図面に、更衣室と書かれた四角がない。バックヤードは、いつも最後に削られます。そして半年後に起きることは、だいたい決まっています。
段ボールが通路に積まれ、モップが厨房の脇に立てかけられ、スタッフの上着が椅子の背に掛かる。裏方に置けなかったものは、客席側に出てきます。
決めることは8つ。更衣、休憩、トイレ、事務、保管、清掃と廃棄物、搬入と仮置き、そして設備まわりの空き。
この記事でわかること
- 更衣・休憩・トイレについて法令が最低限として求めている水準を、労働安全衛生規則と事務所衛生基準規則の条番号つきで確認する方法
- 飲食店と美容室・理容室で上乗せされる基準(更衣場所の位置、清掃用具の保管場所、廃棄物容器の構造)が、どの条文・どの通知に書かれているか
- バックヤードで決めるべきことを8つに分け、それぞれ「削ったときに何が起きるか」まで具体化した一覧
- 1坪を売場に回すか裏方に回すかを、自店の客単価・回転数・粗利率と、自店で計算した離職1人あたりのコストで突き合わせる手順
- 厚生労働省の雇用動向調査で前職を辞めた理由がどう分布しているかと、その統計を内装の判断に使うときの限界
- 名古屋市が示している廃棄物保管場所の設置基準と発生量の原単位から、自店のごみ置き場の容量を計算する式
- 今日、メジャー1本で自店のバックヤードが足りているかを測る手順と、足りないと分かったときの優先順位
なぜバックヤードは最後に削られるのか
削られる場面は4つ。どれも「あとで何とかなる」と判断された場面です。半年後に何が起きているかを表にしました。
| 場面 | 半年後に起きていること | 今日、自店で確かめる方法 |
|---|---|---|
| 坪数が足りず、更衣室をやめた | スタッフが客用トイレか、売場の隅で着替えている。私物は椅子の背か、レジ下の紙袋に入っている。制服と私服が同じ場所に置かれ、におい移りの苦情が出る。 | 閉店後、スタッフの上着とバッグがどこに置かれているかを写真に撮る。鍵のかかる場所に入っているものが何割かを数える。 |
| 休憩スペースを事務机と兼ねた | 休憩中に発注作業や電話対応が発生し、休憩が休憩になっていない。結果として休憩を取らずに詰めて働き、退勤時刻だけが早まる。 | 直近1週間のタイムカードで、休憩の打刻がある日と、実際に座っていた時間を突き合わせる。差が15分以上ある日を数える。 |
| 在庫置き場を「什器の下」で計画した | 什器の下に入らない大きさの箱が床に置かれ、通路幅が実質的に狭くなる。棚卸しのたびに全部を出して並べ直すことになる。 | 床に直接置かれている箱の数を数え、そのうち「今週使うもの」が何箱かを分ける。今週使わないものの箱数が、そのまま不足している容量。 |
| 清掃用具と廃棄物の置き場を決めなかった | モップとバケツが厨房の脇や勝手口に置かれ、乾かないまま次の日に使われる。ごみ袋が営業時間中も店内に残り、においが客席まで届く。 | 営業終了時に、モップ・バケツ・ごみ袋がどこにあるかを記録する。お客様の視線が届く位置にあるものを数える。 |
法令が最低限として求めている裏方の設備
労働安全衛生規則と事務所衛生基準規則に、休憩の場所、更衣、便所についての定めがあります。「あったほうがよい」ではなく、求められているものです。
業種によっては、さらに上乗せされる基準があります。飲食と美容では、更衣の扱いが違います。
| 項目 | 条文が求めていること | 自店の図面で確認すること |
|---|---|---|
| 休憩の設備 | 労働安全衛生規則第613条は「事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない」と定めています。事務所衛生基準規則第19条も同じ文言です。義務ではなく努力義務ですが、専用の1室でなくてもよいという意味でもあります。 | 図面上で「座って休める場所」に印をつける。そこが売場から見えるかどうか、通行の妨げにならないかを確認する。 |
| 睡眠・仮眠の設備 | 労働安全衛生規則第616条は、夜間に労働者に睡眠を与える必要があるとき、または労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会があるときは、適当な睡眠または仮眠の場所を男性用と女性用に区別して設けなければならないとしています。同条第2項は寝具などの備付けと疾病感染を予防する措置も求めています。 | 深夜営業や通し勤務がある店は、仮眠の機会が実際にあるかを勤務実態から確認する。あるなら男女別に区別できる場所を図面上で確保する。 |
| 休養室・休養所 | 労働安全衛生規則第618条は、常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用するときは、労働者が横になることのできる休養室または休養所を男性用と女性用に区別して設けなければならないとしています。事務所衛生基準規則第21条も同内容です。 | 自店の常時使用する労働者数と、そのうち女性の人数を数える。50人・30人に届かない規模でも、体調不良時に横になれる場所があるかを確認する。 |
| 気積(1人あたりの空間) | 労働安全衛生規則第600条は、労働者を常時就業させる屋内作業場の気積を、設備の占める容積および床面から4メートルを超える高さにある空間を除き、労働者1人について10立方メートル以上としなければならないとしています。 | 天井高と、同時に働く最大人数を確認する。天井高2.5メートルで設備が容積の2割を占めるなら、1人あたり約5平方メートル(約1.5坪)が目安になる。 |
| 更衣設備・洗浄設備 | 労働安全衛生規則第625条第1項は、身体または被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、洗眼・洗身もしくはうがいの設備、更衣設備または洗たくのための設備を設けなければならないとしています。事務所衛生基準規則第18条第2項も、被服を汚染し、もしくは湿潤し、またはそのおそれのある労働者のために更衣設備または被服の乾燥設備を設けることを求めています。 | 制服に汚れやにおいがつく業務かどうかを判断する。飲食・美容・清掃を伴う業種はほぼ該当する。該当するなら更衣設備を図面に載せる。 |
