範囲と兼用してはいけない 施術者役が背後に立った状態で、ワゴンを押した人がその後ろを通れるかを実際に試す
シャンプー台への経路 濡れた髪のお客様と、ケープ。滑りやすくなる箇所でもある 床材の見本を水で濡らして、実際に靴底で滑るかどうかを確かめる
スタッフのみが通る通路 薬剤、タオル、洗濯物、ごみ。ワゴンやカートが通る場合は幅が要る いちばん大きい荷物(タオルのかご、薬剤の箱)の外寸を測り、その幅で図面に線を引く
受付前の滞留スペース 会計を待つお客様と、入店してくるお客様が同時に立つ場所 会計に平均何分かかるかを測り、その時間に何人が重なるかをピークの予約表から数える
交差しやすい動線の組み合わせと、分けるための対策
交差する組み合わせ 起きること 図面で試すこと
入店するお客様と、会計を待つお客様 入口が塞がり、入ってきた方が待つ場所を失う。予約時刻が重なる時間帯に毎回起きる 受付カウンターの位置を入口から1メートル奥へずらした図を1枚描き、滞留の場所が生まれるか比べる
シャンプーへ移動するお客様と、ワゴンを押すスタッフ 濡れた髪のまま立ち止まることになる。ワゴン側が下がると薬剤の準備が遅れる シャンプー台への経路と、ワゴンの補充経路を別々の色で引き、重なる区間の長さを測る
薬剤を調合するスタッフと、タオルを運ぶスタッフ バックヤードの入口で詰まる。裏方が1か所に集約されている店で必ず起きる バックヤードの入口が1か所か2か所かを確認し、1か所なら扉の前に1メートル四方の余白があるか測る
便所へ向かうお客様と、施術中の席 施術中の背後を通ることになり、鏡越しに目が合う。落ち着かない時間が生まれる 便所の扉から入口までの経路を引き、その線がセット面の背後を通っていないか確かめる
美容室の面積配分の目安と、削ったときに何が起きるか
エリア 全体に占める割合と役割 削ったときに、どこに歪みが出るか
セット面エリア 40〜50%。店の中核であり、売上が立つ唯一の場所。台数×占有幅で決まる 間隔が詰まり、隣の会話が聞こえ、施術者が背後に回れなくなる。単価を上げにくくなる
シャンプーエリア 15〜20%。給排水の位置に縛られ、あとから動かせない。台の背後の作業スペースを含む 台の背後が通路と兼用になり、シャンプー中に人が背後を通る。回転が詰まると待ち時間が伸びる
受付・待合 10〜15%。名古屋市の基準では作業所の8分の1以上が必要。物販を置くならここに含める 会計待ちが入口を塞ぐ。基準を下回ると確認済証が下りず、営業が開始できない
バックヤード 10〜15%。薬剤・タオル・洗濯機・スタッフの荷物・休憩。作業場と隔壁で区分する必要がある タオルや薬剤の箱が客席から見える場所に積まれる。休憩する場所がなくなり、人が定着しなくなる
通路・便所・その他 残り。便所は隔壁で作業場と区分し、専用の手洗設備が要る。作業場内には従業者専用の手洗いが別に要る 手洗いを兼用にすると保健所の指導が入る。通路を削ると、上の4つすべてに影響が出る

