「カメラは開店してからでも付けられますよ」。確かに付きますが、配線とコンセントは、壁を塞ぐ前にしか入りません。

深夜に出入口のガラスを割られ、レジの現金とタブレットを持ち去られたとします。ガラスと建具の復旧、機器の買い直し、そして復旧までの休業。損失は現金だけではありません。

防犯は、ひとくくりにできません。外部からの侵入、営業中の万引き、内部の不正。3つは別の問題で、効く対策も違います。

この記事でわかること

  • 店舗の損失を「外部からの侵入」「営業中の万引き・置き引き」「内部の金銭管理」の3つに分けて、それぞれ別の対策として組み立てる考え方
  • 出入口・ガラス・シャッター・裏口・天井の開口という建物の弱点の洗い出し方と、CPマーク(防犯性能の高い建物部品)が何を保証していて何を保証していないか
  • 防犯カメラを台数ではなく「何を映すか」から決める手順と、設置高さ・逆光・録画期間・電源とLANを工事段階で押さえる理由
  • 外周と駐車場の照度を何ルクスで考えるかを、警察庁の要綱が示す数値を参照点にして決める方法
  • 機械警備が警備業法上どういう業務で、通報から到着までの時間が何によって決まっているかと、契約前に確認する項目
  • レジ現金の上限・金庫の置き方・売上金の運搬・キャッシュレス化という現金を減らす4つの対策
  • 防犯カメラ映像の取扱いについて、個人情報保護法のどの条文が関係し、掲示に何を書けばよいか
令和7年の万引きの認知件数は10万5,135件で、うち商業施設が5万6,652件、コンビニが2万2,929件。侵入窃盗は4万7,233件、置引きは9,945件。
件数が多いのは万引き、1件が重いのは侵入窃盗|どちらも前年より増えています。対策の順番は件数ではなく、1件あたりの被害額と起こりやすさの掛け合わせで決めてください。

「カメラを付ければ大丈夫」で止まると、何が起きるか

カメラが効くのは主に記録と抑止です。侵入そのものを止めるのは建具と錠、内部の不正を防ぐのは運用ルール。問題ごとに担当が違います。

「防犯」とひとくくりにされがちな3つの問題と、それぞれに効く対策の違い
問題の種類 起きている状況と、カメラだけでは足りない理由 自店で今すぐ確かめられること
外部からの侵入 無人の時間帯に建物の開口部を破って入られる。カメラは記録は残すが、その場で止める力はない。止めるのは錠・ガラス・シャッターといった物理的な強さと、異常を早く知らせる仕組み 閉店後の店を外から一周し、地上から手の届く高さにある開口部(扉・窓・シャッター・換気口)をすべて数えて写真に撮る
営業中の万引き・置き引き 営業時間内に、売場や客席で商品や持ち物がなくなる。カメラは事後の確認には使えるが、死角のある棚割りや、レジから売場が見えない配置そのものは変えられない レジに立ち、その位置から見えない売場の区画を図面に色を塗って印を付ける
内部の金銭管理 レジ現金や売上金が合わなくなる。カメラを増やしても、記録と現物を突き合わせる手順がなければ、そもそも「合っていない」ことに気づけない レジ締めの手順を紙に書き出し、現金を数える人と記録を確認する人が同じ一人になっていないかを確かめる

統計で確かめる|店舗はどのくらい狙われているのか

警察庁が毎年「犯罪情勢」を公表しています。侵入窃盗の手口と時間帯まで出ています。自分の業態と営業時間に照らすと、優先順位が決まります。

令和7年の主な認知件数(警察庁長官官房「令和7年の犯罪情勢」令和8年2月)と、店舗側の読み方
罪種・手口 令和7年の認知件数と前年比 自店にどう当てはめて考えるか
侵入窃盗 4万7,233件(前年比4,197件、9.8%増加)。侵入犯罪全体5万8,492件の約8割 無人になる時間帯が1日何時間あるかを数える。深夜0時に閉めて朝9時に開ける店なら、毎日9時間が無防備な時間だと認識する
万引き 10万5,135件(前年比6,843件、7.0%増加)。非侵入窃盗の38.5% 売場に出している商品のうち、単価が高く小さいものを書き出す。その商品がレジから見えない位置にないかを確認する
万引きの発生場所(商業施設) 5万6,652件(前年比3,025件、5.6%増加) 商業施設に出店する場合、施設側の防犯ルール(監視カメラの共用範囲、警備の巡回、通報の窓口)を契約前に確認する
万引きの発生場所(コンビニ) 2万2,929件(前年比2,926件、14.6%増加)。増加率が最も高い 深夜も営業する小規模店では、一人体制の時間帯にレジを離れる作業が何分あるかを実測する
万引きの被害品 食料品類が被害品に含まれるものが5万3,186件(前年比5,915件、12.5%増加) 食品を扱う店では、出入口に近い低単価の棚こそ見通しを確保する。高単価品だけを守る発想を捨てる
置引き 9,945件 客席のある業態では、荷物を置く場所(かご・フック・荷物置き)が席から見える位置にあるかを確認する
車上ねらい・部品ねらい 車上ねらい2万2,639件、部品ねらい1万5,216件 駐車場を持つ店では、駐車区画が道路や店内から見えるか、夜間に照明が届いているかを確認する
強盗 1,428件(前年比58件増加) 件数は他の罪種に比べて桁が小さい。ただし人身の危険を伴うため、深夜営業では現金を店内に置かない運用を優先する

