A社は「設計料無料」、B社は「設計監理料 工事費の10%」で100万円。総額はA社が安く見えますが、この2つは同じものを比べていません。

設計料が無料になるのには理由があります。工事費に含まれているか、業務の範囲が狭いか、受注が前提になっているか。どれかです。無料で働く会社はありません。

問題は、その差があとから形を変えて出てくることです。監理が薄いまま着工すると、図面と違う施工に気づくのが遅れ、追加とやり直しになります。

この記事でわかること

  • 設計料と呼ばれるものの中身が、企画・基本設計・実施設計・確認申請・工事監理という別々の業務に分かれること、そして各社の見積がそのどこを含んでいるかを聞き出す言葉
  • 「設計料無料」が成立する3つの構造と、自分が受け取った見積がどれに当たるのかを1つの質問で見分ける方法
  • 料率方式・面積方式・実費積算方式という3つの決め方の違いと、自分の案件ではどれが有利になるかの判断
  • 設計と施工を分けるか一括にするかで、費用の見え方と責任の所在がどう変わるか、そして小規模な店舗ではどちらを選ぶかの目安
  • 見積書の中で、設計料・諸経費・現場管理費がそれぞれ何の費用かを見分け、二重計上を見つける手順
  • 図面の著作権が誰のものになるかと、途中で会社を変えるときに図面を使えるようにしておくための契約書の書き方
  • 設計料を払ったあとに解約した場合の精算の考え方(民法の条文を根拠に)と、契約前に確認しておく項目
設計監理料100万円に対して、着工後の追加が工事費1,000万円の1割なら100万円、設備のやり直しが50万円、開店が2週間遅れたときの賃料が15万円。
設計料を削った分が、そのまま浮くとは限らない|着工後の追加が工事費の1割出れば、削った設計監理料と同じ金額になります。「設計料無料」の場合は、その業務が工事費のどこに入っているかを書面で確認してください。

「無料」と「工事費の10%」を並べても比較できない理由

設計料という言葉が、会社によって違う範囲を指しています。企画、基本設計、実施設計、確認申請、工事監理。どこまで入っているかを確かめないと、金額の意味が分かりません。

「設計料無料」と「設計監理料 工事費の10%」を並べたときに起きていること
見積書の表記 その表記から読み取れないこと 読み取るために自分ができること
設計料 無料 設計の費用が工事費に含まれているのか、それとも設計の範囲自体が狭いのかが分からない。工事監理を誰が行うのかも書かれていない 「無料の範囲はどの図面までですか」「工事を他社に出した場合はどうなりますか」の2問を、書面かメールで送って回答をもらう
設計監理料 工事費の10% その10%に工事監理が本当に含まれているのか、含まれるとして何回現場に行くのかが分からない。工事費が増えたときに料率が再計算されるのかも不明 「監理として現場に入る回数と、報告書の提出時期を書いてください」と依頼する。工事費が変動した場合の料率の扱いも同時に聞く
デザイン費 一式 提出される図面の種類と枚数が分からない。パースだけなのか、施工できる水準の図面まで含むのかが判別できない 「提出される図面の名前をすべて書き出してください」と頼む。平面図・展開図・天井伏図・電気設備図といった名称で返ってくるかを見る
諸経費 工事費の◯% 設計に相当する費用がここに入っているのか、現場の管理費だけなのかが分からない。設計料と二重に計上されている可能性もある 「諸経費の内訳に、図面作成の人件費は含まれていますか」と聞く。含まれるなら設計料の欄と重複していないかを確認する
現場管理費 一式 施工者側の現場管理と、発注者側に立った工事監理は別の業務だが、この表記では区別がつかない 「この費用で行うのは施工管理ですか、それとも設計図書との照合ですか」と聞く。前者なら監理は別に必要かを検討する
確認申請費 別途 申請が必要かどうかの判断が済んでいるのか、必要になった場合にいくらかかるのかが分からない 「申請が必要かどうかの判断は、いつ、誰が行いますか」と聞く。判断の時期が契約後なら、金額の上限を先に決めておく

