20坪にブースを何席入れられるか。答えは坪数ではなく、ピーク時の同時在室人数から出ます。時間割が決まらないと、面積も決まりません。
20坪を坪30万円で仕上げれば内装費600万円。10年償却なら1日あたり約2,000円を空間に払い続けます。席が1つ足りなければ、その分だけ回収が遅れます。
決めることは9つ。ブースと集団教室の比率、机と通路、仕切り、照度、音、待合と送迎、防犯、法令、そして設備。すべて時間割の案から逆算できます。
この記事でわかること
- 個別指導ブースと集団教室で1人あたり何平方メートルを見込むかを、各種学校規程の条文を参照点にして決める手順
- 机の幅・奥行と背後の通路幅の決め方、そして席数を増やすときにどこから削ってはいけないか
- 仕切りの高さを「集中」と「見守り」のどちらに寄せるかを、業態と生徒さんの年齢から逆算する考え方
- 教室の照度と、板面・画面への映り込みについて、学校環境衛生基準が定める数値と「まぶしさ」の三条件
- 隣のブースの声と上下階への足音を、別の対策として分けて考える理由と、契約前に確認すること
- 学習塾が消防法施行令別表第一の(七)項と(十五)項のどちらに当たるかで何が変わるかと、所轄消防本部への確認のしかた
- ブースを1席増やしたときの内装費を「月謝いくらの生徒さんが何か月」に翻訳する計算手順
「1教室に何坪必要か」に答えが出ない理由
「教室」と呼ばれる業態は幅があります。個別指導、集団授業、自習室、オンライン併用。空間の性格が違うので、必要な面積も違います。
| 業態 | 空間としての性格 | 図面を頼む前に自分で確かめること |
|---|---|---|
| 個別指導の学習塾 | 1席あたりの正味面積は小さいが、席数が多く、通路と仕切りが面積を食う。講師が席の間を移動する前提で通路幅が決まる | ピーク時間帯に同時に座る最大席数と、講師1人が担当する席数(1対1か1対2か1対3か)を紙に書き出す |
| 集団授業の学習塾 | 1室あたりの人数が多く、後方の席から板面が読めるかが設計の中心。廊下と階段の混雑が時間割で決まる | 1コマの最大人数と、コマとコマの入れ替わり時間(5分か10分か)を決める。入れ替わりが短いほど廊下を広く取る |
| 英会話・語学教室 | 少人数で向かい合う形が多く、机の配置が固定されない。隣室の声が聞こえると会話の練習が成立しない | 同時に開講する部屋の数と、部屋どうしが壁1枚で接するかを図面上で数える |
| 音楽教室 | 楽器の種類で必要な面積と天井高が変わる。上下階へ伝わる音と振動の対策が費用の中心になる | 扱う楽器を列挙し、いちばん大きい楽器の寸法と、いちばん低い音を出す楽器を確認する |
| パソコン教室 | 机の奥行と電源・通信の経路が席の配置を縛る。画面への映り込みが席の向きを決める | 1席あたりの消費電力の想定と、画面の背後に窓や照明が来ない向きが取れるかを確認する |
| 料理教室 | 給排水・ガス・換気が必要で、内装費が他の業態と桁で変わる。作業台まわりの通路が広く必要 | 給排水の既存位置と、排気ダクトを外部へ出せる経路があるかを内覧時に写真で記録する |
| ダンス・バレエスタジオ | 床の性能が中心。鏡の面積と天井高、そして床から下階に伝わる振動が最大の論点 | 物件の真下の区画が何に使われているかと、その稼働時間が自分の営業時間と重なるかを確認する |
保護者が学習塾に払っている金額を、統計で確かめる
文部科学省の子供の学習費調査に、学校種別の補助学習費が出ています。商圏の想定人数と掛け合わせれば、売上の当たりが付きます。
市場規模のほうは、統計に制約があります。確かめられないことは、確かめられないと書きます。
| 学校種別 | 補助学習費(年額) | 自分の教室で今日確かめること |
|---|---|---|
| 公立小学校 | 約11万2千円 | 小学生向けの教室なら、年間11万円台が平均的な家計の負担であることを前提に、月謝と講習会費の合計を設計する |
| 私立小学校 | 約36万6千円 | 受験対応を掲げるなら、この層が主対象になる。席数より1席あたりの単価を上げる方向で面積を検討する |
| 公立中学校 | 約27万2千円 | 中学生が中心なら、年間27万円という枠に、月謝12か月分と季節講習が収まるかを試算する |
| 私立中学校 | 約23万7千円 | 私立中学生は公立中学生より補助学習費が少ない。私立校の近くという理由だけで単価を上げない |
| 公立高等学校(全日制) | 約20万1千円 | 高校生中心なら自習席の比率を上げる。滞在時間が長い分、1席あたりの面積を広めに取る |
| 私立高等学校(全日制) | 約23万8千円 | 私立高校生は公立高校生よりやや多い。ただし差は小さく、席数計画を変えるほどの差ではない |
| 公立幼稚園/私立幼稚園 | 約3万4千円/約5万円 | 幼児対象の教室は補助学習費より「その他の学校外活動費」の側で選ばれる。習い事としての設計に切り替える |
| 確認する項目 | 分かっていること | 自分の計画で今日やること |
|---|---|---|
| 経済産業省の動態統計は終了している | 「特定サービス産業動態統計調査」は、2004年1月分から学習塾を対象に加えていたが、2024年12月をもって調査が中止され、学習塾を含む20業種すべての調査が終了した | 2025年以降の学習塾の売上高・受講生数の月次推移を、この統計から取ることはできない。過去の推移として引用する場合は「2024年12月分まで」と明記する |