防犯は、内装工事のどの段階で決まってしまうのか

決定には締め切りがあります。配線は下地を塞ぐ前、建具と錠は発注前、レジ位置は什器図の確定前。

遅れると、あとから工事が要ります。その分だけ費用が増え、日程も動きます。

防犯に関する決定事項の「締め切り」と、遅れた場合に発生すること
決めること 遅くともいつまでか/遅れると何が起きるか その段階で自分が言うべき一言
物件そのものの弱点 賃貸借契約の前。裏口が路地に面している、隣接建物から屋根伝いに近づける、シャッターが付けられない構造といった条件は、契約後には変えられない 内覧時に「この建物で、夜間に人が近づける面は何面ありますか」と、貸主・仲介に確認する
開口部の建具仕様 建具の発注前。防犯性能の高いガラス・サッシ・錠への変更は、発注前なら差額のみ。発注後は建具ごとの入れ替えになる 「出入口とバックヤードの扉の錠は、CP部品にするといくら上がりますか」と見積段階で聞く
カメラの位置と台数 実施図面の確定前。位置が決まらないと天井裏の配線ルートが引けず、後付けは露出配線か天井の開け直しになる 「カメラはここと、ここと、ここです」と図面に印を入れて渡す。台数ではなく位置で伝える
カメラ取付部の下地 天井・壁の下地施工前。下地がなければ狙った位置に固定できず、「付けられる場所」に付けることになる 「この印の位置に、カメラ用の下地を入れてください」と、下地工事の前に現場で伝える
録画装置とネットワーク機器の置き場 電気の実施図面の確定前。置き場が決まらないと専用コンセントとLANの経路が確保できない バックヤードの棚の一段を「機器専用」と決め、その位置に電源とLANを出してもらう
機械警備のセンサー配線 天井を張る前・壁を閉じる前。センサーは扉や窓の枠に付き、制御盤まで配線が要る。後からだと露出配線になる 警備会社の現地調査を、内装工事の着工前に入れてもらうよう内装会社に依頼する
外部・駐車場の照明 外構工事の設計段階。屋外の器具は電源の引き回しが必要で、後から増やすと配管の掘り直しになる 「夜、店の周りで暗くなる面はどこですか」と設計者に聞き、平面図に暗い面を書き込む
レジ位置と売場の見通し レイアウト確定前。レジから見えない区画は、什器を作り込んだ後には動かせない 平面図でレジの位置に立った視線を引き、遮られる棚の高さを数値で決める
金庫の設置場所と固定 造作家具の製作前。床固定や造作内への組み込みは、家具を作る段階でしか仕込めない 金庫の外寸と質量を先に決め、「この寸法のものが入る場所を、ここに」と伝える
映像の掲示物と運用ルール 開店前。掲示は後からでも貼れるが、「開店してから考える」と結局貼らないまま営業が始まる 開店準備のチェックリストに「カメラ作動中の掲示を入口に貼る」を1行足す

