賃料と坪数は物件資料に印刷されているので、誰でも比べられます。けれども契約後にいちばん大きく動くお金は、資料のどこにも書かれていません。内装工事費です。

賃料が月2万円しか違わない2つの物件で、工事費が600万円違うことは普通に起こります。月2万円の差は5年で120万円ですが、600万円の差は初日に一度で出ていきます。

もっと重いのは可否の問題です。契約して保証金を払い、設計を進めたところで「この建物では厨房の排気を屋外に出せません」と分かることがあります。そうなると削るのは工事費ではなく計画そのもので、保証金も礼金も、そこまでの時間も戻ってきません。

分かれ目は、内覧を「見学」ではなく「調査」にできるかです。分電盤の表示、排水口の位置、梁の下の高さ、外壁のダクトの出口。この種のものは、その場でしか確認できません。

この記事でわかること

  • 賃料の異なる物件を「賃料+工事費を契約期間で割った月額」で並べ直し、どちらが本当に安いかを計算する手順
  • 内覧の場で、メジャーとスマートフォンだけで確認できる10のポイントと、その順番
  • 各ポイントについて、確認できなかったときに次に何をするか(誰に、何を聞くか)
  • 内覧に持っていくものと、撮っておく14枚の写真の一覧
  • 管理会社・貸主にそのまま読み上げて使える質問文
  • 2〜3件を並べて同じ物差しで比べる比較表の作り方と、判断の順番
建物の用途と業種、電気の契約容量、ガスの種類と号数、給排水の位置と勾配、排気ダクトの経路、空調の能力と所有区分、天井高と床荷重、搬入経路、看板を出せる位置、契約条件の10項目。
10項目とも、契約したあとでは動かせません|とくに5の排気は、出口が取れなければ業態そのものが成立しません。内覧にはこの10項目を印刷して持っていき、その場でメジャーと写真で記録してください。

賃料と坪数だけでは、物件を比べられない

性質の違う支出をそのまま足しても比べられないので、工事費を契約期間の月数で割って、賃料に足します。5年契約なら60で割る。これで同じ土俵に乗ります。

たとえば20坪でA(賃料28万円・工事費350万円)とB(賃料24万円・工事費950万円)。賃料だけならBが月4万円安い。工事費を60か月で割って足すとAが約33.8万円、Bが約39.8万円で、結論が逆になります。5年で約360万円の差です。

物件資料に載っている費用と、自分で足す費用
費用の項目 物件資料での扱い 内覧までに自分ですること
賃料・共益費 必ず記載されている。比較しやすい 共益費が賃料に含まれるかを確認し、含まない場合は足した額で並べる
保証金・礼金 記載されているが、償却の条件は書かれていないことが多い 「償却は何%か」「解約時にいくら返るか」を聞き、返らない分を契約期間で割る
内装工事費 記載されていない 10のポイントで集めた情報を内装会社に渡し、幅のある概算をもらう
設備の増設費 記載されていない 電気の増設、ガスの引き込み、排気の新設が要るかを内覧で見極める
造作譲渡料 居抜きの場合のみ、別途と書かれることが多い 金額と対象範囲を書面でもらう。範囲が不明なら金額の比較に意味がない
原状回復費 記載されていない。契約書の条項で決まる 「退去時はスケルトン戻しか」を契約前に確認し、退去時の支出として見込んでおく
フリーレント ある場合のみ記載される 工事期間の賃料をどれだけ吸収できるかを月数で計算し、比較表に反映する

内覧で確認する10のポイント

10項目ありますが、全部が同じ重さではありません。直せないものから先に見ます。排気の経路と構造は物件を替えるしかなく、電気とガスは工事で埋められる。この順に優先度を付けてあります。