| 後継の統計は総務省に移っている | 2025年1月分からは、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」と総務省の「サービス産業動向調査」が統合され、総務省が「サービス産業動態統計調査」を実施している | 最新の動向を見たい場合は総務省統計局のサイトを確認する。ただし業種区分が同じとは限らないため、過去の数値と直接つなげない |
| 動態統計は上位企業の抽出だった | 特定サービス産業動態統計調査は、年間売上高の概ね7割程度をカバーする売上高上位の企業または事業所を有意抽出しており、抽出率を定めず標本誤差の算出も行っていなかった | この統計を「業界全体の事業所数」として読まない。小規模な個人塾の増減は、そもそも捕捉されていない |
| 回収率にも幅がある | 同調査の調査対象数は約2,550企業または事業所、回収率は73.4パーセント(2024年平均)と公表されている | 数値を引用するときは回収率まで添える。100パーセントの母集団調査ではないことを前提に読む |
| 子供の学習費調査は隔年である | 令和5年度調査は令和6年12月25日公表、令和8年1月16日に訂正版が出ている。次の年度の数値が出るまでには間隔がある | 引用時は必ず調査年度を書く。物価や月謝の水準が動いている前提で、そのまま現在値として使わない |
教室の空間に使える公的な基準と、その限界
学習塾は学校ではないので、各種学校規程がそのままかかるわけではありません。ただし数値の参考にはなります。
学校環境衛生基準には、照度、温度、換気、騒音の基準があります。ここが、教室の内装でいちばん使える数値です。
| 条文 | 定められている内容 | 自分の計画で今日やること |
|---|---|---|
| 第10条第1項(校舎の面積) | 校舎の面積は115.70平方メートル以上とし、かつ同時に授業を行う生徒一人当り2.31平方メートル以上(ただし書きあり) | 検討中の区画の面積を2.31で割り、同時に座らせられる人数の上限を出す。想定席数がそれを超えていないか確認する |
| 第10条第2項(校舎の構成) | 校舎には教室、管理室、便所その他必要な施設を備えなければならない | 教室のほかに事務室と手洗いを図面に必ず置く。この三つを描いてから残りの面積で席数を決める |
| 第5条第2項(生徒数) | 同時に授業を行う生徒数は40人以下(特別の事由があり教育上支障のない場合を除く) | 1室に入れる最大人数を決める。40人を超える集団教室は、避難経路の設計が一段厳しくなる前提で考える |
| 第11条第3項(照明設備) | 夜間において授業を行う各種学校は、適当な照明設備を備えなければならない | 夜間開講なら、外光をあてにした照度計算になっていないかを図面段階で確認する |
| 第9条第1項(位置) | 各種学校の位置は、教育上及び保健衛生上適切な環境に定めなければならない | 物件の周辺環境(騒音源・夜道の明るさ・人通り)を、開校時間帯に実際に歩いて確認する |
| 検査項目 | 基準として定められている値 | 自分の教室で今日やること |
|---|---|---|
| 照度(下限値) | 教室及びそれに準ずる場所の照度の下限値は300ルクス。また、教室及び黒板の照度は500ルクス以上であることが望ましい | 候補物件の既存照明のまま、机を置く高さでスマートフォンの照度計アプリを使い、実測値を記録する |
| 照度の均斉(ばらつき) | 教室及び黒板のそれぞれの最大照度と最小照度の比は20対1を超えないこと。また、10対1を超えないことが望ましい | 部屋の四隅と中央の5か所で照度を測り、最大値を最小値で割る。10を超えたら器具の配置から見直す |
| 画面を使う教室の照度 | コンピュータを使用する教室等の机上の照度は500から1000ルクス程度が望ましい。テレビやコンピュータ等の画面の垂直面照度は100から500ルクス程度が望ましい | パソコン教室やオンライン授業の席では、机上と画面で別々に照度を測る。画面が明るすぎる場所は席を移す |
| まぶしさ | 児童生徒等から見て黒板の外側15度以内の範囲に輝きの強い光源(昼光の場合は窓)がないこと。見え方を妨害するような光沢が黒板面及び机上面にないこと。見え方を妨害するような電灯や明るい窓等がテレビ及びコンピュータ等の画面に映じていないこと | いちばん後ろの席に座り、板面と画面を見る。照明や窓が映り込んでいたら、器具の位置か板面の位置を変える |
| 騒音レベル | 教室内の等価騒音レベルは、窓を閉じているときはLAeq50デシベル以下、窓を開けているときはLAeq55デシベル以下であることが望ましい | 候補物件で、授業予定の時間帯に窓を閉めた状態の騒音をアプリで5分間記録する。50デシベルを大きく超えるなら開口部の対策費を見込む |
| 換気(二酸化炭素) | 換気の基準として、二酸化炭素は1500ppm以下であることが望ましい | 同時在室人数が最も多い部屋で、換気設備の風量が足りるかを設計者に計算してもらう |
| 温度・相対湿度 | 温度は18度以上28度以下、相対湿度は30パーセント以上80パーセント以下であることが望ましい | ピーク時の在室人数を伝えたうえで、空調の能力を選定してもらう。人数分の発熱を見込まない選定になっていないか確認する |
| ホルムアルデヒド等 | ホルムアルデヒドは100マイクログラム毎立方メートル以下、トルエンは260マイクログラム毎立方メートル以下であること | 内装材の等級を見積書で確認する。造作家具の合板と接着剤まで含めて等級を指定する |
| 黒板面の色彩 | 無彩色の黒板面の色彩は明度が3を超えないこと。有彩色の黒板面の色彩は明度及び彩度が4を超えないこと | ホワイトボードを使うなら光沢の低いものを選ぶ。展示品を斜めから見て、天井照明が映るかを確認してから発注する |
| 条文 | 定められている内容 | 自分の計画で今日やること |