設計料の根拠になっている法令と告示

建築士法と国土交通省の告示に、業務報酬の考え方が定められています。ただし店舗の内装工事にそのまま当てはまるものではありません。使えない理由も表にしました。

それでも、業務の区分の考え方は使えます。「どの業務が入っていますか」と聞く根拠になります。

設計料に関係する法令・告示と、発注する側が使える場面
条文・告示 定めていること 発注する側が使える場面
建築士法第2条第6項 「設計図書」とは建築工事の実施のために必要な図面(現寸図等を除く)および仕様書、「設計」とはその者の責任において設計図書を作成すること 「今回作っていただくのは、工事を実施できる水準の図面と仕様書ですか」と確認する。パースだけなら、それは設計図書ではないと分かる
建築士法第2条第8項 「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること 「監理として、どの図面と現場を照合しますか」と聞く。照合する対象の図面が存在しなければ、監理は成立しない
建築士法第22条の3の2 設計受託契約・工事監理受託契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従い誠実に履行しなければならない 条件を一方的に押しつけられていると感じたときに、対等な立場での協議を求める根拠になる
建築士法第22条の3の3第1項 延べ面積300平方メートル超の建築物の新築に係る設計受託契約等は、作成する設計図書の種類、報酬の額および支払の時期、契約の解除に関する事項などを書面に記載し相互に交付しなければならない 自分の案件が対象外でも、この6項目をそのまま「書面に入れてほしい項目」の一覧として使う
建築士法第22条の3の4 設計受託契約等を締結しようとする者は、第25条に規定する報酬の基準に準拠した委託代金で契約を締結するよう努めなければならない 極端に安い金額を求めることが、発注する側の努力義務にも反すると理解する。値切り方の上限を自分で決める材料になる
建築士法第23条第1項 他人の求めに応じ報酬を得て設計等を業として行うときは、建築士事務所について都道府県知事の登録を受けなければならない 依頼先の会社名で「建築士事務所登録」を検索し、登録があるかを自分で確認する。登録の有効期間は5年(同条第2項)
建築士法第24条の7第1項 建築士事務所の開設者は、契約前に管理建築士等をして、作成する設計図書の種類、報酬の額および支払の時期などを記載した書面を交付して説明させなければならない 契約前に重要事項説明の書面をもらえるかを確認する。もらえる場合、そこに図面の種類が列挙されている
建築士法第25条/令和6年国土交通省告示第8号 業務報酬は、業務経費(直接人件費・特別経費・直接経費・間接経費)、技術料等経費、消費税に相当する額を合算する方法により算定することを標準とする 「工事費の何%」ではなく「誰が何時間かけるか」で説明してもらえるかを試す。説明できる相手かどうかの判断材料になる
著作権法第10条第1項第5号・第6号 建築の著作物、および学術的な性質を有する図面その他の図形の著作物を、著作物として例示している 図面の転用や第三者への開示について、契約書に定めがあるかを着工前に確認する
民法第641条・第634条 請負人が仕事を完成しない間は注文者はいつでも損害を賠償して解除できる。可分な部分の給付で注文者が利益を受けるときはその部分を仕事の完成とみなし、利益の割合に応じて報酬を請求できる 途中解約したときの精算の考え方を、感情論ではなく条文を根拠に話せるようにしておく
設計料に含まれ得る5つの業務区分と、見積を受け取ったときの確認方法
業務の区分 告示が定めている中身(要点) 見積を受け取ったときに自分で確認すること
企画・事業計画 敷地の選定、資金計画等の事業計画の策定。技術的助言は、これらが設計の前段階で実施されていることを前提としている(標準業務の外) 「物件探しやレイアウトの検討にかかった分は、この見積のどこに入っていますか」と聞く。入っていないなら、他社に決めた場合の扱いを確認する
基本設計 設計条件の整理、法令上の諸条件の調査、供給状況の調査、基本設計図書の作成、概算工事費の検討、建築主への説明等 「基本設計の成果として、平面図・断面図・立面図と工事費概算書は出ますか」と聞く。概算書が出ないなら理由を確認する
実施設計 施工者が正確に読み取れ、適正な見積ができるように、細部の形状・寸法・仕様・材料や機器の種別と品質を具体的に表現した図書を作成する 「この図面で他社が見積を出せますか」と聞く。出せないという答えなら、その図面は実施設計の水準に達していない
確認申請等の手続き 告示別添四第2項・第3項の「法令又は条例に基づく許認可等に関する業務」。標準業務ではなく追加的な業務に位置づけられている 「申請が必要かどうかを、いつ誰が判断しますか」「必要だった場合の追加費用の上限はいくらですか」を契約前に文書で確認する
工事監理 工事監理方針の説明、設計図書の内容の把握、施工図等の検討と報告、工事と設計図書との照合および確認、結果報告、工事監理報告書等の提出 「工事監理報告書はいただけますか」と聞く。提出されない場合、照合の記録が残らないため、写真での記録方法を代わりに決める
工事施工段階の意図伝達 設計意図を正確に伝えるための質疑応答・説明等、工事材料や設備機器の色・柄・形状等の選定に関する検討と助言 「材料や色を最終決定する打合せは、この金額に何回分含まれていますか」と聞く。回数を超えた場合の扱いも同時に確認する