各ポイントは「何を見るか」「その場でどう確かめるか」を表にしました。印刷して持っていける形にしてあります。

内覧で確認する10のポイントと優先順位
ポイント 確認しないと何が起きるか その場で最低限やること
1. 建物の用途と業種 契約後に、その業種で営業できないと判明する 住所を控え、建物の用途と管理規約の有無を聞く
2. 電気の容量 機器を動かせず、幹線からの増設工事が必要になる 分電盤の表示とメーターを写真に撮る
3. ガスの種類と引込 都市ガスが来ておらず、引き込み工事か燃料変更になる メーターの位置と表示、屋外の引込位置を撮る
4. 給水と排水 厨房の位置が制約され、床を上げることになる 既存の排水口を探し、壁からの距離を測る
5. 排気ダクトの経路 排気を屋外に出せず、業態を変えることになる 建物の外に出て、外壁と屋上の既存ダクトを撮る
6. 空調の能力と所有区分 入居直後に更新費が発生し、修繕負担でもめる 室内機の銘板(型番と製造年)を撮る
7. 天井高・梁・床 想定した天井高が取れず、レイアウトが崩れる 床から天井、床から梁下の2つを測る
8. 搬入経路 機器が入らず、分割搬入や現地組立で費用が増える 入口の有効幅と、階段・エレベーターの寸法を測る
9. 看板を出せる位置 看板を出せず、店の存在が通行者に伝わらない 正面と斜めから外観を撮り、既存の看板枠を確認する
10. 契約条件 指定業者で工事費が読めず、退去費も膨らむ 契約書の雛形をもらい、5つの条項を確認する
ポイント1|用途と業種の3つの層
確認する層 なぜ後から効くのか その場での確認と、次の一手
用途地域と特別用途地区 建築基準法別表第二で、業種と床面積の上限が定められている。契約後に判明しても動かせない 住所をメモし、その場でスマートフォンから名古屋市都市計画情報提供サービスで用途地域を確認する。判断に迷えば用途地域照会窓口(052-972-2797)へ電話する
建物自体の用途 登記や検査済証の用途が事務所や倉庫の場合、店舗として使うには用途変更の手続きが要ることがある 「この建物の用途は何になっていますか」「検査済証はありますか」と不動産会社に聞き、書面でもらう
管理規約・使用細則 区分所有ビルでは、法律上は可能でも規約で業種や営業時間、においを制限していることがある 管理規約と使用細則の写しを内覧の前に請求する。もらえない場合は申し込みを保留する
ポイント2|電気で確認する3点
確認する項目 なぜ後から効くのか その場での確認と、次の一手
区画の契約容量 不足すると幹線の引き直しが必要になり、工事費と工期が増える 主幹ブレーカーの表示と電力量計を撮る。読み取れなければ「契約容量を教えてください」と聞く
単相と動力の別 業務用の空調や機器は動力(三相200V)を必要とすることがあり、引き込みがなければ新設になる 盤の表示と既存機器のプラグ形状を撮り、導入予定の機器の必要電源を一覧にしておく
建物全体の余裕 建物の受電設備に空きがなければ、区画の容量を上げること自体ができない 「建物全体の受電容量に余裕はありますか」と管理会社に書面で確認する
ポイント3|ガスで確認する3点
確認する項目 なぜ後から効くのか その場での確認と、次の一手
都市ガスかプロパンか 燃料費の水準と、機器の仕様(ガスの種類ごとに機器が異なる)が変わる メーターの表示とボンベの有無を撮る。既存機器のガス種表示も確認する
引き込みの有無と本管 引き込みがなく前面道路に本管もなければ、都市ガスは使えない 「前面道路に都市ガスの本管はありますか」と聞き、ガス事業者に問い合わせ可能か確認する
メーターと配管の能力 能力が不足すると、メーターの交換や配管の引き直しが必要になる メーターの表示と配管の見える範囲を撮り、使用予定の機器の総ガス消費量を一覧にする
ポイント4|給排水で確認する4点
確認する項目 なぜ後から効くのか その場での確認と、次の一手
既存の排水の位置 ここから遠いほど床を上げる必要があり、段差と天井高の圧迫につながる 床の排水金物とPSの位置を探し、壁からの距離をメジャーで測って図面に書き込む
排水の勾配と放流先 勾配が取れないと排水が流れず、床の高さを変えるしかなくなる 「排水の放流先はどこですか。専用ですか、共用ですか」と聞き、図面をもらう
給水の位置と口径 同時使用が多い業種では、給水の口径が足りないと水圧が落ちる 水道メーターの位置と表示を撮り、同時に使うシンクと機器の数を数えておく
グリストラップの余地 埋設式が必要になると床の解体をともない、費用と工期が増える 既設の有無と位置を撮る。ない場合は置ける平面のスペースがあるかを目視で確認する
