「内装会社に連絡するのは、物件を押さえてから」。けれど判を押した日に、いくつもの条件が「与件」に変わります。与件になった条件は、工事費で埋めるしかありません。

電気容量が足りなければ増設し、排気が抜けなければダクトを回し、排水が遠ければ床を上げて勾配を取る。どれも、別の物件を選べば要らなかった工事です。

相談のタイミングは4つに分かれます。物件探し前、内覧時、契約直前、契約後。早いほど選べるものが多く、遅いほど工事費で埋めることになります。

この記事でわかること

  • 物件の賃貸借契約に判を押した日に、どの条件が「選べるもの」から「与件」に変わるのかを4つに分けて把握する
  • 相談の時期を決めているのが会社の都合ではなく法令が定める日数であること、そして条文ごとの日数の一覧
  • 物件探し前・内覧時・契約直前・契約後の4つの時点で「何が決められて、何がもう決まっているか」を3列の表で確認する
  • 各時点で相手に何を聞けばよいか、そのまま使える質問の文
  • 早すぎる相談の限界——物件が決まらないと図面も見積も出ない理由と、代わりに頼めること
  • 改装と移転で、逆算の起点が「物件」ではなく「解約予告」「閑散期」に変わること
  • 開店日から法令の日数を順に引いて、自分の案件に固有の「声をかける日」を自分で出す手順
タイミング1の物件探し前ならエリアも坪数も業態も変えられる。タイミング2の内覧時はその物件を選ぶかどうかを判断できる。タイミング3の契約直前は判断材料は得られるが時間がない。タイミング4の契約後は物件の設備条件そのものは変えられない。
相談が遅れるほど、選べる範囲が狭くなる|タイミング1から4へ進むにつれて「まだ変えられること」が減ります。内装会社に払う金額が増えるのではなく、制約を工事で埋める費用が増えます。

契約に判を押した日に、何が「与件」に変わるのか

性質が変わる条件は4つ。建物の条件、設備の容量、法令上の制約、そして日程。契約前なら選べたものが、契約後は前提になります。

「工事費で吸収する」ことになる代表例と、内覧時に自分で確かめる方法を表にしました。

契約の前後で性質が変わる4つの条件
条件 契約前なら取れる選択肢 契約後に自分でできること
電気の引込容量と動力の有無 容量が足りない物件を候補から外す。同じ賃料帯で動力が来ている区画を探し直す 電力会社に引込容量の増設が可能かと、その工期を問い合わせる。同時に、機器を電気式からガス式に替えられないかを機器メーカーに確認する
排気ダクトを外部へ出せる経路 経路が取れない物件を外す。ビルの共用ダクトが使えるかを契約前に管理会社へ書面で確認する 屋上や裏手への迂回経路が物理的に取れるかを、内装会社と一緒に現地で追う。取れない場合は加熱調理の方法そのものを見直す
排水管の位置と勾配 厨房や施術室を置きたい位置と排水位置が離れている物件を外す 床を上げて勾配を確保する場合の段差の高さを図面で確認する。段差が出せないなら、水回りの位置を排水管に合わせてレイアウトを組み直す
建築基準法上の用途と検査済証の有無 用途変更の確認申請が必要になる物件を候補から外すか、審査期間を織り込んだ日程で契約する 検査済証の写しを貸主から取り寄せ、名古屋市の建築審査課または指定確認検査機関に事前相談する。申請が必要なら日程表を作り直す
「工事費で吸収する」ことになる代表例と、内覧時に自分で確かめる方法
契約後に判明しやすいこと なぜ工事費になるのか 内覧時に自分で確かめる方法
分電盤の容量が想定より小さい 主幹ブレーカーの容量を超える機器は同時に使えないため、幹線の引き直しかキュービクルの増設が要る 分電盤の扉を開けて、主幹ブレーカーに書かれたアンペア数と相の表示(単相三線/三相)をスマートフォンで撮影する
ガスメーターの号数が足りない 号数を上げるにはガス会社の工事と、場合によっては配管の引き直しが必要になる ガスメーターの銘板に書かれた号数(4号、6号など)と、都市ガスかLPガスかを撮影する
グリストラップを置く場所がない 屋内に設置する場合は床を掘るか嵩上げが必要で、清掃導線も確保しなければならない 厨房になる予定の位置の床を見て、既存の排水口とその周囲に70センチメートル四方程度の余地があるかを歩測する
室外機を置ける場所がない 置き場が確保できないと架台や壁掛け金物、長い冷媒配管が要り、能力も落ちる 建物の外周を一周し、自分の区画に割り当てられたベランダや置き場があるかを管理会社に指さして確認する
天井裏に配管や躯体があり天井高が取れない ダクトや配管を避けて天井を張るため、想定より低くなるか、化粧梁などの追加造作が要る 点検口があれば開けて中を撮影する。点検口がなければ、天井高をレーザー距離計で数か所測って差を記録する
ビルの管理規約で工事時間が限られる 夜間や休日しか作業できない場合、人工が増えて工期も延びる 管理会社に「工事可能な曜日と時間帯」「搬入経路」「指定業者の有無」を書面でもらう