| 便所 | 労働安全衛生規則第628条第1項は、男性用と女性用に区別すること、男性用大便所の便房は同時に就業する男性労働者60人以内なら1個以上、男性用小便所は30人以内なら1箇所以上、女性用便所の便房は20人以内なら1個以上とすること、流出する清浄な水を十分に供給する手洗い設備を設けることなどを定めています。 | 同時に就業する人数を男女別に数え、必要な便房数を計算する。手洗い設備が便所ごとにあるかを図面で確認する。 |
| 独立個室型の便所の特例 | 労働安全衛生規則第628条の2第1項は、同時に就業する労働者の数が常時10人以内である場合は、男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所(独立個室型の便所)を設けることで足りるとしています。事務所衛生基準規則第17条の2も同内容で、いずれも令和3年12月1日から施行されています。 | 同時就業が常時10人以内かを確認する。該当するなら、壁と扉が四方を囲み、内側から施錠できる構造になっているかを図面で確認する。 |
| 救急用具 | 労働安全衛生規則第633条は、負傷者の手当に必要な救急用具および材料を備え、その備付け場所および使用方法を労働者に周知させること、それらを常時清潔に保つことを求めています。品目を列挙していた第634条は令和3年12月1日に削除されました。 | 救急箱の置き場所が決まっているか、全員がその場所を言えるかを確認する。置き場所をバックヤードの図面に明記する。 |
| 業種 | 基準の内容 | 図面に落とすときの確認点 |
|---|---|---|
| 飲食店(更衣場所) | 食品衛生法施行規則別表第19の第三号タは「更衣場所は、従事者の数に応じた十分な広さがあり、及び作業場への出入りが容易な位置に有すること」と定めています。広さだけでなく位置まで指定されている点が特徴です。 | 更衣場所から厨房までの経路を図面上でなぞる。売場や客席を横切る経路になっていないかを確認する。 |
| 飲食店(手洗いと便所) | 同別表第19の第三号チは、従業者の手指を洗浄消毒する装置を備えた流水式手洗い設備を必要な個数有すること、水栓は洗浄後の手指の再汚染が防止できる構造であることを求めています。第三号ヲは、便所を従業者の数に応じて有すること、作業場に汚染の影響を及ぼさない構造であること、専用の流水式手洗い設備を有することを求めています。 | 手洗いの水栓が手で触れずに操作できる方式かを確認する。便所と作業場のあいだに扉や前室があるかを確認する。 |
| 飲食店(清掃用具と廃棄物) | 同別表第19の第四号トは、作業場を清掃等するための専用の用具を必要数備え、その保管場所を有することを求めています。第三号カは、廃棄物を入れる容器または保管する設備について、不浸透性および十分な容量を備え、清掃がしやすく、汚液および汚臭が漏れない構造であることを求めています。第三号ワは、洗浄剤・殺菌剤等の薬剤を食品等と区分して保管する設備を有することを求めています。 | 清掃用具の保管場所が図面に描かれているかを確認する。描かれていなければ、幅30センチ・奥行40センチ程度の縦長スペースを確保する。 |
| 飲食店(区画) | 同別表第19の第二号は、汚染を考慮し、作業区分に応じ間仕切り等により必要な区画がされていること、住居その他食品等を取り扱うことを目的としない室または場所が同一の建物にある場合はそれらと区画されていることを求めています。ただし、経路の設定や洗浄消毒の実施等により必要な衛生管理措置が講じられている場合は、この限りではないとされています。 | バックヤードと厨房のあいだに間仕切りがあるか、ない場合は経路と洗浄消毒でどう担保するかを説明できるかを確認する。 |
| 美容室・理容室(更衣と休憩) | 厚生労働省「理容所及び美容所における衛生管理要領」の第2の4は、施設には従業者の数に応じた適当な広さの更衣等を行う休憩室を設けることが望ましいとしています。第2の6は、作業場が居住室、休憩室等作業に直接関係ない場所から隔壁等により完全に区分されていることを求めています。第4の9は、従業者が作業場においては所定の場所以外で着替え、喫煙および食事をしないこととしています。 | 更衣と休憩を兼ねた小部屋を確保できるかを検討する。作業場と休憩室のあいだが隔壁で完全に区分されているかを図面で確認する。 |
| 美容室・理容室(タオルと器具) | 同要領の第2の15は、器具類、布片類およびタオル等を消毒する設備または器材を備えることを求めています。第2の16は、器具類および布片類を十分な量備えることを求めています。第2の14は、消毒済みのものと未消毒のものを区別するために必要な収納ケース等を備えることを求めています。第5の4は、タオル・布片類の消毒方法として、洗剤で洗浄した後に蒸気消毒器に入れ器内が80度を超えてから10分間以上保持する方法、または次亜塩素酸ナトリウム液に浸す方法を示し、消毒終了後は洗濯し、必要に応じて乾燥して保管するか蒸し器に入れることとしています。 | 洗濯機と乾燥機の設置場所、給排水、換気、そして「消毒済み」「未消毒」を分けて置く棚の位置を図面に描く。乾燥機の排熱が客席側に流れないかを確認する。 |
| 美容室・理容室(清掃用具と汚物) | 同要領の第2の13は、作業に伴って出る汚物、廃棄物を入れるふた付きの汚物箱または毛髪箱等を備えることを求めています。第3の1の(15)は、清掃用具を専用の場所に保管することを求めています。第3の1の(7)は、器具類、布片類、その他の用具類の保管場所を少なくとも1週間に1回以上清掃し、常に清潔に保つことを求めています。 | ふた付きの汚物箱の置き場所と、清掃用具の専用場所を図面に描く。掃除のために手が届く位置かを確認する。 |