対策1〜4|損失の3区分、建物の弱点、カメラ、照明

まず損失を3つに分けます。分けないと、どこにお金をかけるかが決まりません。

建物の弱点は開口部です。地上から手の届く高さにある開口を数えるところから始まります。

カメラは台数ではなく「何を映すか」から決めます。出入口、レジ、バックヤード、駐車場。目的が違えば画角も高さも違います。

照明と見通しは、警察庁の要綱に参照値があります。暗がりを作らないほうが、カメラより安く効くことがあります。

対策1|損失の3区分と、それぞれの性質・優先すべき対策
区分 起きる時間帯と、性質 自店で最初にやること
外部からの侵入 閉店から翌開店まで。無人。一度に失う金額が大きく、建物の復旧費と休業損失が上乗せされる。件数は多くないが、1件あたりの被害が重い 閉店後の店を外から一周し、開口部を数える。地上・隣接建物の屋根・外階段のそれぞれから手が届く面を写真に残す
営業中の万引き・置き引き 営業時間内。人がいる。1件あたりの金額は小さいが、積み上がると粗利を確実に削る。棚割りとレジ位置という内装の設計が直接効く レジに立って売場を見渡し、見えない区画を平面図に塗る。塗った区画に置いている商品の単価を確認する
内部の金銭管理 レジ締めの前後。関係者が限られる。金額の大小より、気づくまでの期間が長くなることが問題。費用をかけずに仕組みで防げる レジ締めの手順を紙に書き、現金を数える人と記録を確認する人が分かれているかを確認する
現金以外の資産の持ち出し 営業時間内・閉店作業時。タブレット、決済端末、工具、在庫の原材料など。数が合わなくなるまで気づきにくい 持ち出せる備品を一覧にして、置き場所を固定する。棚に「定位置」の表示を貼り、欠けたら分かる状態にする
情報とアカウント 常時。レジシステムのログイン、予約システム、防犯カメラの管理画面。物理的な損失は出ないが、復旧に時間がかかる 店で使うシステムのアカウントを一覧にし、退職者のアカウントが残っていないかを確認する
対策2|開口部ごとの弱点と、工事段階で決めること
開口部 弱点になりやすい理由と、工事で決まること 見積・図面の段階で確認すること
正面の出入口(扉) 人通りがあるため狙われにくい一方、ガラス面積が大きい業態では弱点になる。錠の種類と枠の強さは建具の発注時に決まる 錠が1か所か2か所か、シリンダーの種類、扉と枠の隙間からデッドボルトが見えない構造かを図面で確認する
正面のガラス・ショーウィンドウ ガラスは面積が大きいほど費用がかかるため、後からの入れ替えが最も高くつく部位。防犯フィルムは既存ガラスにも施工できるが、性能は下地のガラスに依存する ガラスの種類(単板・複層・合わせ)と厚みを図面で確認し、防犯ガラスへの変更差額を出してもらう
シャッター 後付けは足場・養生・電源工事が別途発生する。物件によっては外観規制や貸主の承諾で付けられない場合がある 賃貸借契約の段階で、シャッターの設置可否と原状回復の扱いを貸主に確認する
裏口・勝手口 人目がなく、既存の扉が薄い場合が多い。愛知県警察のチラシも「窓ガラス、出入口ドア、勝手口を破壊して侵入」する手口を挙げている 裏口の扉と枠の材質を現地で確認し、錠を2か所にする、面付錠に替える、ガードプレートを付けるの3つの見積を取る
バックヤードの窓・小窓 換気のために設けた小窓が、開口寸法によっては通れる大きさになっている。営業中に開けたまま閉め忘れる運用上の弱点もある 開口の内法寸法を実測する。人が通れる寸法なら面格子か補助錠を検討し、閉め忘れが分かる位置に配置する
搬入口・大型の扉 荷受けのために開けている時間が長い。開いているあいだ、扉としての機能はない 荷受けの時間帯に、扉が開いたままになる合計時間を実測する。その時間帯にレジや金庫が視野に入るかを確認する
天窓・トップライト 隣接建物の屋根から近づける場合、まったくの死角になる。既存建物では位置と構造を変えられないことが多い 内覧時に屋上・屋根まわりを見せてもらい、隣接建物から自店の屋根に移れるかを目視で確認する
空調・換気の開口 ダクトの貫通部やガラリの寸法が大きい場合がある。空調工事の後に塞ぐと、風量が変わる恐れがある 空調・換気の図面で、外壁を貫通する開口の寸法をすべて拾い出す。300ミリメートルを超える開口は施工方法を確認する
鍵そのもの(合かぎ) 物理的な強度ではなく管理の問題。前の借主の合かぎが残っている可能性は、内装工事が終わっても消えない 引き渡し時に、貸主にシリンダー交換の可否と費用を確認する。交換しない場合は、鍵の本数と所在を書面で受け取る
外構・足場になるもの 室外機、物置、看板の架台、駐輪ラックが、二階の窓や屋根への足場になる。外構の設計段階でしか動かせない 外構図で、外壁から1メートル以内に高さ1メートル以上の物が置かれる位置を確認し、窓の直下を避ける
対策3|カメラで「何を映すか」の候補と、設置時の条件
映す対象 狙い/設置時に難しくなる点 図面の段階で自分が決めること
レジまわりの手元 現金の受け渡しと、レジ操作を記録する。真上からだと手元は映るが人の顔が映らず、斜めからだと什器の影に入る レジ台の中心から斜め上1.5〜2メートル手前の天井に印を入れ、その位置に下地を指定する