相談の時期を決めているのは、法令の日数

建設業法施行令第5条の9が見積期間を定めています。500万円以上5,000万円未満なら10日以上。急いでも、この日数は縮みません。

保健所、消防、建築確認。名古屋市の建築確認の平均審査日数も公表されています。日程は、これらの合計で決まります。

建設業法施行令第5条の9が定める見積期間(e-Gov法令検索で条文を確認)
工事一件の予定価格 設けなければならない見積期間 自分の案件での読み方
500万円に満たない工事(第1号) 1日以上 小規模な改装でも、図面を渡したその日に金額を求めない。翌日以降を回答期限にする
500万円以上5,000万円に満たない工事(第2号) 10日以上 店舗内装の多くがここに入る。図面と条件を渡した日から10日を確保して、その先に契約日を置く
5,000万円以上の工事(第3号) 15日以上 複数階や大規模改装ではここになる。設計と見積を同じ2週間で終える日程は組まない
やむを得ない事情があるとき(ただし書) 第2号と第3号の期間は、5日以内に限り短縮できる 10日を5日に、15日を10日に縮められる。ただし「やむを得ない事情」が要る。常態化させない
開業までの日程を固定している法令・条例の日数(条文と名古屋市の公表ページで確認)
根拠 定められている日数 自分の日程表への入れ方
建築基準法第6条第4項 建築主事等は、第1号・第2号に係る申請書を受理した日から35日以内に審査し、適合を確認したときは確認済証を交付する(第3号は7日以内) 用途変更の確認申請が要る物件なら、申請の受理日から35日を工事開始前に置く。図面の作成期間は別に積む
建築基準法第6条第6項 合理的な理由があるときは、35日の範囲内で第4項の期間を延長できる 最長で70日になり得ると理解しておく。延長の通知は35日以内に交付される
建築基準法第87条第1項 建築物の用途を変更して第6条第1項第1号の特殊建築物とする場合(政令で指定する類似の用途相互間を除く)は、第6条などの規定を準用する 「工事の規模」ではなく「用途が変わるか」で判定する。内装をほとんど触らなくても申請が要ることがある
消防法第17条の14 甲種消防設備士は、政令で定める工事をしようとするときは、その工事に着手しようとする日の10日前までに届け出なければならない 消防用設備等の工事がある場合、着工日の10日前を締切として設計を確定させる
消防法第17条の3の2 特定防火対象物などの関係者は、消防用設備等を設置したときは届け出て検査を受けなければならない 工事完了後に検査日が必要になる。引き渡し日と開店日の間に日を空ける
名古屋市火災予防条例第66条 令別表第1に掲げる防火対象物をその用途に使用しようとする者は、使用開始の日の7日前までに消防署長に届け出なければならない 開店日の7日前を「防火対象物使用開始届」の締切としてカレンダーに入れる
名古屋市火災予防条例第66条の2 防火対象物の新築・増築・改築・移転・修繕・模様替え・用途変更の工事をしようとする者は、着手する前に関係図面を添えて工事計画を届け出なければならない 着工前に図面が固まっている必要がある。図面の確定日を着工日より前に置く
名古屋市「飲食店営業許可」の案内 申請書は少なくとも営業開始予定日の20日前までに、手数料を添えて提出する。飲食店営業の新規は16,000円 開店日の20日前を保健センターへの申請締切にする。施設の実地審査の日も申請時に打ち合わせる
名古屋市における建築確認の平均審査日数(令和7年度/確認済証の交付日が令和7年4月1日から令和8年3月31日までのもの)
建築基準法第6条第1項の申請区分 総審査日数と実審査日数 自分の日程表への入れ方
第1号から第2号/構造適合性判定が必要 総審査日数86.0日、実審査日数23.0日 構造に手を入れる計画なら、審査だけで3か月弱を見る。契約前に構造適合性判定の要否を設計者に確認する
第1号から第2号/構造適合性判定は不要 総審査日数35.6日、実審査日数17.5日 用途変更の確認申請はここに入ることが多い。受付日から約1.2か月を、着工前の日程に固定で積む
第3号/構造適合性判定は不要 総審査日数13.2日、実審査日数6.1日 小規模なものはここ。ただし「自分の計画がどの号か」は設計者に判定してもらう

