商業施設への出店でつまずくのは、「誰が払うのか」が読めないまま話が進むことです。A工事、B工事、C工事。この3文字で、負担が数百万円変わります。

15坪を坪40万円と見込めば内装工事費は600万円ですが、商業施設ではここにB工事の分が乗ります。しかもB工事は施設側の指定業者が発注するので、こちらに見積を選ぶ余地がありません。

決めることは9つ。工事区分、B工事の交渉、内装監理基準、賃料の形、営業時間と搬入、消防、原状回復、逆算の日程、そして損益。説明会に出る前に、どれも準備できます。

この記事でわかること

  • A工事・B工事・C工事を「発注者」「費用負担」「所有権の帰属」の三つに分解して読む方法と、工事区分表の確認手順
  • B工事で相見積が成立しない構造を踏まえたうえで、数量・仕様・区分の三点から金額を確かめる交渉の順序
  • 施設の内装監理基準(デザイン基準・設備基準)で規定されやすい項目と、申請図書をいつまでに出すのかの逆算
  • 固定賃料・歩合賃料・最低保証付き歩合の違いと、共益費・販促費が損益にどう効くかの計算のしかた
  • 営業時間中の搬入禁止・夜間作業・エレベーター制限が、どの経路で工事費に転嫁されるか
  • 天井を作り替えるとスプリンクラーと火災感知器が動く理由を、消防法施行令の条文で確認する視点
  • 原状回復の基準が路面店と違う三点と、造作買取請求権が特約で排除される法的な仕組み
C工事600万円、B工事300万円、設計費80万円などで総額1,400万円。5年60か月で回収するなら月23万3,000円、1日9,300円、客単価3,000円・粗利率60%なら1日約5人分。
歩合賃料があると、路面店と同じ計算では読み違えます|売上が増えた分だけ賃料も増えるためです。契約書の賃料条項で、固定と歩合の割合を先に確かめてください。

物件の内覧で見るべき点は店舗物件の選び方|内装工事の視点で内覧時に確認する10のポイント、 賃貸借契約書の条項そのものは店舗の賃貸借契約書で確認する9つの条項|内装工事の前に読む、 見積書の費目の読み方は店舗内装の見積書で確認する7つの費目|諸経費・現場管理費・載らない費用で扱っています。 オフィスビルの移転にともなう工事区分はオフィス移転の内装工事で確認する7つのこと|解約予告からの逆算と二重家賃にあります。 この記事はそれらに重ならないよう、 ショッピングセンター・駅ビル・百貨店・アウトレットのテナント区画に出店する場合に固有の論点だけに絞ります。 路面店にも共通する話(坪単価の相場、見積の比較のしかた、デザインの決め方)は扱いません。

「誰が払うのか」が読めないまま話が進む理由

路面店とは構造が違います。路面店では発注も費用も所有も自分ですが、商業施設では3つが工事ごとにばらばらになります。

路面店の内装工事と、商業施設テナント工事で構造が違う点
項目 商業施設のテナント区画で起きていること 自分で確認すること
発注先 自分で選べる工事(C工事)と、施設が業者を決める工事(B工事)が混在する。両者の境目は施設ごとの工事区分表で決まる 工事区分表をもらい、B欄に印が付いている行だけを別紙に書き出して数える
見積の取り方 C工事は複数社から取れるが、B工事は指定業者1社からしか出てこない。総額の比較ができない部分が残る 「B工事の概算はいつ、どの単位(項目別か一式か)で出ますか」と申し込み前に聞く
図面の承認 自分と内装会社の合意だけでは着工できない。施設の内装監理担当による審査と承認が必要になる 審査に要する日数と、修正が出た場合の再提出の締切を、日付で確認する
工事のできる時間 営業時間中は共用部を通れない、騒音・粉じんを出す作業ができない、といった制約がかかることが多い 作業可能な曜日と時間帯、搬入経路、使えるエレベーターの寸法と積載を書面でもらう
完成物の所有 費用を負担したテナントの資産にならず、建物に付合して建物所有者の所有物になる部分がある 工事区分表の各行について「完成後の所有者は誰か」を施設に確認し、回答を記録に残す
賃料の決まり方 固定額ではなく売上に対する歩合、または最低保証付きの歩合になっていることがある 賃料条項の計算式と、売上の定義(消費税の扱い、売上控除の範囲)を条文で読む
退去時の基準 「スケルトン」ではなく「引き渡し時の状態」に戻す約定が多い。その状態の定義が曖昧だと後で揉める 引き渡し時の状態を示す図面と写真を受け取り、契約書に添付してもらう

