内装の打ち合わせで、通信の話が出るのはたいてい最後です。けれど配線は、天井を閉じたら終わりです。

開店してからレジの位置を1メートル動かしたくなったら、できるのは床を開けるか、配線を露出させるかの二択です。

決めることは7つ。どれも図面が固まる前に決められます。

この記事でわかること

  • 物件の契約前に確かめる回線の引き込み。引けない物件があります
  • レジと決済端末の位置を、どの図面のどの段階で確定させるか
  • 有線と無線の使い分け。無線にしても配線が消えない理由
  • 来店されたお客様向けと業務用を分ける根拠(割賦販売法の条文)
  • 電源の口数と、分電盤の空き回路を数える手順
  • 通信や電気が止まったときに、会計をどう続けるかの備え
通信と電源で決めることと、いつまでに決めるか、期限を過ぎたらどうなるかを並べた表。回線の引き込みは物件の契約前までに決める。過ぎると物件を選び直すことになる。レジと決済端末の位置は電気設備図の承認までに決める。過ぎると床を開けるか配線を露出させることになる。LAN配線の経路は天井を閉じる前までに決める。過ぎると無線に頼るか露出配線になる。アクセスポイントの位置と電源も天井を閉じる前までに決める。過ぎると電波の届かない席が残る。来店者向けと業務用の分離は開店前までに決める。過ぎると決済端末が同じ回線に載ったままになる。電源の口数と回路は分電盤の工事までに決める。過ぎると延長コードで足すことになる。止まったときの手順は開店前までに決める。過ぎると現金しか受けられない時間が続く。
期限は工程ごとに違います|いちばん早いのは物件の契約前、いちばん重いのは天井を閉じる前。この2つを過ぎると、選べる手段が急に減ります。

会計は、通信が止まると止まる

キャッシュレス決済の比率は上がり続けています。通信が止まれば、会計そのものが止まります。現金だけで営業できる店は、もう多くありません。

2025年のキャッシュレス決済比率と、その内訳
項目公表値店舗にとっての意味
キャッシュレス決済比率58.0%(162.7兆円)会計の半分以上が通信を通る
クレジットカード82.7%(134.6兆円)決済額のうち大半。承認に通信が要る
コード決済10.2%(16.6兆円)お客様の端末側にも通信が要る
電子マネー3.7%(6.0兆円)端末の設置場所を先に決める
デビットカード3.4%(5.5兆円)同上
2030年の中間目標国内指標で65%比率は上がる前提で設計する

出典:経済産業省「2025年のキャッシュレス決済比率を算出しました」(2026年3月31日公表)。クレジットカード82.7%などの内訳は、キャッシュレス決済額162.7兆円に占める各手段のシェアであり、民間最終消費支出に対する比率ではありません。分子の元データはクレジットカードが日本クレジット協会調査、デビットカード・電子マネーが日本銀行「決済動向」、コード決済がキャッシュレス推進協議会の調査、分母は内閣府「国民経済計算」です。これは全国・全業種の集計値で、業種別の内訳は公表資料では確認できませんでした。自店の比率は、実際の売上構成で確かめてください。

通信と電源で決める7つのこと

そのまま使える聞き方を表に入れました。内装会社に通信の担当がいないことも多いので、こちらから聞きます。

7つの決めごとと、そのまま使える聞き方
決めること期限そのまま使える聞き方
1. 回線の引き込み物件の契約前「この区画まで光回線は来ていますか。来ていない場合、配管は使えますか」
2. レジ・決済端末の位置電気設備図の承認「レジの位置に、電源とLANは何口来ていますか」
3. 有線か無線か天井を閉じる前「空の配管だけでも通しておけませんか」
4. アクセスポイントの位置天井を閉じる前「アクセスポイントの電源は、どこから取りますか」
5. 来店者向けと業務用の分離開店前「機器を2台置ける場所と電源はありますか」
6. 電源の口数と回路分電盤の工事「分電盤の回路は何回路で、予備は何回路空きますか」
7. 止まったときの手順開店前「停電したとき、どの回路が落ちますか」