統計で確かめる|開業費用と、遅れが効く場所

日本政策金融公庫の調査では、開業時に苦労したことの1位が資金繰り・資金調達でした。日程の遅れは、そのまま資金繰りの問題として現れます。

開業費用の分布(日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」2025年12月5日公表、n=2,165)
開業費用の金額帯 構成比 自分の計画での読み方
250万円未満 20.1パーセント この帯は店舗を構えない開業が多いと考えられる。自分が内装工事を伴う開業なら、この帯を基準にしない
250万円以上500万円未満 21.7パーセント 小規模な居抜き活用が現実的な帯。物件の既存設備をどれだけ使えるかで成否が分かれるため、内覧同行の価値が最も高い
500万円以上1,000万円未満 29.7パーセント 最も多い帯。工事一件の予定価格が500万円以上になると、建設業法施行令第5条の9の見積期間が10日以上になる
1,000万円以上2,000万円未満 18.5パーセント 内装以外に厨房機器や什器が積み上がる帯。費目ごとの発注先が分かれるため、日程の管理が要る
2,000万円以上 10.0パーセント 工事だけで5,000万円を超えるなら、見積期間は15日以上になる。設計と見積の日程を分けて積む
開業時に苦労したこと(同調査、三つまでの複数回答、n=2,091)
項目 回答した割合 相談の時点を早めることで自分にできること
資金繰り、資金調達 56.9パーセント 物件を決める前に概算の幅をもらい、その幅の上限で融資を申し込む。工事費が確定してから借入額を決める順序にしない
顧客・販路の開拓 49.9パーセント 物件のエリアと業態の相性を、内装の話と同時に検討する。看板と外装の計画を工事の後回しにしない
財務・税務・法務に関する知識の不足 36.4パーセント 用途変更・消防・営業許可の要否を、契約前に自分の案件について具体的に聞く。一般論の説明で終わらせない
従業員の確保 18.9パーセント 開店日が動くと採用した方の入社日も動く。日程が固まらないまま採用を先行させない
仕入先・外注先の確保 16.7パーセント 厨房機器や什器の納期を、工事の日程と同じ表に並べる。工事だけの日程表を作らない
非住宅建築物のリフォーム・リニューアル受注高(国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告」令和7年度計、2026年6月12日公表)
用途 令和7年度の受注高と対前年度比 自分の案件での読み方
非住宅建築物 計 11兆5,071億円(18.6パーセント増) 市場全体は伸びている。職人と資材の取り合いが起きやすい局面と考え、日程に余裕を持たせる
事務所 2兆4,984億円(13.3パーセント増) オフィス改修が多い時期は、内装工事の職種が重なる。同じ職人が取り合いになる工程を早めに押さえる
物販店舗 9,262億円(10.8パーセント増) 物販の改装は増えている。商業施設内の区画なら、施設側の工事日程との調整が別途要る
飲食店 1,824億円(23.6パーセント減) 飲食は前年度から減っている。ただし1年の増減で自分の案件の相場は決まらない。参考値として見る

タイミング1|物件探し前

この時点で決められるのは探す条件と、予算の枠です。総投資額の上限から、探すべき坪数の上限を逆算できます。

「物件が決まっていないのに相談していいのか」と思われますが、この段階でこそ聞けることがあります。

タイミング1|物件探し前に決められること・決まってしまっていること
項目 この時点での状態 読者が自分で実行できること
エリア・坪数・物件タイプ まだ何も決まっていない。すべて変えられる 希望エリアを地図上に線で囲み、その中で許容できる賃料の上限を1平方メートルあたりで書き出す
業態の細部と提供内容 大枠は決まっていても、調理方法や機器構成は動かせる 「必ず出すメニュー」と「なくてもよいメニュー」を分け、後者に必要な機器を一覧から外せるか検討する
総投資額の上限と配分 まだ融資も申し込んでいないため、配分を変えられる 総額を「物件取得費」「内装工事費」「機器・什器」「開業前経費」「運転資金」の5つに割り、それぞれの上限を数字で書く
開店希望時期 希望として決まっているだけで、まだ誰にも約束していない 希望日をカレンダーに置き、この記事の最後の手順で法令の日数を引いてみる。無理があるなら希望日を動かす
物件の設備条件 物件がないため存在しない。ただし「必要な条件」は決められる 使う予定の機器を書き出し、必要な電気容量とガスの号数、給排水と排気の条件を内装会社に言語化してもらう
工事の金額 出ない。面積も形状も既存設備の状態も不明なため 金額の代わりに「坪あたりの幅」と「その幅が動く条件」を聞き、幅の上限で資金計画を組む
総投資額の上限から、探すべき坪数の上限を出す逆算の順序
段階 出す数字 自分で計算する方法
1|総投資額の上限を置く 自己資金と借入見込みの合計 手元資金から生活費6か月分を引いた額を自己資金とし、そこに借入の希望額を足す。日本政策金融公庫の調査では自己資金の平均は279万円だった
2|運転資金を先に取り分ける 開店後6か月ぶんの固定費 賃料・人件費・水道光熱費の月額を合計し、6を掛ける。この額には手をつけない前提で残りを工事に回す
3|物件取得費を引く 保証金・礼金・仲介手数料・前家賃 賃料の何か月分になるかを不動産会社に聞き、想定賃料に掛ける。保証金の償却割合も同時に聞く
4|機器・什器・開業前経費を引く 厨房機器、家具、看板、備品、許認可の手数料 使う機器を一覧にして中古と新品の両方で概算を取る。飲食店営業許可は名古屋市で新規16,000円
5|残りを坪単価の上限で割る 探すべき坪数の上限 残った工事予算を、内装会社から聞いた坪単価の幅の上限で割る。下限で割ると物件が広くなりすぎる
タイミング1で内装会社に聞くこと
聞くこと なぜこの時点で聞くのか そのまま使える質問の文
無料の範囲と有料になる境目 会社ごとに違い、あとから請求されると関係が壊れる。契約前に確定させておく 「どこまでが無料で、どこから費用が発生しますか。金額と、その時点で書面をいただけるかも教えてください」
この業態に必要な設備条件 物件情報を読む目盛りになる。不動産会社に渡す条件表の元になる 「この機器構成だと、電気の容量とガスの号数はどのくらい必要になりますか。物件を見るときに何を確かめればよいですか」
坪単価の幅と、幅が動く条件 1つの数字ではなく幅で聞く。幅が動く条件が分かると、物件の良し悪しの判断基準になる 「この業態だと坪あたりいくらからいくらの幅になりますか。上限に振れるのはどういう物件のときですか」
内覧同行の可否と条件 次のタイミング2で使うため。回数と費用を先に確定させる 「候補が出たら内覧に同行していただけますか。費用と、何件まで対応いただけるかを教えてください」
直近の着工可能時期 会社の手が空いていなければ、いくら早く相談しても工事は始まらない 「いま契約したとして、着工できるのはいつごろになりますか。混み合う時期はありますか」
建設業許可と建築士事務所登録 許可の有無で請けられる工事の規模が変わる。物件を探す前に確認しておく 「建設業許可の番号と、建築士事務所の登録番号を教えてください。許可を受けている業種もあわせてお願いします」