商業施設の規模と賃料の形を、統計で確かめる

日本ショッピングセンター協会が施設数と規模を公表しています。賃料の相場を示す統計ではありませんが、自分の出店先がどの規模帯かを知る目盛りにはなります。

日本ショッピングセンター協会の公表数値と、出店計画への使い方
確認できる数値 公表値(出典・時点) 自分の計画に落とすときの使い方
全国の総SC数 2024年末3,037、2025年末3,052(速報値・新基準)。2025年の新規開業18SC、閉店等31SC 候補施設が新規か既存かで、募集の競争度と条件交渉の余地が変わる。既存なら前テナントの退去理由を聞く
1SCあたり平均テナント数 2024年末で53店舗。2025年新規開業SCの平均は91店舗(キーテナント含む) 同じ施設に何店舗入るかで、館内の競合と販促費の按分単位が決まる。募集要項でテナント総数を確認する
SC年間総売上高 2024年で32兆1,254億円(推計値、2019年以降は消費税抜き) 市場全体が横ばい圏であることの確認。自店だけ大幅に伸びる前提の計画になっていないか点検する
既存SC売上の月次変動 2025年1月から10月の前年同月比は1.2%増から6.9%増の幅で推移 歩合賃料は毎月変わる前提で資金繰り表を作る。最低の月と最高の月の2本立てで組む
賃料の形 同協会DX委員会の説明に「テナントの賃料は売上歩合であることが一般的」との記述 固定賃料での試算だけを持って交渉に行かない。歩合率と最低保証の両方で試算を作る
売上報告の実務 毎日の営業終了後に金種別売上・売上控除・純売上等をディベロッパーへ報告。端末送信と紙日報の併用 閉店後の締め作業に何分かかるかを人件費として計上する。レジと報告端末の設置場所を図面に入れる

工事区分と、B工事の下げ方

A・B・Cは、発注・費用・所有の三軸に分解すると読めます。「B工事=テナント負担」とだけ覚えていると、所有権のところで間違えます。

B工事の金額は交渉できます。値切るのではなく、数量と仕様の根拠を出してもらう形です。

工事区分A・B・Cを「発注」「費用」「所有」の三軸に分解する
工事の種類 誰が発注し、誰が払うか 自分で確認すること
A工事 建物側が発注し、建物側が費用を負担する。完成したものは建物所有者の資産。躯体、外壁、共用部、受変電、共用空調機械室などが典型 自分の区画に引き渡される時点で、どこまでが仕上がった状態なのかを図面と現地で確認する(天井の有無、床の下地、電源の一次側の位置)
B工事 建物側が業者を指定して発注し、テナントが費用を負担する。完成したものは建物に付合して建物所有者の資産になる場合が多い 工事区分表のB欄の行を全部書き出し、各行について「なぜこれは建物側の指定が必要なのか」を担当者に一行ずつ聞く
C工事 テナントが業者を選んで発注し、テナントが費用を負担する。取り外して持ち出せるものはテナントの資産、固定したものは付合の判断による C工事の範囲でも施設の内装監理基準の制約がかかる。仕様の制限(材料、防炎、色、看板の位置)を先に受け取る
B工事とC工事の境目 同じ工事でも施設によって区分が違う。空調の吹出口位置変更、二次側の分岐、防火区画の貫通処理などで割れやすい 境目に当たる項目を自分の計画から抽出し、「これはB・Cどちらですか」と書面で照会し、回答を書面で受け取る
B工事の一部をC工事に移す 施設によっては、有資格者が施工し施設の立会検査を受けることを条件に、一部をC工事として認める運用がある 「C工事化できる項目はありますか。条件は何ですか」と、区画が決まる前の段階で聞いておく
所有権の帰属 建物に付合したものは民法第242条第1項により建物所有者が所有権を取得し得る。費用の負担者とは一致しない 退去時に「撤去するもの」「置いていくもの」「置いていくが買い取ってもらえないもの」の三つに分けて一覧にする
B工事の見積で確かめる項目と、自分の口から言えること
確かめる項目 なぜ金額が膨らみやすいか 自分から言えること・出せる資料
数量の拾い 一式計上だと数量が見えない。区画の実測ではなく募集図面の面積で拾われていることがある 「数量拾い書をいただけますか」と依頼し、自分の実測平面図と照合して差異を一覧にする
既存設備の流用 前テナントが残した配管・配線・ダクトを使えるのに、全数新設で計上されていることがある 解体前の現地立会を申し入れ、既存の位置と数を写真で記録して「これは流用できませんか」と項目単位で聞く
仕様のグレード 施設の標準仕様書があるのに、それより上のグレードで積まれていることがある 「施設の標準仕様書はありますか」と求め、見積の型式と突き合わせる
B・C区分の見直し 慣行でB工事にしている項目が、条件付きでC工事にできる場合がある。ここが最も金額に効く 自分の内装会社に有資格者がいるかを確認し、資格者名と施工実績を添えて区分変更を申し入れる
計画そのものの見直し 天井を全面作り替える計画だと設備の移設数が増える。設計の側でB工事の量を減らせる 既存の天井とヘッド位置を活かした案を内装会社に1案作らせ、B工事の数量差を比較する
工事時期と時間帯 夜間・深夜作業や短期集中の割増が乗る。工程の組み方で人件費の単価が変わる 作業可能時間帯を先に確定させ、その条件で工程を組んでから見積を依頼する
諸経費と管理費 現場管理費・一般管理費が率で乗る。上流の金額が下がれば連動して下がる 率の根拠を聞いたうえで、率そのものより「乗る元の金額」を減らす方向で話す
B工事の交渉を進める順序と、各段階の準備
段階 相手に伝える内容 その前に自分で用意すること
1|申し込み前 「工事区分表と内装監理基準の写しを、申し込みの判断材料としていただけますか」 自分の業態で必ず必要になる設備(給排水、排気、電源容量)を箇条書きにしておく
2|区画決定の直後 「B工事に該当する項目のうち、条件付きでC工事にできるものはありますか」 内装会社の有資格者の資格名と、同種施設での施工実績をまとめた紙を1枚作る
3|基本計画の段階 「既存の天井・設備を活かす案でも、施設の基準は満たせますか」 既存の天井高、スプリンクラーヘッドの位置と数、感知器の数を実測して図に落とす
4|概算が出た直後 「数量拾い書と、施設の標準仕様書をいただけますか」 自分の実測平面図と、解体前の現地写真を日付入りで揃える
5|見積の精査 「この項目は既存を流用できませんか。この型式は標準仕様と同じですか」 項目ごとに「流用可否」「仕様の妥当性」「区分の妥当性」を三段階で自己採点した表
6|合意の記録 「本日の合意内容をメールで送りますので、相違があればご指摘ください」 その場でメモを取り、当日中に送る。担当者名・日付・決定事項を必ず含める