出入口を通る人の顔の高さ 出入りした人を確認する。屋外の明るさで逆光になりやすく、正面から狙うと最も失敗する 入口の真正面を避け、店内側から斜めに、または入口を通過した先から振り返る向きで位置を決める
バックヤードの扉 関係者以外の出入りを記録する。天井が低く、器具や配管が輻輳していて取り付け位置が限られる バックヤードの天井伏図で、ダクト・配管・照明を避けた空きスペースを先に確保しておく
金庫の前 金庫を開ける行為そのものを記録する。金庫を目立たない場所に置くほど、カメラの取り付け位置も窮屈になる 金庫の置き場所を先に決め、その正面2メートル程度の位置に取り付け可能な壁面があるかを確認する
裏口・搬入口の外側 建物の外側で近づく人を記録する。屋外用の機器が必要で、電源を外部まで引く必要がある 外壁を貫通する配線ルートと、防水処理の方法を電気の実施図面で確認する
売場全体(俯瞰) 状況の把握には使えるが、個人の識別には向かない。1台で全部を賄おうとすると、どれも小さくしか映らない 俯瞰は「状況の記録」と割り切り、識別が必要な場所には別のカメラを立てると決める
録画装置の置き場 映していないが、最も重要な機器。侵入されたときに装置ごと持ち去られると、記録が残らない 施錠できる場所か、造作の中に組み込める場所を確保する。専用コンセントとLANの位置を図面に入れる
電源の系統 照明と同じ系統から取ると、ブレーカーを落としたときに録画が止まる。閉店時に主幹を落とす運用の店では致命的 録画装置とカメラは、閉店後も生きている系統から取ると電気の設計者に伝える
通信(有線か無線か) 無線は工事が軽い代わりに、電波環境と機器の再起動に左右される。有線は安定するが配線ルートが必要 カメラ位置から録画装置までのLAN配線ルートを、天井伏図に線で書き込んでもらう
録画期間 長いほど容量と装置が大きくなる。個人情報保護法第22条は、必要がなくなったときの遅滞ない消去を努力義務としている 棚卸や締めのサイクルから必要期間を逆算し、「◯日」と決めて機器の選定条件に入れる
対策4|照度と見通しの参照値(警察庁「安全・安心まちづくり推進要綱」ほか)と、店舗への当てはめ方
場所 参照できる数値と、その出典・適用範囲 自店の設計で言うべきこと
店舗外周・通路 「人の行動を視認できる程度以上」=4メートル先の挙動・姿勢等が識別できる、平均水平面照度おおむね3ルクス以上(警察庁要綱 別紙1注2/道路・公園等が対象) 建物の周囲を歩き、器具の光が届かない面を平面図に記入する。その面に器具を1灯足す見積を取る
駐車場・駐輪場 同じく3ルクス以上。加えて駐車場法施行令第13条は、面積500平方メートル以上の建築物である路外駐車場について車路の路面10ルクス以上、駐車部分の床面2ルクス以上と規定(同要綱 別紙1注5) 車路と駐車区画を分けて照度を指定する。夜間に実際に立って、車のナンバーが読めるかを確認する
出入口まわり 「人の顔及び行動を明確に識別できる程度以上」=10メートル先の顔・行動が明確に識別できる、おおむね50ルクス以上(同要綱 別紙1注4) 閉店後も消さない照明を1灯決める。その1灯だけは常夜灯の系統から取ると電気設計者に伝える
共用廊下・階段(テナントの場合) 「人の顔及び行動を識別できる程度以上」=10メートル先の顔・行動が識別できる、おおむね20ルクス以上(同要綱 別紙2注2/共同住宅が対象) ビルインの物件では、共用部の照明が誰の負担で、何時に消えるのかを契約前に貸主へ確認する
植栽・囲障 要綱別紙1は、囲障はブロック塀をできる限り避け柵など見通しの良いものにすること、植栽は生長に伴う繁茂を適時点検し必要に応じて剪定することを挙げている 外構図で、高さ1.2メートルを超える塀や植栽が窓・裏口の前に来ていないかを確認する
売場の棚の高さ 公的な数値基準はない。レジからの視線が通るかどうかで判断する レジの座位・立位それぞれの目線高さを実測し、その高さを超える什器を売場のどこに置くかを決める
レジから見えない区画 公的な数値基準はない。鏡やカメラのモニターで補うか、そもそも高単価品を置かないかの選択になる 平面図でレジから死角になる区画を塗り、その区画に置く商品の単価上限を自分で決める
試着室・トイレの前 要綱別紙1は、公衆便所について建物の入口付近及び内部において人の顔及び行動を明確に識別できる程度以上の照度の確保を挙げている 試着室やトイレの入口が、スタッフの立ち位置から見える配置になっているかを平面図で確認する
閉店後の店内の見え方 公的な基準はない。外から店内が見えることは、防犯上は有利に働くことがある 閉店後にシャッターを全閉するか、一部を開けて店内が見える状態にするかを、業態と立地から決める
照明の維持管理 要綱別紙1は、照明が樹木に覆われたり汚損したりすることで予定した照度を維持できなくなるおそれがあるため、適時に点検することを挙げている 屋外の器具の清掃と球替えを、年に何回、誰がやるかを開店前に決めて掲示する