「設計料無料」が成立する3つの構造

見分け方はあります。見積書の他の費目が厚くなっているか、図面の枚数と精度が薄いか、他社に工事を出したときに設計料を請求されるか。

どれが悪いという話ではありません。どれなのかを知らずに選ぶことが問題です。

「設計料無料」が成立する3つの構造と、自分の見積がどれかを見分ける方法
構造 何が起きているか 見分けるために聞くこと・確認すること
構造1|工事費に含めている 設計の人件費を工事の単価や諸経費に上乗せして回収している。費目としては見えないが、支払総額には入っている 「設計にかかる人件費は、工事費のどの項目に入っていますか」と聞く。答えられる会社は、内訳を持っている
構造2|範囲が限定されている 平面プランとパースまでが無料で、実施設計や工事監理は含まれない。無料の範囲では他社と同条件の相見積が取れない 「無料の範囲で出る図面の名前をすべて書いてください」と依頼する。展開図・天井伏図・電気設備図が出てこなければ範囲は狭い
構造3|工事の受注が条件 契約に至れば無料、他社に発注すれば調査費や設計料を請求する条件がついている。書面に明記されていないこともある 「他社に工事を発注した場合、費用の請求はありますか」を初回に聞き、回答をメールで残す。金額の上限も同時に確認する
構造4|社内で設計している 自社の社員が設計するため、外部への支払いが発生しない。工事の粗利で人件費を賄う体制になっている 「図面を描くのは御社の社員ですか、社外の方ですか」と聞く。社外なら、その方が現場に来る頻度も確認する
構造5|社外に外注している 設計を建築士事務所やデザイナーに委託している。発注者から見えない位置に、対価の支払いが存在する 「設計を担当する方の連絡先を、打合せの窓口として教えてもらえますか」と聞く。窓口が示されるかで関与の深さが分かる
構造6|監理を行っていない 図面は作るが、図面と現場を照合する業務は誰も行っていない。工事が終わるまで発注者には分からない 「工事中に、図面と現場を照合するのは誰ですか」と聞く。「現場監督が見ています」という答えなら、それは施工管理であり監理ではない

