A社が「坪30万円から」、B社が「坪50万円から」。15坪なら300万円の差ですが、この2つは比べられません。分母も分子も違うからです。

300万円は、開業してから返していく金額です。7年で返すなら月の返済は約3万6千円増え、粗利率60%の店なら売上を月約6万円増やす必要があります。

坪単価が役に立たないわけではありません。使ってよい場面と、使ってはいけない場面があるだけです。その線引きと、言われたときに返す質問をまとめました。

この記事でわかること

  • 坪単価という数字がどうやって作られているかと、同じ工事でも会社によって1.5倍以上ぶれる仕組み
  • 国土交通省の建築着工統計から編集部が算出した業種別の1坪あたり工事費と、その数字を自店にそのまま当てはめてはいけない理由
  • 坪単価で判断を誤る6つの理由を番号で追いながら、自分の見ている数字がどれに当てはまるかを判定する方法
  • 坪単価を使ってよい3つの場面と、使ってはいけない3つの場面の切り分け
  • 自分の物件で概算を出す6つの手順と、出た総額を「1日◯人」に翻訳して判断する計算
  • 「坪◯万円でできます」と言われたときに返す5つの質問と、返答から会社を見分ける基準
宿泊業・飲食サービス業用が約208.2万円で最も高く、医療・福祉用が約137.3万円、卸売業・小売業用が約89.2万円、運輸業用が約72.0万円。建築物全体の平均は約105.1万円。
坪単価は業種ではなく設備の密度で決まる|ただしこれは建物1棟あたりの工事費で、テナント区画の内装工事費ではありません。金額そのものではなく、用途による並び方を見てください。

坪単価とは、何を何で割った数字か

分母の面積は、契約面積か施工面積かで2割近く変わります。分子の工事費も、設備・厨房機器・什器・諸経費・設計料のどこまでを含むかが会社ごとに違います。

つまり同じ「坪40万円」でも、指しているものが別ということが起こります。

坪単価の分母と分子で、会社ごとに解釈が分かれる項目
どちら側か 解釈が分かれる内容 自分で確かめる方法
分母(面積) 賃貸借契約書に書かれた契約面積で割るか、実際に工事する範囲の床面積で割るか。バックヤード、トイレ、外部テラス、ロフトを数えるかどうか 「この坪単価の分母は何坪ですか。その坪数にトイレとバックヤードは入っていますか」と書面で質問し、返答を記録する
分母(面積) 壁の中心線で測る壁芯か、内側の面で測る内法か。小さな区画ほど、この差が坪数に占める割合は大きくなる 図面に記載された寸法から自分で平方メートルを計算し、3.3058で割って坪数を出し、提示された坪数と突き合わせる
分子(工事費) 設計費・デザイン費・現場管理費・諸経費を含むか。多くの場合これらは合計で工事費の10〜20%に相当する 見積書の最終行から逆算し、「設計費と諸経費を抜いた金額」と「入れた金額」の両方で自分でも割ってみる
分子(工事費) 厨房機器・什器・家具・看板・サイン・照明器具本体を含むか。飲食店ではここだけで数百万円になる 「この金額で、開店当日に営業できる状態になりますか。ならないなら、あと何が必要ですか」と一文で聞く
分子(工事費) 解体・撤去・産業廃棄物の処分費、電気やガスの引き込み増設費、消防設備の工事費を含むか 物件の現況写真を渡したうえで、「この物件で追加になりそうな項目を先に挙げてください」と依頼する
両方 税込か税抜か。値引き前か値引き後か。10%の消費税だけで坪単価の見え方は変わる すべての数字を税抜に揃えてから比較し、揃えたことを自分のメモに書いておく

公的統計から見た、1坪あたりの工事費

「店舗の相場は坪◯万円」という集計は、公的統計にありません。近いものとして、建築着工統計の工事費予定額を床面積で割った値があります。ただし建物全体の値で、内装工事の相場ではありません。