タイミング2|内覧に同行してもらう

いちばん効くのがここです。電気、排気、排水。現地で見てもらえば、その場で判定が出ます。

同行を頼む前に、3つの条件を確定させておいてください。業態、予算、開店希望日。これがないと見る観点が定まりません。

タイミング2|内覧時に決められること・決まってしまっていること
項目 この時点での状態 読者が自分で実行できること
この物件を選ぶかどうか まだ決められる。内覧の結果で見送れる 候補を2件以上残したまま内覧に行く。1件だけを見て決めると比較の基準ができない
レイアウトと席数の見当 実測すれば概略が出せる。図面と現地が違うこともここで分かる レーザー距離計か巻き尺で、間口・奥行・天井高・柱の位置を測って手描きの図に書き込む
設備の既存状態 目で見て確かめられる。写真に残せる 分電盤・ガスメーター・給排水の位置・室外機置き場・点検口の5か所を必ず撮影する
エリアと想定坪数の大枠 すでに絞り込んだ結果としてここに立っているため、大きくは動かせない この物件を見送る場合に次に見る候補があるかを、内覧の前に不動産会社へ確認しておく
工事費の概算 幅としてなら出せる。確定した金額はまだ出ない 「この物件ならいくらからいくら」という幅と、上限に振れる条件をその場でメモする
賃貸借契約の条件 まだ交渉できる。特に原状回復の範囲とフリーレントの有無 内覧の場で「重要事項説明の前に契約書の雛形をいただけますか」と依頼する
内覧同行で見てもらう項目と、自分がその場で残す記録
見る項目 同行者が確かめていること 自分がその場で撮る・測る・聞くこと
排気ルート ダクトを外部へ出せる経路があるか。共用ダクトの有無と、その断面が必要な風量に足りるか 厨房予定位置から外壁までの距離を歩測し、外壁側に既存の開口や排気口があるかを外から撮影する
電気の引込と分電盤 主幹容量、相の種類、動力の有無、増設の余地。ビル全体の受電設備に余力があるか 分電盤の銘板と主幹ブレーカーのアンペア表示を接写する。動力の盤があれば別に撮る
給排水と勾配 既存の給水・排水の位置と口径。厨房や水回りを置きたい位置まで勾配が取れるか 既存の排水口の位置に立って、厨房予定位置までの距離を歩測し、床の段差の有無を記録する
天井裏と床下 躯体の状態、既存配管の走り、天井を上げられる余地、床の不陸 点検口を開けて撮影する。天井高を部屋の四隅と中央の5点で測って数値を書き留める
建物の用途と検査済証 現況の用途、用途変更の確認申請が必要になりそうか、既存不適格の可能性 不動産会社に「検査済証の写しはありますか」「現況の用途は建築確認上どうなっていますか」と口頭で聞き、回答をメモする
搬入経路と工事の制約 資材を入れられるか、エレベーターのサイズ、養生の範囲、共用部の使用条件 入口の幅と高さ、エレベーターの内寸を測る。階段しかない場合は踊り場の広さも測る
隣接する区画と上下階 音・振動・臭気の問題が起きる相手がいるか。営業時間が重なるか 両隣と真上・真下が何に使われているかを不動産会社に聞き、建物の外から看板を撮影する
内覧同行を依頼する前に確定させておく3つの条件
確定させること 確定させないとどうなるか そのまま使える依頼の文
他社に発注した場合の扱い 気まずさから相見積を取らなくなり、比較の機会そのものを失う 「同行をお願いした場合、他社に工事を発注したときは費用が発生しますか。発生する場合の金額も教えてください」
同行してもらえる件数の上限 2件目以降を遠慮するようになり、比較できるはずの物件を見送る 「候補が3件あります。すべて見ていただくことは可能ですか。難しい場合は何件までかを教えてください」
現地で受け取れる情報の形 口頭で聞いた内容を自分の記憶だけで比較することになり、あとで思い出せない 「当日うかがった内容を、簡単なメモや所見の形でいただけますか。難しければ録音させていただいてもよいでしょうか」

