施工事例の写真は、どの会社のものも綺麗に見えます。差が出るのは 写真に添えられた情報の量です。
業種、坪数、工事の範囲、竣工年。これらが書かれていない事例は、自店と比べる手がかりが ありません。逆に書かれていれば、そのまま質問に変えられます。
事例は「見て決めるもの」ではなく「聞く材料にするもの」です。 初回相談の前に読む視点は7つあります。
この記事でわかること
- その事例で設計だけを担ったのか、施工まで担ったのかの見分け方
- 自店に近い業種・坪数・物件条件の事例をどう探すか
- 竣工年から分かること
- 写真に添えられた坪数と工事範囲の読み方
- 建設業の許可が要る金額の区切り(建設業法施行令)
- 写真に写っていない場所をどう質問するか
依頼先の3つの種類は店舗デザインの依頼先は3種類、 見積書の突き合わせは店舗内装の見積もり比較で見る7つのポイントで 扱っています。この記事は施工事例の読み方に絞ります。
視点1|その事例は、設計だけか施工までか
同じ写真でも、設計だけを担った事例と、施工まで担った事例では意味が違います。 設計事務所の事例は、施工を別の会社が行っていることがあります。
写真の下に「設計・施工」と書かれているか、「設計」だけかを見てください。 書かれていなければ、その場で聞くべき最初の質問になります。依頼先の種類ごとの違いは 店舗デザインの依頼先は3種類で扱っています。
| 事例で見る項目 | 分かること | その場で聞く質問 |
|---|---|---|
| 業種と坪数 | 自店に近い規模の経験があるか | 同じ坪数の事例はありますか |
| 工事の範囲 | 設計だけか、施工まで担ったか | この事例はどこまで御社の担当ですか |
| 竣工年 | いまの体制で同じものが作れるか | 当時の担当者は在籍していますか |
| 写っていない場所 | バックヤード・厨房・設備の作り | 裏方の写真は見せてもらえますか |
視点2|自店と同じ業種・坪数・物件条件の事例があるか
業種が同じでも、坪数が3倍違えば設計の考え方は変わります。物件がスケルトンだったか 居抜きだったかでも、費用と工期の組み立てが変わります。
自店の条件を1行に書いて、それに近い事例を探してください。 見つからない場合は、近い条件の事例を出してもらうよう頼みます。
| 条件 | 自店を書き出す | 近い事例がないときに聞くこと |
|---|---|---|
| 業種 | 扱うもの・提供の仕方 | 近い業態の事例はありますか |
| 坪数 | 契約する(予定の)面積 | 同じくらいの坪数の事例はありますか |
| 物件の状態 | スケルトンか居抜きか | 同じ状態から始めた事例はありますか |
| 建物の種類 | 路面店か、商業施設のテナントか | 商業施設の工事区分の経験はありますか |
視点3|竣工年と、いまも営業しているか
竣工年が古い事例ばかりなら、いまの体制で同じものが作れるとは限りません。人が入れ替わって いれば、事例と実際の担当者はつながりません。
その店がいまも営業しているかは、地図検索で確かめられます。 近所であれば、お客様として実際に入ってみるのがいちばん確実です。
視点4|坪数と工事範囲が書かれているか
写真だけの事例は、比べる材料になりません。坪数、工期、工事の範囲が書かれていれば、 自店の見積もりを読むときの手がかりになります。
金額が書かれていない事例は、それ自体は普通のことです。公開していない 会社が多いためです。相談のときに、近い事例の総額の幅を聞いてください。
視点5|許可・登録と、事例の規模が合っているか
請負金額が500万円未満(建築一式工事は1500万円未満)の工事は、建設業の許可がなくても 請け負えます(建設業法施行令第1条の2)。この区切りより大きな工事を頼むなら、許可の 有無を確認してください。
許可がないこと自体が問題なのではなく、頼む工事の規模と合っているかが問題です。 会社概要のページに、許可番号や建築士事務所の登録番号が載っているかを見てください。
| 項目 | 確認すること | 根拠・意味 |