|---|---|---|
| 第119条(廊下の幅) | 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校における児童用又は生徒用の廊下は、両側に居室がある場合2.3メートル、その他の場合1.8メートル。居室の床面積の合計が200平方メートル(地階は100平方メートル)を超える階では、両側に居室がある場合1.6メートル、その他の場合1.2メートル | 各室の床面積を合計し、その階が200平方メートルを超えるかを確認する。超えるなら廊下幅の下限が図面上の制約になる |
| 第120条第1項(直通階段までの歩行距離) | その他の居室では、主要構造部が準耐火構造である場合(特定主要構造部が耐火構造である場合を含む)または主要構造部が不燃材料で造られている場合は50メートル、その他の場合は40メートル | いちばん奥の席から階段までの実際の歩行経路を図面上でなぞり、距離を測る。家具を置いた後の経路で測る |
| 第120条第2項(内装による緩和) | 準耐火構造等の建築物の居室で、当該居室と地上に通ずる主たる廊下・階段の壁(床面から1.2メートル以下の部分を除く)及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたものは、第1項の数値に10を加える | 歩行距離がわずかに超える場合、内装の仕上げ材の等級を上げることで解決できないか設計者に相談する |
| 第126条の2第1項(排煙設備) | 別表第一(い)欄(一)項から(四)項までの用途に供する特殊建築物で延べ面積500平方メートル超などに排煙設備が必要。ただし同項第2号は「学校(幼保連携型認定こども園を除く。)、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場又はスポーツの練習場」を除外している | 用途が「学校」として扱われるかどうかで排煙設備の要否が変わり得る。図面を持って特定行政庁または指定確認検査機関に相談する |
| 第20条の8第1項(常時換気) | ホルムアルデヒド対策の機械換気設備について、必要有効換気量の計算に用いる換気回数は、住宅等の居室は0.5、その他の居室は0.3 | 教室は「その他の居室」に当たる。24時間換気の風量が確保されているか、設計図書の換気計算書で確認する |
決めること1〜3|面積・机と通路・仕切り
ブースと集団教室の比率は、時間割で決まります。ピーク時に何人が同時にいるか。ここが起点です。
机と通路の寸法は、座る人だけでなく後ろを通る人を考えます。仕切りの高さは、集中と見守りのどちらを取るかで変わります。
| 検討項目 | 個別指導ブースと集団教室の違い | 自分の計画で今日やること |
|---|---|---|
| 1席あたりの正味面積 | 個別ブースは机と椅子で1平方メートル弱。集団教室も机自体は同程度だが、前方の板面と講師の場所が人数に関係なく固定で必要になる | 候補物件の実測寸法を方眼紙に写し、机を実寸で並べてみる。頭の中ではなく紙の上で数える |
| 通路と講師の動線 | 個別ブースは講師が席の間を移動するため通路が長くなる。集団教室は講師が前方に固定されるため通路は短くて済む | 講師が1コマの間に何回、どこを歩くかを図面上で線として引く。線が交差する場所を広げる |
| 稼働の柔軟さ | 個別ブースは1席単位で埋められるため、学年や曜日の偏りを吸収しやすい。集団教室は人数が集まらないとコマが成立しない | 想定する学年ごとの人数を書き出し、いちばん少ない学年でも集団教室が成立するかを確認する |
| 自習席との兼用 | 個別ブースは授業のない時間帯に自習席として使える。集団教室は机の向きが授業用に固定されるため兼用しにくい | 自習席を何席、何時間開放するかを決める。兼用するなら仕切りの高さは自習側の要求で決まる |
| 改装のしやすさ | 個別ブースは造作の間仕切りにすると後から動かせない。可動の家具型パーティションにすれば席数の変更に追従できる | 3年後に席数を2割増やす想定で、そのとき何を壊すことになるかを見積書の項目ごとに確認する |
| 参照する1人あたり面積 | 各種学校規程第10条第1項は、管理室と便所を含めた校舎全体で同時に授業を行う生徒1人当り2.31平方メートル以上と定めている(学習塾には直接適用されない) | 候補物件の面積を2.31で割り、同時在室の上限人数を出す。想定席数がそれを超えていたら計画を見直す |
| 寸法の項目 | 何によって決まるか | 自分の計画で今日やること |
|---|---|---|
| 机の幅 | 個別指導なら生徒さん1人分に加えて講師が横に座るかどうかで変わる。横に座る形なら1人分では足りない | 実際に使う予定のテキストとノートを自宅の机に並べ、必要な幅をメジャーで測って記録する |
| 机の奥行 | テキストを開いたまま手前でノートを取るなら、奥行が浅いと教材が落ちる。画面を置くなら画面の奥行が加わる | テキストを見開きで置き、その手前にノートを置いて、必要な奥行を測る |
| 机の高さ | 対象年齢で適切な高さが変わる。小学生と高校生が同じ席を使うなら、高さを合わせる工夫が要る | 対象学年の幅を書き出す。幅が広いなら高さ調整のできる椅子を前提に予算を組む |
| 椅子を引く寸法 | 座る人が立ち上がるには、椅子の後ろに一定の余地が要る。図面は椅子が収まった状態で描かれるため見落とされやすい | 自宅で椅子を引いて立ち上がり、机の端から椅子の背までの距離を測る。その値を図面に反映してもらう |
| 背後の通路幅 | 講師が回るのか、生徒さんが出入りするのか、両方かで必要な幅が変わる。人がすれ違うなら1人分では足りない | ピーク時に通路で人がすれ違う場面があるかを時間割から確認する。あるなら図面の通路幅を実測して確かめる |