バックヤードで決める8つのこと
更衣は床の幅90センチ・奥行90センチから考えます。専用の部屋が取れなくても、確保のしかたは4通りあります。
休憩の場所も4つの方法があります。座って、飲み物を置ける場所が最低条件です。
保管は置くものを分類してから場所を決めます。毎日使うもの、週に一度のもの、季節ごとのもの。頻度で置き場が変わります。
| 決めること | 削ったときに起きること | 今日決めておく最低限 |
|---|---|---|
| 1|更衣と私物の置き場 | 制服と私服が同じ場所に置かれる。貴重品の管理を各自に任せることになり、紛失時に対応できない。着替えのたびに客用トイレが占有される。 | 施錠できる収納を人数分。着替えられる場所を1か所。この2つを図面に描く。 |
| 2|座って休める場所 | 休憩が立ち休みか外出になる。雨の日は行き場がない。休憩時間に発注や電話が発生し、実質的に休憩が消える。 | 背もたれのある椅子1脚と、飲み物を置ける台。売場から直視されない位置に置く。 |
| 3|スタッフ用のトイレと手洗い | ピーク時にお客様と競合し、行きたいときに行けない。制服のまま客用トイレに入る動線になる。 | 同時就業人数を数え、必要な便房数を計算する。兼用するなら経路を分ける方法を決める。 |
| 4|事務スペースとレジ締め | 売上金の計算を売場やカウンターで行うことになり、防犯上の弱点になる。書類と現金が同じ引き出しに入る。 | 座って書ける幅60センチ以上の面と、施錠できる引き出しを1つ。電源とネット回線の位置も決める。 |
| 5|在庫・什器・消耗品の保管 | 床置きが始まり、通路幅が実質的に狭くなる。下の箱の中身が分からなくなり、重複発注が起きる。 | 1回の納品で入る箱数を数え、その倍の容量を棚で確保する。棚は床から天井まで使う。 |
| 6|清掃用具と廃棄物の置き場 | 濡れたモップが乾かないまま使われ、においの原因になる。ごみ袋が営業中も店内に残る。 | 幅30センチ・奥行40センチの縦長スペースと、ふた付きの容器を置く場所。排水できる位置が望ましい。 |
| 7|搬入経路と一時仮置き | 納品のたびに売場を横切ることになり、営業中の接客が止まる。受け取った箱をその場に置いたまま営業が始まる。 | 納品を受ける扉と、箱を一時的に置く1平方メートルの床。営業動線と交差しないかを確認する。 |
| 8|設備の点検口と、洗濯・乾燥の置き場 | 分電盤や給湯器の前に棚が置かれ、点検のたびに動かすことになる。洗濯機の排水と換気が後付けになり、湿気がこもる。 | 分電盤・給湯器・空調室内機・点検口の前に、最低60センチの空きを図面上で確保する。 |
| 確保のしかた | 成立条件と注意点 | 今日できること |
|---|---|---|
| 独立した更衣室を設ける | 幅90センチ・奥行90センチの床と、内側から施錠できる扉があれば成立する。約0.25坪。ロッカーを置くなら奥行がさらに40センチ必要になる。 | 図面で0.25坪を確保できる位置を探す。柱型の脇、階段下、通路の突き当たりが候補になる。 |
| カーテンまたはロールスクリーンで区切る | 床は同じく0.81平方メートル程度。扉より安く、後付けもしやすい。ただし施錠できないため、私物の収納は別に鍵付きのものを用意する必要がある。 | 天井にカーテンレールを取り付けられる下地があるかを確認する。ない場合は突っ張り式か、フレームの自立型を検討する。 |
| スタッフ用トイレを兼用する | 同時就業が常時10人以内で、独立個室型の便所を設けている場合には現実的な選択肢になる。ただし着替えのあいだ、トイレが使えなくなる点は運用でカバーする必要がある。 | ピーク前の着替え時間が重なる人数を数える。2人以上が同時に着替えるなら、この方法は成立しない。 |
| 私物の収納だけ先に確保する | 着替えは兼用でしのぐとしても、貴重品の保管は分けておく。施錠できる引き出しかキーボックスを人数分。紛失時の責任の所在をはっきりさせる意味もある。 | レジ下や事務スペースに、鍵付きの収納を人数分置けるかを確認する。1人あたり幅20センチ・奥行30センチが目安。 |
| 方法 | 成立条件と注意点 | 今日できること |
|---|---|---|
| 通路の突き当たりに椅子と台を固定する | 幅120センチ・奥行80センチ、約0.3坪。避難経路に該当しない位置であることが前提。壁付けの折りたたみ式にすれば、使わないときは通路を空けられる。 | 店内で、お客様の視線が届かず、かつ通行の妨げにならない壁面を探す。候補を写真に撮って設計者に見せる。 |
| 事務スペースと兼ねる | 最も一般的だが、休憩中に発注や電話が発生しやすい。兼ねる場合は、休憩時間帯に事務作業を入れない運用ルールを先に決める。 | 直近1週間で、休憩時間中に事務作業や電話対応が発生した回数を数える。3回以上なら分離を検討する。 |
| 客席の一部を時間帯で使う | アイドルタイムがはっきりしている業態でのみ成立する。お客様が入ってくれば立たざるを得ないため、自由に利用させるという要件から見ると弱い。 | アイドルタイムの長さと、その時間帯の来店数を実測する。1時間に1組でも来るなら、この方法は成立しない。 |
| 体調不良時に横になれる場所を兼ねる | 常時50人以上または常時女性30人以上でなければ休養室の設置義務はないが、愛知労働局の案内は、専用設備でなくとも随時利用が可能となる機能を確保することで足りるとしている。入口や通路から直視されない目隠しがあることが重要。 | 横になれる長さ(170センチ程度)を確保できる床があるかを図面で探す。折りたたみの簡易ベッドを置ける場所でよい。 |
| 選択肢 | 判断の分かれ目 | 今日確認すること |