|---|---|---|
| 建設業の許可 | 許可番号の記載があるか | 500万円以上(建築一式は1500万円以上)の工事を請け負うとき(建設業法施行令第1条の2) |
| 建築士事務所の登録 | 登録番号の記載があるか | 設計・工事監理を業として行う場合 |
| 所在地と設立年 | 事例の竣工年と矛盾しないか | 古い事例が別会社時代のものでないか |
許可や登録が必要になる範囲は、工事の内容と金額によって変わります。自店の工事にどれが要るかは、見積もりの総額が見えてから確認してください。
視点6|写真に写っていない場所を質問する
事例の写真に写るのは、客席と売場です。バックヤード、厨房、配管の納まりは、まず 写りません。実際に使いにくさが出るのはこちらの側です。
「裏方の写真はありますか」と聞いてみてください。出てくるかどうかで、 その会社が裏側をどれだけ設計しているかが分かります。バックヤードの考え方は 店舗のバックヤードで決める8つのことで扱っています。
視点7|その事例の担当者が、いま在籍しているか
事例を作った担当者が退職していれば、同じものは出てきません。会社としての実績と、 自分の担当になる人の実績は、分けて確認してください。
初回相談に来た人が、そのまま担当になるとは限りません。誰が設計し、 誰が現場を見るのかを、契約の前に聞いておいてください。初回相談の進め方は 店舗内装会社への初回相談で準備する8つのもので 扱っています。
施工事例を見ながら聞く質問
- この事例は設計だけですか、施工まで御社ですか
- 坪数はどれくらいですか。工期は何か月でしたか
- スケルトンからですか、居抜きからですか
- この店はいまも営業していますか
- 当時の担当者は在籍していますか
- バックヤードや厨房の写真は見せてもらえますか
- 私の店の条件に近い事例は、どれになりますか
- その事例の総額は、どれくらいの幅でしたか
よくある質問
事例が少ない会社は避けたほうがよいですか?
数だけでは判断できません。守秘義務で公開していない会社もあります。自店に近い条件の事例を1つ出してもらい、その中身を質問できるかで見てください。
事例の写真が加工されているかは分かりますか?
写真からは判断しにくいため、実際に営業している店を見に行くのが確実です。近所に事例があれば、お客様として入ってみてください。
金額が載っていない事例は不親切ですか?
金額を公開していない会社は多く、それ自体は普通のことです。相談の場で、近い事例の総額の幅を聞いてください。
建設業の許可がない会社には頼めませんか?
請負金額が500万円未満(建築一式工事は1500万円未満)の工事は許可がなくても請け負えます(建設業法施行令第1条の2)。頼む工事の規模と合っているかで判断してください。
何社の事例を見比べればよいですか?
件数より、同じ質問を同じようにぶつけられるかのほうが大切です。3社に同じ8つの質問をすると、答え方の差がそのまま比較になります。
まとめ|事例は質問に変えて初めて使える
| 視点 | 事例のどこを見るか | 変える質問 |
|---|---|---|
| 視点1 工事の範囲 | 設計・施工の表記 | どこまで御社の担当ですか |
| 視点2 条件の一致 | 業種・坪数・物件の状態 | 近い条件の事例はどれですか |
| 視点3 竣工年 | 年と、いまの営業状況 | この店はいまも営業していますか |
| 視点4 記載の量 | 坪数・工期・範囲 | 総額はどれくらいの幅でしたか |
| 視点5 許可・登録 | 会社概要の番号 | この規模の工事の実績はありますか |
| 視点6 写っていない場所 | バックヤード・厨房 | 裏方の写真はありますか |
| 視点7 担当者 | 事例の担当と、いまの体制 | 誰が設計し、誰が現場を見ますか |
7つの視点は、そのまま質問の一覧になります。3社に同じ質問をすると、 答え方の差が比較の材料になります。
事例のページは更新されないまま残っていることがあります。掲載されている情報が いまの体制と合っているかは、必ず口頭で確かめてください。