「引き渡しが2週間ほど延びそうです」。その2週間がいくらなのかを先に出しておくと、受けるか押し返すかを、その場で判断できます。

15坪・賃料30万円・共益費3万円なら、月33万円。2週間で約16万円が、売上ゼロのまま出ていきます。そこに販促の打ち直しと人件費が乗ります。

工期が延びる要因は7つ。そのうち3つは、契約前に潰せます。残りは、遅れを吸収する備え方の問題です。

この記事でわかること

  • 国土交通省の統計で確認できる用途「店舗」の受注額別の平均工期と、その数値に含まれていない期間
  • 物件状態別・業種別・坪数別の目安について、公的な裏づけがあるものと、ないものの区別
  • 工期が延びる7つの要因を、施主が着工前に確かめられる形にした一覧
  • 石綿の事前調査報告と大気汚染防止法の14日前届出という、施主自身が義務を負う法定日数
  • 短縮できることと、当事者の合意では短くできないことを理由つきで分けた表
  • 工期が1か月延びたときの損失を「お客様◯人分」に翻訳する計算(編集部の試算例)
  • 建設業法が用意している工期を守るための条文と、施主としての使い方
用途「店舗(飲食店、物販店舗)」の平均工期は、100万円未満が12.2日、100万円以上500万円未満が30.9日、500万円以上1,000万円未満が46.5日、1,000万円以上5,000万円未満が61.2日、5,000万円以上1億円未満が119.4日。
金額が10倍になっても、工期は5倍にしかならない|工事の日数は金額に比例しません。ただしこれは着工から完成までの日数で、設計・見積り・申請・検査の期間は含まれていません。

「工期」という言葉が指しているもの

契約書の工期に、設計の期間や検査の待ち時間は入っていません。開業までの日数とは別物です。この記事が数える範囲を先に示します。

この記事が扱う日数と、扱わない日数
区間 この記事での扱い 自分の案件で確認する方法
相談から見積確定まで 扱わない。建設業法が定める見積期間を含むため、日数の根拠は手続き側の記事にある 見積依頼日を控え、工事金額の帯から法定の見積期間を数える(店舗開業までの内装スケジュール|相談から引き渡しまでの6つの工程と、戻れなくなる日の一覧を使う)
契約から着工まで 一部だけ扱う。近隣説明、ビル管理会社への工事申請、石綿の届出など、着工日を後ろにずらす手続きに触れる 工程表の一番左に「着工日」ではなく「申請提出日」が書かれているかを見る。書かれていなければ質問する
着工から完成まで この記事の対象。7つの要因はすべてこの区間を延ばすもの 工程表を作業ごとの行に分け、各行の日数と、行と行の間の空白日を数える
完成から引き渡しまで 対象に含める。施主検査と是正、クリーニング、各種検査の立会いが入る 施主検査の日と、是正のための日数が工程表に確保されているかを確認する
引き渡しから開店まで 扱わない。営業許可、消防の検査、什器搬入、研修が入る 許認可の申請期限を役所のページで確認する(店舗開業に必要な届出と許認可|内装の着工前に確認する9つの手続きを参照)