内装監理基準と、提出図書の日程

施設ごとに内装監理基準があり、使える材料、看板の位置、天井の高さまで決まっています。基準を見る前に設計を進めると、やり直しになります。図書の提出時期も決まっていて、遅れると開店日に響きます。

内装監理基準で規定されやすい項目と、確認のしかた
規定されやすい項目 規定の例(施設により異なる) 自分で確認すること
店頭のライン 共用部との境界から何ミリメートル以内に什器・サインを収めるか、開口をどこまで開けてよいか 基準の寸法を平面図に赤で書き込み、自分の什器レイアウトが越えていないかを図面上で確かめる
看板・サイン 取り付け可能な高さの範囲、面積の上限、自立サインの可否、電飾の輝度、点灯時間帯 看板業者に基準の写しを渡し、基準内で成立する案を作ってもらう。屋外面のルールは別途確認する
照明 共用部に漏れる光の色温度と照度の制限、スポットの向き、閉店後の残灯の指定 共用部の照明の色温度を現地で確認し、自店の計画と極端に離れていないかを見る
内装材 防炎製品の使用義務、天井・壁の下地の指定、床の仕上げ厚さの上限、共用部との段差の処理 材料の防炎・不燃の性能証明を、発注前に内装会社から現物で受け取る
天井内 天井内に置いてよい機器の制限、点検口の位置と数、既存設備への近接距離 天井伏図に既存のヘッド・感知器・ダクトを重ねて描き、干渉箇所を先に洗い出す
電気容量 区画あたりの契約容量の上限、増設の可否、増設が必要な場合の手続きと負担区分 厨房機器・什器・照明の消費電力を合計し、上限に対する余裕を数字で出す
給排水・排気 接続可能な位置、グリストラップの設置義務、排気の経路と風量の上限、臭気対策の仕様 厨房を計画する場合、接続位置から自分の厨房までの距離と床の勾配が取れるかを現地で確認する
工事中の養生 共用部の養生範囲と方法、粉じん対策、廃材の搬出経路と時間、駐車場所の指定 養生と搬出にかかる人工を見積に計上させる。ここを外すと後から追加で出てくる
提出する図書と、提出時期の考え方
図書・書類 いつまでに出すか(考え方) 自分で用意すること
基本計画図(平面・イメージ) 区画決定の直後。施設が全体のテナント構成を見るために早い段階で求めることが多い 業態、営業時間、想定客単価、必要な設備の一覧を先に自分で確定させる
実施設計図一式 着工の数週間前。審査の往復を見込んで、締切の日から逆算して提出日を決める 審査に要する標準日数と、修正が出た場合の再提出の締切を施設に確認する
設備図(電気・給排水・空調・換気) 実施設計図と同時か、それより早く。B工事の数量がここで確定する 機器のメーカー・型式・消費電力・排気量を一覧にした表を作る
防災設備の変更図 実施設計図と同時。所轄の消防への手続きが必要な場合は、その日数も足す 既存のヘッド・感知器の位置と数を実測し、移設・増設の数を自分で把握する
サイン・看板の詳細図 意匠審査と同時期。製作に日数がかかるため、承認後の製作期間も工程に入れる 文字・ロゴのデータと、取り付け方法の詳細を看板業者から先に受け取る
使用材料一覧と性能証明 着工前。防炎・不燃の証明を求められることが多い 材料が決まった時点で証明書の写しを集め、1つのファイルにまとめておく
行政向けの届出 法令ごとに期限が異なる。消防設備の着工届など、着工前に出すものがある 「どの届出を誰が出すか」を一覧にし、施設の担当者と1行ずつ突き合わせる
工事の作業届・入館手続 着工の数日前から当日。作業員名簿、車両登録、資格証の写しなどを求められる 内装会社に必要書類の一覧を渡し、下請け業者の分まで揃うかを事前に確認する

賃料の形と、毎月出ていくお金

商業施設の賃料は、固定だけとは限りません。売上歩合や、固定と歩合の併用があります。形が違うと、売上が伸びたときの手残りが変わります。共益費、販促費、看板使用料も毎月出るので、全部足してから損益を組んでください。