決めること7〜8|保健所の基準という上限と、増席の余地

名古屋市の「開設のしおり」には13項目の基準があります。そこから計算した上限台数と、寸法から積み上げた台数には差が出ます。小さいほうが、実際に置ける台数です。

同じ愛知県内でも、開設手続きの運用は自治体で違います。必ず自分の所轄で確かめてください。

将来の増席に備える方法も4つあります。配管と電気だけ先に仕込むのが、いちばん安く済みます。

名古屋市が示す美容所の基準13項目と、図面で確認すること(出典:名古屋市「開設のしおり(美容所)」令和8年6月)
基準の項目 内容 図面・現地で自分が確認すること
① 作業所と待合所の区分 美容の作業を行う場所(作業所)と待合所とを区分して設ける 平面図に「作業所」「待合所」と文字で書き込み、境界に線が引かれているかを確かめる
② 作業所の床面積 美容椅子2台までは13平方メートル以上。美容椅子1台を増すごとに3平方メートル以上増す 置きたい台数を式に入れて必要面積を計算し、図面の作業所の面積(内法)と比べる
③ 待合所の床面積 作業所の床面積の8分の1以上 作業所の面積を8で割り、その値以上の待合所が図面に確保されているかを計算で確かめる
④ 床及び腰板の材料 コンクリート、タイル、リノリューム又は板等の不浸透性材料を使用する 仕上表の床材と幅木の欄を読み、カーペットやじゅうたんが指定されていないか確かめる
⑤ 洗場の流水装置 洗場は流水装置とすること ためた水を使う構造になっていないか、給水栓の位置が図面に描かれているかを見る
⑥ 洗い場・洗髪設備の排水 排水が完全に行われるよう設備する 排水経路と勾配が図面に描かれているか、床を上げる場合の高さが数値で書かれているかを確かめる
⑦ 汚物箱と毛髪箱 ふた付きの汚物箱及び毛髪箱を備える 置き場所が平面図に描かれているか。描かれていなければ、どこに置くかを自分で決めて書き込む
⑧ 作業面の照度 美容師が美容のための直接の作業を行う場合の作業面の照度を100ルクス以上とする 照明の配置図で、各セット面の真上または手前上方に器具があるかを確認する
⑨ 炭酸ガス濃度 美容所内の空気中の炭酸ガス濃度を0.5%以下に保つ 換気設備の能力と、給気と排気の位置が図面に描かれているかを確かめる
⑩ 消毒設備 皮膚に接する器具を消毒する設備を、その器具に応じた適切な消毒ができるよう設備する 消毒の場所が作業所内に確保され、消毒済みと未消毒の保管容器の置き場所が分かれているかを見る
⑪ 薬液消毒と紫外線消毒 薬液消毒及び紫外線消毒の設備を備える(紫外線強度は1平方センチメートル当たり85マイクロワット以上) 紫外線消毒器の置き場所と電源が図面にあるか。計量器と消毒容器の置き場も含めて確認する
⑫ 外部との区画 美容所は隔壁等により外部と完全に区画されている 休憩室など作業に直接関係のない部屋との間に、壁が描かれているかを平面図で確かめる
⑬ 上下水道への直結 洗い場及び洗髪設備は上下水道に直結していること 給排水図で、洗い場と洗髪設備が本管まで実線でつながっているかをたどる
名古屋市の基準から計算した上限台数と、寸法から積み上げた台数の差(編集部の試算例)
区画の面積 名古屋市の基準から計算した上限台数 寸法から積み上げた実務の目安と、差の使われ方
10坪(33.06平方メートル) 裏方に6平方メートルを充てると作業所は約24平方メートル、上限は5台 実務では3〜4台。差の1〜2台分は、通路と待合の最低限を確保するために使われる
15坪(49.59平方メートル) 裏方に9平方メートルを充てると作業所は約36平方メートル、上限は9台 実務では5〜6台。差の3〜4台分は、椅子を引く分と施術者が回る分と背後の通路に使われる
20坪(66.12平方メートル) 裏方に12平方メートルを充てると作業所は約48平方メートル、上限は13台 実務では7〜8台。差の5〜6台分は、通路の交差を避けるための余白と、独立した待合に使われる
25坪(82.64平方メートル) 裏方に15平方メートルを充てると作業所は約60平方メートル、上限は17台 実務では9台以上。差はエリア分けとスタッフ動線、個室やスパブースの検討に使われる
同じ愛知県内でも異なる、開設手続きの運用(各自治体の公表資料による)
項目 名古屋市の運用 自分の所在地で確認すること
検査手数料 16,000円(一宮市の資料では17,000円) 管轄保健所のページで金額と納付方法(現金か証紙か)を確認し、開業予算に入れる
開設届の提出時期 営業開始予定日の7日前まで。祝日や年末年始を複数挟む場合は2週間前まで 営業開始予定日から逆算し、書類がそろう日をスケジュール表に書き込む
窓口 市内4か所の保健センター環境薬務課(千種・中村・中・南)に集約。所在地の区で担当が決まる 物件の住所から担当窓口を特定し、事前相談の予約を取る前に電話番号を控えておく
事前相談 営業施設の基準があるため、図面等を提示して事前に指導を受けるよう求めている 平面図と機械器具等の配置図を持って、設計が固まる前に相談に行く
検査から営業開始まで 施設完成後に環境衛生監視員が検査。適合が確認されると確認済証が交付される 検査日を開設届の提出時に予約する。不適合なら改善後に再検査が必要になることを工程表に織り込む
構造設備を変更するとき 必ず変更する前に図面等を提示して相談。内容によっては新たに開設届が必要になる場合がある 増席や台の移設を計画した時点で、工事の発注より先に保健所へ相談する
増席の余地を残す4つの方法と、それぞれの効き方
残し方 何に効くか/効かないか 今日、図面に書き込むこと
電源だけ先に仕込む 将来セット面を置きたい位置に電源とスイッチを用意しておくと、増設時の工事が壁の中まで及ばない。給排水には効かない 将来位置に丸印を付け、電気図面にコンセントの記号を追加してもらう。回路の余力も確認する
可動式の什器を使う 造作で固定せず動かせる構成にすると、レイアウト変更に対応できる。ただし配線を床から立ち上げる場合は位置が固定される ミラー台を造作にするか既製品にするかを決め、既製品なら型番と外寸を図面に書き込む
シャンプー台は将来構成で決める 給排水は後から動かすのがいちばん高くつく。開業時の台数ではなく、3年後の台数で位置を決める 3年後の台数で必要な給排水の位置を図面に描き、開業時は使わない分の配管をどう処理するか設計者に相談する
面積そのものを余らせる いちばん自由度が高いが、いちばん高くつく。余らせた面積の家賃は毎月出ていく 余らせたい坪数に賃料坪単価を掛け、10年分の総額を計算して、増設工事の見積額と比べる