公的統計で確かめる|用途「店舗」の工事日数

国土交通省のリフォーム・リニューアル調査に、受注額の帯ごとの平均工期が出ています。自分の予算規模の行が目安になります。

他の用途との比較と、前年度との比較も載せました。工期は年々長くなっています。

用途「店舗(飲食店、物販店舗)」の受注額別 受注件数と平均工期(令和7年度計)
受注額の階級 受注件数と平均工期 自分の案件に当てはめるとき確認すること
100万円未満 217,499件/平均工期12.2日 部分的な補修や什器の入れ替えが中心の水準。自分の工事がこの規模なら、日程を決めるのは工事ではなく手続きと納期のほうになる
100万円以上500万円未満 97,799件/平均工期30.9日 居抜きで内装仕上げが中心の工事が入りうる帯。設備を触るかどうかで倍近く変わるため、見積内訳の電気・給排水・空調換気の金額を確認する
500万円以上1,000万円未満 28,623件/平均工期46.5日 約1か月半。この帯からは解体工事が入ることが多いため、解体後に工程を組み直す予備日が工程表にあるかを見る
1,000万円以上5,000万円未満 20,663件/平均工期61.2日 約2か月。この日数はあくまで工事だけなので、設計・見積り・契約・申請・検査の日数を別に足したものが開業までの期間になる
5,000万円以上1億円未満 539件/平均工期119.4日 約4か月。件数が少ない区分のため誤差が大きい可能性がある。同規模の実績を持つ会社に、直近の案件の実際の工期を聞く
非住宅建築物の用途別 平均工期の比較(令和7年度計・単位は日)
用途 受注額の階級ごとの平均工期 この比較から自分の案件で確認すること
店舗(飲食店、物販店舗) 100万円未満12日/100万円以上500万円未満31日/500万円以上1,000万円未満46日/1,000万円以上5,000万円未満61日/5,000万円以上1億円未満119日 4つの帯すべてで最短の部類。工程に余裕がない前提で、予備日が何日置かれているかを工程表で数える
事務所 16日/47日/67日/103日/201日 1,000万円台では店舗の1.7倍。オフィスの実績が中心の会社に店舗を頼むときは、工程の組み方の違いを確認する
生産施設(工場、作業場) 16日/47日/75日/118日/168日 設備の比重が高いと工期が延びることの裏づけ。自分の工事の設備比率を見積書の費目から計算する
倉庫・流通施設 12日/43日/59日/78日/142日 小規模帯は店舗と同水準。金額が上がるほど差が開くのは、面積と設備の量が効いてくるため
用途「店舗」の平均工期|令和6年度計と令和7年度計の比較(単位は日)
受注額の階級 令和6年度計/令和7年度計 読み取れることと、自分でやること
100万円未満 11日/12日 2年とも2週間前後。この帯なら、工事の日数より材料の納期のほうが日程を決める。発注済みかどうかを確認する
100万円以上500万円未満 29日/31日 2年とも1か月前後。設備を触らない前提の日数なので、自分の工事で設備を触るなら上振れを見込む
500万円以上1,000万円未満 43日/46日 1か月半前後で安定。工事会社の提示工期がこれを大きく下回るなら、何を省いているかを聞く
1,000万円以上5,000万円未満 56日/61日 2か月前後。多くの新装工事がこの帯に入る。提示された工期をこの数値と突き合わせる
5,000万円以上1億円未満 111日/119日 件数が539件と少なく誤差が大きい可能性がある。参考程度にとどめ、同規模の実績を持つ会社に直接聞く