タイミング3〜4|契約直前と、契約後

契約直前の1〜2週間でも、まだできることがあります。優先度の高い順に表にしました。

契約後に判明した問題にも、取り得る対応はあります。選択肢は、工事費と日程のどちらかを削るものだけです。

タイミング3|契約直前に決められること・決まってしまっていること
項目 この時点での状態 読者が自分で実行できること
物件の候補 事実上この1件。他の候補は止まっている 見送った場合に次の候補を紹介してもらえるかを、不動産会社に事前に確認しておく
契約するかどうかの最終判断 まだ決められる。判を押すまでは見送れる 「見送る条件」を先に紙に書く。設備条件が満たせない、用途変更が必要、原状回復がスケルトン返し、などを自分で決めておく
原状回復の範囲 契約書に書かれるため、判を押す前なら交渉できる 契約書案の原状回復条項を読み、「スケルトン」「入居時の原状」「造作を残せるか」の3点を書面で確認する
賃料発生日とフリーレント 交渉の余地がある。工事期間中の賃料をどう扱うかが決まる 「工事期間中の賃料の扱いはどうなりますか。フリーレントの設定は可能ですか」と書面で聞く
工事の制約(時間帯・指定業者) 管理規約として存在している。読めば分かる 管理規約と工事に関する細則の写しを、契約前に必ずもらう。指定業者の有無を確認する
設備条件そのもの 物件の条件として固定されている。契約してもしなくても変わらない 増設の可否と概算工期を、電力会社・ガス会社に自分で問い合わせる。回答は数日で得られることが多い
契約直前の1週間から2週間でやること(上から順に優先度が高い)
やること 契約後では手遅れになる理由 そのまま送れる依頼の文
契約書案と重要事項説明書を先に読む 判を押したあとは条項を変えられない。読んだうえで交渉できるのは今だけ 「契約日の前に、契約書と重要事項説明書の案をデータでいただけますでしょうか。内装会社にも確認してもらいたいと考えています」
管理規約と工事細則をもらう 指定業者の縛りがあると、相見積そのものが成立しない 「内装工事に関する管理規約や細則があればいただけますか。工事可能な時間帯と、指定業者の有無もあわせてお願いします」
検査済証の有無を確かめる 検査済証がない建物は、用途変更の確認申請の手続きが大幅に重くなる 「検査済証の写しをいただけますか。ない場合は、その旨を書面でご回答いただけますでしょうか」
電気とガスの増設可否を照会する 回答に数日から数週間かかることがあり、契約後に聞くと着工が遅れる 電力会社・ガス会社の窓口に「この住所の区画で、契約容量を◯キロボルトアンペアまで上げられますか。工事期間の目安も教えてください」と自分で問い合わせる
保健所・消防に事前相談する 名古屋市は着工前の図面持参の相談を案内している。契約後だと日程が窮屈になる 管轄の保健センターへ「この用途で開業予定です。施設基準について着工前に相談したいのですが、いつうかがえばよいですか」と電話する
概算工事費を更新してもらう 内覧時の概算は前提が粗い。契約前に幅を狭めておかないと資金計画が崩れる 「内覧のときにいただいた概算を、いま分かっている条件で更新していただけますか。まだ確定でなくて構いません」
タイミング4|契約後に決められること・決まってしまっていること
項目 この時点での状態 読者が自分で実行できること
物件の設備条件 固定されている。変えるには工事が要る 増設の可否と概算工期を、電力会社・ガス会社に自分で照会する。回答を書面で残す
建築基準法上の用途 固定されている。用途変更が必要なら申請するしかない 契約書の使用目的欄と、貸主から得た現況用途を突き合わせる。差があれば設計者に判定を依頼する
レイアウトと席数 まだ決められる。ただし設備の位置に縛られる 既存の排水口・分電盤・排気経路の位置を図面に落とし、そこから動かせない要素を先に固定する
仕上げの仕様と工事範囲 まだ決められる。予算の調整弁になる 「必ず入れるもの」と「後から足せるもの」を分けて一覧にする。後者は第2期工事に回す前提で見積を分けてもらう
開店日 賃料が発生しているため動かしにくいが、まだ変えられる 法令の日数を引いて逆算し、無理があるなら早い段階で開店日を後ろにずらす。告知の前に決める
依頼先の選定 まだ決められる。ただし見積期間の10日は必要 同じ条件を同じ日に複数社へ渡す。順番に依頼すると10日が30日になる
契約後に判明した問題と、取り得る対応
判明した問題 取り得る対応(費用を足す/業態を合わせる) 対応を決める前に自分で集める情報
電気容量が足りない 幹線の引き直しやキュービクルの増設で容量を上げる/電気式の機器の一部をガス式に替え、同時使用の設計を見直す 電力会社に増設の可否と工期を照会する。並行して、機器メーカーに同等品のガス式があるかを確認する
ガスの号数が足りない メーターの号数変更や配管の引き直しをする/同時使用する機器の数を減らし、運用でピークをずらす ガス会社に号数変更の可否と工期を照会する。厨房のピーク時に同時に使う機器を実際に書き出す
排水位置が遠い、勾配が取れない 床を上げて勾配を確保する/水回りの位置を既存の排水管に合わせてレイアウトを組み直す 既存排水口の位置と床レベルを実測する。天井高から段差の許容値を逆算し、バリアフリーの要否も確認する
排気ルートが確保できない 屋上や裏手への迂回経路を作る/加熱調理の方法を変え、必要換気量そのものを下げる ビルの管理会社に共用ダクトの使用可否を書面で確認する。メニューのうち油煙を出す品目を数える
用途変更の確認申請が必要と判明 設計と申請を進め、審査期間を日程に積む/床面積の使い方を変えて申請の対象から外せないか検討する 検査済証の有無を確認する。名古屋市の建築審査課または指定確認検査機関に事前相談の日程を取る
消防設備の追加が必要と判明 設備を設置して着工届と設置届を出す/収容人員や区画の取り方を変え、必要となる設備の区分を確認し直す 所轄の消防署予防課に図面を持って相談する。消防法第17条の14の10日前の期限を日程表に入れる
管理規約で工事時間が限られると判明 夜間・休日の施工を組み、増える人工を予算に足す/工程を分割し、騒音の出る工事だけを集中させる 管理会社から工事細則の写しをもらう。近隣区画の営業時間を自分で調べ、静かな時間帯を特定する