対策5〜8|機械警備、現金、運用ルール、被害後

機械警備を入れるかどうかは、駆けつけまでの時間と、契約の解除条件で決まります。契約前に確認する項目を表にしました。

現金が存在するのは3か所です。レジ、金庫、そして移動中。3か所それぞれで決めることがあります。

カメラの映像は個人情報です。掲示、保存期間、閲覧できる人を先に決めておいてください。個人情報保護委員会のQ&Aが根拠になります。

対策5|機械警備の契約前に確認する項目と、根拠となる条文
確認する項目 根拠・背景/確認しないと後で困ること 契約前に自分が聞くこと
認定を受けた警備業者か 警備業法第4条は、警備業を営もうとする者は公安委員会の認定を受けなければならないとしている。第2条第3項は「警備業者」を第4条の認定を受けて警備業を営む者と定義している 認定証の番号と、機械警備業務の届出をしている都道府県を確認する
到着時間の基準 警備業法第43条と都道府県公安委員会規則。愛知県は受信から25分以内に到着させられるよう配置する基準。到着保証ではない 「自店から最も近い待機所はどこですか」と聞き、実際の距離と経路を地図で確認する
到着後に何をするか 条文上は「事実の確認その他の必要な措置」。鍵を預けるかどうかで、できることが変わる 異常が確認された場合の手順(110番通報、施主への連絡、店内への立ち入りの可否)を書面で確認する
誤報時の扱い センサーは、空調の風、ポスターの揺れ、小動物などで反応することがある。誤報のたびに出動費が加算される契約もある 誤報1件あたりの費用と、月に何回までが基本料金の範囲かを確認する
センサーの種類と設置箇所 扉の開閉、窓の破壊、室内の動きなど、種類によって検知するものが違う。設置箇所は配線が必要で、内装工事の段階でしか隠蔽できない 現地調査を内装工事の着工前に入れてもらい、センサー位置を平面図に落としてもらう
警備の解除と設定の方法 カードか暗証番号か。従業員が増減するたびに変更が必要になる。この運用が回らないと、警備を掛けない日が出る 解除の権限を何人まで持てるか、退職者の権限をどう消すかを確認する
初期費用と月額の内訳 機器を買い取るのか、リースなのか、警備会社の所有物を借りるのかで、解約時の扱いが変わる 初期費用・月額・契約期間・中途解約時の違約金の4点を、必ず書面で受け取る
契約期間と自動更新 複数年契約が一般的。閉店や移転の際に違約金が発生することがある 契約期間と更新の条件、解約予告の期間を確認し、賃貸借契約の期間と揃うかを見る
通信回線の依存 通報は通信回線を経由する。回線が止まれば通報も止まる。工事で回線を切り替える際に警備が無効になる時間が出る 回線の種類と、回線障害時のバックアップの有無を確認する
立入検査があること 警備業法第47条第1項は、公安委員会が警察職員に警備業者の営業所、基地局又は待機所に立ち入り、業務の状況等を検査させることができると定めている 行政の監督下にある業務であることを踏まえ、説明が法令に沿っているかを聞き返す姿勢を持つ
対策6|現金が存在する3か所と、それぞれで決めること
現金がある場所・状況 問題になる点と、参照できる注意喚起 自店で決めること・実行すること
レジのドロア(営業中) 営業時間中は開閉が頻繁で、金額が増え続ける。上限を決めていないと、閉店直前に最大額を抱えることになる 釣銭準備金の額と1時間あたりの現金売上から上限額を決め、超えたら金庫へ移す時刻を運用に組み込む
レジのドロア(閉店後) 愛知県警察は、レジスターのトレーを開放して現金がないことをアピールすることを挙げている 閉店作業の手順書に「ドロアを開けたまま帰る」を1行入れ、外から見える位置にレジを置くかを検討する
金庫(設置場所) 愛知県警察は、金庫が容易に発見されない場所を選定すること、鍵は別に保管することを挙げている 金庫の置き場所を、造作家具の設計段階で決める。バックヤードの棚の中や机の下など、正面から見えない位置を選ぶ
金庫(固定と扉前の空間) 同チラシは、犯人がバールを使えないように金庫扉前の空間を狭くするなどして破壊作業をさせないようにすることを挙げている 金庫の外寸と質量を先に決め、床固定または造作内への組み込みを家具製作の前に依頼する
金庫(機種の選定) 同チラシは、専門業者(日本セーフ・ファニチュア協同組合連合会など)と相談し、防盗性の高い金庫を設置することを挙げている。防火性能と防盗性能は別の指標である 「耐火」だけで選ばず、防盗の性能表示を確認する。質量が持ち出しにくさに直結することを踏まえて選ぶ
売上金の運搬 同チラシは、帰宅時や店舗外に現金等を持ち出す際は、必ず複数人で対応して周囲の安全を確認することを挙げている 入金に行く曜日・時刻・経路を固定しない。可能なら二人で行く運用にし、一人になる日は運ばない
金庫を積み込まれること 同チラシは、駐車ポール等を活用するなどして金庫を積み込もうとする犯人の車を出入口に横付けさせないようにすることを挙げている 閉店後、出入口の前に車が寄せられる状態かを確認する。外構でポールやプランターを置ける位置を検討する
キャッシュレス化 経済産業省の公表では2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%(162.7兆円)。ただし国全体の集計であり、店舗別の比率ではない。決済手数料という別コストが発生する 1か月の売上を現金・カード・コード決済に分けて集計し、自店の現金比率を出す。手数料と現金管理の手間を比べる
現金を置いていない旨の掲示 愛知県警察は「防犯宣言 現金ゼロ」の掲示物を配布し、店舗・事務所の出入口等の目立つ所への掲示を呼びかけている 掲示物を印刷して出入口に貼る。ただし実際に現金を置いていない運用とセットにする
釣銭の準備と保管 翌日分の釣銭を店に残す運用は、結局現金を置くことになる。両替の手間との折り合いが必要 釣銭を持ち帰るか店に残すかを決め、残す場合は金庫のなかで売上金と分けて保管する