物件状態・業種・坪数別に、言えることと言えないこと

スケルトンか居抜きか、業種は何か、何坪か。坪数が減っても、減らない日数があります。行政の待ち時間と、材料の納期です。

物件状態別|統計や条文で裏づけられることと、自分で確かめること
物件の状態 工期に効く仕組み(裏づけのある範囲) 内覧・契約前に自分で確かめること
スケルトン(内装なし) 設備を一から引くため、電力・ガス・給排水の各事業者の日程が工程に入る。工事金額も上がるため、統計上は工期の長い金額帯に移動する 分電盤の位置と契約可能容量、給排水の引込位置、排気を外部に出せる経路の3点を写真に撮る。図面ではなく現物を見る
居抜き(設備をそのまま使う) 解体と設備新設が減るぶん金額が下がり、統計上は工期の短い金額帯に入る。ただし既存設備の不具合が着工後に見つかると一気に戻る 厨房機器・空調・給湯器の製造年を銘板で確認する。動作確認を売主立会いで行い、結果を書面に残す
居抜き(設備を入れ替える) 撤去と新設の両方が乗るため、工程数はスケルトンに近づく。撤去で下地が露出し、追加が出やすい 撤去する範囲を図面に色分けしてもらい、撤去後に何が出てきたら追加になるかを見積書の除外条件で確認する
営業中の店舗の改装 作業時間帯が営業時間で制限されるため、同じ工事量でも日数が延びる。夜間作業は割増になる 1日に何時間作業できるかを先に決め、その時間数で工程表を作ってもらう(店舗改装で営業を止めるべきか|休業か営業継続かを決める6つの判断材料)
原状回復(退去時) 範囲が契約書の記載で決まるため、範囲の解釈が割れると工事が始まらない。日数より合意形成が支配的 賃貸借契約書の原状回復条項と、入居時の現況写真を突き合わせる(店舗の原状回復でトラブルを避ける7つの対策|スケルトン戻しの範囲と契約書の読み方)
業種別|工期を押し上げる工事と、見積書で数える費目
業種 工期を押し上げる工事 見積書・図面で自分が数えること
飲食店 厨房機器、排気ダクトと消音、グリストラップ、ガス設備、給湯。設備の工程が最も多い 排気ダクトの経路長と、外部への吐き出し位置が図面にあるか。厨房機器の納期が発注済みかどうか(飲食店の厨房設計で決める9つのこと|面積配分・排気・給排水を着工前に固める)
カフェ・喫茶 カウンターの造作、製氷機とエスプレッソマシンの給排水と電源、小規模でも排気は必要 カウンターが造作か既製品かを確認する。造作なら製作図の承認日が工程表にあるか(店舗什器は造作か既製品か|金額・寸法・退去まで見て決める7つの判断)
美容室・サロン シャンプー台の給排水と床上げ、電気容量の増設、セット面ごとの電源とミラー造作 シャンプー台の台数と、排水の勾配が取れる床上げ高さが図面にあるか。契約電力の変更申込が済んでいるか
クリニック 区画の間仕切り、医療機器の専用電源、X線室の遮蔽、給排水の増設、法令上の構造設備基準 機器メーカーの据付要領書が設計に反映されているか。行政との事前協議の日程が工程表にあるか(クリニック開業の内装で決める9つのこと|診療所の構造設備基準から動線まで)
物販店 什器の製作と搬入、照明の配線、レジまわりの電源と通信。設備工事は比較的軽い 什器の製作期間と搬入日が工程表に独立した行としてあるか(物販店の内装で押さえる8つのポイント|アパレル・雑貨の什器と売場づくり)
オフィス 間仕切り、LAN配線、OAフロア、什器搬入。商業施設ではA工事・B工事の区分が工程を分断する ビル側指定業者が行う工事の範囲と、その日程が誰の管理下にあるか(商業施設への出店で決める9つのこと|A工事B工事C工事の区分と費用の境目)
規模が変わっても減らないもの・減るもの
工程の性質 面積が小さくなると、どうなるか 工程表で自分が確認する方法
作業量に比例する工程 床の張り、壁の仕上げ、塗装など。面積に応じて日数が減る 工程表で「◯㎡」と面積が書かれている行を探す。この行だけが規模に応じて縮む
1回で済む工程 分電盤の設置、幹線の引込、給排水の本管接続、消防設備の移設。10坪でも30坪でも1回 工程表で日数が1日から3日の短い行を数える。この行の合計が、規模に関係なく必ずかかる日数になる
待ち時間の工程 モルタルの養生、塗装の乾燥、コンクリートの強度発現。面積に関係なく同じ日数 工程表で作業者名のない行、または「養生」「乾燥」と書かれた行を探す。ここは絶対に縮まない
第三者の日程で決まる工程 電力・ガスの工事、行政の検査、ビル管理会社の立会い。規模と無関係 工程表で自社以外の名前が書かれた行を探し、その日程がすでに押さえられているかを聞く
段取り替えの工程 職人が入れ替わるたびに発生する。工種が多いほど増え、面積では減らない 工程表に登場する工種の数を数える。工種が10を超えるなら、段取り替えだけで数日は見ておく