賃料の形式ごとの性格と、契約前に確認すること
賃料の形式 どう計算されるか・どこがリスクか 自分で確認すること
固定賃料 面積に単価を掛けた定額。売上が落ちても金額は変わらない。路面店と同じ考え方で計算できる 借地借家法第32条第1項による増減額請求の可否と、増額しない特約の有無を条文で読む
売上歩合賃料 売上に率を掛けた額。売上が落ちれば賃料も落ちるが、伸びた分も持っていかれる 「売上」の定義(消費税、商品券、ポイント、返品値引、通信販売の扱い)を1行ずつ確認する
最低保証付き歩合 歩合額と最低額の高いほうが賃料。下振れのリスクはテナント側に残る 最低額を月商いくらの水準で設定しているかを逆算し、その月商が現実的かを通行量から検算する
段階歩合(累進・逆進) 売上の帯ごとに率が変わる。帯の切れ目で実質的な負担率が跳ねることがある 帯ごとに月商を代入した早見表を自分で作り、どの帯に入るのが有利かを把握する
共益費 共用部の維持管理費。面積按分が多いが、算定根拠が示されない場合がある 単価と按分の基準(賃貸面積か、共用部を含む面積か)を確認し、改定の条件を読む
販促費・宣伝分担金 館全体の広告・イベントの費用。定額のものと売上按分のものがある 使途と算出根拠の説明を求める。年間の実施予定と、自店に返ってくる効果を聞く
カード・ポイント手数料 館の共通カードやポイントの負担。売上に対する率で発生し、実質的な賃料の上乗せになる 率と、対象になる決済の範囲を確認し、想定売上に掛けて年額を出す
保証金・敷金 退去時に原状回復費が差し引かれる。償却(返還されない部分)が定められていることがある 償却の割合と時期、返還の時期、退去時に差し引かれる範囲を条文で読む
賃料以外に毎月出ていく費目を洗い出す
費目 性格と、見落とされやすい点 自分で確認すること
水道光熱費 館が一括契約して按分するか、テナントが個別契約するかで単価が変わる。空調の熱源が館供給の場合は使用量に応じた課金になることがある 過去に同区画で発生した実績値を教えてもらえるか聞く。按分の計算式を書面で受け取る
空調の運転時間外費用 館の空調が営業時間に合わせて運転される場合、時間外の運転を依頼すると別料金になる 自店の営業時間が館と違う場合、時間外運転の単価と申請方法を確認する
廃棄物処理費 館の分別ルールに従う必要があり、量に応じた費用が発生することがある。飲食は量が多い 分別区分の一覧を受け取り、自店から出るごみの量を業態から概算する
設備の保守点検費 区画内の消防設備、空調機、グリストラップなどの点検が義務づけられ、指定業者になることがある 点検の対象設備、頻度、費用の負担者を工事区分表と別に確認する
売上報告に関わる費用 報告端末の使用料、レジと端末の連携費用、締め作業の人件費が発生する 締め作業に要する時間を実際の店舗で聞き取り、時給を掛けて月額に換算する
館の行事への参加費用 セールや催事への参加、装飾の統一、営業時間の延長にともなう人件費が発生する 年間の館行事カレンダーを受け取り、参加が任意か必須かを1件ずつ確認する
保険料 施設が加入を求める保険(借家人賠償、施設賠償など)がある。内容と保険金額が指定されることがある 要求される補償の内容と金額を確認し、自分で選んだ保険で条件を満たせるかを見る