決めごと1|その物件に、回線が引けるか

引き込みには日数がかかります。建物によっては引けないこともあります。契約前に確かめてください。

総務省 令和7年通信利用動向調査(企業)の接続回線
回線の種類利用している企業の割合読み方
ブロードバンド回線96.3%ほぼ前提になっている
光回線(FTTH)91.0%ブロードバンドの大半が光
専用線10.2%複数拠点をつなぐ用途が中心
ケーブルテレビ回線2.4%建物によっては、これしか選べないことがある
固定無線回線(FWA)2.1%光が引けない区画の代替になることがある

出典:総務省「令和7年通信利用動向調査」(調査時点:令和7年8月末、公表:令和8年5月29日)。企業調査の対象は公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業で、有効回収は2,489企業(回収率55.3%)。複数回答のため合計は100%になりません。個人商店や小規模店舗は調査の対象外です。また同調査には、店舗や事業所のWi-Fi設置率にあたる項目は見当たりませんでした。この記事では、その数値を推測で置いていません。

決めごと2|レジと決済端末の位置

レジまわりには電源も通信も集まります。必要な口数を数えてから、位置を決めてください。

レジまわりに集まるものと、必要になるもの
機器必要なもの図面で確かめること
レジ本体・タブレット電源1口、通信(有線または無線)充電しながら使えるか。配線が見えないか
レシートプリンタ電源1口、レジとの接続用紙を交換するときに手が入るか
キャッシュドロアプリンタまたはレジからの制御線引き出したときに、人や壁に当たらないか
決済端末電源1口、通信お客様の側から手が届く位置にあるか
バーコードリーダーレジとの接続物販なら必須。カウンターの奥行きに収まるか
ルーター・ハブ電源1〜2口、放熱金属の什器の中に入れていないか
2台目のレジ(将来)電源1口、通信1口いま口数を入れておくか、空配管だけ通すか

決めごと3|有線を通すか、無線に頼るか

会計に関わるものは有線が基本です。無線は、混雑した時間帯にいちばん不安定になります。

有線と無線の使い分け
つなぐもの向いている方式理由
レジ・決済端末有線(無線は予備)止まると会計が止まる。電波の混雑に左右されない
アクセスポイント有線上流が無線だと、速度も安定性も落ちる
防犯カメラ有線常時通信する。天井裏を通すため後から追加できない
券売機・セルフレジ有線設置場所が固定される。電源も同時に要る
ハンディ端末・タブレット注文無線持ち歩く前提。アクセスポイントの数で品質が決まる
来店されたお客様の端末無線業務用と分ける(決めごと5)
バックヤードの事務機どちらでも止まっても会計は続く

配線の経路は天井伏図と電気設備図に描かれます。図面のどこを見るかは店舗の図面で施主が確認する8つのことで扱っています。「空配管を入れてください」は、図面の承認より前に伝えてください。

決めごと4|アクセスポイントの位置と電源

天井に置くなら、電源とLANを先に上げておきます。あとからだと天井を開けることになります。

アクセスポイントを置く場所ごとの違い
置き場所電波の届き方工事で必要になること
天井に埋め込む・直付けいちばん届く。遮るものが少ない天井の中に電源またはLANの経路。天井を閉じる前に決める
壁の高い位置片側には届く。反対側は壁でさえぎられる壁の中に配線。壁を閉じる前に決める
棚やカウンターの上床に近いほど、人の体でさえぎられるコンセント1口。あとからでも置ける
金属什器の中・厨房機器の裏ほとんど届かない置かない
バックヤードの中扉と壁でさえぎられ、客席には届きにくい客席用は別に用意する

決めごと5|来店者向けと業務用を分ける

割賦販売法が、加盟店に安全管理を求めています。決済端末と同じ回線に、来店者向けのWi-Fiを載せないでください。

割賦販売法が加盟店に求めていること
条文求められていること工事の段階でできること
第35条の16第1項経済産業省令で定める基準に従い、クレジットカード番号等の漏えい・滅失・毀損の防止その他の適切な管理のために必要な措置を講じる業務用と来店者向けの機器を分けられる電源と設置場所を用意する
同条第3項取扱いを委託した先についても、適切な管理が図られるよう必要な指導その他の措置を講じるレジや決済を外部に任せる場合、契約書で管理の分担を確かめる
第35条の17の15経済産業省令で定める基準に従い、利用者による不正な利用を防止するために必要な措置を講じる端末の設置位置。背後から画面が見えない配置にする