|---|---|---|
| スタッフ専用を別に設ける | 便器・手洗い・扉を含めて、最低でも0.4坪から0.5坪が必要になる。給排水の位置によっては床を上げる必要があり、費用が跳ね上がる。既存の給排水に近い位置に置けるかが分かれ目。 | 既存の排水管の位置を図面で確認する。新設位置が排水管から3メートル以上離れると、勾配の確保が難しくなる。 |
| お客様用と兼用する(独立個室型) | 同時に就業する労働者が常時10人以内であることが前提。四方を壁等で囲まれ、内側から施錠できる構造であること。飲食店の場合は、作業場に汚染の影響を及ぼさない構造であることと、専用の流水式手洗い設備も必要になる。 | ピーク時の同時就業人数を数える。10人を超える時間帯があるなら、兼用ではなく男女別の便所が必要になる。 |
| 兼用したうえで、経路だけ分ける | トイレは1つでも、そこへ至る経路をバックヤード側からも取れるようにする方法。扉を2枚にするか、前室を設ける。制服のまま客席を横切らずに済む。 | トイレの位置と、バックヤードの位置を図面上で結ぶ。客席を横切らずに行けるかを、実際に歩いて確認する。 |
| 手洗いだけ別に設ける | トイレを兼用する場合でも、業務用の手洗いは別に確保する。飲食店では別表第19の第三号チが、従業者の手指を洗浄消毒する装置を備えた流水式手洗い設備を必要な個数、水栓は再汚染が防止できる構造で求めている。 | 厨房や作業場に、手で触れずに操作できる水栓の手洗いがあるかを確認する。なければセンサー式かレバー式への変更を検討する。 |
| 置くもの | 必要な寸法・設備 | 今日決めておくこと |
|---|---|---|
| 書き物ができる天板 | 幅60〜90センチ、奥行45〜60センチ。壁付けの折りたたみ式でも成立する。天板の高さは70センチ前後。 | 壁面のどこに天板を付けるかを決める。下地が入っているかを設計者に確認する。 |
| パソコンまたはタブレット | 電源コンセント最低4口。有線のネット回線の口が1つ。無線だけに頼ると、決済端末の通信が不安定になったときに切り分けができなくなる。 | コンセントの数と位置を図面に書き込む。天板の上か、天板の下から30センチ以内に配置する。 |
| 現金と釣銭準備金 | 施錠できる引き出しか、床または壁に固定した金庫。持ち運べる金庫は、そのまま持ち去られるため固定が前提になる。 | 金庫を固定できる床または壁があるかを確認する。賃貸なら、固定方法と原状回復の扱いを管理会社に確認する。 |
| 書類とファイル | A4のファイルが立つ棚。奥行32センチ、1段あたり幅40センチで約10冊。契約書・許認可・保険証券は施錠できる場所へ。 | 保管が必要な書類の冊数を数える。帳簿の保存期間は税法上、原則7年です。 |
| レジ締めの作業面 | 紙幣と硬貨を広げられる幅60センチ以上の面。外部から見えない位置であること。防犯カメラの画角に入っていることが望ましい。 | 閉店後に外から店内を撮影し、レジ締めの位置が見えるかを確認する。見えるなら位置を変えるか目隠しを設ける。 |
| 救急箱 | 労働安全衛生規則第633条は、負傷者の手当に必要な救急用具および材料を備え、その備付け場所および使用方法を労働者に周知させること、常時清潔に保つことを求めている。 | 置き場所を1か所に決め、全員に伝える。中身の使用期限を確認する日を、月1回のルーティンに入れる。 |
| 分類 | 置き場所の考え方 | 今日できること |
|---|---|---|
| 毎日使うもの | 作業する位置から手を伸ばせば届く範囲に置く。床から70センチ〜150センチの高さが最も取り出しやすい。この高さを毎日使うもので埋める。 | 1日の作業で取りに行った回数が多いものを5つ挙げ、それが手の届く高さにあるかを確認する。 |
| 週に1度使うもの | 棚の上段・下段に置く。踏み台やかがむ動作が必要でも、週1回なら支障は小さい。ラベルを貼り、中身を外から読めるようにする。 | 棚の上段・下段に何が入っているかを紙に書き出す。書き出せないものはラベルが足りていない。 |
| 月に1度しか使わないもの | 店内に置く優先度は低い。天井近くの棚、階段下、または店外の倉庫に移す候補になる。季節商材の什器はここに入ることが多い。 | 直近1か月で1度も触っていないものを数える。箱数を数え、それが店外に出せるかを検討する。 |
| 1年使っていないもの | 処分するか、売却するかを決める。造作や什器で価値が残っているものは、退去時の造作譲渡の対象になることもある。 | 1年触っていないものをリスト化する。処分費用を見積もる。廃棄には事業系ごみの費用がかかる点に注意する。 |
| 薬剤・洗剤・消毒剤 | 飲食店では、食品衛生法施行規則別表第19の第三号ワが、施設で使用する洗浄剤・殺菌剤等の薬剤を食品等と区分して保管する設備を有することを求めている。同じ棚に食材と洗剤を並べることはできない。 | 洗剤と食材が同じ棚にないかを確認する。分けるための棚か扉付きの収納を1つ追加する。 |
| 置くもの | 必要な条件 | 今日確認すること |
|---|---|---|
| モップ・ほうき・ちりとり | 幅30センチ・奥行40センチ・高さ160センチの縦長スペース。約0.04坪。扉に通気の開口があるか、扉なしの造作棚にする。 | 現状でモップがどこに立てかけられているかを確認する。壁に直接立てかけているなら壁が傷んでいないかも見る。 |
| バケツと洗剤 | できれば掃除用の流し(スロップシンク)の下。なければ排水口に近い位置。飲食店では、洗剤は食品等と区分して保管する必要がある。 | バケツの水をどこに捨てているかを確認する。客用トイレに捨てているなら、動線を見直す。 |
| 営業中のごみ箱 | 飲食店では、別表第19の第三号カが、廃棄物を入れる容器または保管する設備について、不浸透性および十分な容量を備え、清掃がしやすく、汚液および汚臭が漏れない構造であることを求めている。ふたが閉まる容器を選ぶ。 | 営業中のごみ箱にふたがあるか、汚水が漏れる構造になっていないかを確認する。 |