どこまで言えて、どこから言えないかを表に分けました。参考値として使う分には目盛りになります。

用途別に見た1坪あたりの工事費予定額(令和7年・全国・全建築主/編集部算出の参考値)
建物の用途 1坪あたりの工事費予定額 自店で読み替えるときの見方
卸売業、小売業用 約89.2万円(前年 約78.8万円) 物販店の建物はこの水準。テナント区画の内装工事はここから躯体と外装を抜いた範囲になるため、そのまま自店の坪単価にはならない
宿泊業、飲食サービス業用 約208.2万円(前年 約170.2万円) ホテルを含む区分のため飲食店単体より高く出る。設備の密度が高い用途ほど坪あたりが上がるという傾向の確認に使う
医療、福祉用 約137.3万円(前年 約123.6万円) クリニックや施設。給排水、電気、空調の要求が高い用途は物販の1.5倍前後になると読む
その他のサービス業用 約178.2万円(前年 約121.9万円) 前年からの伸びが大きく、年ごとの変動も大きい区分。単年の数字を根拠にせず、複数年で見る
運輸業用(倉庫を多く含む) 約72.0万円(前年 約65.8万円) 設備の少ない箱型の建物の下限。内装の手数が少ない用途はここまで下がる、という下側の目印として使う
建築物全体の平均 約105.1万円(前年 約94.1万円) 住宅を含む全用途の平均。1年で約11.7%上がっており、去年調べた相場は今年そのまま使えないと考える
非住宅建築物の用途別 受注高(令和7年度第3四半期=2025年10〜12月受注分)
用途 受注高と前年同期比 この数字から読むこと
飲食店 432億円/前年同期比 42.7%減 非住宅全体の1.5%しかなく、四半期で4割動く。飲食店の改装市場は小さく揺れが大きい。「相場」を1つの数字で語れる規模ではないと理解する
物販店舗 1,916億円/前年同期比 16.8%減 飲食店の4倍あるが、こちらも前年同期から減少。市場が縮んでいる時期でも工事単価が下がるとは限らないため、単価と発注量を切り離して考える
事務所 6,246億円/前年同期比 11.6%増 非住宅で最大。オフィス改修が活況だと、同じ職人と同じ資材を店舗工事が奪い合う。着工希望時期が繁忙期に当たらないかを会社に確認する
医療施設 1,595億円/前年同期比 53.1%増 設備の要求が高い用途の伸びが大きい。クリニックを検討中なら、設備業者の手が空くまでの待ち時間を工程に織り込む
宿泊施設 940億円/前年同期比 50.3%増 飲食店の倍以上の規模で伸びている。同じ内装業者がホテル案件を抱えていると小規模店の優先度は下がる。着手時期を契約前に文書で確認する
非住宅建築物 合計 2兆8,252億円/前年同期比 25.5%増 市場全体は2割超の伸び。工事会社が選べる立場にある局面なので、値引き交渉より工事範囲の明確化に時間を使ったほうが得られるものが大きい
非住宅建築物の工事部位別 受注件数(令和7年度第3四半期・複数回答)
工事部位 受注件数と前年同期比 自分の物件で確かめること
電気設備 232,873件/前年同期比 49.5%増 内装より件数が多く、伸びも最大。契約前に分電盤の容量(アンペア)と空き回路数を写真に撮り、増設が必要かを会社に確認する
給水給湯排水衛生器具設備 147,796件/前年同期比 31.3%増 厨房・トイレ・洗面の位置を動かせるかは排水の勾配で決まる。既存の排水口の位置を測っておき、レイアウト案と重ねて確認する
空気調和換気設備 131,558件/前年同期比 33.8%増 既存空調の製造年と能力(キロワット)を室外機のシールで確認する。流用できるか入れ替えかで数十万円単位で総額が変わる
内装 129,807件/前年同期比 1.9%減 床・壁・天井の仕上げ。ここだけを見て坪単価を判断すると、上の3つの設備が丸ごと抜けた金額を比べることになる
建具 80,439件/前年同期比 31.5%増 入口扉、内部の間仕切り扉、サッシ。防火設備の指定がある物件では既製品を選べないことがあるため、指定の有無を先に確認する
外壁 41,839件/前年同期比 2.6%増 テナントでは工事範囲外になることが多い部位。ファサードや看板の下地が貸主側の工事かどうかを、賃貸借契約書で確認する