早すぎる相談の限界と、改装・移転の場合

物件が決まらないと、図面も見積も出ません。出せるものと出せないものを表にしました。未定は、未定と伝えて構いません。

改装と移転では逆算の起点が変わります。解約予告か、繁忙期かから日数を引きます。

物件が決まっていない段階で、出せるもの・出せないもの
求めたくなるもの 物件未定の段階で出せるか 代わりに頼めること
平面図・レイアウト案 出せない。面積と形状が決まっていないため 「この業態で20坪なら、厨房と客席の面積配分はどのくらいが標準ですか」と比率で聞く
見積書 出せない。数量が拾えないため 「坪単価の幅」と「上限に振れる条件」「下限に収まる条件」の3つをセットで聞く
工期 出せない。工事範囲が決まっていないため 「スケルトンからと居抜きからで、工期はどのくらい変わりますか」と条件別の幅で聞く
必要な設備条件 出せる。機器構成から計算できるため 使う機器の一覧を渡し、必要な電気容量・ガスの号数・給排水の口径・必要換気量を数字で出してもらう
物件を見るときのチェック項目 出せる。業態が決まっていれば作れるため 「この業態の物件を見るときに、必ず確認すべき項目を一覧にしてもらえますか」と依頼する
坪数の上限 出せる。予算から逆算できるため 総投資額の上限を伝え、「工事予算からすると何坪までが現実的ですか」と聞く
法令上の注意点 出せる。業態と想定規模で判定の枠は分かるため 「この業態で200平方メートルを超えると何が変わりますか」「消防の区分はどこに当たりますか」と聞く
改装・移転で逆算の起点になるものと、そこから引く日数
起点になるもの そこから何を引くか 自分で先に確認する書類・数字
改装|自店の閑散期 工事期間と、その前の設計・見積・契約の期間。見積期間は建設業法施行令第5条の9で10日以上(500万円以上5,000万円未満の場合) 過去2年から3年の月別売上を並べ、最も低い月を2つ特定する。その月を工事の候補期間として先に押さえる
改装|営業を止められる日数 休業日数ぶんの売上と固定費。止められないなら夜間・分割施工の割増 1日あたりの平均売上と粗利を計算する。休業7日なら粗利の何日分が消えるかを金額で出す
移転|現店舗の解約予告期限 予告から明け渡しまでの月数。6か月前の契約なら、移転を決める前に6か月の枠が要る 賃貸借契約書の解約条項を開き、予告期間と、予告を書面で出す宛先・方法を確認する
移転|現店舗の原状回復工事 明け渡し日から逆算した工事期間。範囲は契約書の原状回復条項で決まる 原状回復の範囲を契約書で確認し、貸主か管理会社に「どこまで戻すか」を書面で確認する
移転|新店舗の工事と手続き 新規開業と同じ。確認申請・消防・営業許可の日数がそのまま乗る この記事のタイミング1から4を、新店舗についてそのまま適用する
移転|資金繰りの山 新店舗の工事費・什器・引越し費用・旧店舗の原状回復費が同じ時期に重なる 支払い時期を月別に並べ、最も出金が大きい月の金額を出す。その月に手元資金が足りるかを確認する
時点別|最低限これだけ伝えることと、未定のときの言い方
時点 最低限これだけ伝える 未定のときの言い方
タイミング1|物件探し前 業態と提供内容、希望エリア、総投資額の上限、希望オープン時期、主要な機器の一覧 「エリアは名古屋市内の3区で迷っています。9月末までに1つに絞る予定です」のように、決める時期を添える
タイミング2|内覧時 上記に加えて、物件資料(図面・募集条件)、希望席数、内覧の日時と同行の可否 「席数は20席前後を考えていますが、レイアウト次第です。何席まで入るかも見ていただきたいです」と幅で伝える
タイミング3|契約直前 上記に加えて、契約書案の条件(原状回復条項、契約期間、賃料発生日)、管理規約の有無 「契約書はまだ案の段階で、来週いただける予定です。届き次第すぐ共有します」と入手の見込みを伝える
タイミング4|契約後 上記に加えて、契約日、賃料発生日、希望する開店日の3つの日付 「開店日は10月中を希望していますが、日程が厳しければ動かせます。判断の材料をください」と余地を示す

