平面図を受け取ったら、まず3本の線を色を分けて引いてください。 お客様、スタッフ、商品の3本です。

開店してから「ここで人がぶつかる」と気づく場所は、たいてい図面の上で線が重なって います。重なりは、家具を動かしても消えません。

線を分けるには、入口・レジ・裏口・搬入口の位置を決める必要があります。 図面が固まる前に決めることは7つあります。

この記事でわかること

  • 動線が3本あること。図面の上での見つけ方
  • 入口から最初の3歩で何を見せるかの決め方
  • レジの位置で、待つ人の列がどこに伸びるか
  • スタッフが売場の裏を通れるかどうかの判断
  • 搬入した商品が陳列に届くまでの道の作り方
  • 交差させてはいけない2組の組み合わせ

ゾーニングと面積配分、寸法の基準は店舗のレイアウト設計で決める8つのこと、 医療機関に固有の動線はクリニックの動線設計で決める8つのことで 扱っています。この記事は業種をまたいで共通する動線に絞ります。

店舗の3系統の動線を整理した図。お客様動線は入口から売場・客席、会計を経て出口まで。スタッフ動線は裏口からバックヤードを経て売場・客席まで。商品・物品動線は搬入口から検品・保管を経て売場・厨房まで。それぞれ交差させない相手を示している。
3本の線を、同じ図面に色を分けて描きます|重なった場所が、開店後に人がぶつかる場所になります。

決め1|動線は3本ある。図面に色を分けて描く

お客様動線は入口から始まり、会計を経て出口で終わります。スタッフ動線は裏口から 始まります。商品・物品動線は搬入口から始まり、売場や厨房で終わります。

起点が3つとも違うことが、動線を分けられる理由です。同じ図面に3色で 線を引くと、どこで重なるかが目で見えます。

3系統の動線と、交差させない相手
動線起点から終点まで交差させない相手
お客様動線入口→売場・客席→会計→出口商品・物品の搬入動線
スタッフ動線裏口→バックヤード→売場・客席会計を待つお客様の列
商品・物品動線搬入口→検品→保管→売場・厨房お客様動線

法令上の一律の基準ではなく、業種をまたいで共通する実務上の整理です。飲食店の厨房内、医療機関の清潔区域など、業種に固有の区分は別に検討してください。

決め2|入口から最初の3歩で、何を見せるか

入って最初に目に入るものが、その店で何を買えるかを伝えます。ここに掲示物や 傘立てが並ぶと、売場そのものが後ろに隠れます。

入口の内側1メートルほどは、物を置かない場所として図面に書いてください。 開店後に置きたくなるものが必ず出てくるため、置き場所を別に用意しておきます。

入口まわりで先に決めること
項目決めること決めないと起きること
最初に見せるもの売れ筋か、季節の商品か、席か掲示物と什器で視界がふさがる
置かない範囲入口の内側に確保する広さ傘立て・カゴ・のぼりが集まる
はみ出す物の置き場カゴ・カート・掲示板の定位置通路にはみ出したまま定着する

決め3|レジの位置で、待ち行列がどこに伸びるか

レジに人が並ぶと、列は必ずどこかに伸びます。伸びる先が主通路だと、通り抜けられない 時間帯が生まれます。

図面に、混雑時の列を線で書き足してください。3人並んだとき、5人 並んだときで、どこまで届くかを確かめます。並ぶ向きは床の表示でも変えられます。

決め4|スタッフ動線を、売場の裏に抜けさせるか

厨房やバックヤードから売場に出る経路が1本しかないと、混雑時にスタッフが動けなく なります。裏を回れる経路があると、お客様の列を横切らずに済みます。

裏を回る経路は、壁の位置が決まる前にしか作れません。面積が足りない 場合でも、扉を1枚増やすだけで解決することがあります。

スタッフ動線で確認すること
項目確認すること図面での見方
売場に出る経路1本しかないか、2本あるか厨房・バックヤードの出入口の数
配膳・補充の距離いちばん遠い席・棚まで何歩か図面上で経路を線で引いて測る
お客様の列との関係列を横切らずに動けるか混雑時の列を書き足して重なりを見る