| 閉店後にまとめたごみ袋 | 収集までのあいだ、店内か屋外に置く場所が必要になる。名古屋市では事業系ごみを市が収集しないため、収集の曜日と時間は契約する許可業者との取り決めで決まる。保管日数がそのまま必要な容量になる。 | 収集の頻度を確認し、収集と収集のあいだに出るごみ袋の数を数える。その数が置ける場所を確保する。 |
| 毛髪・汚物(美容室・理容室) | 衛生管理要領の第2の13は、作業に伴って出る汚物、廃棄物を入れるふた付きの汚物箱または毛髪箱等を備えることを求めている。第4の22は、毛髪等の廃棄物をふた付きの専用容器に入れ、適正に処理することを求めている。 | ふた付きの専用容器があるか、セット面から手が届く位置にあるかを確認する。 |
| 確認項目 | 確認の内容 | 今日できること |
|---|---|---|
| 納品を受ける扉 | 正面入口しかない場合、営業中の納品は必ず売場を横切る。勝手口や共用部からの搬入口があるかで、運用の負担がまったく変わる。 | 納品業者が実際にどの扉から入っているかを1週間記録する。正面入口が9割なら、経路の見直しを検討する。 |
| 経路の幅と段差 | 台車が通れる幅は最低80センチ、望ましくは90センチ。段差が3センチ以上あると台車が止まる。ビルの共用部で曲がる箇所があると、長尺のものが入らない。 | 搬入口から保管場所までをメジャーで測る。最も狭い箇所の幅を記録する。 |
| 一時仮置きの床 | 1平方メートルで段ボール約8箱。1回の納品量を数え、それが置ける床を確保する。営業動線と交差しない位置であること。 | 1回の納品で入る箱数を数える。8箱を超えるなら、必要な床は1平方メートルでは足りない。 |
| 検品の作業面 | 箱を開けて数を確認する面。床に座って行うと時間がかかり、腰にも負担がかかる。高さ70センチ前後の作業台があると、検品時間は目に見えて短くなる。 | 検品にかかっている時間を1回計測する。10分を超えるなら、作業台の有無を疑う。 |
| 設備 | 確保する空きと条件 | 今日確認すること |
|---|---|---|
| 分電盤 | 盤の前に幅60センチ以上、高さ方向は盤の全面が見える空き。盤の扉が全開できること。暗い場所なら手元灯を用意する。 | 分電盤の前に立ち、扉を全開できるかを試す。できなければ、前の物を移動する場所を決める。 |
| 給湯器・貯湯タンク | 点検と部品交換ができる空き(前面に60センチ以上)。屋内設置型は排気の経路が確保されていること。凍結対策が必要な位置かも確認する。 | 給湯器の型番と設置年を記録する。10年を超えているなら、交換時の搬出入経路も確認する。 |
| 空調の室内機 | フィルターを外して清掃できる空き。天井カセット型なら、真下に脚立を立てられること。ドレン配管の点検も必要になる。 | 室内機の真下に脚立を立てられるかを確認する。棚や在庫があるなら、清掃時に動かす手順を決める。 |
| 洗濯機・乾燥機(美容室・サロン) | 給水栓、排水口(防水パンが望ましい)、専用の電源回路。乾燥機の排気を屋外へ出す経路。排気を室内に出すと、バックヤードの湿度と温度が上がり、タオルが乾かなくなる。 | 排水口と給水栓の位置を図面で確認する。乾燥機の排気ダクトを屋外へ出せる壁面があるかを確認する。 |
| タオルの保管棚 | 消毒済みのものと未消毒のものを分けて置く棚。衛生管理要領の第2の14は、消毒済みのものと未消毒のものを区別するために必要な収納ケース等を備えることを求めている。第3の1の(7)は、保管場所を少なくとも1週間に1回以上清掃することを求めている。 | 消毒済みと未消毒を分ける棚があるか、ラベルで区別できているかを確認する。 |
| バックヤードの換気 | 建築基準法第2条第4号は、居室を「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室」と定義している。継続的に事務作業や作業を行う部屋は居室にあたり、第28条第2項により換気のための窓その他の開口部を床面積の20分の1以上設けるか、政令で定める技術的基準に従った換気設備を設ける必要がある。単なる倉庫はこれに当たらないのが通例だが、判断は特定行政庁による。 | バックヤードを「継続的に使う部屋」として使う予定かを設計者に伝える。窓がないなら換気設備の有無を確認する。 |
1坪を売場に回すか、裏方に回すかを数字で突き合わせる
1坪を売場にすれば、席が何席増えるか。設計者に聞けば答えが出ます。その席が生む粗利と、裏方がないことで失う効率を並べて比べてください。
そもそも売場を削らずに確保できる場所もあります。天井裏、階段下、什器の下。表にしました。
| 比較する項目 | 計算のしかた | 自店で用意する数字 |
|---|---|---|
| 売場に回した場合の年間粗利増 | 増える席数 × 1日あたり回転数 × 客単価 × 月間営業日数 × 粗利率 × 12。坪あたり月商から按分する方法は、満席にならない時間帯を無視するため過大になりやすい。 | 直近3か月の客単価と、時間帯別の在席数。POSの時間帯別売上があれば、それを使う。 |
| 離職1人あたりのコスト | 求人費または紹介手数料 + 面接対応時間 × 対応者の時給 + 教育に付いた時間 × 教育者の時給 + 欠員期間の割増賃金。編集部が調べた範囲では、業種別の採用単価を示した公的統計は確認できなかったため、自店の実績から算出する。 | 直近1年に採用した人数、そのときの求人費、面接に使った時間、独り立ちまでの日数。 |
| 床置きが生んでいる毎日の手間 | 1日あたりの余計な作業時間(分) × 月間営業日数 ÷ 60 × 時給 × 12。段ボールをどける、モップを取りに行く、在庫を掘り返す時間が対象。 | 1週間、余計な作業にかかった時間を実測する。5分単位で構わない。 |