開店日から逆算して、声をかける日を決める

カレンダーに開店希望日を書く。ここが起点です。そこから法令の日数と工期を引けば、声をかける日が出ます。

逆算して「今日より前」が出たときの対応も3つ用意しました。

「開店の遅れ」と「工事費の上振れ」を1日あたりのご来店数に翻訳する(編集部の試算例、すべて仮の数値)
失うもの 1日あたりに直すと 自分で計算する式
開店が2か月遅れる(150万円) 1年で取り戻すなら1日あたり約2.2人分の売上 (遅れた月数×月の固定費)÷粗利率÷年間営業日数÷客単価
工事費が200万円上振れする 10年で償却するなら1日あたり約0.3人分の売上 (上振れ額÷償却月数÷月の営業日数)÷粗利率÷客単価
内装工事700万円そのもの 10年で償却するなら1日あたり約1.0人分の売上 (工事費÷償却月数÷月の営業日数)÷粗利率÷客単価
開店日から逆算して、声をかける日を決める手順
  1. カレンダーに開店希望日を書く。ここが起点になる。
  2. そこから7日を引き、「防火対象物使用開始届」の締切とする(名古屋市火災予防条例第66条)。
  3. 開店希望日から20日を引き、飲食店営業許可の申請締切とする(名古屋市の案内。新規手数料16,000円)。施設の実地審査の日は申請時に打ち合わせる。
  4. 営業許可の申請には施設の完成が前提になるため、工事完了日を営業許可の申請日より前に置く。消防用設備等の設置届と検査の日も、この間に入れる(消防法第17条の3の2)。
  5. 工事完了日から工事期間を引き、着工日を出す。工事期間は内装会社から日数でもらう。
  6. 着工日から10日を引き、消防設備の着工届の締切とする(消防法第17条の14)。この日までに設計が確定している必要がある。
  7. 着工日より前に、火災予防条例第66条の2の工事計画の届出を置く。関係図面を添えるため、図面の確定日はさらに前になる。
  8. 用途変更の確認申請が必要なら、着工日から35日以上を引いて申請の受理日を出す(建築基準法第6条第4項)。名古屋市の令和7年度実績では、構造適合性判定が不要なもので総審査日数は平均35.6日だった。
  9. 確認申請の受理日から、設計図書の作成期間を引く。日数は設計者から受け取る。
  10. そこから10日以上を引き、見積依頼の締切とする(建設業法第20条第3項、同法施行令第5条の9。予定価格500万円以上5,000万円未満の場合)。相見積を取るなら、同じ日に全社へ渡す。
  11. 見積依頼の前に、基本設計とレイアウトの確定期間を置く。ここが打ち合わせの回数で伸縮する部分になる。
  12. ここまで引いた日付が、物件を契約している必要がある日になる。契約日から賃料が発生する場合、この日から開店日までの月数ぶんの賃料を資金計画に入れる。
  13. さらに前へ、内覧と申込の期間を置く。ここがタイミング2にあたる。
  14. 最後に、条件の言語化と予算の枠決めの期間を置く。ここがタイミング1で、内装会社に最初に声をかける日になる。

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よくある質問

相談の時期については、寄せられる質問がほぼ決まっています。 「早すぎないか」「有料か」「もう遅いのか」「何か月前が正解か」の4つです。 いずれも、答えの前提になる条件を確かめないと答えられません。

そのため、ここでは条件を明示したうえで答えます。 数字を出せるものは条文と公表資料の出典を添え、 出せないものは出せない理由を書きます。

特に4つ目の「何か月前が正解か」は、二次情報に数字があふれています。 編集部が調べた範囲では、出典をたどれるものが見つかりませんでした。 したがって、この記事では月数を書かず、法令の日数から逆算する方法に置き換えています。

物件が決まっていない段階で相談しても迷惑ではありませんか。何を持っていけばよいですか。

迷惑ではありません。 内装会社の側から見ても、条件の合わない物件で無理な工事を組み立てるより、物件を選ぶ段階から関わるほうが仕事として成立しやすくなります。

持っていくものは4つで足ります。 業態と提供内容、希望エリアと希望オープン時期、総投資額の上限とその内訳の見当、そして自分が使う予定の主要な機器の一覧です。

機器の一覧は、型番まで分からなくても「4口コンロ、フライヤー2槽、冷蔵庫2台」という粒度で構いません。 ここまであれば、必要な電気容量とガスの号数、排気の条件をおおまかに言葉にしてもらえます。

逆に、この段階で図面や見積書を求めても出てきません。 物件が決まっていないため、面積も形状も設備の既存状況も確定していないからです。 出せるのは条件の言語化と、坪数の上限の目安までです。