ポイント5|排気で確認する3点
確認する項目 なぜ後から効くのか その場での確認と、次の一手
屋外への出口 出口が確保できなければ、火を使う業態そのものが成立しない 建物の外に出て外壁と屋上を撮る。既存のダクト・ガラリ・フードの位置を図に描く
経路の確保 天井裏の懐が足りないとダクトを通せず、天井高が想定より下がる 点検口があれば懐中電灯で天井裏を照らし、既存の配管とダクトの状況を撮る
近隣への影響 においと音の苦情は、営業時間や排気の運用の制約につながる 出口の向きの先に何があるかを撮り、方位磁石で向きを記録する
ポイント6|空調で確認する3点
確認する項目 なぜ後から効くのか その場での確認と、次の一手
所有区分 貸主設備か残置物かで、故障時の修繕費を負担する側が変わる 「貸主設備ですか、残置物ですか」と聞き、設備一覧(残置物リスト)を書面でもらう
能力と年式 能力不足は客席の快適性に、古い年式は入居直後の更新費に直結する 室内機の銘板(型番・製造年)を撮り、坪数と席数に対して足りるか内装会社に相談する
室外機の置き場 置き場がなければ、更新のときに設置場所から検討し直すことになる 室外機の位置と台数、周囲の空きスペースを撮り、共用部かどうかを確認する
ポイント7|寸法と構造で確認する4点
確認する項目 なぜ後から効くのか その場での確認と、次の一手
床から天井まで 設備を通すと下がるため、いまの高さがそのまま残るとは限らない メジャーかレーザー距離計で測り、数値をメモと写真の両方に残す
床から梁下まで 梁の下端が実質の天井高の制約になり、レイアウトが変わる 梁の位置を図面に描き込み、下端までの高さを測る
床の段差 入口の段差は入りやすさに、室内の段差は厨房の勾配に効く 段差の高さと位置を測り、スロープを置ける奥行きがあるか確認する
床荷重 重い機器を置けないと、レイアウトと設備計画を作り直すことになる 「構造図はありますか」と聞いて持ち帰り、重い機器の一覧と重量を用意する
ポイント8|搬入経路で確認する4点
確認する項目 なぜ後から効くのか その場での確認と、次の一手
入口の有効寸法 最大の機器が通らなければ、分割搬入や現地組立で費用が増える ドアを開けた状態で幅と高さを測り、メジャーを当てた写真を撮る
階段・エレベーター かごに入らない機器は、階段で運ぶか吊り上げるしかなくなる かごの3辺と扉の有効寸法を測り、積載表示を撮る。階段の踊り場も測る
前面道路と荷降ろし トラックを停められないと、人力での横持ちが増えて工事費が上がる 道路の幅、一方通行の標識、荷を降ろせるスペースを撮る
搬入の時間帯と規則 夜間や休日しか搬入できない建物では、工期が延び費用が増える 「搬入可能な時間帯と曜日、養生の規則を教えてください」と聞き、書面でもらう
ポイント9|看板で確認する4点
確認する項目 なぜ後から効くのか その場での確認と、次の一手
出せる位置と範囲 建物の条件で決まっており、契約後に増やすことはできない 正面と斜め、向かいの歩道から外観を撮る。既存の看板枠と取付跡を確認する
共用部への取り付け可否 共用部に付けられないと、店の存在が通行者に伝わりにくくなる 「共用部への取り付けは可能ですか」「ビルの看板の規定はありますか」と聞く
看板の電源 電源がないと内照式や照明付きの看板が使えず、夜間の視認性が落ちる 既存の看板の配線跡と、外壁のコンセントの有無を撮る
許可の手続き 許可申請と、種類によっては別の確認申請や協議が必要で、時間がかかる 名古屋市の屋外広告物のページで手続きの区分を確認し、施工会社が屋外広告業の登録を受けているかを確認する
ポイント10|契約書で確認する5つの条項
条項 なぜ後から効くのか 確認して、自分ですること
工事区分 建物側の負担か借主の負担かで、工事費に数十万円から数百万円の差が出る 工事区分表をもらい、電気・空調・給排水・防災の4つが誰の負担かを表に書き出す
指定業者の有無 指定があると相見積もりが取れず、工事費を比較して決められない 「指定業者はありますか」と聞く。ある場合は、その業者に概算を先に依頼できないか相談する
原状回復の範囲 スケルトン戻しが条件なら、退去時にまとまった支出が発生する 条項の文言を写真に撮り、「スケルトン」がどの状態を指すのか図面で確認する
フリーレント 工事期間中の賃料を吸収できるかどうかで、開業までの資金繰りが変わる 期間を月数で確認し、想定する工期と比べて何か月分の賃料が持ち出しになるか計算する
解約予告期間 予告期間が長いと、撤退を決めてから実際に出るまでの賃料負担が続く 何か月前かを確認し、賃料×月数を「撤退にかかる費用」として比較表に入れる