要因1〜3|下地の状態、設備の引き直し、行政の待ち時間

解体してみるまで分からない部分は、予備日で受けるしかありません。石綿の事前調査のように、法定の日数が要るものもあります。

設備の引き直しが必要になる条件は、契約前に確認できます。ここを潰しておけば、大きな遅れは避けられます。

行政の審査と検査は、こちらの都合で早まりません。押さえる日付を表にしました。

解体前に確認する法令上の手続きと、工期への効き方
手続き 根拠条文と内容 施主が自分で確認すること
石綿の事前調査 石綿障害予防規則第3条第1項。解体または改修の作業を行うときは、あらかじめ石綿等の使用の有無を調査する義務 調査の実施日が工程表にあるか。設計図書がない建物では目視調査に日数がかかることを見込んでいるか
労働基準監督署への報告 同規則第4条の2第1項。床面積80平方メートル以上の解体、または請負代金100万円以上の改修が対象。第2項第2号として工事の実施期間を報告する 自分の工事が対象になるかを、床面積と請負代金で判定する。対象なら報告済みかを工事会社に確認する
都道府県知事への届出 大気汚染防止法第18条の17第1項。届出対象特定工事は、作業開始の日の14日前までに届け出る。義務者は発注者 着工予定日から14日を逆算した日付を手帳に書く。誰が届け出るのかを契約前に書面で決めておく
竣工図・設備図の取り寄せ 法令上の義務ではないが、事前調査の第一の方法が設計図書等の文書の確認であるため、図面の有無が調査の負荷を左右する 物件の申し込み時に、貸主または管理会社へ竣工図・設備図・改修履歴・検査済証の有無を書面で問い合わせる
現地の実測と開口調査 法令上の義務ではない。天井裏や床下を部分的に開けて確認する調査で、貸主の承諾が要る 契約前に開口調査ができるかを貸主に確認する。できないなら、その分の予備日を工程表に入れてもらう
設備インフラ|引き直しが必要になる条件と、契約前の確認方法
設備 引き直しが必要になる条件と、工期への効き方 物件の契約前に自分で確認する方法
電気容量 厨房機器や空調の合計容量が既存の契約容量を超えると増設が必要。引込の変更を伴う場合は電力会社の工事日程が工程に入り、内装会社は日程を動かせない 分電盤の主幹ブレーカーの数値を写真に撮る。ビルの場合は各テナントに割り当てられた容量の上限を管理会社に文書で確認する(店舗の電気容量が足りない物件を避けるには|契約前に確認する7つの設備条件)
給水 メーターの口径が小さいと同時使用時に水圧が足りない。口径変更は水道局の手続きを伴い、建物全体の引込に関わると管理組合の合意も要る 水道メーターの口径表示を確認する。飲食店なら、同時に使う蛇口と機器の数を数えて工事会社に伝える
排水 既存の排水位置から遠いと床上げが必要になり、床の下地工事が増える。グリストラップの新設は床を壊す工事になる 床の排水口の位置と数を図に描く。天井高を実測し、床を上げても頭上に余裕があるかを計算する
排気(ダクト) 外部への吐き出し口が確保できないと、経路の再設計かレイアウト変更になる。外壁に穴を開ける場合は建物所有者の承諾が要り、承諾待ちで工事が止まる 建物の外壁を1周して既存のダクト開口を探す。屋上に上げられるか、竪穴があるかを管理会社に聞く(店舗の空調と換気で決める7つのこと|能力・法令・室外機を着工前に固める)
ガス 厨房機器の合計消費量が既存の供給能力を超えると増径工事が必要。道路を掘る工事になると道路使用許可が絡み、日程は自社で決められない ガスメーターの型番と、都市ガスかプロパンかを確認する。厨房機器の一覧を先に作り、合計の消費量をガス会社に照会してもらう
室外機の置き場 置き場所がないと、設置場所の造作や配管の延長が発生する。屋上に置く場合は共用部の使用許可が要る 候補の置き場所を写真に撮り、共用部かどうかを管理会社に確認する。配管の距離をメジャーで測る
工事の日数に食い込む行政手続きと、押さえる日付
手続き 工事日程への効き方 施主が自分で押さえる日付
石綿の届出(大気汚染防止法) 届出対象特定工事は作業開始の14日前までに都道府県知事へ届出。義務者は発注者。届出が遅れれば着工日そのものが後ろにずれる 着工予定日から14日を引いた日を「届出期限日」として手帳に書く
建築確認・用途変更 必要な工事では審査期間が工程の前に乗る。着工は確認済証の交付後になる 自分の工事が確認申請の対象かを設計者に文書で確認する(用途変更の確認申請が必要になる7つの場面|200㎡超・検査済証・既存不適格)
消防関係の届出と検査 着工前の届出と、完成後の検査がある。検査日が希望日に取れないと引き渡し後も営業できない 所轄の消防署に工事内容を伝え、届出の種類と期限を確認する(店舗の消防手続きで確認する8つのこと|届出・設備・検査を着工前に固める)
道路使用許可 資材の搬入で車両を路上に止める場合や、道路を掘る工事で必要。警察との協議に日数がかかる 搬入経路の図に、車両を止める位置を書き込んでもらう。許可が要るかを工事会社に確認する
完了検査・営業許可 完成してから検査、検査が通ってから許可という順序になるため、完成日と開店日の間に必ず日数が要る 完成日ではなく「検査日」と「許可交付見込日」を工程表に書いてもらう(店舗開業に必要な届出と許認可|内装の着工前に確認する9つの手続き)
石綿の事前調査と報告の対象
  1. 建築物の解体工事で、当該工事に係る部分の床面積の合計が80平方メートル以上のもの
  2. 建築物の改修工事で、当該工事の請負代金の額が100万円以上のもの
  3. 厚生労働大臣が定める工作物の解体工事または改修工事で、請負代金の額が100万円以上のもの
  4. 総トン数20トン以上の船舶の解体工事または改修工事