あわせて、どこまでが無料でどこから費用が発生するかを最初に確認してください。 会社ごとに範囲が異なります。

内覧に内装会社を同行してもらうのは有料ですか。他社に決めたらどうなりますか。

会社によって異なります。 工事の受注を前提に無料としている会社、交通費などの実費を請求する会社、契約前提の場合のみ無料とする会社があり、統一された相場はありません。

金額そのものより、確認しておくべきことが3つあります。 第一に、他社に工事を発注した場合に同行分の費用が請求されるかどうかです。

第二に、何件まで同行してもらえるかです。 候補が3件あるなら3件とも見てもらう必要がありますが、回数の上限を設けている会社もあります。

第三に、同行した会社が作った概算やレイアウト案を、他社に見せてよいかどうかです。 この3点を最初のメールか電話で聞いておくと、あとで気まずくなりません。

聞き方は「同行をお願いした場合、費用は発生しますか。他社に決めた場合の扱いもあわせて教えてください」で十分です。 答えを渋る相手であれば、その時点で判断材料になります。

もう物件を契約してしまいました。いまからでも間に合いますか。

間に合います。 ただし、間に合うのは「工事を成立させること」であって、「条件のよい物件を選び直すこと」ではありません。

契約後に打てる対応は、増設や延長で条件を満たすか、業態や機器構成を物件の条件に合わせるかの二択になります。 どちらも費用か売上のどちらかを削る方向にしか動きません。 だからこそ、契約後は1日でも早く声をかけてください。

契約後に効いてくるのは、工事そのものより手続きの日数です。

用途変更の確認申請が必要になれば、建築基準法第6条第4項は建築主事等が申請書を受理した日から35日以内に審査すると定めており、名古屋市が公表している令和7年度の実績では、第1号から第2号で構造適合性判定が不要なものの総審査日数は平均35.6日でした。

消防設備の工事は、消防法第17条の14により甲種消防設備士が着工しようとする日の10日前までに届け出る必要があります。 これらは工事会社の努力では縮まりません。 契約日と賃料発生日、希望する開店日の3つを最初に伝えて、逆算の起点をそろえてください。

「相談は開店の何か月前が最適」という数字はありますか。

編集部が調べた範囲では、公的機関や統計調査が「相談の最適な時期」を月数で示した一次情報は見つかりませんでした。 日本政策金融公庫総合研究所の2025年度新規開業実態調査にも、開業費用や資金調達の設問はありますが、内装会社に相談した時期を尋ねた設問はありません。

二次情報には「半年前」「1年前」といった数字が並びますが、出典をたどれるものがなかったため、この記事では書いていません。 代わりに使えるのが、法令が定めている日数からの逆算です。

建設業法第20条第3項と同法施行令第5条の9は、予定価格が500万円以上5,000万円未満の工事について、注文者が見積期間を10日以上設けなければならないと定めています。

建築基準法第6条第4項の35日、消防法第17条の14の10日前、名古屋市火災予防条例第66条の使用開始7日前、名古屋市の飲食店営業許可の営業開始予定日20日前。 これらを開店日から順に引いていけば、自分の案件に固有の「声をかける日」が出ます。 手順はこの記事の最後の章に置いてあります。

まとめ|内装会社に相談する4つのタイミング

相談が2か月遅れたときの損失は計算できます。開店の遅れと、工事費の上振れ。両方を1日あたりのご来店数に翻訳しました。

いちばん効くのは、内覧に同行してもらうことです。費用はかからないことが多く、判定はその場で出ます。

逆算で「今日より前」が出たときに取れる3つの対応
対応 いつまで選べるか 選ぶ前に自分で確かめること
開店日を後ろにずらす いつでも選べる。ただし賃料が発生していれば、ずらした月数ぶん固定費が出ていく 1か月あたりの固定費を計算し、ずらす月数を掛ける。この記事の試算の手順を使う
用途変更が不要な物件に替える 契約前だけ。判を押したあとは選べない 候補物件の現況用途と床面積、検査済証の有無を、申込の前に不動産会社へ書面で確認する
工事の範囲を減らす 着工前まで。ただし減らせるのは意匠と什器が中心で、設備と法令対応は減らせない 「必ず入れるもの」と「後から足せるもの」を分けた一覧を作る。設備と消防は前者に固定する
試算の前提(すべて仮の数値。編集部の試算例)
項目 仮に置いた数値 自分の数字に置き換える方法
面積と業態 20坪の飲食店(客席16席、厨房を含む) 募集図面の面積をそのまま使う。共用部を含む表示か専有部のみかを不動産会社に確認する
賃料と共益費 月30万円(賃料27万円、共益費3万円) 募集条件の賃料と共益費を足す。消費税の扱いも確認する
開店前の水道光熱費・通信費の基本料 月5万円 電気・ガス・水道の基本料金と、通信回線の月額を合計する
開店に備えて雇う方の人件費 月40万円(2名を開店1か月前から雇用) 採用予定の人数と、入社日から開店日までの日数で計算する
客単価と粗利率 客単価3,500円、粗利率65パーセント メニューの想定平均単価と、原価率から逆算した粗利率を使う
営業日数 月25日 定休日を決めて、月の営業日数を数える

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