図面を頼む前に、自分の手で測る手順

いま使っている椅子で、座る位置と施術中の位置の差を測る。床に養生テープを貼れば、必要な幅がそのまま出ます。

坪数別のレイアウト成立モデル(編集部が寸法から積み上げた目安。法令の基準ではありません)
面積 セット面 シャンプー台 想定する体制と、この規模の課題
8〜10坪 3〜4台 1〜2台 個人〜2人。待合は最小限。バックヤードと2つの手洗いの確保がいちばんの課題になる
12〜15坪 5〜6台 2台 2〜3人。受付と待合を独立して取れる。管理美容師の設置が必要になる規模
18〜20坪 7〜8台 2〜3台 3〜4人。個室やスパブースの検討も可能。動線の交差が増えるので線引きの検証が要る
25坪以上 9台以上 3台以上 4人以上。エリア分けとスタッフ動線の設計が本格的に必要。給湯能力の余裕も別途検証する
図面を頼む前に自分の手で測る手順
  1. いま使っている椅子で、座る位置と施術中の位置の差を測る。床に養生テープで2本の線を引き、その間隔を巻尺で測ります。これが「椅子を引く分」です。
  2. 施術者が背後に回った状態で、背中から鏡までの距離を測る。かがむ動作も含めて、いちばん下がったときの位置で測ります。
  3. ワゴンの外寸を測る。幅と奥行の両方を測り、施術者が立つ範囲のどちら側に置くかを決めます。
  4. 自分の肩幅に、冬の上着の厚みを足した数値を出す。これが「人が通る幅」の最小値です。すれ違うなら2倍します。
  5. 1週間分の予約表から、シャンプー台を使う回数を数える。施術ごとに何回使うかを「正」の字で数えます。
  6. シャンプー1件あたりの占有時間を、5件ずつ実測する。カラー後とカットのみで分けて測り、それぞれの平均を出します。
  7. 店で使う機器の銘板を、全部写真に撮る。表計算ソフトに機器名・W数・電圧の3列で入力し、同時に使う組み合わせを1つ決めて合計します。
  8. 候補物件の内覧で、既存の排水位置を写真に撮り、入口からの距離を歩測する。床の点検口とマンホールの位置が手がかりになります。
  9. 方眼紙に、測った寸法でセット面を並べてみる。1マスを250ミリなどと決めて、椅子・施術者・ワゴン・通路をすべて描き込みます。
  10. 管轄保健所の「開設のしおり」を入手し、面積の項目を図面に赤で書き込む。名古屋市なら市の公式ウェブサイトからPDFで入手できます。