出典:割賦販売法(e-Gov法令検索)第35条の16および第35条の17の15の条文を確認して作成。いずれも具体的な基準は経済産業省令に委ねられています。自店が何をすればよいかは、契約しているカード会社または決済代行会社にご確認ください。当ガイドは法律の専門家ではありません。防犯の観点からの機器の配置は店舗の防犯対策で決める8つのことで扱っています。

決めごと6|電源の口数と、分電盤の回路

会計まわりは、専用の回路にします。厨房機器と同じ回路だと、起動のたびに落ちることがあります。

回路を分けておきたい組み合わせ
分ける対象同じ回路だと起きること分電盤で確かめること
レジまわり/厨房機器厨房でブレーカーが落ちると会計も止まるレジ専用の回路が1つあるか
レジまわり/客席の電源お客様の機器で落ちると会計も止まる客席の電源が別回路か
通信機器/照明照明のスイッチで、ルーターの電源も切れることがあるスイッチで切れない常時通電の口があるか
防犯カメラ/その他他の機器の停止で、記録も止まるカメラ専用の回路があるか
予備の回路将来の追加ができない何回路空いているかを数字で聞く

契約する電気の容量そのものが足りるかどうかは、別の問題です。物件の契約前に確かめる項目は店舗の電気容量が足りない物件を避けるにはで扱っています。容量が足りていても、回路の分け方が悪ければ同じことが起きます。

決めごと7|止まったときにどうするか

止まる前提で決めておきます。連絡先、代替の手段、現金しか使えないときの案内。紙に書いてレジの下に貼っておくのがいちばん確実です。

開店前に決めて、紙に書いておくこと
  1. 回線が止まったときの連絡先。回線事業者の障害受付番号
  2. 決済端末が承認を取れないときの連絡先。カード会社または決済代行会社
  3. モバイル回線に切り替える手順。機器の置き場所と、電源の位置
  4. 切り替えても復旧しない場合の運用。現金のみにするか、後日の請求にするか
  5. 停電したときに落ちる回路の一覧。分電盤の番号と、その回路につながる機器
  6. ブレーカーの場所。バックヤードのどこにあるかを図で示す
  7. レジが起動しないときの手順。手書きの伝票をどこに置いてあるか
  8. 防犯カメラの記録が止まったときの確認方法
  9. 復旧したあとに、記録を突き合わせる手順
  10. この紙をどこに貼るか。バックヤードとレジの下の2か所

あわせて読みたい

よくある質問

全部を無線にすれば、配線は要らないのではありませんか?

アクセスポイント自体に電源と、多くの場合は上流の有線回線が必要です。無線にすると配線が消えるのではなく、配線が集まる場所が移ります。

またレジや決済端末を無線でつなぐと、電波が混む時間帯に会計が止まることがあります。売上に直結する端末は有線でつなげる状態にしておき、少なくとも天井を閉じる前に空の配管だけでも通しておいてください。

来店されたお客様向けのWi-Fiと、レジのネットワークは分けるべきですか?

分けることをおすすめします。クレジットカードの加盟店には、クレジットカード番号等の適切な管理のために必要な措置を講じる義務が直接かかっています(割賦販売法第35条の16第1項第2号)。

具体的な基準は経済産業省令に委ねられているため、自店が何をすればよいかは契約しているカード会社または決済代行会社にご確認ください。工事の側では、機器を分ける前提で電源とLANの口数を用意しておけば足ります。

回線が止まったら、会計はどうなりますか?

多くの決済端末は通信ができないと承認が取れません。回線が止まっている間は現金のみになる可能性があります。

工事の段階でできる備えは、モバイル回線に切り替えられる機器の置き場所と電源を用意しておくことです。あわせて、停電時に何が止まるかを分電盤の回路と対応させて、紙に書いて店内に貼っておいてください。

光回線は、どの物件でも引けますか?

引けない物件があります。建物まで来ていても、共用部から区画まで配管が通っていない場合、その工事に貸主や管理会社の承諾が要ります。

契約前に、建物名と部屋番号を伝えて回線事業者に提供の可否を確認し、あわせて管理会社に配管の使用可否を確認してください。これは物件を選び直せる時点でしか確かめられません。

まとめ|配線は、天井を閉じたら終わり

通信と電源は、内装工事の一部です。打ち合わせで出てこないなら、こちらから出してください。

決めるのは7つだけ。どれも、図面が固まる前なら費用はほとんどかかりません。

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