営業時間・搬入・消防・原状回復

施設の営業中は工事ができず、夜間作業と搬入経路の制約がそのまま工事費に乗ります。

消防設備は施設側と取り合いになります。原状回復も路面店とは条件が違い、B工事で作ったものを誰が壊すかまで決まっています。

施設の運営上の制約が、どの経路で工事費に転嫁されるか
制約 費用への効き方 自分で確認すること
作業可能な時間帯 1日の実作業時間が短くなると、同じ工事量に必要な日数が増える。日数が増えれば管理費も増える 曜日ごとの作業可能時間を書面で受け取り、内装会社に「この条件での工程表」を作らせる
夜間・深夜作業 労務単価が上がる。翌朝までに原状復旧して引き上げる必要があり、片付けの手間も増える 夜間になる作業の種類を特定し、昼間にできる作業と分けて工程を組めないか検討する
搬入経路と時間帯 荷さばき場の予約制、搬入時間帯の限定により、待機時間が発生する。台車での長距離運搬が加わる 荷さばき場から自区画までの経路を実際に歩き、距離・段差・扉の幅を測る
エレベーターの制限 寸法・積載を超える資材が入らず、現場で加工するか小分けにする。分割すると継ぎ目の処理が増える 荷物用エレベーターの内寸・開口・積載を数値で受け取り、什器の最大寸法と照合する
騒音・振動の制限 はつり、コア抜き、ビス打ちなどの時間が限られる。無音でできる工法に変えると材料費が上がることがある 音の出る作業を工程表で色分けし、それが可能な時間帯に収まるかを確認する
粉じん・臭気の制限 塗装や接着剤の使用時間が制限される。乾燥を待つ時間が工程に入り、日数が延びる 塗装をやめて既製品のパネルにするなど、現場作業を減らす仕様を1案作らせる
共用部の養生 養生の範囲と方法が指定され、その設置と撤去に人工がかかる。毎日設置・撤去になることもある 養生の仕様を施設から受け取り、見積に「養生」の行があるかを確認する
作業員の入館手続 事前登録、入退館の記録、資格証の提示などで、1日あたりの実働時間が削られる 必要書類の一覧を内装会社に渡し、下請けの分まで揃うかを着工の2週間前に確認する
消防・防災設備の取り合いと、確認しておくこと
設備・項目 誰の工事になりやすいか・何が起きるか 自分で確認すること
スプリンクラーヘッド 建物全体の配管につながるためB工事。天井を触ると水平距離の基準を満たすよう移設・増設が発生する 契約前に区画内の既存ヘッド数と位置を数え、天井計画の案ごとに移設数を出してもらう
火災感知器 防災センターへの信号線につながるためB工事。天井の分割、下がり壁、間仕切りで増設になる 既存の感知器数と種別(煙式・熱式)を記録し、間仕切り案ごとの増設数を確認する
非常放送・誘導灯 館全体の系統。什器や壁で見えなくなると位置変更が必要になる 誘導灯の位置を平面図に落とし、什器レイアウトで隠れないかを図面上で確かめる
防火区画の貫通 区画を貫通する配管・配線は所定の処理が必要。処理の可否と方法が施設で決まっている 自分の設備計画で区画を貫通する箇所を洗い出し、可否を先に照会する
防火シャッター・防火戸 区画に設けられた防火設備の動作範囲に什器を置けない。降下の妨げになるものは撤去を求められる 降下ラインを床に実寸で記して、什器の配置が干渉しないかを現地で確認する
排煙設備 天井を下げる、間仕切りで区切ると、排煙の有効性の判断が変わることがある 区画の排煙がどの方式(自然・機械・免除)で成立しているかを施設に確認する
防災センターとの取り合い 信号線・監視盤の設定変更が必要になる。作業は館の運用時間との調整が要る 信号の切り替え作業に必要な日程と、その間の代替措置を工程表に入れる
工事中の防火措置 設備を停止する間の監視要員の配置が求められることがあり、その人件費が乗る 停止が必要な時間と、監視要員の要否・費用負担者を着工前に確認する
原状回復について、路面店と商業施設テナントで違う点
項目 路面店との違い 契約前に自分で確認すること
戻す基準 スケルトンではなく「引き渡し時の状態」に戻す約定が多い。その状態が特定されていないと解釈が割れる 引き渡し時の平面図・天井伏図・設備図と現況写真を受け取り、契約書に添付してもらう
施工業者 原状回復工事も施設指定業者に限られることがある。入居時と同じく相見積が取れない 「原状回復の施工業者に指定はありますか」を契約前に確認し、回答を書面で残す
B工事分の扱い 費用はテナント負担だが所有権は建物側にあり得る。撤去か残置かが書類から読めないことがある 退去時の工事区分表を求め、項目ごとに「撤去・残置・精算あり」を確認する
造作買取請求権 借地借家法第33条は強行規定ではなく(同法第37条)、特約で排除されていることが多い 放棄条項の有無を確認する。放棄する場合、残置物の扱いを別途取り決める
工事の時間帯 解体工事も館の営業時間に縛られる。夜間作業になると入居時と同じ割増が発生する 退去工事の作業可能時間と、明け渡し期限までの日数の余裕を契約書で確認する
明け渡しの期限 次のテナントの工事が控えているため、期限が厳格。遅れると違約金や賃料相当損害金が発生する 解約予告の期間と、明け渡し完了までに必要な日数を突き合わせ、逆算表を作る
保証金からの充当 原状回復費が保証金から差し引かれ、償却分と合わせて手元に戻る額が想定より少なくなる 償却の割合と、原状回復費の見積が出る時期、精算と返還の時期を条文で確認する

逆算の日程と、路面店との損益の違い

出店は、開店日から逆算します。施設側の審査と図書の提出が挟まるので、路面店より前倒しになります。損益の構造も違い、集客は施設が作るかわりに固定費が高く、営業時間も選べません。