要因4〜7|納期、施主の決定、工事区分、近隣

材料と機器には、読みにくい納期のものがあります。早く発注するには、早く決めるしかありません。

施主の決定の遅れは、いちばん多い原因です。決定が遅れると止まる工程と、期限の決め方を表にしました。

他業者との工事区分と、建物側の制約。作業できる時間帯とエレベーターの使用は、内覧時に測って確認できます。

納期が読みにくい品目と、早く発注するための方法
品目 納期が読みにくい理由 施主が発注を早めるためにやること
厨房機器 受注生産の機種が多く、機器が決まらないと給排水とガスの位置も決まらない。設計の前提になる メニューを先に固め、必要な機器の一覧を業種の実務者に見てもらう。基本設計の段階で機種を確定する
特注の造作家具 製作図の作成と承認、材料の手配、工場での製作、搬入の4段階があり、承認が遅れると全部が後ろにずれる 製作図の承認期限を工程表に日付で書いてもらう。既製品で代替できるものを事前に決めておく(店舗什器は造作か既製品か|金額・寸法・退去まで見て決める7つの判断)
空調機・室外機 能力と機種の組み合わせによっては在庫が偏る。工事の終盤に必要になるため、遅れが引き渡しに直撃する 能力計算を早い段階で出してもらい、機種を確定させる。代替機種の候補も同時に決めておく
仕上材(床材・タイル・壁材) 在庫品と受注品が混在し、色柄によって納期が数週間違う。輸入品はさらに読みにくい 候補を選ぶ段階で「在庫の有無と納期」を一覧に入れてもらう(店舗の内装材の選び方|法規と運用コストで決まる7つの基準)
看板・サイン 製作に加えて、屋外広告物条例の許可が要る場合があり、許可を待つ間は取付できない 看板の意匠を早く決め、許可の要否を確認する(店舗の看板・外装で確認する7つのこと|屋外広告物条例・発注区分・予算の別枠)
分電盤・受変電設備 容量変更を伴うと機器が受注生産になることがある。電力会社の工事日程とも連動する 電気容量の確定を最優先にする。容量が決まらない限り、この行は工程表に載せられない
決定が遅れると止まる工程と、期限の決め方
決めること 遅れると止まる工程 自分で期限を決める方法
レイアウトの確定 すべての設備位置が決まらないため、電気も給排水も着工できない。工事の前提そのもの 1日の動きを時間順に紙に書き、同時に何人がどこにいるかを数えてから図面を見る
厨房機器・設備機器の機種 給排水・ガス・電源の位置が確定しない。配管と配線の施工が止まる メニューまたはサービス内容を先に確定させる。機種は基本設計の完了日を期限にする
コンセントとスイッチの位置 壁と天井を閉じる前に決める必要があり、閉じたあとの変更は壊してやり直しになる 什器と機器の配置図に、使う機器を1つずつ書き込む。現場で位置出しの立会いを1回入れてもらう
造作の寸法と仕様 製作図の承認が下りないと工場が動かない。承認の遅れがそのまま納入の遅れになる 製作図が出る日を工程表で確認し、その翌々日を自分の承認期限にする
仕上材の色柄 発注できないため材料が届かない。塗装や左官は乾燥時間があるため、後ろの工程まで連鎖する サンプルを現場の照明の下で見る日を先に決める。候補は3つまでに絞って持ってきてもらう
追加工事の承認 承認が下りるまで該当箇所の作業が止まり、前後の工程も待つ 着工前に「追加が出たら何時間以内に返事をするか」を決め、その時間内に判断できる情報の形を工事会社と合意しておく
工事区分の相手ごとに、調整が要る場面と確認方法
相手 調整が必要になる場面 施主が自分で確認する方法
建物側の指定業者 商業施設のA工事・B工事、ビルの消防設備や分電盤。日程も金額も建物側の都合で決まり、内装会社は指示できない 工事区分表を入手し、どの工事が誰の発注かを色分けする(商業施設への出店で決める9つのこと|A工事B工事C工事の区分と費用の境目)
厨房機器の販売会社 機器の搬入日が内装工事の途中に入るため、床仕上げの前か後かで段取りが変わる 搬入予定日を書面でもらい、内装会社に共有する。搬入経路の寸法を機器の寸法と突き合わせる
通信・POSの業者 回線の引込工事に日数がかかる。開通が遅れると開店できないが、内装の工程表には載っていないことが多い 回線の申込日と開通予定日を確認し、工程表に行として追加してもらう
看板・サインの業者 取付が外部足場や高所作業車を要する場合、内装工事の足場と共用できるかで日程が変わる 足場の設置期間を内装会社に確認し、その期間内に取付できるかを看板業者に聞く
防犯・セキュリティの業者 カメラやセンサーの配線は壁を閉じる前に入れる必要があり、遅れると壁を開け直すことになる 機器の位置と配線ルートを内装の図面に描き込んでもらう(店舗の防犯対策で決める8つのこと|侵入・万引き・内部不正を分けて考える)
電力・ガス・水道の事業者 引込や増設の工事は事業者の日程で決まる。申込から工事までの期間は自社では動かせない 申込日と工事予定日を工程表に書いてもらい、申込が済んでいるかを日付で確認する
近隣・建物側の制約と、内覧時に測って確認すること
制約 工期への効き方 内覧時に自分で測る・聞くこと
作業時間帯の制限 音の出る作業ができる時間が短いほど、同じ工事量でも日数が延びる。夜間しか作業できない現場では割増費用も発生する 管理規約や館内規則で工事可能時間を確認する。上階と隣室の用途を自分の目で確かめる
搬入経路の幅 大きな材料や機器が入らないと、現場で加工するか仕様を変えることになり、その分の日数が乗る エントランスの扉幅、廊下の幅、曲がり角の内法をメジャーで測って記録する
エレベーターの制約 内寸・積載量・使用可能時間が、1日に搬入できる量の上限を決める。工程全体の速度を規定する かごの内寸と積載量の表示を写真に撮る。工事での使用に養生や事前申請が要るかを管理会社に聞く
駐車・荷降ろしの場所 車を止める場所がないと、荷降ろしのたびに時間がかかる。路上駐車が必要なら道路使用許可の手続きが入る 建物の前に一時停車できるか、荷捌き場があるかを確認する。近隣のコインパーキングの位置も見ておく
近隣への説明 説明が済むまで着工できない建物がある。苦情が出れば作業が中断し、時間帯の制限が追加されることもある 着工前の挨拶を誰がいつ行うかを工事会社と決める。上下左右の区画の用途と稼働時間を確認する
共用部の使用ルール 養生の範囲、廃材の一時置き場、作業員の動線が制限されると、段取りに時間がかかる 管理会社に工事の届出様式があるかを聞き、提出から承認までの日数を確認する