対策7|運用ルールと映像の取扱いで決めること(根拠は個人情報保護委員会「カメラに関するQ&A」ほか)
決めること 内容と、根拠になる条文・資料 開店前に自分でやること
開店の手順 警備の解除、釣銭の準備、外周の確認、録画装置の稼働確認。順序を決めておかないと、忙しい朝に抜ける 手順を7項目以内のチェックリストにして、バックヤードの壁に貼る
閉店の手順 売上金の処理、ドロアの開放、施錠、警備の設定、外周の確認。最後に店を出る人が一人になる時間帯が生じる 閉店手順を紙にし、最後の施錠を確認する項目を必ず入れる。一人閉店の日を減らす
鍵の管理 本数・所在・返却。警察庁「住まいる防犯110番」は、必要最低限の本数のみを複製し確実に管理することを挙げている 鍵の台帳を作り、何番の鍵を誰が持っているかを書く。退職時の返却を雇用の書類に入れる
カメラ作動中の掲示 個人情報保護法第20条第1項に関し、個人情報保護委員会Q1-13は、防犯カメラが作動中であることを入口やカメラの設置場所等に掲示する等の措置を例示している 掲示を作って入口に貼る。運営主体と問い合わせ先も書いておくと、後の説明が楽になる
利用目的の特定 Q1-13は、利用目的をできる限り特定し、当該利用目的の範囲内でカメラ画像を利用しなければならないとしている 「店舗内における防犯および事故発生時の状況確認のため」のように、目的を一文で書いて掲示に載せる
保存期間の設定 Q5-4は、法第22条に基づき利用の必要性を考慮して保存期間を設定し、必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければならないとしている 「◯日で自動上書き」と機器の設定を決め、その日数を運用の書類に書き残す
映像を見られる人の範囲 Q10-8は、法第23条の安全管理措置として、情報システムを使用できる従業者を限定すること、責任者を定めること、取扱いに関する規程等を整備することを挙げている 管理画面のパスワードを持つ人を2名以内に限定し、名前を書いて残す
録画装置の物理的な保護 Q10-8は物理的安全管理措置として、カメラ・電子媒体等の盗難又は紛失等を防止するため、設置場所に応じた適切な安全管理を行うことを挙げている 録画装置を施錠できる場所に入れる。造作の中に組み込む場合は、扉に鍵を付ける
ネットワーク経由の保護 Q10-8は技術的安全管理措置として、ネットワークを介してカメラ画像等を取り扱う場合の技術的なアクセス制御や漏えい防止策を挙げている 機器の初期パスワードを必ず変更する。変更した日付を記録に残す
警察からの照会への対応 個人情報保護委員会のFAQは、刑事訴訟法第197条第2項に基づく捜査関係事項照会が、個人情報保護法第27条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当すると解されるとしている 照会があった場合に誰が判断し、誰が記録を残すかを決めておく。口頭ではなく書面で受け取る
従業員への周知 Q10-8は人的安全管理措置として、従業者に対する適切な研修等を挙げている。カメラ画像利活用ガイドブックver3.0も、設置場所周辺で勤務する従業員を含めた教育に触れている お客様から「これは何のカメラですか」と聞かれたときの答えを1文にして、全員で共有する
目的外利用をしないこと Q1-15は、当初防犯目的で取得したカメラ画像を、マーケティング等の商業目的で利用する場合には、あらかじめ本人の同意を得なければならない(法第18条第1項)としている 「防犯目的以外には使わない」と決め、社内で分析に使いたくなったときの相談先を先に決めておく
対策8|被害が起きたときの手順と、事前に決めておくこと
場面 やること/間違えやすい点 開店前に決めておくこと
発見した瞬間 建物内に人が残っている可能性がある。安全が確認できるまで中に入らない。愛知県警察も不審者・不審車両の目撃時は直ちに110番通報するよう呼びかけている 「入らずに通報する」と手順書の1行目に書く。第一発見者になりうる人全員に伝える
通報 110番。何が起きたか、いつ気づいたか、今どこにいるかを伝える。迷って時間が経つほど不利になる 店の住所と最寄りの目印を紙に書いて、レジとバックヤードに貼る。夜間に慌てて出てこない情報を先に用意する
現場の保存 片付けたくなるが、現場検証が終わるまで動かさない。ガラス片、工具痕、足跡が確認の材料になる 「検証が終わるまで片付けない」を手順書に明記し、清掃を頼む業者にも事前に伝える
映像の保全 録画は一定期間で上書きされる。初動が遅れると、必要な時間帯が消える 映像を取り出す手順を書き、外部媒体への書き出し方法を実際に一度試しておく
被害額の算定 現金は締めの記録との差額で出せる。商品は在庫記録がないと出せない。設備の復旧費は見積が必要 在庫の記録方法を決める。棚卸の頻度を決め、直近の記録がいつのものかを常に把握しておく
関係先への連絡 貸主、管理会社、保険会社、警備会社、内装会社。連絡先が分からず探すところから始まると半日が消える 連絡先一覧を1枚にまとめ、店とスマートフォンの両方に置く。夜間の連絡先も入れる
保険の請求 建物・設備、商品、休業損失が別の補償である場合が多い。現金の補償には限度額があることが多い。免責金額の確認も要る 契約前に補償対象・限度額・免責金額の3点を書面で確認する。証券の保管場所を決める
復旧工事の手配 ガラスや建具の復旧は、部材の在庫状況で日数が変わる。仮復旧と本復旧を分ける判断が要る 内装会社に「緊急時の連絡先と、対応できる時間帯」を聞いて記録しておく
休業の判断 営業できるかどうかを早く決めないと、仕入れとシフトが空転する。SNSや店頭での告知も要る 休業する場合の告知文の型を作っておく。仕入れ先への連絡順を決めておく
再発防止の見直し 復旧して終わりにすると、同じ場所が同じように狙われる。どこから入られたかを設計に反映する 被害後に必ず対策2の開口部一覧を見直すと決め、その一覧を保管場所とともに手順書に書く