| 釣り合う離職者数 | 売場に回した場合の年間粗利増 ÷ 離職1人あたりのコスト = 年間で何人分の離職を防げば釣り合うか。この人数が現実的に達成できるかどうかで判断する。 | 直近2年で辞めた人数と、その理由(本人が言った理由と、推測される理由の両方)。 |
| 工事で確保する場合の追加費用 | 間仕切り1枚、扉1枚、棚1本の見積もり。これを年数で割り、年間の負担額として上の数字と比べる。開店時にまとめて発注するほうが、後付けより安くなるのが一般的。 | 設計者に「更衣と休憩の場所を追加した場合の差額」を見積もってもらう。 |
| 場所 | 割り当てられる機能 | 今日確認すること |
|---|---|---|
| 柱型の脇のくぼみ | 幅30〜60センチ、奥行40〜60センチが取れることが多い。清掃用具の縦長スペース、または細身の棚に向く。 | 柱の位置と、その脇にできているくぼみの寸法を測る。什器で埋めているなら、何が入っているかを確認する。 |
| 階段下 | 高さが変化するため、手前を高さのあるもの、奥を低いものに使う。在庫の長期保管、季節什器の置き場に向く。防火区画や避難経路にかかっていないかは要確認。 | 階段下の高さを3か所(手前・中間・奥)で測る。建物の共用部なら管理会社に使用可否を確認する。 |
| 天井裏・梁の上 | 天井高が2.7メートル以上あるなら、高さ2.0メートルより上に吊り棚を設けられる。使用頻度が月1回以下のものに向く。荷重に耐える下地があるかを設計者に確認する。 | 天井高を測る。2.7メートル以上なら、吊り棚の設置を設計者に相談する。 |
| レジカウンターの内側 | 造作の内部は、多くの場合ほとんど使われていない。引き出しを追加すれば、施錠できる私物収納と、書類の保管に使える。 | カウンター内部を開けて、空いている容積を測る。棚板を追加できる構造かを確認する。 |
| 開き戸を引き戸に替える | 開き戸は、開閉のために扉幅ぶんの円弧の床を空けておく必要がある。幅80センチの扉なら約0.5平方メートル。引き戸に替えると、その床が使えるようになる。 | 店内の開き戸を数え、その前に空けている床の面積を合計する。 |
| 什器の下・ベンチの下 | 什器の下に高さ20〜30センチの引き出しを組み込むと、消耗品の保管場所になる。売場面積は変わらない。 | 什器の下の高さを測る。20センチ以上あるなら、引き出しを追加できないか業者に相談する。 |
1坪の使い道を判断するために確認すること
- 1坪を売場に回した場合、席が何席増えるかを設計者に確認する(テーブル席か、カウンターか、什器か)。
- その席が1日に何回埋まるかを、直近1か月の実績から推定する(ピーク時にしか埋まらないなら1回転未満になる)。
- 増える席数 × 1日あたりの回転数 × 客単価 × 月間営業日数 = 増える月商。
- 増える月商 × 粗利率 = 増える月間粗利。
- 増える月間粗利 × 12 = 増える年間粗利。これが「バックヤードに1坪回すことで失うもの」。
離職理由の統計を、裏方の設計に翻訳する
厚生労働省の雇用動向調査に、前職を辞めた理由が出ています。労働条件のなかには、休憩できるかどうかも含まれます。採用と定着は、裏方の設計と無関係ではありません。
| 理由 | 令和6年の割合(男性/女性) | 自店で確かめる方法 |
|---|---|---|
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 男性8.6%/女性12.8%。女性では「その他の個人的理由」24.3%を除くと最も多い理由で、前年から1.7ポイント上昇しています。 | 休憩の打刻と実際に座っていた時間の差を、直近1か月ぶん集計する。差が生じている日の共通点を探す。 |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 男性9.0%/女性11.7%。女性では2番目に多い理由です。 | 休憩が同時に取れているか、それとも交代で1人ずつになっているかを確認する。会話が生まれる場所があるかも見る。 |
| 給料等収入が少なかった | 男性10.1%/女性8.3%。男性では「その他の個人的理由」20.2%、「その他の理由(出向等を含む)」13.5%、「定年・契約期間の満了」14.1%を除くと最も多い理由です。 | 内装では直接触れられない領域。ただし、余計な作業時間が減れば、同じ人件費で働く時間の密度は変わる。 |
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 男性4.4%/女性3.6%。いずれも前年から低下しています(男性は3.0ポイント、女性は1.4ポイントの低下)。 | 内装では触れられない領域。この記事の対象外と割り切る。 |
| 産業別の離職率(参考) | 令和6年の離職率は、産業計で一般労働者11.5%・パートタイム労働者21.4%。宿泊業,飲食サービス業は一般18.1%・パート29.9%、生活関連サービス業,娯楽業は一般16.9%・パート21.9%、卸売業,小売業は一般10.7%・パート21.3%です。 | 自店の直近1年の離職率(辞めた人数 ÷ 年初の在籍人数)を計算し、上の産業別の数値と比べる。 |
ごみ置き場と近隣配慮
名古屋市の基準から、必要な容量を逆算できます。置き場が足りないと、収集日まで店の外に出すことになります。
| 項目 | 基準の内容 | 自店で計算・確認すること |
|---|---|---|
| 発生量の原単位 | 1,000平方メートルあたりの1日の発生量は、飲食店1.5立方メートル、事務所ビル1.0立方メートル、共用施設(通路・機械室・駐車場等)0.1立方メートル。再利用対象物は飲食店2.0立方メートル、事務所ビル1.5立方メートル。 | 自店の延べ面積を1,000で割り、原単位と平均保管日数を掛けて保管容量を計算する。20坪(約66平方メートル)の飲食店で保管日数2日なら、廃棄物は約0.2立方メートル、再利用対象物は約0.26立方メートル。 |