決め5|搬入から陳列までを、一本道にする

納品された商品は、検品して、保管して、売場に出ます。この道が売場を横切ると、 営業時間中に台車がお客様の間を通ることになります。

搬入口から保管場所までの間に、扉が何枚あるかを数えてください。 扉が多いほど、台車を置いて開ける動作が増えます。段差の有無も同じです。

決め6|交差させてはいけない2組

交差を避ける組み合わせは2つあります。1つは会計前の商品と会計後の商品、 もう1つは清潔なものと汚れたものです。

飲食店では、下げた食器を運ぶ経路と、料理を運ぶ経路を分けてください。 物販店では、会計を済ませた人が売場に戻る経路を作らない配置にします。

交差させない2組
組み合わせ分ける場所分けられないときの対処
会計前と会計後レジの前後で通路を分ける床の表示と什器の向きで流れを作る
清潔と汚れ配膳と下膳、洗い場の位置時間帯をずらす運用を決めておく

決め7|通路の幅と、避難の経路

売場の中の通路の幅は、什器の配置で自由に決められます。ただし建物の廊下については 用途と面積に応じた規定があります(建築基準法施行令第119条)。

この規定は売場内の通路そのものを定めたものではありません。それでも、 避難のときに人が通る経路が什器でふさがれていないかは、図面の段階で確かめてください。 消防設備の手続きは店舗の消防手続きで確認する8つのことで 扱っています。

平面図を受け取ったら、自分で確かめること
  1. お客様・スタッフ・商品の3本の線を、色を分けて引いた
  2. 線が重なった場所に印を付けた
  3. 入口から3歩の位置に何が見えるかを書き出した
  4. 混雑時の待ち行列を、図面に書き足した
  5. 厨房・バックヤードから売場に出る経路の本数を数えた
  6. 搬入口から保管場所までの扉の枚数と段差を数えた
  7. 避難の経路に什器が置かれていないかを見た

よくある質問

小さな店でも動線を3本に分けられますか?

完全に分けられないことはあります。その場合は、時間帯をずらす運用を先に決めてください。搬入を開店前に済ませるだけでも、交差はかなり減ります。

レジはどこに置くのがよいですか?

置く場所より、並んだ列がどこに伸びるかを先に見てください。列が主通路をふさぐ配置になっていないかを、図面に線を書き足して確かめます。

動線が交差していると、何が起きますか?

人と台車がぶつかる、列で通り抜けられない、下げた食器が客席の前を通る、といったことが起きます。どれも開店後に家具を動かしても解決しにくい問題です。

通路の幅に決まりはありますか?

建物の廊下については用途と面積に応じた規定があります(建築基準法施行令第119条)。売場内の通路そのものを定めた規定ではないため、什器の寸法と避難の経路から決めてください。

すでに営業中の店でも直せますか?

什器の向きと床の表示で流れを変えられる部分はあります。扉を増やす、壁を動かすといった対応は改装の機会に合わせて検討してください。

まとめ|線が重なった場所から直す

動線設計で決める7つのまとめ
決めること図面での確かめ方決める工程
決め1 3本の線色を分けて引き、重なりに印を付ける基本の平面図
決め2 最初の3歩入口から見えるものを書き出す基本の平面図
決め3 レジと列混雑時の列を線で書き足す基本の平面図
決め4 スタッフ動線売場に出る経路の本数を数える壁の位置が決まる前
決め5 搬入の道扉の枚数と段差を数える壁の位置が決まる前
決め6 交差の禁止会計前後・清潔と汚れを分ける実施図面
決め7 通路と避難避難の経路に什器がないか見る什器の発注前

7つのうち、あとから直せないのが決め4と決め5です。どちらも壁と扉の 位置で決まるため、図面が実施の段階に入る前に確かめてください。

図面の上で線が重なっていても、時間帯をずらす運用で回避できることがあります。 設計で分けるのか運用で分けるのかを、内装会社と決めてから着工してください。

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