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よくある質問

この記事を書くにあたって、名古屋市と愛知県の公表資料、美容師法と同法施行規則の条文、厚生労働省の衛生管理要領、そして衛生行政報告例を確認しました。 そのうえで、実務でよく聞かれる4つに答えます。 いずれも、根拠のある部分と、根拠が見つからなかった部分を分けて書いています。

根拠が見つからなかった数値については、業界でよく見かける値であっても書いていません。 代わりに、自分で測って積み上げる手順を示しています。 面倒に見えますが、自店の数字から出した値のほうが、判断には使えます。

そして、構造設備の基準に関する部分はすべて名古屋市の運用です。 他の自治体では異なります。 最終的な確認は、必ず自分の所在地を管轄する保健所で行ってください。

15坪の物件に、セット面は何台まで置けますか?

法令の側から計算できる上限と、実務で成立する台数は別の数字になります。

名古屋市の「開設のしおり(美容所)」(令和8年6月・名古屋市健康福祉局生活衛生部環境薬務課)は、作業所の床面積を美容椅子2台までは13平方メートル以上とし、美容椅子1台を増すごとに3平方メートル以上増すこと、待合所の床面積は作業所の8分の1以上とすること、面積は内法で算定することを示しています。

15坪はおよそ49.59平方メートルです。 バックヤードや便所に9平方メートルを充てると残りは40.59平方メートルで、作業所と待合所の比率から作業所の上限は約36平方メートル、美容椅子は9台まで置ける計算になります。

ところが実際の図面で成立するのは5台から6台です。 差の3台から4台分は、鏡の前で椅子を引く分、施術者が背後に回る分、ワゴンが通る分、シャンプーへ移動する通路が食っています。 法令の面積基準は最低限であって、使える店になる条件ではありません。

なお構造設備の基準は自治体の条例と指導基準で定められており、名古屋市と一宮市では検査手数料も窓口も異なります。 台数を確定する前に、必ず自分の所在地を管轄する保健所へ図面を持って事前相談してください。

シャンプー台は何台必要ですか。あとから増やせますか?

台数を決める公的な基準は、編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。 したがって比率の目安ではなく、自店の施術構成から積み上げてください。

手順は、1週間分の予約表からカラーとパーマの件数を数える、1件あたりシャンプー台を占有する時間を実測する、その合計をピークの時間帯に重ねる、という3段階です。 占有時間の合計がピーク時間帯の長さを超えたら台数が足りません。

増設の可否は、給排水の位置で決まります。 名古屋市の美容所の基準は、洗い場および洗髪設備について、排水が完全に行われるよう設備すること、上下水道に直結していることを求めています。 既存の排水位置から離れた場所に台を置くと、勾配を確保するために床を上げることになり、段差が生まれます。

また名古屋市の「開設のしおり(美容所)」は、施設の構造設備を変更する場合は必ず変更する前に図面等を提示して保健所へ相談すること、変更の内容によっては変更届ではなく新たに開設届の提出が必要になる場合があることを明記しています。

シャンプー台は、あとから足せる設備ではなく、最初に位置を決める設備だと考えてください。

セット面の間隔は何ミリ必要ですか。法令の基準はありますか?