工事費が上がっている理由は、職人の日当に出ている

坪単価が去年の記事と違うのは、書き手の感覚の問題ではありません。公共工事設計労務単価は毎年改定され、上がり続けています。内装に関わる職種も同じです。

人手の不足と、材料価格の上昇も重なっています。数年前の坪単価は、いま使えません。

令和8年3月から適用される公共工事設計労務単価(全国平均値・所定労働時間内8時間あたり)
職種 1人1日あたりの単価と前年比 自分の見積書で確かめること
全職種の加重平均 25,834円/単純平均で前年比4.5%増(14年連続の上昇) 去年の見積書が手元にあるなら、同じ工事項目の金額を比べ、5%前後上がっているかを確認する
大工 30,331円/前年比3.1%増 造作カウンターや棚の見積もりで、材料費と手間賃が分かれているかを見る。分かれていなければ内訳を求める
左官 30,508円/前年比4.1%増 塗り壁やモルタル仕上げを希望する場合、面積あたりでいくらかかるかを先に聞き、量産品の壁材と比べる
とび工 30,780円/前年比4.0%増 天井の高い物件や上階の物件では足場や仮設の費用が別に立つ。見積書に仮設の行があるかを確認する
普通作業員 23,605円/前年比3.0%増 解体や搬出の手間賃の目安。搬入経路が悪い物件では人数と日数が増えることを事前に確認する
型わく工 31,671円/前年比5.0%増 土間のやり直しや基礎の補修が必要な物件かどうかを、契約前に現地で確認しておく
職種別の技能労働者過不足率(令和8年5月分調査・全国・原数値/プラスは不足)
職種 過不足率(前月/前年同月) 自分の工事で意味すること
8職種計 1.2%の不足(前月0.6%の不足/前年同月0.5%の不足) 不足幅が前月から0.6ポイント、前年から0.7ポイント拡大。着工希望日の2か月前には契約を締めておかないと、希望の時期に人が押さえられないと考える
電工 2.2%の不足(前月2.1%の不足) 8職種で2番目に不足が大きい。電気の増設が必要な物件は、工期が延びる前提で開店日を決める。逆算して家賃の発生日と開店日の差を確認する
配管工 1.3%の不足(前月1.3%の不足) 給排水の移設がある物件では待ちが出やすい。厨房やシャンプー台の位置を動かさない案も並行して用意しておくと、工程の逃げ道になる
とび工 1.7%の不足(前月0.3%の不足) 足場と仮設を担う職種。天井が高い物件や上階の物件は仮設が必要になるため、この不足の影響を受けやすい。仮設が要る物件かを内覧時に聞く
左官 0.5%の不足(前月0.2%の過剰) 塗り壁やモルタル仕上げの担い手。不足幅は小さいが、乾燥待ちの日数は圧縮できない。工期が短い案件では量産品の壁材との比較を早めに済ませる
鉄筋工(建築) 2.0%の過剰(前月2.1%の過剰) 8職種で唯一の過剰。躯体系の職種は余っていても、設備系は足りていないという構図が読める。テナント内装で効くのは設備系のほうだと理解する
内装工事に関わる類別の国内企業物価指数(2026年7月速報・2020年平均=100)
類別(ウエイト) 指数と前年同月比 見積書で確かめること
総平均(1,000.0) 135.8/前年比 7.2%上昇 国内の企業間取引価格の全体像。前年比7%台の上昇が続いている前提で、半年前の見積書は取り直すものと考える
木材・木製品(9.6) 147.9/前年比 8.3%上昇 造作カウンター、棚、下地。造作を減らして既製品に替える案を、同じ図面で1本作ってもらい金額差を見る
窯業・土石製品(23.4) 145.1/前年比 4.9%上昇 タイル、ボード、左官材。仕上げ材の変更で吸収できる範囲かを、面積あたりの単価で比べてもらう
非鉄金属(26.7) 256.1/前年比 40.6%上昇 銅を含む類別で、上昇が突出。電線・配線材の価格に効く。電気工事の見積もりが前回と大きく違っても、値上げの根拠がある可能性を踏まえて内訳を聞く
鉄鋼(50.6) 146.0/前年比 1.7%上昇 軽量鉄骨下地、金物。上昇は落ち着いている。ここが高く見積もられているなら理由を聞いてよい
電気機器(50.0) 122.2/前年比 4.6%上昇 照明器具、分電盤、換気設備。器具は施主支給できる場合がある。支給の可否と、支給した場合の保証の扱いを確認する