| 避難経路としての通路 | 建築基準法施行令第119条は、居室の床面積の合計が200平方メートル(地階は100平方メートル)を超える階の廊下幅の下限を定めている | その階の居室面積の合計を計算し、200平方メートルを超えるかを確認する。超えるなら廊下幅の下限を設計者に確認する |
| 車椅子の通行 | 生徒さんや保護者の方が車椅子を使う可能性がある。通路が狭いと入口までは入れても席に着けない | 入口から少なくとも1席までの経路を、車椅子が通れる幅で確保できるか図面上で確認する |
| 判断軸 | 高くする場合と抑える場合の違い | 自分の計画で今日やること |
|---|---|---|
| 生徒さんの年齢 | 年齢が上がるほど視線を切る価値が大きい。低年齢では見守りの必要性が上回る | 対象学年の分布を書き出す。小学生が半数を超えるなら、見守りを優先した高さを基本にする |
| 席の主な用途 | 自習が中心なら高め、講師との対話が中心なら低め。兼用するなら低いほうに合わせて、卓上の可動衝立で調整する | 各席が週のうち何時間を授業に、何時間を自習に使うかを時間割から数える |
| 見守りの位置 | 責任者が常時いる位置から、全席の手元が見えるかどうかで上限が決まる | 責任者の席を図面に置き、そこから各席への視線を線で引く。届かない席があれば高さを下げる |
| 空調の通り | 仕切りが天井近くまで届くと空気が回らず、席ごとの温度差が出る。天井との間に隙間を残すと解消しやすい | 空調の吹き出し口の位置を図面で確認し、仕切りがその気流を遮る位置に来ていないか見る |
| 照明の届き方 | 仕切りが高いと天井照明の光が遮られ、机上の照度が落ちる。学校環境衛生基準は教室の照度の下限値を300ルクスとしている | 仕切りを立てた状態での机上の照度を、模型か仮設で確かめる。落ちるならブース内に照明を足す |
| 音の遮り | 一般的な高さの仕切りは、隣の会話を消すほどの遮音性能は持たない。集中のためなら視線を切るほうが効く | 仕切りに音の効果を期待しない。音は決めること5で別の対策として扱う |
| 保護者の方への見え方 | 入口から教室内が適度に見えると、体験授業の見学時に安心材料になる。完全に閉じると閉鎖的な印象になる | 入口に立ってみて、教室内のどこまでが見えるかを写真に撮る。まったく見えないなら一部だけ低くする |
決めること4〜6|照度・音・待合と送迎
手元の照度と、ホワイトボードや画面への映り込み。この2つが教室の照明の要点です。
音は経路ごとに分けます。隣のブースの声、廊下の足音、空調。仕切りを高くしても、天井裏でつながっていれば伝わります。
送迎の動線は、道路と建物側の条件で決まります。待つ場所がないと、路上駐車になります。
| 確認項目 | 参照する数値・条件(学校環境衛生基準) | 自分の教室で今日やること |
|---|---|---|
| 机上の明るさ | 教室及びそれに準ずる場所の照度の下限値は300ルクス。教室及び黒板の照度は500ルクス以上が望ましい | 候補物件で机を置く高さにスマートフォンを置き、照度計アプリで各席の位置を測って表にする |
| 明るさのばらつき | 教室及び黒板それぞれの最大照度と最小照度の比は20対1を超えないこと。10対1を超えないことが望ましい | 測った値の最大を最小で割る。10を超えたら、暗い席の位置を図面に印を付けて設計者に渡す |
| 板面の明るさ | 黒板の照度も500ルクス以上が望ましいとされている。板面は垂直面なので、天井の一般照明だけでは足りないことが多い | 板面用の照明が見積書に入っているかを確認する。入っていなければ追加を依頼する |
| 板面への映り込み | 児童生徒等から見て黒板の外側15度以内の範囲に輝きの強い光源(昼光の場合は窓)がないこと | 板面を背にして立ち、生徒さんの席から見て板面のすぐ外側に窓や強い照明がないかを目で確かめる |
| 板面と天板の光沢 | 見え方を妨害するような光沢が、黒板面及び机上面にないこと | ホワイトボードと机の天板は、展示品を斜め45度から見て天井が映るかどうかで選ぶ |
| 画面への映り込み | 見え方を妨害するような電灯や明るい窓等が、テレビ及びコンピュータ等の画面に映じていないこと | モニターやプロジェクター投影面を置く予定の位置に、実際に画面を置いて座って見る |
| 画面を使う席の照度 | コンピュータを使用する教室等の机上の照度は500から1000ルクス程度、画面の垂直面照度は100から500ルクス程度が望ましい | パソコン教室やオンライン授業の席では、机上と画面の両方で照度を測って記録する |
| 板面の色 | 無彩色の黒板面は明度が3を超えないこと。有彩色の黒板面は明度及び彩度が4を超えないこと | 黒板を使う教室なら、色見本で確認して発注する。ホワイトボードの場合は光沢の低さを優先する |
| 音の経路 | 起きていることと、効く対策 | 契約前・工事前に確かめること |
|---|---|---|
| 隣のブースからの声 | 仕切りの上を越えて伝わる音と、天井面で反射して回り込む音の両方がある。天井の吸音と床のカーペットが効く | 候補物件で手を叩き、響きの長さを耳で確かめる。響くようなら天井の吸音費用を予算に入れる |
| 隣室(別の教室)からの声 | 間仕切り壁が天井裏で切れていると、天井裏を回って音が伝わる。壁を上階の床まで立ち上げないと止まらない | 間仕切り壁を天井までにするのか、上階の床(スラブ)まで立ち上げるのかを見積書で確認する |