セット面の間隔そのものを定めた法令は、編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。 建築基準法施行令第119条は廊下の幅を定めていますが、同令第117条第1項により適用範囲が限られ、表にも店舗の作業空間に当たる行がありません。

したがって間隔は自分で決めるしかなく、決め方は寸法の積み上げになります。 積み上げるのは、鏡とミラー台の幅、椅子を後ろに引く分、施術者が背後に立つ分、ワゴンを置く分、その後ろを人が通る分の5つです。

この5つを自分の店の実物で測ってください。 測り方は、現在使っている椅子を実際に座った状態から引き、施術者が背後に回ったときの背中から鏡までの距離を巻尺で測る、ワゴンの外寸を測る、自分の肩幅に上着の厚みを足す、という手順です。

数値を業界の目安から借りるのではなく、自分が使う椅子とワゴンから積み上げると、削ってよい場所と削ってはいけない場所が図面上ではっきりします。

なお美容師法施行規則第27条第1号は、美容のための直接の作業を行う場合の作業面の照度を100ルクス以上と定めており、厚生労働省の理容所及び美容所における衛生管理要領は300ルクス以上が望ましいとしています。 間隔を詰めると器具の影が落ちやすくなるため、照度は間隔とあわせて確認してください。

名古屋市以外で開業する場合、基準は同じですか?

同じとは限りません。 美容師法第13条は、美容所の開設者が講じるべき措置として、常に清潔に保つこと、消毒設備を設けること、採光・照明・換気を充分にすることを挙げたうえで、第4号で「その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置」としています。

つまり構造設備の細かい基準は、国の法律や省令ではなく、都道府県または保健所を設置する市の条例と指導基準で決まります。 愛知県の「新たに理容所・美容所を開設される方へ」も、営業施設の基準の根拠として美容師法第13条、同法施行規則第26条・第27条とあわせて県条例第2条を挙げています。

愛知県内では名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、豊田市が独自に保健所を持ち、届出の様式も異なります。 実際、検査手数料は名古屋市が16,000円、一宮市が17,000円と差があります。 名古屋市は営業開始予定日の7日前までの提出を求め、祝日や年末年始を挟む場合は2週間前としています。

美容師法第12条は、構造設備について検査を受けて確認を受けた後でなければ美容所を使用してはならないと定め、同法第18条第3号はこれに違反した者を30万円以下の罰金としています。 したがって、席数を確定させる前に、必ず自分の所在地を管轄する保健所へ図面を持って相談してください。

まとめ|美容室のレイアウトで決める8つのこと

セット面1台は「1日何人のお客様か」に翻訳できます。そこまで出せば、1台増やすか通路を広げるかを、金額で決められます。

まず目標月商を決めてください。それがないと、何台必要かは永遠に決まりません。

金額を現場の感覚に翻訳する計算(すべて編集部の試算例)
翻訳する対象 計算の道筋 自店の数字に置き換える方法
セット面1台の年間粗利 7,000円 × 4人 × 25日 = 月70万円。材料費7万円と人件費30万円を引いて月33万円、年396万円 客単価はレジ締めの平均、1日の人数は自分の施術記録、人件費は求人票の想定給与から取る
内装費525万円 10年で割ると月4万3,750円。1人あたり粗利3,300円で割ると月13.3人分 見積総額を、自分が想定する回収年数で割る。回収年数は賃貸借契約の期間を上限にする
1台増やして単価が500円下がった場合 増える粗利は月33万円。6台×100人×500円=月30万円の減。差し引き月3万円しか増えない 席の間隔を詰めた店と広い店で、自分が払ってもよいと思う金額の差を、率直に紙に書き出してみる
増席工事で3日休業 6台 × 4人 × 7,000円 × 3日 = 売上50万4,000円。粗利では24人 × 3日 × 3,300円 = 約23万8,000円 過去の臨時休業の日の売上実績を見て、平均的な1日の売上と粗利を出す
2台分の面積を10年余らせる 3坪 × 坪単価1万5,000円 = 月4万5,000円。10年で540万円 募集図面の賃料を面積で割って坪単価を出し、余らせたい坪数を掛ける

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