短縮できること・できないこと

詰められるのは、準備と決定の期間です。施工そのものと、行政の待ち時間は詰まりません。そこを分けて考えると、どこを急ぐべきかが決まります。

工期を詰められる部分と、詰められない部分
項目 短縮の可否と、その理由 施主が代わりにできること
施主の決定 短縮できる。費用もかからず、効果が最も大きい。要因5のとおり、決定待ちは工事の停止と同じ 決定事項の一覧と期限をもらい、期限の3日前を自分の締切にする
仕様の選び方 短縮できる。受注生産品を在庫品に振り替えれば、納期の数週間がそのまま消える 候補を選ぶ段階で在庫の有無と納期を一覧に入れてもらい、納期で選ぶ選択肢も残す
職人の人数 短縮できる場合がある。ただし1つの部屋に入れる人数には限りがあり、費用は上がる 増員でどれだけ短縮できるかを日数と金額の両方で出してもらい、家賃の差額と比べる
工程の並行度 短縮できる場合がある。ただし前工程が終わらないと始められない作業は並行できない 工程表で、線が重なっている行と、直列になっている行を数える。直列の行が長ければ理由を聞く
乾燥・養生の時間 短縮できない。モルタルや塗装の乾燥は材料の性質で決まる。無理に進めれば不具合が出る 乾燥を要する仕上げを減らす選択肢があるかを、設計の段階で聞いておく
行政の検査日程 短縮できない。検査は役所の日程で決まり、希望日に取れるとは限らない 完成予定日ではなく検査希望日から逆算し、早めに日程を押さえてもらう
電力・ガスの工事日程 短縮できない。事業者の工事計画で決まるため、内装会社は日程を動かせない 申込を最優先で済ませる。申込日を確認し、工事予定日を工程表に書いてもらう
特注品の製作期間 短縮できない。工場の生産枠で決まる。承認の遅れは製作開始の遅れに直結する 製作図の承認を最速で返す。承認が遅れそうなら、既製品への振り替えを早めに判断する
休日・夜間の作業 短縮の手段として使えない。2024年4月から建設業にも罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されている 工期を詰める相談ではなく、開店日を後ろにずらす相談を先に検討する