| 廊下・待合からの声 | ドアの隙間から漏れる。ドアの下端の隙間と、ドア枠まわりの気密が支配的 | ドアに気密材が付いているか、下端に隙間があるかを図面と仕様書で確認する |
| 外部(道路・線路)からの音 | 開口部(窓・玄関)が弱点になる。壁の性能を上げても窓が薄いままなら効果が出ない | 授業予定の時間帯に候補物件で5分間の騒音を記録する。学校環境衛生基準は窓を閉じているときLAeq50デシベル以下を望ましいとしている |
| 上下階への足音・振動 | 床を伝わる固体音。吸音材や間仕切りでは止まらず、防振材や浮き床で振動の経路を切る必要がある | 真下と真上の区画の用途と稼働時間を、契約前に貸主または管理会社へ確認する |
| 楽器の低音 | 低い音ほど建物を伝わりやすく、対策の費用が上がる。扱う楽器で必要な工事が変わる | 扱う楽器を全部書き出し、いちばん低い音を出すものを設計者に伝える。ピアノなら重量も伝える |
| 空調・換気の運転音 | 室内機やダクトの音が、静かな自習室では気になる。静かにするほど機器の選定と設置場所が制約される | 自習室の真上に室内機を置かない配置になっているか、図面で位置を確認する |
| 確認項目 | 確認しないと起きること | 物件を決める前に今日やること |
|---|---|---|
| 入れ替わり時のピーク人数 | 出る生徒さんと入る生徒さんが同時に玄関にいる時間帯があり、そこが詰まると毎日混乱する | 時間割案を作り、コマとコマの重なる5分から10分に何人が玄関にいるかを数える |
| 待合の座席数 | 座る場所がないと保護者の方が立ったまま待つことになり、体験授業の印象が下がる | 同時に何人の保護者の方が待つ可能性があるかを、体験授業の受け入れ人数から逆算する |
| 待合から教室への見通し | まったく見えないと閉鎖的な印象になり、見えすぎると授業中の生徒さんの集中が切れる | 待合の位置から教室方向への視線を図面に線で引き、どこまで見えるかを決める |
| 下足と傘 | 雨の日に傘と濡れた靴の置き場がないと、床が濡れて滑る。教材や書類も濡れる | 玄関に傘立てと足拭きマットを置く場所が図面上にあるかを確認する |
| 駐輪スペース | 物件に駐輪場がないと歩道に自転車が並び、近隣からの苦情になる。契約後には作れない | 同時在室のピーク人数のうち何割が自転車で来るかを想定し、その台数分の場所があるか内覧時に確認する |
| 車の一時停車場所 | 迎えの車が路上に停まると、近隣と交通の両面で問題になる | 物件の前の道路幅と、車が安全に一時停車できる場所があるかを、開講予定の時間帯に現地で確認する |
| 夜間の帰り道 | 教室を出た先の道が暗いと、保護者の方が入会をためらう。教室の中がどれだけ立派でも覆せない | 授業終了予定の時刻に、最寄り駅から物件までを実際に歩き、暗い区間を写真に記録する |
| 掲示物の場所 | 合格実績や時間割を貼る場所が決まっていないと、あとから壁に貼り足すことになり見た目が崩れる | 待合の壁のどこに何を貼るかを、開校前に図面上で決めておく |
決めること7〜9|防犯・法令・設備
入退室管理は、図面に組み込む項目です。カメラの位置と、扉の錠の種類。あとからだと配線が要ります。
電源、通信、水回り。タブレットを使うなら、コンセントの数は席数分が要ります。通信の回線も、契約前に確認してください。
| 項目 | 図面に反映しておくこと | 自分の計画で今日やること |
|---|---|---|
| 玄関の見通し | 事務室または受付から玄関が直接見える配置。柱や什器で視線が切れていないこと | 図面上で事務室の位置から玄関へ線を引き、遮るものがないか確認する |
| 施錠の方式 | 授業中に施錠する運用にするなら、内側からは常に開けられる(避難に支障のない)方式にする必要がある | 施錠方式を決め、避難時に鍵なしで出られるかを設計者と消防に確認する |
| 入退室記録の機器 | 読み取り機の設置位置と、そこまでの電源・通信の経路を配線図に入れる | 使う予定のサービスを決め、必要な電源と通信の仕様を提供元に確認して設計者に渡す |
| 防犯カメラ | 設置位置、電源、録画機の置き場所、そして撮影範囲の掲示。教室内を撮る場合は運用ルールが必要 | 撮影する範囲を図面に書き込み、生徒さんと保護者の方への説明文を先に作る |
| 死角の確認 | 倉庫、階段の踊り場、トイレ前など、大人の目が届かない場所を作らない配置にする | 図面を見て、大人が常時いる位置から見えない場所に印を付ける。そこに生徒さんが留まる理由がないか考える |
| トイレの配置 | 教室から遠すぎると授業中の移動が長くなる。玄関のすぐ外にあると外部の人が入りやすくなる | トイレまでの経路が事務室の前を通る配置になっているかを図面で確認する |
| 非常時の連絡先掲示 | 緊急連絡先と避難経路図を掲示する位置を決めておく。後から貼ると見えにくい場所になる | 掲示する内容を紙に書き出し、貼る位置を図面に印を付ける |
| 確認項目 | 確認先と、確認する内容 | 契約前に今日やること |
|---|---|---|
| 消防法上の用途区分 | 所轄の消防本部の予防担当。施行令別表第一の(七)項と(十五)項のどちらとして扱われるかを、図面と事業内容を示して相談する | 平面図案と、対象年齢・同時在室人数・授業形態を書いた1枚の紙を用意して、予防担当に相談の予約を入れる |
| 建築基準法上の用途変更 | 特定行政庁の建築指導課または指定確認検査機関。用途変更に係る部分の床面積が200平方メートルを超えるかを含めて相談する | 契約予定の区画の床面積を賃貸借契約書の案または募集図面で確認し、200平方メートルとの大小を把握する |