商業施設への出店|開店日から逆算する工程
段階 この段階で決まること・止まりやすいこと 自分で確認・準備すること
1|出店の打診・説明会 施設の概要、募集区画、条件の大枠が示される。工事区分表はまだ出ないことが多い 工事区分表・内装監理基準・賃貸借契約書の雛形を、判断材料として求める
2|区画の内覧 天井高、既存設備、搬入経路、隣接テナントが分かる。ここで撮った写真が後で効く 天井を見上げてヘッドと感知器を数える。分電盤、給排水位置、荷さばき場からの経路を撮る
3|出店の申し込み 区画が仮押さえされる。ここから先は撤退のコストが上がる 「B工事がいくらまでなら進めるか」の上限額を、申し込みの前に社内で決めておく
4|基本計画の作成 意匠と設備の方向が決まる。B工事の数量がここでほぼ確定する 「B工事を減らす案」と「意匠を優先する案」の2案を内装会社に作らせ、差額を出す
5|施設への図面提出・審査 意匠・設備・防災の各担当が確認する。修正が出ると再提出になり日数が延びる 審査の標準日数と再提出の締切を日付で確認し、工程表に赤で記入する
6|B工事の見積・発注 指定業者から金額が出る。数量・仕様・区分の精査をするのはこの段階 数量拾い書と標準仕様書を求め、自分の実測図と照合した差異表を作る
7|行政への届出 消防設備の着工届など、着工前に出すものがある。飲食は営業許可の手続きが並行する 「どの届出を誰がいつ出すか」の一覧を作り、施設と内装会社の双方に共有する
8|着工・工事 作業可能時間の制約下で進む。B工事とC工事の順序が噛み合わないと待ち時間が出る B工事とC工事の作業を1枚の工程表に並べ、依存関係を矢印で結んで確認する
9|検査・引き渡し 施設の完了検査、消防の検査、内装会社の自主検査が重なる。是正が出ると開店に響く 検査の日程と是正に使える日数を先に確保する。是正ゼロを前提にした工程にしない
10|開店準備 館の研修、什器の搬入、商品の陳列、レジと売上報告端末の設定が同時に走る 研修の日程を人員シフトに反映する。売上報告の操作を開店前に一度通しで練習する
11|開店後1か月 賃料・共益費・販促費の実額が初めて分かる。計画とのずれが表面化する 実績と計画を突き合わせる日を、開店前にカレンダーに入れておく
路面店と商業施設テナントの損益構造の違い
項目 路面店 商業施設のテナント区画
賃料の性格 固定費。売上が落ちても金額は変わらないが、増えても増えない 歩合の場合は変動費に近い。売上が増えると賃料も増え、利益の伸びが緩やかになる
売上の決まり方 自店の集客と立地でほぼ決まる。変動要因を自分で把握しやすい 館全体の集客に依存する。気温・休日数・館の販促で月次が数パーセント動く
初期投資 C工事に相当する範囲が中心。業者は自分で選べるので比較で下げられる B工事が加わる。指定業者のため比較できず、数量・仕様・区分の精査で確かめるしかない
毎月の固定的な支出 賃料、共益費(ある場合)、水道光熱費。項目が少なく把握しやすい 賃料、共益費、販促費、カード手数料、時間外空調、廃棄物処理など項目が多い
営業時間 自分で決められる。閑散時間帯を閉めて人件費を抑えられる 館に合わせるのが原則。閑散時間帯も開けるため人件費の下限が上がる
広告・集客の費用 自前で持つ必要がある。開業直後は特に重い 館の販促に含まれる部分がある。ただし販促費として毎月支払う
退去のしやすさ 造作譲渡で一部を回収できる可能性がある。次の借主を探す余地がある 次のテナントは施設が決める。造作譲渡が成立しにくく、回収前提の計画は危険
事務作業 自店の締めのみ。会計ソフトで完結する 毎日の売上報告が加わる。金種別の集計と証憑の提出に時間がかかる
この記事で参照した条文と、どの場面で使えるか
条文 定めている内容 どの場面で使えるか
民法第242条第1項 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する(権原による附属の場合の例外あり) 「費用は自分が払ったのに、なぜ自分のものにならないのか」を理解し、契約書での明記を求めるとき
民法第621条 賃借人は、受け取った後に生じた損傷(通常損耗・経年変化を除く)を原状に復する義務を負う 原状回復の範囲が特約でどこまで拡張されているかを、条文との差で確認するとき
借地借家法第32条第1項 借賃が不相当となったときは、契約の条件にかかわらず将来に向かって増減を請求できる。不増額特約がある場合はその定めに従う 賃料改定の可能性を確認するとき。ただし定期借家で改定特約があると同法第38条第9項により適用されない
借地借家法第33条第1項・第37条 同意を得て付加した造作の買取請求権。第37条の強行規定に第33条は含まれない 造作買取請求権の放棄条項があるかを確認し、残置物の扱いを別途取り決めるとき
地方税法第343条第10項 家屋に付合して家屋所有者の所有となった特定附帯設備は、取り付けた者を所有者とみなして課税できる 自分が入れた内装の税務上の扱いを、税理士と市町村の窓口に確認するとき
消防法施行令第12条 スプリンクラー設備の設置対象と、ヘッドの水平距離(耐火建築物2.3メートル以下等) 天井計画によってヘッドが何本動くかを、内装会社と施設に確認するとき
消防法施行令第21条 自動火災報知設備の設置対象、警戒区域の面積、感知器の設置場所、スプリンクラーによる免除 間仕切り計画が感知器の増設につながるかを、着工前に確認するとき
建築基準法施行令第112条第1項 延べ面積1,500平方メートル超の耐火建築物等は1,500平方メートル以内ごとに区画。自動式消火設備部分は面積の1/2を除く 区画をまたぐ計画や、区画を貫通する設備の可否を確認するとき
独占禁止法第2条第9項第5号 優越的地位の濫用として禁止される三つの行為類型(購入・利用強制、経済上の利益の提供、不利益な条件設定等) 指定業者や販促費について、算出根拠と使途の説明を求める根拠として
大規模小売店舗立地法第5条 大規模小売店舗の新設の届出、4か月間の縦覧、届出の日から8か月を経過した後でなければ新設できない 新設施設のオープン日がなぜ動きにくいのかを理解し、工程の余裕を見込むとき