契約で工期を守るための条文

建設業法には、著しく短い工期の禁止など、工期に関係する定めがあります。施主としての使い方を表にしました。

工程表と見積書で、工期の根拠を確かめる項目も載せています。根拠のない工期は、守られません。

工期に関係する条文と、施主としての使い方
条文 定めている内容 施主としての使い方
建設業法 第19条第1項第3号 工事着手の時期及び工事完成の時期を書面に記載し、相互に交付する 契約書に着工日と完成日が日付で書かれているかを確認する。「約◯か月」という書き方なら日付に直してもらう
建設業法 第19条第1項第4号 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容 営業中の改装や住宅が入るビルでは、作業できない日と時間帯を契約書に書いてもらう
建設業法 第19条第1項第6号・第7号 設計変更・着手延期・中止の場合の工期変更等の定め、天災その他不可抗力による工期変更等の定め 遅延の原因ごとに誰が何を負担するかが書かれているかを読む(内装工事の請負契約書で確認する8つの条項|支払条件と契約不適合責任)
建設業法 第19条第2項 第1項に掲げる事項を変更するときは、変更の内容を書面に記載し相互に交付する 工期の延長を口頭で伝えられたら、変更後の完成時期を書面でもらう
建設業法 第19条の5 注文者も建設業者も、通常必要と認められる期間に比して著しく短い工期の契約を締結してはならない 短い工期を提示してくる会社に対して、その根拠を工程表で示すよう求める
建設業法 第20条の2 工期等に影響を及ぼす事象について、契約締結までに相互に通知する。発生後は協議を申し出られ、注文者は誠実に応ずる努力義務を負う 契約前に「工期に影響しそうな事象はありますか」と聞き、回答を書面でもらう
工程表と見積書で、工期の根拠を確かめる項目
確認項目 根拠のある回答とは 自分が使う質問文
予備日 工程表に予備日が明示され、何日確保しているかを答えられる 「解体後に想定外が出た場合の予備日は、工程表のどこに何日入っていますか」
第三者の日程 行政の検査、電力・ガスの工事、ビル管理会社の承認が独立した行として入っている 「御社が管理していない日程は、この工程表のどの行ですか」
納期 主要な機器と材料について、発注日と納入予定日が行として入っている 「納期が4週間を超えるものは何と何ですか。発注はいつの予定ですか」
施主の決定期限 施主が決めるべきことと、その期限が日付で示されている 「私がいつまでに何を決めれば、この工程表どおりに進みますか」
作業できない日 休日、作業時間帯の制限、近隣対応による不稼働日が織り込まれている 「土日と、音の出る作業ができない時間帯は、この工程表に反映されていますか」
遅延時の扱い 遅れた場合の連絡方法と、契約書のどの条項で処理するかを答えられる 「工期が延びそうになったとき、いつ、どういう形で連絡をいただけますか」

あわせて読みたい

よくある質問

工期については、相談の場で毎回のように同じ質問が出ます。 その多くは、日数そのものではなく「誰の責任なのか」「何が動かせるのか」に関するものです。

ここでは4つに絞って答えます。 いずれも、この記事の本文で扱った内容を質問の形に組み直したものです。

数値については、確認できた公的統計と条文の範囲でのみ答えています。 確認できなかったものは「見つからなかった」と書きます。

自分の案件の判断に使うときは、必ず契約書と工程表を手元に置いてください。 一般論と、自分の契約に書いてあることは別です。

そのうえで、疑問が残る点は工事会社に文書で質問し、回答も文書でもらってください。 口頭のやり取りは、遅延が起きたときに何の役にも立ちません。

店舗の内装工事そのものは何日くらいかかりますか。目安になる公的な数字はありますか?

あります。 国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」に、用途「店舗(飲食店、物販店舗)」について受注額の階級ごとの平均工期を示した集計表(表3-2)があります。

令和8年6月12日に公表された令和7年度計の数値は、金額の低い順に12.2日、30.9日、46.5日、61.2日、119.4日です。 階級は100万円未満、100万円以上500万円未満、500万円以上1,000万円未満、1,000万円以上5,000万円未満、5,000万円以上1億円未満です。

ここでいう工期は着工から完成までの日数です。 設計・見積り・契約・申請・検査の期間は含まれていません。

またこの調査は建設業許可業者5,000者を対象とした標本調査で、公表値は復元集計値(全数推定)です。 受注件数の少ない区分では誤差が大きくなる場合があると調査自身が明記しており、平均値であるため同じ金額帯でも実際の工期は上下に散らばります。

なお「飲食店は◯週間」「20坪なら◯日」といった業種別・坪数別の日数は、出典をたどれる公的な統計が見つかりませんでした。 この記事ではそれらの数値を書いていません。

「解体してみないと分からない」と言われました。着工前に施主ができることはありますか?

3つあります。 第一に、貸主または管理会社から竣工図・設備図・過去の改修履歴・検査済証を取り寄せ、契約前に工事会社へ渡してください。

図面があるかないかで、解体後の想定外の量は目に見えて変わります。 第二に、石綿の事前調査を工事の日程に組み込んでください。

石綿障害予防規則第3条第1項は、解体または改修の作業を行うときの事前調査を義務づけています。 同規則第4条の2第1項は、一定の工事について、あらかじめ電子情報処理組織を使用して所轄労働基準監督署長へ報告することを求めています。

対象は、建築物の解体工事で床面積の合計が80平方メートル以上のものと、建築物の改修工事で請負代金の額が100万円以上のものです。 第三に、大気汚染防止法第18条の17第1項を確認してください。

届出対象特定工事については、特定粉じん排出等作業の開始の日の14日前までに都道府県知事へ届け出る義務があり、この義務を負うのは工事会社ではなく発注者、つまり施主です。 分析が必要になれば、その日数がさらに前に乗ります。

着工日を決める前に、この14日を工程表のどこに置くかを工事会社と確認してください。

引き渡しが2週間延びると言われました。工期を詰めてもらうことはできますか?