| 検査済証の有無 | 貸主または管理会社。建物の検査済証と確認申請書副本が残っているかを確認する | 内覧の申し込みと同時に「検査済証はありますか」と一言で聞く。ない場合は設計者に相談してから進める |
| 避難経路と階段の数 | 設計者と消防。その階に直通階段がいくつあるか、いちばん奥の席からの歩行距離が上限内かを確認する | 募集図面に階段の位置が描かれているかを見る。描かれていなければ内覧時に自分で位置を記録する |
| 既存の消防用設備 | 貸主または管理会社。自動火災報知設備、誘導灯、消火器の設置状況と、直近の点検報告の状況を確認する | 内覧時に天井を見上げて、感知器と誘導灯の有無を写真に撮る |
| 賃貸借契約書の使用目的 | 貸主。使用目的の欄に「学習塾」「教室」と書けるかを、申し込みの前に確認する | 契約書のひな型を先にもらい、使用目的と用途変更に関する条項を読む |
| 設備 | 教室で必要になる理由 | 図面確定前に今日やること |
|---|---|---|
| 席ごとの電源 | 端末を使う授業では席ごとに必要。後から床や壁を開けて増設すると、工事費と休業日が発生する | 各席で同時に使う機器を書き出し、席ごとに何口必要かを図面に書き込んでもらう |
| 有線のネットワーク | 配信席や端末を多数使う席では、無線だけでは速度が保てないことがある | 配信席と端末を使う席の位置を決め、そこまでLANの配線を引くよう設計者に依頼する |
| 無線の親機の位置 | 親機が事務室の中や金属棚の裏にあると、教室の奥まで電波が届かない | 親機を置く位置を図面に印を付け、そこに電源とLANの口があるかを確認する |
| プロジェクター・モニターの電源 | 天井吊りにするなら天井裏に電源と映像の配線が必要。後付けだと配線が露出する | 設置方式(天井吊りか床置きか)を決め、必要な配線を図面に反映してもらう |
| 手洗い | 各種学校規程第10条第2項も校舎に便所を備えることを求めている。教室に給排水がない区画では新設費が大きい | 候補物件に既存の給排水と便所があるかを内覧時に確認する。ない場合は新設費を見積もりに入れる |
| 更衣室 | ダンス・バレエ・体を動かす教室では必須。学習塾では不要なことが多いが、講師の着替えや荷物置き場は要る | 業態から必要性を判断する。不要でも、講師の荷物と貴重品を置く鍵付きの場所は図面に入れる |
| 給湯 | 料理教室では必須。学習塾でも講師の休憩や清掃で使う | 給湯が必要な場所を決め、電気温水器か給湯器かを設計者と相談する |
| 換気(常時) | 建築基準法施行令第20条の8第1項が定める必要有効換気量の計算では、その他の居室の換気回数は0.3とされている | 設計図書の換気計算書を見せてもらい、教室が「その他の居室」として計算されているかを確認する |
消防法と建築基準法|用途の判定で何が変わるか
学習塾は、消防法施行令別表第一の(七)項に当たるか、(十五)項に当たるかで必要な消防設備が変わります。
建築基準法の側でも、用途変更の確認申請が要るかどうかが分かれます。契約前に所轄で確認してください。
| 項目 | (七)項の場合と(十五)項の場合 | 自分の計画で今日やること |
|---|---|---|
| 別表第一の定義 | (七)項は「小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの」。(十五)項は「前各項に該当しない事業場」 | 自分の教室が「その他これらに類するもの」に当たるかは自己判断せず、所轄の消防本部に図面を持って相談する |
| 自動火災報知設備 | 施行令第21条第1項第4号により(七)項は延べ面積500平方メートル以上。同項第6号により(十五)項は延べ面積1,000平方メートル以上 | 計画中の延べ面積を確認し、500平方メートルと1,000平方メートルのどちらの側にあるかを把握してから相談に行く |
| 階による上乗せ | 施行令第21条第1項第11号は、用途にかかわらず、地階・無窓階・3階以上の階で床面積300平方メートル以上のものに自動火災報知設備を求めている | 候補物件が3階以上の階、地階、または窓の少ない階かを確認する。該当するなら用途にかかわらず設備が必要になり得る |
| 警戒区域の大きさ | 施行令第21条第2項第2号は、一の警戒区域の面積を600平方メートル以下、一辺の長さを50メートル以下と定めている | 自動火災報知設備が必要になる規模なら、警戒区域の分割まで含めた見積もりを取る |
| 防火管理者の選任 | 施行令第1条の2第3項第1号ハは、(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項について、収容人員50人以上で防火管理者を定めることを求めている | (七)項でも(十五)項でも同じく50人以上。ピーク時の収容人員が50人に近いなら、講習の受講を計画に入れる |
| カーテン等の防炎 | 施行令第4条の3第1項が挙げる防炎防火対象物に(七)項と(十五)項は含まれていない。ただし消防法第8条の3第1項は高層建築物と地下街も対象としている | 入居予定の建物が高層建築物や地下街に当たるかを確認する。当たるならカーテン等は防炎品を選ぶ |
| 条文 | 定められている内容 | 自分の計画で今日やること |
|---|---|---|
| 法第2条第2号(特殊建築物) | 特殊建築物の例として「学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)」を挙げている | 自分の事業が「学校」として扱われる可能性があることを前提に、特定行政庁への相談を計画に組み込む |