出店説明会の前後にやること

説明会で聞くことは決まっています。その前に、自分の業態で必要な設備を紙に書き出しておく。電気容量、給排水、排気。これがないと質問ができません。

出店総額を「1日何人分」に翻訳する計算手順(編集部の試算例)
手順 計算(試算例の数値) 自分の数字に置き換えるときの注意
1|総額を出す C工事600万円+B工事300万円+設計費80万円+保証金180万円+開店準備240万円=1,400万円 B工事の概算が出る前は、C工事の5割程度を仮置きして、出たら差し替える運用にする
2|回収期間を決める 定期建物賃貸借で期間5年なら60か月。更新の保証がないため、それ以上には延ばさない 契約の種類(普通借家か定期借家か)と期間を先に確認する。中途解約の可否も見る
3|月あたりに割る 1,400万円÷60か月=月23万3,000円の粗利増が必要 ここで出るのは「粗利」であって「売上」ではない。混同すると必要売上を過小に見積もる
4|1日あたりに割る 23万3,000円÷25日=1日9,300円 館の営業日数は路面店より多いことがある。実際の営業日数で割る
5|人数に直す 客単価3,000円×粗利率60%=1人1,800円。9,300円÷1,800円=1日5.2人 粗利率は仕入だけでなく、値引き・ロス・カード手数料を引いた後の率で計算する
6|歩合の影響を足す 売上100万円増→粗利60万円増。歩合率10%なら賃料10万円増で、手残りは50万円 歩合率と最低保証額の両方を条項から拾い、月商の帯ごとに実効負担率を計算する
7|変動幅を当てる 既存SC売上の前年同月比は1.2%増から6.9%増の幅(2025年1月から10月)で推移 最も悪い月の想定でも資金が回るかを確認する。歩合賃料は減るが固定費は減らない
出店説明会の前後にやる手順
  1. 説明会に出る前に、自分の業態で必要な設備を紙に書き出す。電気容量、給排水の要否、排気の風量、ガスの要否、冷蔵・冷凍の台数、想定の営業時間。この紙があると、説明会での質問が具体的になります。
  2. 説明会では、工事区分表・内装監理基準・賃貸借契約書の雛形の3点を求める。「工事にいくらかかるかを見積もったうえで判断したいので」と理由を添えます。すぐにもらえない場合は、いつもらえるかを日付で確認します。
  3. 区画を内覧し、天井を撮影する。スプリンクラーヘッドと感知器の位置と数、天井高、分電盤の位置と容量、給排水の接続位置、荷さばき場から区画までの経路を、日付入りの写真で記録します。
  4. 工事区分表のB欄の行を、別紙に全部書き出す。行ごとに「なぜ建物側の指定が必要か」「C工事にできる余地はあるか」の2列を作り、施設の内装監理担当に一行ずつ確認します。
  5. 内装会社に2案を依頼する。「B工事の数量を減らす案」と「意匠を優先する案」。両案でB工事の項目数と数量を比較し、差額を出してもらいます。
  6. B工事の上限額を社内で決める。この金額を超えたら出店を見送る、という線を、申し込みの前に決めておきます。決めていないと、目の前の見積を判断する基準がありません。
  7. 賃貸借契約書の条項を、賃料・共益費・販促費・原状回復・造作買取・契約期間の6か所に絞って読む。分からない条項は、条文番号を挙げて質問し、回答を書面で受け取ります。
  8. 毎月出ていく総額を計算する。賃料(歩合の場合は複数の月商で試算)+共益費+販促費+カード手数料+時間外空調費+廃棄物処理費。この総額を想定月商で割った比率を出します。
  9. 出店総額を「1日何人分」に翻訳する。前章の手順1から7を、自分の数字で実行します。
  10. 候補区画の前の通行量を、自分で数える。平日と休日、時間帯を分けて15分ずつ。前項で出た人数と突き合わせます。
  11. 判断する。ここまでの資料をすべて並べて、出店するかどうかを決めます。判断がつかない場合は、どの情報が足りないのかを特定して、追加で聞きます。

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よくある質問

商業施設への出店について、編集部によく寄せられる質問を4つ取り上げます。 いずれも、路面店の経験しかない方が最初につまずく箇所です。 回答には条文と公表資料の根拠を付けていますが、 実際の判断は、その施設の契約書と工事区分表を読んだうえで行ってください。

同じ質問でも、施設が違えば答えが変わるのがこの分野の特徴です。 ここに書いてあることを一般論として持っていき、 「うちの施設ではどうなっていますか」と確認する使い方をしてください。

A工事・B工事・C工事という区分は、法律で決まっているのですか?

決まっていません。 A工事・B工事・C工事は法令用語ではなく、 施設ごとの賃貸借契約書と工事区分表という私的な取り決めで定義される実務上の呼び名です。 したがって「B工事の範囲」は施設によって違いますし、 同じ施設でも区画の位置や業種によって違うことがあります。

編集部が確認した範囲では、この三区分を定義した法令・告示・公的なガイドラインは見つかりませんでした。

一般的な整理としては、A工事が建物側の発注で建物側の費用負担、 B工事がテナントの費用負担で建物側が業者を指定して発注する工事、 C工事がテナントの費用負担でテナントが業者を選んで発注する工事、とされます。

ただし「発注者が誰か」「費用を誰が払うか」「完成したものが誰のものになるか」の三つは 本来別々の問題であり、契約書と工事区分表ではこれが必ずしも明示されていません。

法令として関係するのは所有権の帰属のほうで、 民法第242条第1項は「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する」と定めています。 建物に固定された内装は、費用を出したのがテナントであっても 建物所有者のものになり得るということです。

だからこそ、工事区分表を受け取ったら 「この行の工事は、誰が発注し、誰が払い、完成したものは誰のものになるのか」を三つに分けて書き出し、 施設側に確認してください。

B工事は施設指定の業者しか使えないと言われました。相見積が取れないので言い値になりますが、値下げの交渉はできますか?