坪単価で判断を誤る6つの理由

面積の取り方、含む範囲、物件の状態、業種、工事の深さ、そして時期。この6つのどれかが違えば、坪単価は比較になりません。自分の比較が当てはまるかを、表で確かめてください。

6つの理由と、自分の比較がそれに当てはまるかの判定
理由 起きていること 当てはまるかを確かめる方法
1. 分母の違い 契約面積・施工面積・営業面積のどれで割ったかが会社ごとに違う 各社に「分母は何坪ですか」と聞き、自分で決めた坪数で総額を割り直す
2. 分子の違い 設計費・諸経費・厨房機器・什器・看板・消防設備を含むかどうかが違う 「この金額で開店当日に営業できますか。ならないなら、あと何が必要ですか」と聞く
3. 物件条件 面積に比例しない費用があり、狭い物件ほど坪単価は高く出る 電気容量・給排水の位置・排気経路・搬入経路の4点を内覧時に写真で記録する
4. 業種の差 必要な設備の量が業種ごとに違い、他業種の数字は当てはまらない 参照している相場が自分と同じ業種・同じ設備条件のものかを確認する
5. 仕上げの差 同じ面積でも、材料と納まりで人工(にんく)の量が変わる 希望する仕上げごとに「工程は何日増えますか」と聞き、日数で比べる
6. 時点の差 工事費も労務単価も上昇が続いており、古い数字は基準にならない 集めた相場情報に公表日を併記し、半年以上前のものは判断から外す
坪単価を使ってよい3つの場面と、使ってはいけない3つの場面
場面 使ってよいか 代わりに何をするか/どう使うか
物件を見に行く前の資金計画 使ってよい 幅を持たせて上限と下限を作る。目安の半分を下限、2倍を上限として資金計画の枠にする
借入額をいくらにするかの検討 使ってよい 上限側の金額で試算し、足りなくなる事態を先に潰す。融資の準備は店舗開業の融資はどこから借りる?日本政策金融公庫と制度融資の違い|審査で見られる7つの項目を参照
複数物件のどちらが有利かの比較 条件付きで使ってよい 同じ分母・同じ範囲で自分が計算した場合のみ。会社が出した坪単価同士は比べない
A社とB社のどちらが安いかの判断 使ってはいけない 総額と工事範囲で比べる。同じ図面・同じ仕様書を全社に渡して見積もりを取る
見積もりが高いか安いかの判定 使ってはいけない 項目ごとに数量と単価を突き合わせる。手順は店舗内装の見積もり比較で見る7つのポイント|3社の見積書を突き合わせる手順
値引き交渉の根拠 使ってはいけない 坪単価ではなく、削れる仕様を指定して減額を依頼する。何を削るかは自分で決める