| 法第6条第1項第1号 | 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの | 計画中の用途部分の床面積を合計し、200平方メートルを超えるかを確認する |
| 法第87条第1項(用途変更) | 建築物の用途を変更して第6条第1項第1号の特殊建築物のいずれかとする場合(政令で指定する類似の用途相互間の場合を除く)に、確認申請等の規定を準用する | もとの用途(事務所・物販など)と変更後の用途の組み合わせを設計者に伝え、確認申請の要否を判断してもらう |
| 令第126条の2第1項第2号(排煙の除外) | 排煙設備の規定について「学校(幼保連携型認定こども園を除く。)、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場又はスポーツの練習場」を除外している | 用途の扱いによって排煙設備の要否が変わり得るため、設計者に用途区分の見通しを共有したうえで検討してもらう |
| 令第120条第1項(歩行距離) | その他の居室では、準耐火構造等の場合50メートル、その他の場合40メートル | いちばん奥の席から階段までの経路を図面上でなぞって測る。家具を置いた後の実際の経路で測る |
| 令第119条(廊下幅) | 居室の床面積の合計が200平方メートル(地階は100平方メートル)を超える階では、両側に居室がある廊下は1.6メートル、その他の廊下は1.2メートル | その階の居室面積の合計を計算し、廊下幅の下限がかかるかを確認する |
図面を描いてもらう前にやること
時間割の案を作って、ピーク時の同時在室人数を出す。曜日と時間帯ごとに書き出せば、必要な席数が決まります。
図面を描いてもらう前にやる手順
- 時間割の案を作り、ピーク時の同時在室人数を出す。曜日と時間帯ごとに、生徒さんと講師とスタッフの人数を書き込み、いちばん多い時間帯の合計人数を確定します。この数字がすべての出発点になります。
- 席の種類と数を決める。個別指導ブース、集団教室の席、自習席をそれぞれ何席にするかを決めます。ピーク人数を収容できることが条件です。
- 1席の寸法を実物で確かめる。使う予定のテキストと端末を自宅の机に並べ、必要な幅と奥行をメジャーで測ります。椅子を引いて立ち上がる寸法も測ります。
- 必要面積を概算する。席の正味面積を積み上げ、通路・待合・事務室・手洗いの分を足します。あわせて、候補となる面積を2.31で割った参照値(各種学校規程の1人当たり面積)と、ピーク人数を突き合わせます。
- その面積で成立する物件を探す。内覧時には、天井高、階段の位置と数、既存の給排水と便所、天井の感知器と誘導灯、駐輪スペース、真上と真下の区画の用途を確認して写真に残します。
- 候補物件で音と明るさを実測する。授業予定の時間帯に行き、スマートフォンで5分間の騒音と、机を置く高さの照度を数か所で測って記録します。
- 所轄の消防本部と特定行政庁に相談する。平面図案と、対象年齢・同時在室人数・授業形態を書いた紙を持参し、用途区分の見通しと、必要になる消防用設備、用途変更の確認申請の要否を確認します。
- 賃貸借契約書のひな型を先に読む。使用目的の欄、用途変更に伴う費用の負担、原状回復の範囲を確認し、必要なら申し込み前に条項の追加を交渉します。
- ここまでの資料をまとめて内装会社に相談する。時間割、席数、寸法、実測値、消防と行政の回答をひとまとめにして渡します。この状態で相談すれば、最初の図面から現実的なものが出てきます。
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よくある質問
教室の内装について、開業前のご相談で繰り返し出てくる質問を4つ挙げます。 いずれも、条文や告示を確認すれば答えの方向は出るものの、 最終的な判断には所轄の行政庁や消防本部への確認が必要になるものばかりです。 ここでは、確認できた条文と数値を示したうえで、 どこから先が自己判断できない領域なのかを明示します。
数値が確認できていない部分については、その旨をそのまま書いています。 推測で数字を置くことはしていません。
学習塾を開くのに、消防や建築基準法の手続きは必要ですか?
必要になる場合があります。 まず建築基準法では、第2条第2号が特殊建築物の例として「学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)」を挙げています。 そして第87条第1項は、建築物の用途を変更して第6条第1項第1号の特殊建築物とする場合に、 確認の申請などの規定を準用すると定めています。
第6条第1項第1号の特殊建築物とは、 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、 その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるものです。 つまり、200平方メートルを超える規模で、 もとが事務所や物販店だった区画を教室に変えるときは、 用途変更の確認申請が問題になり得ます。
消防法では、施行令別表第一の(七)項が 「小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの」、 (十五)項が「前各項に該当しない事業場」と定められています。 学習塾がどちらに当たるかは、規模・実態・所轄の消防本部の運用によって判断が分かれます。
(七)項なら自動火災報知設備は延べ面積500平方メートル以上で必要(施行令第21条第1項第4号)、 (十五)項なら1,000平方メートル以上(同項第6号)と、必要になる面積が倍違います。 ここは自己判断せず、物件の賃貸借契約を結ぶ前に、 所轄の消防本部の予防課へ図面を持って相談してください。
個別指導ブースは1席あたり何坪みておけばよいですか?