持っていくものと、撮っておく写真

手ぶらで行くと、記憶と印象しか持ち帰れません。特別な機材は要らず、ホームセンターで揃うものとスマートフォンで足ります。

大事なのは、持ち物と撮る写真を先に決めておくことです。現地では担当者の説明を聞きながら動くので、その場で考える余裕はありません。

内覧に持っていくもの
  1. メジャー(5メートル以上のもの)。1人でも壁から壁まで測れる長さがあると作業が速くなります。可能ならレーザー距離計もあると、天井高と梁下の測定が一瞬で終わります
  2. 方位磁石。スマートフォンの標準アプリで構いません。日の入り方、排気の出口の向き、隣接する建物との関係を記録するために使います
  3. 懐中電灯。スマートフォンのライトでも足りますが、電気が止まっている物件や、天井裏の点検口、床下、分電盤の周辺を照らすときに、手が空くほうが作業しやすくなります
  4. 物件の図面。不動産会社に事前に請求して印刷していきます。この紙に、測った寸法と、排水口や梁の位置を直接書き込みます
  5. チェックリスト。この記事の10のポイントと、次章の質問リストを印刷したもの。確認できた項目にその場で印を付けます
  6. 養生テープと付箋。採寸した位置に目印を付けておくと、写真を見返したときにどこを測ったのかが分かります。退出時に必ず剥がします
  7. モバイルバッテリー。写真を数十枚撮り、ライトを使うと電池が減ります。2件、3件と続けて内覧する日は特に必要です
その場で撮っておく写真
  1. 外観の正面。通行者と同じ目線の高さから
  2. 外観の斜め。左右それぞれの方向から、店に近づいてくる人の見え方を再現する
  3. 向かいの歩道からの全景。看板を出せる面が分かるように、建物全体を入れる
  4. 外壁。既存のダクト、ガラリ、室外機、配管の位置が分かるように見上げて撮る
  5. 入口。ドアを開けた状態で、メジャーを当てて有効幅が読めるように撮る
  6. 室内の四隅から中央に向けて4枚。あとで室内の全体像を組み立てられる
  7. 天井。既存のダクト、配管、照明、点検口の位置が分かるように
  8. 床。段差、既存の排水口、点検口、床材の状態が分かるように
  9. 分電盤の扉と表示。扉は開けず、外から読める情報だけを撮る
  10. ガスメーターと水道メーター。位置と表示の両方
  11. 空調の室内機の銘板。型番と製造年が読める距離で
  12. 搬入経路。階段の踊り場、エレベーターのかご内、積載量の表示板
  13. 前面道路。幅が分かるように、一方通行や駐停車禁止の標識も入れる
  14. 隣接する建物。窓とベランダの位置が分かるように。排気と音の向きを判断するために使う