自分の物件で概算を出す手順

坪単価に頼らずに概算を出す方法があります。面積を確定し、工事の範囲を書き出し、部位ごとに数量を拾って単価を当てる。手間はかかりますが、これなら比較できます。

業者から坪単価を言われたときは、5つ質問してください。返答の中身で、その会社の見積の作り方が分かります。

工事費600万円を「1日あたりの客数」に翻訳する計算(試算例)
段階 計算 自店に置き換えるときに入れる数字
1. 月々の返済 600万円 ÷ 84か月(7年)= 約7.1万円/月 実際の借入期間。利息は別途かかるため、返済予定表が出たらその金額に差し替える
2. 必要な粗利 返済7.1万円をまかなうために、粗利で月7.1万円 返済のほかに賃料・人件費もあるため、あくまで工事費の分だけを見た数字と理解する
3. 必要な売上 粗利率60%なら 7.1万円 ÷ 0.6 = 約11.8万円/月 自店の粗利率。原価率が分かっていれば100%から引いて求める
4. 1日あたり売上 月25日営業なら 11.8万円 ÷ 25 = 約4,700円/日 自店の月間営業日数。定休日と想定する臨時休業を引いた実数で計算する
5. 1日あたり客数 客単価1,200円なら 4,700円 ÷ 1,200円 = 1日4人 自店の想定客単価。メニュー表の平均ではなく、実際に注文されそうな組み合わせで出す
6. 判断 15坪の店で1日4人を7年間積み増せるか 席数と回転数から、その4人が入る余地があるかを平面図の上で確認する
坪単価を提示されたときの5つの質問と、返答の読み取り方
質問 この質問で分かること 返答をどう読むか
1. その数字の分母は何坪ですか 契約面積で割ったか、施工面積で割ったか 即答できれば実績から出した数字。答えに詰まるなら、他社の広告を参考にした数字の可能性がある
2. その金額に何が含まれ、何が含まれませんか 設計費・諸経費・厨房機器・什器・看板・消防設備の扱い 含まないものを自分から列挙する会社は信頼できる。「だいたい全部です」は最も危険な返答
3. 直近で同じ業種・同じ坪数の施工はいつですか その数字がいつの実績に基づくか 2年以上前の実績なら、資材と労務の上昇分が乗っていない可能性を疑う
4. この物件で追加になりそうな項目を先に挙げてください 物件を見る目と、リスクを先に開示する姿勢 電気容量・排気・給排水・消防のどれかに言及があれば現場を見ている。何も出てこないなら要注意
5. この金額で、開店当日に営業できる状態になりますか 工事範囲の端から端まで 「なりません、あと◯◯が必要です」と答えられるかどうか。ここが最も差が出る
自分の物件で概算を出す6つの手順
  1. 施工の対象になる面積を確定する。図面の寸法から平方メートルを出し、3.3058で割って坪数にする。バックヤード、トイレ、通路を含めるかどうかを自分で決め、その決定をメモに書く。
  2. 物件の状態を4段階で判定する。①同業種の居抜きで設備が生きている ②異業種の居抜き ③スケルトン ④スケルトンかつ設備の引き込みが不足、の4つのどれかを選ぶ。判定の観点はスケルトンと居抜きの違い|費用・工期・退去で変わる7つの判断材料を参照。
  3. 工事に含める範囲を1枚に書き出す。内装本体、電気、給排水、空調、換気、消防、看板、什器、厨房機器、設計費、諸経費の11項目を縦に並べ、自分の物件で必要なものに丸をつける。
  4. 丸をつけた項目だけを合計する前提で、複数社に同じ紙を渡す。この紙が、全社に同じ条件を渡すための道具になる。渡し方は店舗内装会社への初回相談で準備する8つのもの|当日の進み方と相手の見極め方で扱っている。
  5. 出てきた総額を、自分で決めた分母で割る。会社が提示した坪単価は使わない。自分の分母で割った数字だけを並べる。
  6. 総額を「1日◯人」に翻訳する。次の計算式で、現場の感覚に落とす。

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よくある質問

ここまでの章は、読者が自分の手元だけで判断できる範囲の話でした。 面積を自分で定義し、工事の範囲を自分で書き出し、公表されている統計で桁を確かめる。 この3つは、会社に聞かなくても進められます。