詰められる部分と、詰めると法令に触れる部分があります。 詰められるのは、施主の決定を前倒しすること、仕様を在庫のある既製品に振り替えること、職人を増やすこと、工程の並行度を上げることです。

一方で、モルタルや塗装の乾燥、消防や保健所の検査日程、電力会社やガス会社の工事日程、特注品の製作期間は、当事者の合意では短くなりません。

さらに建設業法第19条の5は、注文者も建設業者も、著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならないと定めています。 基準になるのは、その工事を施工するために通常必要と認められる期間です。

同法第19条の6第2項は、この規定に違反した発注者に対して許可行政庁が勧告できるとし、第3項は勧告に従わないときにその旨を公表できるとしています。

さらに2024年4月からは、建設業にも罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されています。 「土日も夜間も入って間に合わせる」という詰め方自体が、成り立たなくなっています。

まず工程表を出してもらい、どの作業が何日で、どこが法定の待ち時間かを分けて確認してください。

工期が延びた分の家賃や損失は、工事会社に請求できますか?

契約書の書き方によります。 建設業法第19条第1項第3号は、請負契約の当事者が「工事着手の時期及び工事完成の時期」を書面に記載して相互に交付しなければならないと定めています。

同項第6号は設計変更や工事着手の延期、工事の中止があった場合の工期の変更や損害の負担について、第7号は天災その他不可抗力による工期の変更や損害の負担について、それぞれ定めを置くことを求めています。 第14号は履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息や違約金その他の損害金を挙げています。

つまり、遅延したときに誰が何を負担するかは契約書に書いてあるはずのことで、書いていなければ交渉になります。 また同条第2項は、これらに該当する内容を変更するときはその変更の内容を書面に記載して相互に交付しなければならないとしています。

工期が延びるという連絡を口頭で受けたら、変更後の完成時期を書面でもらってください。 原因が施主側の決定の遅れや追加の指示であれば、請求できる余地はほとんどありません。

だからこそ、決定の期限を守ることが施主にできる最大の防御になります。

まとめ|工期が延びる7つの要因

1か月の遅延は「1日何人分の売上か」に翻訳できます。単位を変えて見る表も用意しました。

遅れを言われたら、「どの工程が、なぜ、何日延びますか」と聞いてください。答えが具体的なら、吸収する手も具体的に決められます。

工期が1か月延びたときの損失(編集部の試算例・すべて仮の数値)
費目 1か月あたりの金額と根拠 自分の数字に置き換える方法
賃料・共益費 33万円。賃料30万円+共益費3万円。工事中も発生する 契約書の賃料と共益費を足す。フリーレント期間があるなら、その終了日を確認して差し引く
得られたはずの粗利 90万円。開店1か月目の月商150万円×粗利率60% 事業計画書の1か月目の売上予測に粗利率を掛ける(店舗開業の事業計画書はどう書くか|数字の根拠を作る8つの記入項目)
借入の返済 10万4,000円。800万円・84回・年2.5%の元利均等返済。据置期間がなければ売上ゼロでも支払う 返済予定表の月額を見る。据置期間が残っているなら、この行はゼロになる
スタッフの人件費 24万円。月給合計40万円×60% 採用済みの人数と月給を足し、開店日をずらせるかどうかを本人と相談する
合計 約157万4,000円 上の4行を自分の数字で埋め直して合計する
1か月の遅延を、単位を変えて見る(編集部の試算例)
単位 換算した結果 この数字の使い方
1日あたり 約5万2,000円(157万4,000円÷30日) 決定を1日先延ばしにすることの値段。返事を待たせている相手がいるときに思い出す
お客様の人数 約525人分(客単価3,000円の場合) 開店後に取り返すのに何人必要かが分かる。月25日営業なら1日21人分にあたる
内装工事費に対する比率 工事費1,000万円の案件なら約16% 「工期を1か月詰めるために100万円を追加する」という提案の是非を、この比率で判断する
増員費用との比較 1か月短縮のために100万円かかるなら、差し引き57万円の得 短縮の見積りをもらったら、短縮できる日数と金額をこの表の1日あたりの金額と比べる
予備費との比較 工事費の5%(1,000万円なら50万円)では足りない 遅延に備える予備費を、工事の追加費用とは別に用意しておく

名古屋の店舗内装費用相場を見る