管理会社・貸主に聞く質問リスト

建物全体の受電容量、排気を新設できるか、指定業者の有無、原状回復の範囲。これらは目で見ても分からず、聞くしかありません。

そのまま読み上げられる文にしてあります。答えが返ってこなかった項目には印を付けて、後日メールで頼み直してください。

不動産会社に聞くこと(内覧の前でも聞ける)
  • この区画の図面(平面図・設備図)をいただけますか
  • 賃貸借契約書の雛形と、工事区分表をいただけますか
  • 管理規約と使用細則の写しをいただけますか
  • この建物の用途は何になっていますか。検査済証はありますか
  • この区画で、過去にどんな業種が営業していましたか
  • 前のテナントはいつ退去し、なぜ退去しましたか
  • 残置されている設備の一覧はありますか
  • 造作譲渡がある場合、金額と対象範囲を書面でいただけますか
  • 保証金の償却は何%ですか。解約時にいくら返りますか
  • フリーレントは何か月ありますか。適用の条件はありますか
管理会社・貸主に聞くこと(建物側の条件)
  • この区画の電気の契約容量はいくつですか。動力の引き込みはありますか
  • 容量を増やす場合、建物全体の受電容量に余裕はありますか。どの範囲まで増やせますか
  • ガスは都市ガスですか、プロパンですか。この区画まで引き込まれていますか
  • 排水の放流先はどこですか。この区画専用ですか、共用ですか
  • グリストラップは既設ですか。ない場合、設置は認められますか
  • 厨房の排気を屋外に出す経路として、どこを使えますか。屋上への立ち上げは可能ですか
  • 外壁に開口を新設することは認められますか
  • この区画について、近隣からにおいや音の苦情が出たことはありますか
  • 空調は貸主設備ですか、残置物ですか。故障時の修繕負担はどちらですか
  • 構造図はありますか。設計上の積載荷重はいくつですか
  • 搬入に使える出入口はどこですか。搬入可能な時間帯と曜日を教えてください
  • 共用部の養生について規則はありますか。エレベーターの使用に申請は必要ですか
  • 看板を出せる位置はどこまでですか。共用部への取り付けは可能ですか
  • 看板の電源はどこから取れますか。ビル全体の看板デザインの規定はありますか
  • 内装工事に指定業者はありますか。ない場合、業者の承諾は必要ですか
  • 退去時の原状回復の範囲はどこまでですか。スケルトン戻しですか
  • 解約予告は何か月前ですか
  • 工事が可能な曜日と時間帯を教えてください
自治体の窓口に聞くこと(自分で確認できる)
  • この住所の用途地域は何ですか(名古屋市都市計画情報提供サービス、または用途地域照会窓口 052-972-2797)
  • 特別用途地区の指定はありますか(同上)
  • この場所で◯◯(業種名)の店舗を営むことに、建築基準法上の制限はありますか(名古屋市住宅都市局 建築指導部)
  • 飲食店の営業許可について、施設の基準と手続きを教えてください(管轄の保健センター)
  • 看板を出す場合、どの手続きが必要になりますか(名古屋市住宅都市局 ウォーカブル・景観推進課 052-972-2735)

2〜3件を比べる比較表の作り方

候補が複数あるうちは、記憶ではなく表で比べます。賃料と坪数の欄だけの表では意味がないので、工事費の見込みと、直せない条件の可否を列に入れます。

比較表の項目と、記入する内容
比較する項目 何を記入するか 判断の目安と、自分ですること
用途の可否 用途地域名、建物用途、管理規約の制限の有無を丸・三角・バツで バツがあれば即座に候補から外す。三角は回答が来るまで判断を保留する
排気の可否 屋外への出口が確保できるかを丸・三角・バツで 火を使う業態でバツなら候補から外す。三角は管理会社の書面回答を待つ
電気・ガスの可否 現状の容量と、増設の余地があるかを丸・三角・バツで 必要な容量を先に数値化しておき、現状の容量と引き算して差を出す
賃料・共益費 月額を合算した金額 共益費を含めた額で並べる。坪単価は参考にとどめる
内装工事費の概算 内装会社からもらった幅のある概算の中央値 同じ図面と写真を全社に渡し、同じ前提で概算をもらう
初期費用の合計 保証金の償却分、礼金、造作譲渡料、仲介手数料の合計 返ってこない分だけを計上する。返る分は別欄に分ける
実質月額 賃料+共益費+(工事費+初期費用)÷契約月数 この数値が最終的な比較の軸になる。契約月数は全物件で揃える
撤退時の費用 原状回復の概算と、解約予告期間×賃料 条件が不明なら、スケルトン戻し・予告6か月の前提で仮に置く
立地と使い勝手 人通り、視認性、天井高、間口、レイアウトの自由度 可否と金額で並べたあとに見る。ここから先は好みが入る領域だと自覚する

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よくある質問

物件を絞り込んでいる方から繰り返し寄せられる4つの質問をまとめました。 いずれも、内覧の進め方そのものに関わる内容です。 物件そのものの良し悪しではなく、判断の手順にかかわる論点だと言い換えてもよいでしょう。

何回見に行けばよいのか、自分で調べられる範囲はどこまでか、 足りない設備は後から増やせるのか、 そして分からないことを残したまま申し込んでよいのか。 この4つに自分なりの答えを持っていると、 現地で「いい物件ですよ、早く決めたほうがいいですよ」と言われたときに、落ち着いて判断できます。

内覧は何回行けばよいですか?1回で決められますか?