| 保管場所の高さ | 積み上げ高は、人が容易に積み上げ、積み下ろしのできる高さ(最高でも1.5メートル)とすることとされています。 | 保管容量を1.5で割り、必要な床面積を求める。上の例では、廃棄物と再利用対象物を合わせて約0.3平方メートル。 |
| 保管場所の位置 | 収集車両の横づけが可能であり、その場で積込み作業ができること。隣地居住者等の苦情が発生しない位置とすること(特に騒音、悪臭および収集車両の排気ガスに配慮すること)。駐車禁止等の措置を講じること。 | 収集車がどこに停まるかを、契約する許可業者に確認する。停車位置と隣家の窓の位置関係を、地図と現地で確認する。 |
| 保管場所の構造 | 間仕切り、表示等により可燃ごみ、不燃ごみおよび再利用対象物の分別の徹底をすること。廃棄物保管場所向けに洗浄設備および排水設備の設置をすること。生ごみ等が多量に排出される場合、保管場所の密閉性を高めるとともに冷蔵設備を付設すること。必要に応じて換気扇を設置すること。 | ごみ置き場の近くに水栓と排水があるかを確認する。ない場合、においの原因になるため、洗える構造にできないか設計者に相談する。 |
| 収集車両の規格 | 大型プレス車は車長7.10メートル、車幅2.20メートル、車高2.83メートル。小型プレス車は車長5.45メートル、車幅1.85メートル、車高2.30メートル。地下空間等に保管場所を設け、収集車両がスロープまたはエレベーターを使用する場合は、この規格を考慮することとされています。 | 建物の駐車場や荷捌きスペースに入る車高・車幅かを確認する。地下や機械式駐車場を経由する場合は特に注意する。 |
| 収集休止日への対応 | 収集休止日(年末年始を含む)への対応、分別作業スペース、粗大ごみの集積場所についても考慮することとされています。 | 年末年始に収集が止まる日数を許可業者に確認し、その日数ぶんの保管容量が確保できるかを計算する。 |
今日、自店のバックヤードを測る手順
閉店直後の状態で、4方向から写真を撮る。片づける前に撮るのが要点です。そこに写っているものが、置き場のないものです。
| 測る項目 | 満たしていない場合の判定 | 対応の優先順位 |
|---|---|---|
| 点検口の前の空き60センチ | 点検のたびに物を動かすことになり、いずれ動かさなくなる。ブレーカーが落ちたときの復旧が遅れ、営業停止の時間が延びる。 | 最優先。物を移動するだけで解決するため、費用がかからない。今日中に実施できる。 |
| 施錠できる私物収納 | 紛失時に対応できず、スタッフ間の不信につながる。信頼の問題は、内装の問題より修復に時間がかかる。 | 高い。鍵付きの収納を人数分置くだけで、工事は不要。数千円から対応できる。 |
| 背もたれのある椅子と台 | 休憩が休憩にならない。雨の日は休まなくなる。労働基準法第34条の「自由に利用させる」という要件から見ても弱い。 | 高い。椅子と壁付けの折りたたみ台であれば、工事は小規模で済む。 |
| 床置きゼロ | 通路幅が実質的に狭くなり、避難の妨げにもなる。重複発注と棚卸しの手間が増える。 | 中。まず月1回以下のものを店外に出す。それでも足りなければ棚を追加する。 |
| 清掃用具の専用スペース | 飲食店・美容室では基準に反する状態になる。濡れたモップが乾かず、においの原因になる。 | 中。幅30センチの縦長スペースを確保する。既存の棚を1本減らせば作れることが多い。 |
| 搬入経路の幅80センチ | 台車が使えず、納品のたびに手で運ぶことになる。営業中の納品では接客が止まる。 | 中。什器の配置変更で解決することが多い。解決しないなら、納品時間を営業時間外にずらす交渉をする。 |
| 更衣できる場所 | 業種によっては基準から外れる。客用トイレを占有することになり、ピーク時に問題になる。 | 中から低。カーテンでの区切りから始め、改装のタイミングで扉付きに変える。 |
今日、自店のバックヤードを測る手順
- 閉店直後の状態で、バックヤードとその周辺を4方向から写真に撮る。片づけてから撮らない。
- 床に直接置かれている箱・容器・什器の数を数える。数えた数を紙に書く。
- そのうち「今週使うもの」と「今週使わないもの」に分ける。今週使わないものの数が、不足している容量の目安になる。
- スタッフの上着とバッグがどこに置かれているかを記録する。施錠できる場所に入っているものの割合を出す。
- モップ・バケツ・ごみ袋の位置を記録する。お客様の視線が届く位置にあるものを数える。
- 分電盤・給湯器・空調室内機・点検口の前に、幅60センチの空きがあるかを測る。ないものを書き出す。
- 搬入口から保管場所までの経路をメジャーで測り、最も狭い箇所の幅と、段差の高さを記録する。
- 座って休める場所に実際に10分座ってみる。背中を預けられるか、飲み物を置けるか、売場から見えるかを確認する。
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よくある質問
バックヤードについて相談を受けるとき、繰り返し出てくる質問がいくつかあります。 多くは「面積が取れない」という前提から発しています。 そして、その前提のまま議論すると、たいてい「では今回は見送りましょう」で終わります。
ここでは、その前提を一度分解したうえで答えます。 なお、以下の回答は2026年8月22日時点で確認した条文と公表資料に基づいています。 法令や自治体の運用は改正されることがあるため、実際の判断の前には最新の情報を確認してください。
許認可にかかわる部分は、管轄の保健所や特定行政庁への確認が必須です。
バックヤードは店全体の何割を取ればよいですか。面積比の目安はありますか?