交渉はできます。 ただし「他社の見積を持ってきたので下げてください」という進め方は、 指定業者制のもとでは効きません。 効くのは、金額の総額ではなく、数量・仕様・区分の三つを一つずつ確かめる進め方です。

第一に数量。何平方メートル、何メートル、何台という拾いの根拠を出してもらい、 自分の平面図と突き合わせます。 第二に仕様。

既存設備の流用で足りるものを新設で計上していないかを確認します。 第三に区分。その工事が本当にB工事なのか、C工事に移せないのかを 施設の内装監理担当者に確認します。

この三つはいずれも「安くしてください」という要求ではなく、 「根拠を見せてください」という確認なので、指定業者制のもとでも成立します。

なお、指定業者の利用を求めること自体がただちに違法になるわけではありませんが、 公正取引委員会の「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」 (平成22年11月30日公表、令和8年6月17日最終改正)は、 独占禁止法第2条第9項第5号イの「当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務」には 「自己の指定する事業者が供給する商品又は役務が含まれる」としています。

想定例として、必要がないにもかかわらず今後取引を継続しないことを示唆しながら 自己の指定するより高価な役務の利用を要請し利用させることが挙げられています。 理不尽な水準だと感じたときは、この考え方が公表されていることを前提に、 算出根拠の説明を求めてください。

なお「B工事は相場より何割高い」といった数値は 一次情報で確認できなかったため、この記事では示しません。

区画の天井を作り替えたいのですが、スプリンクラーや火災感知器はどうなりますか?

天井の高さや形を変えると、スプリンクラーヘッドと火災感知器の移設・増設がほぼ必ず発生します。

消防法施行令第12条第2項第2号イは、スプリンクラーヘッドを天井または小屋裏に、 各部分から一のヘッドまでの水平距離が耐火建築物では2.3メートル以下、 それ以外の建築物では2.1メートル以下となるように設けることと定めています。

同項第3号は、延焼のおそれのある部分にある開口部の上枠に、 その長さ2.5メートル以下ごとに一のヘッドを設けることを求めています。

自動火災報知設備については、同令第21条第2項第3号が、 感知器を天井または壁の屋内に面する部分および天井裏の部分に、 有効に火災の発生を感知できるように設けることと定めています。 つまり、天井を下げる、下がり壁を作る、間仕切りを立てるといった内装側の判断が、 そのまま消防設備の配置変更につながります。

そしてこれらの設備は、多くの商業施設で建物全体の系統につながっているため、 施設が指定する防災業者の工事、すなわちB工事に区分されます。 契約前に、区画内の既存ヘッド数と感知器数、天井高、防火区画の位置を図面と現地で確認し、 「この天井計画にすると設備はいくつ動くか」を概算してもらってください。

商業施設の原状回復は、路面店と何が違いますか。国土交通省のガイドラインは使えますか?

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)は 住宅局が民間賃貸住宅を対象として作成したもので、 店舗や事業用建物の賃貸借にそのまま適用されるものではありません。 事業用の原状回復は、民法第621条を出発点にしつつ、 実際には賃貸借契約書の特約で範囲が決まります。

商業施設のテナント区画が路面店と違うのは、主に三点です。 第一に、戻す基準が「スケルトン」ではなく「引き渡し時の状態」であることが多く、 その状態が図面と写真で特定されていないと後から揉めます。 第二に、B工事で入れた設備の扱いです。

費用はテナントが払っていても、 民法第242条第1項の付合により建物所有者の所有物になっている場合があり、 撤去するのか残置するのかは契約書と工事区分表の書き方に左右されます。 第三に、造作買取請求権が使えないことが多い点です。

借地借家法第33条第1項は賃貸人の同意を得て付加した造作の買取請求を認めていますが、 同法第37条が強行規定として挙げているのは第31条・第34条・第35条だけで、 第33条は含まれていません。 つまり特約で排除でき、実際に排除している契約が多くあります。

契約前に、原状回復の基準となる状態を示した図面と現況写真を受け取り、 契約書に添付してもらってください。

まとめ|商業施設への出店で決める9つのこと

商業施設への出店は、路面店より決まっていることが多い。だから自由度は低いかわりに、先に読める部分も多くあります。

出店総額を「1日何人分の売上か」に翻訳すれば、その区画で成り立つかどうかは説明会の前に判断できます。

出店説明会と個別面談で聞くこと
場面 聞くこと(そのまま使える言い方) 持ち帰って確認すること
説明会の質疑 「工事区分表と内装監理基準は、いつの段階でいただけますか」 回答された時期が、自分の判断のタイミングに間に合うかを工程表で確認する
区画の内覧時 「この区画の電気容量の上限と、給排水・排気の接続位置を教えてください」 自分の業態に必要な容量・風量と比べ、増設が必要かどうかを内装会社に確認する
区画の内覧時 「前のテナント様は、どういう理由で退去されたのでしょうか」 賃料が理由なら自分にも同じことが起きる。位置が理由なら通行量を自分で数え直す
個別面談 「B工事の概算は、いつ、どの単位(項目別か一式か)で出していただけますか」 項目別で出ないなら、判断材料が足りない。出る時期が申し込み後なら上限額を先に決める
個別面談 「賃料の計算式と、売上の定義(消費税・商品券・返品値引の扱い)を教えてください」 複数の月商を代入した早見表を自分で作り、最低保証との関係を確認する
個別面談 「販促費は何に使われ、どのように配分されますか」 年間の館行事カレンダーと突き合わせ、自店に返ってくる効果を見積もる
契約条件の確認 「退去時の工事区分も、同じ表で示していただけますか」 撤去・残置・精算の三分類で一覧を作り、退去時の想定費用を概算する
契約条件の確認 「原状回復の基準となる引き渡し時の状態を、図面と写真でいただけますか」 受け取った資料を契約書に添付してもらう。入居日に自分でも全周を撮影する

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