図面を確定させる前にやること

物件の外周を一周して、開口部を数える。これだけで、必要な対策の半分は決まります。

図面を確定させる前にやる手順
  1. 物件の内覧時に、外周を一周して開口部を数える。地上から手の届く高さにある扉・窓・シャッター・換気口・搬入口をすべて写真に撮り、方位と面ごとに整理する。隣接建物の屋根から自店の屋根に移れるかも、可能であれば目視する。この時点で「守りにくい物件」と判断したら、契約前に見送る選択肢がまだ残っている。
  2. 賃貸借契約の前に、貸主・管理会社に3点を確認する。シャッターの設置可否と原状回復の扱い、シリンダー交換の可否と費用、共用部の照明が何時に消えるか。この3点は契約後には交渉が難しくなる。契約書で確認すべき条項は店舗の賃貸借契約書で確認する9つの条項|内装工事の前に読むにまとめてある。
  3. 損失の3区分を紙に書く。外部からの侵入、営業中の万引き・置き引き、内部の金銭管理の3つについて、「いつ」「誰がいるか」「失われるもの」「今ある対策」「不足していること」を埋める。埋まらない欄が自店の弱点になる。所要30分。
  4. 平面図にカメラの位置と、レジからの視線を書き込む。台数ではなく位置を決める。レジの立ち位置から見えない区画を色で塗り、その区画に何を置くかを決める。この図面を内装会社に渡す。
  5. 実施図面の確定前に、内装会社へ5項目を伝える。カメラ取付位置の下地、録画装置の置き場と専用コンセント、LANの配線ルート、閉店後も生きている電源系統、屋外照明の追加位置。この5項目は、図面が固まった後では追加費用が発生する。
  6. 機械警備を検討する場合は、着工前に現地調査を入れてもらう。センサーの位置が決まらないと配線を隠蔽できない。内装会社と警備会社の日程を、着工前に合わせる。契約書の確認項目は対策5の表を使う。
  7. 開店準備のチェックリストに、防犯の4行を足す。カメラ作動中の掲示を貼る、鍵の台帳をつくる、開店・閉店の手順書を貼る、緊急連絡先の一覧を作る。この4つは費用がほぼかからず、開店前の1日で終わる。

この記事で確認した一次情報

数値と基準は、すべて出どころをたどれるものだけを使いました。

参照した一次情報の一覧

あわせて読みたい

よくある質問

相談の場で実際に多い質問を4つ挙げます。 いずれも「調べても答えが出てこない」と言われることが多い項目です。 条文や公的資料で確認できる範囲は根拠を示し、 確認できない範囲は確認できないと書いています。

数字が出てこない箇所は、 編集部が一次情報を見つけられなかったという意味です。 自店の条件で判断するための材料として読んでください。

防犯カメラは何台つければよいですか。目安はありますか。

台数から決めないでください。 台数を先に決めると、必ずどこかの画角が余り、必要な場所が欠けます。 決める順序は「何を映すか」が先です。

店舗では、レジまわりの手元、出入口を通る人の顔の高さ、バックヤードの扉、 金庫の前、裏口や搬入口の外側の五か所が候補になります。 この五か所のうち自店に存在するものを書き出し、 一つの画角で二か所を兼ねられるかを図面上で検討し、 兼ねられないものだけを台数として積み上げます。

結果として3台になることも8台になることもありますが、その数には根拠があります。

カメラ画像利活用ガイドブックver3.0(令和4年3月、IoT推進コンソーシアム・総務省・経済産業省)は、 基本原則の一つとして、カメラ画像の利活用を目的の達成に必要な範囲 (カメラ設置台数、撮影範囲、取得・生成するデータの種類、データの保存期間、 閲覧・利用できるメンバー等)に限定することを挙げています。

なお同ガイドブックは防犯目的のカメラ画像の取扱いそのものは 検討対象としていないと明記していますが、考え方は参考になります。 台数を絞ることは、費用の話であると同時に、写る方への配慮の話でもあります。

防犯カメラを設置していることを、お客様に知らせる掲示は必要ですか。

掲示することを強くおすすめします。 個人情報保護委員会のFAQ(Q1-13、令和5年5月追加)は、 従来型防犯カメラ、つまり撮影した画像から顔特徴データの抽出を行わないカメラについて、 二つのことを述べています。

第一に、カメラの設置状況等から利用目的が防犯目的であることが明らかである場合には、 個人情報保護法第21条第4項第4号の 「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」に当たり、 利用目的の通知・公表は不要と考えられるとしています。