自己判断できなくなるのは、その先です。 具体的には、広告に出ている坪単価が何を含んだ数字なのか、 自分の物件の状態が工事量をどれだけ増やすのか、 そして削ってよい項目と削ると総額が増える項目の境目がどこにあるのか—— この3つは、物件と図面を見た人にしか答えられません。

坪単価について、相談の場で繰り返し出てくる4つの質問をまとめました。 いずれも「数字をどう扱うか」に関する問いで、 知らないまま進むと、判断の軸を相手側に預けることになりがちな論点です。 広告に書かれた数字の意味、業種別の目安の限界、 見積書に坪単価がないときの対応、そして下げたいときにどこを触るか。

この4つに自分なりの答えを持っておくと、会社との会話が値段の話から中身の話に変わります。 答えを持たずに聞くと相手の説明をそのまま受け取るしかありませんが、 自分の答えを持って聞けば、返ってきた説明が自分の前提とどこで食い違ったかが分かります。

坪単価30万円と書いてある会社は、本当に30万円で内装ができるのですか?

「その金額で工事が終わる」という意味ではなく、 「過去の何件かを面積で割ったら30万円になった」という意味であることがほとんどです。 何を工事範囲に含めて割ったかは会社ごとに違い、 設計費や諸経費、厨房機器、什器、看板、消防設備を外して計算していれば数字は当然小さくなります。

また、面積の取り方も契約面積か施工面積かで1割前後は変わります。 確かめる方法は単純で、「その30万円には何が含まれていて、面積は何で割った数字ですか」と聞くことです。 答えが具体的に返ってくる会社なら、その数字は概算の出発点として使えます。

業種別の坪単価の目安は、どこまで信じてよいのですか?

目安は「桁を間違えないため」の道具であり、自店の金額を決める根拠にはなりません。 同じ飲食店でも、厨房の広さ、ガスの容量、排気ダクトの経路、給排水の位置で工事費は倍近く動きます。

公的統計から算出できるのは建物まるごとの工事費であって、 テナント区画の内装工事費ではないため、そのまま自店に当てはめることもできません。 使い方としては、目安の2倍を上限、半分を下限とした幅で予算の枠を先に作り、 そこに物件の条件を足し引きしていくのが現実的です。

幅を持たせたまま物件を見に行き、見積もりが出た時点で幅を狭めてください。

見積書に坪単価の記載がありません。出してもらったほうがよいですか?

坪単価そのものを出してもらう必要はありませんが、 総額を面積で割った数字を自分で計算しておくことには意味があります。 ただしそのとき、割る面積を自分で決めて記録しておいてください。

施工の対象になる床面積を平方メートルで書き、3.3058で割った坪数を分母にすると決めておけば、 次に別の会社の見積書が来ても同じ分母で割れます。 会社に出してもらった坪単価は、その会社の分母で割った数字なので、他社の数字とは比べられません。

自分で決めた分母で自分で割る、という手順にしておくのが、いちばん行き違いの少ないやり方です。

坪単価を下げるには、どこを削るのがよいですか?

坪単価を下げること自体を目標にすると、 面積を広く数えて単価を薄めるといった見かけ上の調整に行き着いてしまいます。 見るべきは総額と、その総額を回収できるかどうかです。 削る順番としては、お客様の目に入らない場所の仕上げ、 造作を既製品に置き換えられる什器、後から追加できる装飾の順に検討してください。

逆に、電気容量、給排水の位置、排気、空調の能力、消防設備は、 あとから直すと工事をやり直すことになるため、ここを削ると総額はかえって増えます。 削れるものと削れないものを分けたうえで、 総額を月の返済額と1日の客数に翻訳して、その数字で判断してください。

まとめ|坪単価で判断を誤る6つの理由

坪単価は、予算の桁を確かめる道具としては使えます。300万円なのか3,000万円なのかを知るには十分です。

けれども2社を比べる道具にはなりません。比べるなら、範囲をそろえた見積書を出してもらうしかありません。

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