公的な統計や法令で「店舗面積の何割をバックヤードに充てる」と定めたものは、編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。 したがって割合から決めるのではなく、置くものと人数から積み上げて決めてください。 積み上げの起点になる数値は法令にあります。
労働安全衛生規則第600条は、労働者を常時就業させる屋内作業場の気積を、 設備の占める容積と床面から4メートルを超える高さにある空間を除いて、労働者1人あたり10立方メートル以上とすることを求めています。
天井高が2.5メートルで、設備が容積の2割を占める店なら、1人あたりおよそ5平方メートル、約1.5坪が必要という計算になります。 ただしこれは売場や厨房を含む屋内作業場全体に対する基準であって、バックヤード単体の基準ではありません。
バックヤードそのものは、同時に着替える人数、1回の納品で入ってくる段ボールの数、 月に1度しか使わない備品の量、清掃用具と廃棄物の容量を実際に数えて足し上げるほかありません。
数えたうえで、まとまった1室が取れないのであれば、更衣は施錠できる個室、休憩は事務スペースの椅子、在庫は什器の下というように、機能ごとに分散させてください。 割合を先に決めると、必ずどこかがはみ出します。
スタッフ用のトイレは、お客様用と兼ねてもよいですか?
兼ねること自体がただちに法令違反になるわけではありませんが、条件があります。
労働安全衛生規則第628条は、便所を男性用と女性用に区別すること、 男性用大便所の便房は同時に就業する男性労働者60人以内なら1個以上、 男性用小便所は30人以内なら1箇所以上、女性用便所の便房は20人以内なら1個以上とすること、 流出する清浄な水を十分に供給する手洗い設備を設けることなどを求めています。
そのうえで第628条の2第1項は、同時に就業する労働者の数が常時10人以内である場合は、 男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所、 いわゆる独立個室型の便所を1つ設けることで足りるとしています。 この特例は令和3年12月1日から施行されました。
愛知労働局が公表している改正の案内では、ここでいう壁等とは 視覚的・聴覚的な観点から便所内部が外部から容易に知覚されない堅牢な壁や扉のことであり、 仕切り板で構成されているものや下部に隙間があるものは該当しないこと、 四方を壁等で囲まれたとは全方向を壁等で囲まれ扉を内側から施錠できる構造であることが示されています。
同じ案内には、男性用と女性用に区別するのが原則であり、この特例を根拠に既存の男女別の便所の一部を廃止することは不適切だとも書かれています。
飲食店の場合はさらに、食品衛生法施行規則別表第19が、便所を従業者の数に応じて有すること、 作業場に汚染の影響を及ぼさない構造であること、専用の流水式手洗い設備を有することを求めています。
運用面では、ピーク時にお客様と鉢合わせずに入れる経路があるか、制服のままトイレに入る動線になっていないかを必ず確認してください。
休憩室を作る余裕がありません。何もしないよりましな対策はありますか?
あります。 労働安全衛生規則第613条と事務所衛生基準規則第19条は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けることを事業者の努力義務としていますが、 専用の1室であることまでは求めていません。
愛知労働局の案内でも、休憩の設備の広さや設備内に備えるべきものについては衛生委員会等で調査審議を行い、 その結果に基づいて設置することが望ましいとされています。 つまり最初に必要なのは広さではなく、座って背中を預けられる場所が売場から見えない位置にあることです。 現実的な順序は3つあります。
1つ目は、背もたれのある椅子を1脚、売場から視線が通らない位置に固定で置くこと。 2つ目は、その椅子の前に幅45センチほどの台を設け、飲み物と食事を置けるようにすること。 3つ目は、私物を入れる施錠できる箱をその横に置くことです。
この3つは、通路の突き当たりや事務スペースの一角でも成立します。
加えて、労働基準法第34条は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、 8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないこと、 その休憩時間を自由に利用させなければならないことを定めています。
休憩時間中に売場の椅子で待機させている状態は、自由に利用させるという要件から見て問題になり得ます。 場所がないことは、休憩を与えなくてよい理由にはなりません。
開店後に「荷物の置き場がない」と分かりました。今からできることはありますか?
工事を伴わない対策から順に手をつけてください。 1つ目は、置いてあるものを数えて分類することです。 毎日使うもの、週に1度使うもの、月に1度しか使わないもの、1年使っていないものの4つに分け、 月1回以下のものを店外の倉庫や貸しコンテナに移すだけで、床置きの多くは解消します。
2つ目は、縦方向と隙間を使うことです。 天井までの可動棚、什器の下、階段下、扉の裏、レジカウンターの内側は、多くの店で未使用のまま残っています。 3つ目は、納品のタイミングと量を変えることです。
1回の納品量を半分にして回数を倍にすれば、必要な保管容量はおおむね半分になります。 ここまでで足りなければ、はじめて工事の検討に入ってください。 工事で効くのは、間仕切りを1枚立てて更衣と休憩の場所をつくること、 天井裏や梁の上に棚を吊ること、開き戸を引き戸に替えて開閉に必要な空間を減らすことの3つです。
いずれも売場を大きく削らずに済みます。 なお賃貸物件で間仕切りを立てる場合は、原状回復の対象になる範囲と、 消防法上の避難経路や感知器の配置に影響しないかを、着工前に管理会社と消防に確認してください。 分電盤や給湯器の前をふさぐ棚を置くと、点検のたびに動かすことになり、結局は元に戻ります。
まとめ|バックヤードで決める8つのこと
バックヤードは、売上を生まない場所ではありません。売場を売場のまま保つための場所です。
図面に更衣室がなかったら、「スタッフはどこで着替えますか」と聞いてください。その一言で、削られた項目が表に出ます。