1回で判断しきれる物件は多くありません。 1回目は10のポイントを一通り確認して寸法と写真を集める回、 2回目は1回目に持ち帰った疑問を管理会社の回答と突き合わせて確かめる回、と役割を分けると効率的です。 あわせて、時間帯を変えて外から見に行くことをおすすめします。

昼にしか見ていない物件は、夜の人通り、周辺店舗の営業状況、看板の見え方、隣接する住戸の明かりの位置が分かりません。 屋内の確認は立ち会いが必要ですが、外観と周辺の確認は自分だけでいつでもできます。 申し込みの前に、平日と休日、昼と夜の合計4回は前を通っておくとよいでしょう。

用途地域や建物の用途は、自分で調べられますか?

用途地域は自分で調べられます。 名古屋市は「名古屋市都市計画情報提供サービス」をインターネットで公開しており、 地図上で用途地域などの都市計画情報を閲覧・印刷できます。 電話での照会は用途地域照会窓口(052-972-2797、平日午前8時45分から正午、午後1時から午後5時15分)が受け付けています。

ただし、用途地域が分かっても判断は終わりません。 建築基準法別表第二による用途の制限に加えて、特別用途地区の条例、 建物自体の登記上の用途、区分所有ビルの管理規約という3つの条件が重なります。 用途地域を自分で調べたうえで、建物と区画の条件は管理会社と市の担当窓口に確認してください。

電気の容量やガスの号数が足りない場合、あとから増やせますか?

増やせる場合と、増やせない場合があります。 区画の契約容量を上げるだけで足りるなら比較的簡単ですが、 建物全体の受電設備に余裕がない場合は、その区画だけの都合で増やすことはできません。 ガスも同じで、前面道路に都市ガスの本管がなければ引き込みそのものが成立しません。

したがって「増やせますか」ではなく「建物側に余裕がありますか」「道路に本管がありますか」と聞くのが正しい質問になります。 増設できる場合でも、幹線の引き直しやメーターの交換に費用と期間がかかり、 建物の共用部を触る工事は管理組合や貸主の承諾が別途必要になります。

申し込みの前に、可否と概算と期間の3点を確認してください。

内覧で確認しきれない項目が残ったまま、申し込みをしてもよいですか?

残った項目の種類によります。 工事費の増減で済む項目(床の段差、天井の仕上げ、什器の配置)は、後から分かっても計画を作り直す必要はありません。

しかし、その物件でその業種を営めるかどうかを左右する項目 (用途地域と建物用途、排気を屋外へ出せるか、建物側の電気とガスの余裕、排水の放流先)は、 確認できないまま進めると計画そのものが崩れます。 この4つが未確認なら、申し込みを急がず回答を待ってください。

どうしても押さえたい物件であれば、申込書や覚書に 「◯月◯日までに排気経路の可否について回答が得られない場合は申し込みを撤回できる」といった条件を書面で入れられないか、 不動産会社に相談する方法があります。

まとめ|内覧で確認する10のポイント

物件は、資料の数字ではなく工事費と可否で決まります。そしてその2つは、内覧の場でしか確かめられません。

やることは、工事費を月数で割って賃料に足すこと、直せない条件から順に見ること、聞くことを紙にして持っていくこと。この3つだけです。

内覧で確認する10のポイント(再掲)
ポイント 性質 持ち帰るもの
1. 建物の用途と業種 可否 住所、用途地域名、管理規約の写し
2. 電気の契約容量と分電盤 可否・金額 分電盤とメーターの写真、契約容量の回答
3. ガスの種類と引込 可否・金額 メーターの写真、本管の有無の回答
4. 給水と排水、グリストラップ 可否・金額 排水口の位置と寸法、給排水の系統図
5. 排気ダクトの経路 可否 外壁と屋上の写真、排気経路の書面回答
6. 空調の能力・年式・所有区分 金額 室内機の銘板の写真、設備一覧
7. 天井高・梁・床 金額・設計 4つの寸法、段差の高さ、構造図
8. 搬入経路 金額・工期 入口とエレベーターの寸法、搬入の規則
9. 看板と屋外広告物 集客・手続き 外観の写真、取り付け可否、手続きの区分
10. 契約条件 金額・撤退 契約書の雛形、工事区分表

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