第二に、同法第20条第1項が偽りその他不正の手段による個人情報の取得を禁じていることから、 カメラにより自らの個人情報が取得されていることを 本人において容易に認識可能といえない場合には、 容易に認識可能とするための措置を講じなければならないとしています。

その例として、防犯カメラが作動中であることを 店舗の入口やカメラの設置場所等に掲示する等の措置が挙げられています。 さらに、外観上カメラであることが明らかであっても、 掲示等の措置を講じることにより、 より容易に認識可能とすることが望ましいとされています。 掲示は数百円で作れます。

迷うより貼ってください。 ただし、顔特徴データを抽出する顔識別機能付きカメラシステムを使う場合は話が変わり、 利用目的の通知または公表が必要になります(同FAQ Q1-14)。

機械警備を入れると、通報してからどのくらいで人が来ますか。

到着時間そのものを契約で保証する仕組みではなく、 警備会社側の「配置の基準」として時間が定められています。

警備業法(昭和47年法律第117号)第43条は、機械警備業者に対し、 都道府県公安委員会規則で定める基準に従い、 基地局において盗難等の事故の発生に関する情報を受信した場合に、 速やかに現場における警備員による事実の確認その他の必要な措置が講じられるようにするため、 必要な数の警備員、待機所及び車両その他の装備を適正に配置しておかなければならないと定めています。

これを受けた愛知県公安委員会規則第4号 「機械警備業者の即応体制の整備の基準等に関する規則」(昭和57年12月27日)第1条は、 その受信の時から25分以内に当該現場に警備員を到着させることができるように 配置を行わなければならないと定めています。

つまり25分は、個々の通報に対する到着保証ではなく、 警備員・待機所・車両を配置する際の設計基準です。 渋滞や同時多発の状況では前後します。 そして到着した警備員が行うのは事実の確認その他の必要な措置であり、犯罪の制圧ではありません。

機械警備は「異常を早く知る仕組み」として評価し、 被害をゼロにする仕組みとしては評価しないでください。

防犯の配線は、内装工事のどの段階までに決めればよいですか。

実施図面の確定前、遅くとも天井を張る前です。 防犯設備で工事に依存するのは、電源、通信(有線の場合)、下地、配管ルート、 そして扉や窓そのものの仕様の五つです。 カメラの位置が決まっていなければ、天井裏に配線を通せず、 後から付けるときは露出配線になるか、天井を開け直すことになります。

録画装置とネットワーク機器を置く場所が決まっていなければ、 バックヤードのどこにコンセントを何口出すかが決まりません。 カメラを取り付ける天井や壁に下地が入っていなければ、 重量のある機器を狙った位置に固定できず、 結局「付けられる場所」に付けることになります。

そして最悪なのは、レジの真上に下地がなく、 手元が映らない斜め方向にしか付けられない、という結末です。 開口部も同じで、防犯性能の高いガラスやサッシへの変更は、 発注前なら差額だけで済み、発注後は建具ごとの入れ替えになります。

着工後の確認事項の全体像は 内装工事は着工後が勝負|施主が自分で確認する9つのポイントでも 扱っていますが、防犯に関しては着工前の図面確定が実質的な締め切りだと考えてください。

まとめ|店舗の防犯で決める8つのこと

防犯の費用も「1日何人分の売上か」に翻訳できます。被害1回の損失と並べると、判断しやすくなります。

工事のときにやっておくのは、配線・建具・錠・照明の4つだけです。カメラ本体と運用は、あとからでも間に合います。

防犯費用を1日あたりに翻訳する手順(数値はすべて編集部の試算例であり、相場を示すものではありません)
段階 計算の内容(試算例) 自店で入れる数字
1|初期費用を出す カメラ・録画装置35万円+開口部の補強10万円+屋外照明5万円=50万円(例) 見積の防犯関連の項目だけを抜き出して合計する。工事費と機器代を分けて記録する
2|月額に直す 50万円÷60か月=月8,334円(5年で償却する場合の例) 償却年数を決める。賃貸借契約の残存期間より長くしない
3|ランニングを足す 8,334円+機械警備1万2,000円=月2万334円(例) 機械警備・クラウド録画・回線の月額をすべて足す。年払いのものは12で割る
4|1日あたりにする 2万334円÷25営業日=1日814円(例) 自店の月間営業日数で割る。定休日と臨時休業を反映する
5|売上に直す 814円÷粗利率60%=約1,357円(例) 自店の粗利率を入れる。分からない場合は原価率から逆算する
6|人数に直す 1,357円÷客単価1,200円=1日1.1人分(例)/客単価3,000円なら0.5人分 自店の客単価で割る。ランチとディナーで単価が違う業態は、それぞれで計算する
7|被害額と並べる 被害1回125万円(冒頭の試算例)÷月2万334円=約61.5か月分 自店で1回被害を受けたときの損失額を、復旧費・商品・休業日数から自分で見積もる
8|費用ゼロの項目を分ける 掲示物の作成、閉店手順書、鍵の台帳、ドロアの開放は費用がほぼゼロ 費用のかからない対策を先に全部実行し、残った課題にだけお金をかける

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