学習塾そのものに面積の法令基準はありません。 参考になるのは各種学校規程(昭和31年文部省令第31号)第10条第1項で、 各種学校の校舎の面積を115.70平方メートル以上とし、 かつ同時に授業を行う生徒1人当たり2.31平方メートル以上と定めています。 2.31平方メートルはおよそ0.70坪です。
ただしこれは都道府県知事の認可を受けた各種学校に適用される基準であり、 学習塾に直接かかるものではありません。 あくまで、教室・管理室・便所を含んだ校舎全体で1人当たりどのくらいを見込むか、 という感覚の目盛りとして使ってください。
実務では、机・椅子・仕切りだけの正味の占有面積と、 通路・待合・事務室・手洗いを含めた全体面積を分けて計算します。 幅900ミリメートル・奥行600ミリメートルの机に椅子を引く分を足すと、 1席の正味は概ね0.9平方メートル前後です。
そこに背後の通路、講師の立ち位置、待合、事務、手洗いを足していくと、 全体では1席当たり2平方メートル台に収まることが多くなります。 先に総席数を決め、正味面積を積み上げ、共用部分を足して、 賃料と突き合わせる順序で検討してください。
教室の照明は何ルクス必要ですか。ホワイトボードの映り込みはどう防ぎますか?
学習塾は学校教育法上の学校ではないため、学校環境衛生基準は直接は適用されません。 ただし参考値としては使えます。 学校環境衛生基準(令和8年文部科学省告示第35号)は、 教室及びそれに準ずる場所の照度の下限値を300ルクスとし、 教室及び黒板の照度は500ルクス以上であることが望ましいとしています。
あわせて、教室及び黒板それぞれの最大照度と最小照度の比は20対1を超えないこと、 10対1を超えないことが望ましいとも定めています。 コンピュータを使用する教室等の机上の照度は500から1000ルクス程度、 テレビやコンピュータ等の画面の垂直面照度は100から500ルクス程度が望ましいとされています。
映り込みについては、同基準の「まぶしさ」の項が三つの条件を挙げています。
児童生徒等から見て黒板の外側15度以内の範囲に輝きの強い光源(昼光の場合は窓)がないこと、 見え方を妨害するような光沢が黒板面及び机上面にないこと、 見え方を妨害するような電灯や明るい窓等がテレビ及びコンピュータ等の画面に映じていないことの三つです。
実務的には、ホワイトボードの真正面の天井に器具を並べないこと、 板面用の器具は板面の手前上方から斜めに当てること、 ボードの正面に窓を置かないこと、 光沢の強い板面を避けることの四点で大半は避けられます。
マンションの一室や2階の空き区画でも教室を開けますか。隣や下の階への音が心配です。
開けることはありますが、契約前に三つを確認してください。 第一に用途です。 賃貸借契約書の使用目的に「学習塾」「教室」が書けるか、 管理規約が住居専用に限っていないかを、申し込みの前に貸主と管理会社の双方へ確認します。
第二に避難です。 建築基準法施行令第120条第1項は、居室から直通階段の一つに至る歩行距離の上限を定めており、 その他の居室では主要構造部が準耐火構造である場合などで50メートル、 それ以外の場合で40メートルとされています。
階段が一つしかない階に教室を置く場合は、 消防法施行令第21条第1項第7号の階段の数に関する規定も関係するため、 所轄の消防本部に確認が必要です。 第三に音です。 音楽教室やダンススタジオのように床に振動が出る業態では、 上下階に伝わるのは空気を伝わる音ではなく、床を伝わる固体音です。
これは壁に吸音材を貼っても止まりません。 防振ゴムや浮き床のように、振動の経路そのものを切る工事が必要になり、 その分の予算と天井高の余裕を最初から見込んでおく必要があります。 契約前に、真下の区画が何に使われているか、 稼働時間が重なるかを必ず自分の目で確かめてください。
まとめ|教室の内装で決める9つのこと
ブースを1席増やしたときの回収期間は計算できます。面積に余裕があるなら、席は多いほうが有利。ただし通路と音の条件を満たす範囲でです。
まず時間割の案を作ってください。それが決まらないと、坪数の話は始まりません。
| 条件 | 計算 | 回収期間の目安 |
|---|---|---|
| 週1コマ稼働/既存の面積内で増設 | 投資12万円。月謝1万5,000円、粗利率50パーセントで月7,500円 | 約16か月 |
| 週2コマ稼働/既存の面積内で増設 | 投資12万円。粗利は月1万5,000円 | 約8か月 |
| 週3コマ稼働/既存の面積内で増設 | 投資12万円。粗利は月2万2,500円 | 約5.3か月 |
| 週1コマ稼働/面積を借り増しする場合 | 投資12万円に加え、1席あたり0.70坪で坪1万円なら月7,000円の賃料増。粗利7,500円から差し引くと月500円 | 約240か月(実質的に回収できない) |
| 週3コマ稼働/面積を借り増しする場合 | 投資12万円。粗利2万2,500円から賃料増7,000円を引いて月1万5,500円 | 約7.7か月 |