決め方と、発注のしかたで何が変わるか

設計料の決め方は3つあります。料率、面積、実費積算。工事の規模と内容によって、有利な方式が変わります。

設計と施工を分けるか一括にするかでも、設計料と責任の所在が変わります。不具合が出たときに誰に言うのか、という話です。

国の業務報酬基準の略算方法が、店舗の内装工事に使えない4つの理由
理由 根拠となる記述 では何を使えばよいか
対象が新築に限られる ガイドラインは「略算方法は、建築物を新築する場合を前提としているので、建築物の増改築又は修繕・模様替え、設計変更などに係る業務量の算定に際しては、標準業務人・時間数をそのまま適用することは不適切」としている 実費加算方法(人と時間の積み上げ)で出してもらう。「何人が何時間かかる想定ですか」と聞く
面積の下限を下回る 告示第四のただし書きは、床面積の合計が別添三に掲げる値のうち最も小さい値を下回る建築物には略算方法によることができないと定める。商業施設(第1類)の別表第5の1の最小値は100平方メートル 30坪未満の店舗では略算表そのものが使えないと理解し、面積で割る比較をやめる
対象が建築物全体である 略算表の床面積は「建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」による。テナント区画の内装だけを対象とする想定になっていない 建物ではなく区画の工事であることを前提に、業務の一覧(【確認1】の6行)で範囲を揃える
改修の基準が未整備 ガイドラインは今後の課題として「業務報酬基準の略算方法の対象は新築及び耐震診断・耐震改修に限られており、耐震改修以外の改修は対象となっておりません」と明記している 改修に使える国の基準は存在しないと認識し、相見積の比較手順(後述)で判断する
設計料の3つの決め方と、それぞれが発注する側に有利になる場面
決め方 発注する側に有利になる場面/不利になる場面 この方式を提示されたときに確認すること
料率方式
(工事費×◯%)
有利:工事の内容が標準的で、設備が少なく、変更が起きにくい案件。金額の見通しが立ちやすい/不利:狭くて設備の多い案件。工事費が小さいのに検討量が多く、工数が絞られやすい 「工事費が増減したとき、料率を掛け直しますか」「追加工事の分にも料率が掛かりますか」を契約書に書いてもらう
面積方式
(坪または平方メートル×単価)
有利:同業種・同規模の実績が多い会社に頼む場合。過去の実績から工数が読めている/不利:業種によって設備の量が大きく違う場合。物販と飲食で同じ単価が出てくるなら根拠が弱い 「その単価は、どの業種の何件の実績から出していますか」と聞く。自店と同じ業種の実績が示されるかを見る
実費積算方式
(人×時間+経費)
有利:変更が多い案件、設備の検討が重い案件。作業が増えた理由を金額で追える/不利:契約前の総額が読みにくい。想定を超えた場合の扱いを決めておかないと不安が残る 「想定した延べ時間数と、超えた場合の扱いを書いてください」と依頼する。上限額を設ける方法も相談する
定額方式
(一式いくら)
有利:範囲が明確に決まっていて、変更が想定されない案件/不利:範囲が曖昧なまま定額にすると、追加の線引きが毎回交渉になる 「この定額に含まれる業務の一覧を、箇条書きで書いてください」と依頼する。含まれないものも同時に書いてもらう
工事費込み
(設計料の表示なし)
有利:窓口が一本化され、責任の所在が分かれない/不利:工事費を値引くと設計の工数も一緒に減る。設計だけを他社と比べられない 「設計に相当する部分を、参考金額として分けて示していただけますか」と依頼する。断られた場合はその理由を聞く
分離発注と設計施工一貫で、設計料と責任がどう変わるか
論点 分離発注と一貫でどう変わるか 契約前に確認すること
契約の本数と支払時期 分離は設計業務委託と工事請負の2本。設計料の支払いが工事の着手金より前に来るため、手元資金の出方が早まる。一貫は1本にまとまることが多い 各契約の支払時期と金額を1枚の資金繰り表に落とし、賃料と保証金の支払いと重ならないかを確かめる
設計料の見え方 分離では独立した費目として金額が明示される。一貫では工事費に含まれるか、別建てでも工事とセットで提示されるため単独での比較がしにくい 一貫の会社にも、【確認1】の6行のどこまでを引き受けるかを文章で書いてもらい、分離の見積と業務範囲を揃える
工事費の競争 分離では同じ実施設計図書で複数社から見積を取れる。一貫では図面を作った会社が施工するため、工事費が相見積にかからない 一貫を選ぶ場合、工事費の内訳をどこまで開示してもらえるかを先に確認する。開示の範囲が交渉の前提になる
責任の所在 分離では図面の責任と施工の責任が別々の会社にあり、切り分けができる反面、境界の曖昧な不具合では双方が相手を指すことがある。一貫では窓口が一つ 「不具合が出たとき、まずどこに連絡すればよいですか」を両方の形で聞き、連絡先と対応の流れを書面でもらう
工事監理の独立性 分離では設計者が発注者の側に立って照合する。一貫では自社の図面と自社の現場を自社が照合するため、独立性は構造的に低くなる 「照合の結果を、書面か写真で受け取れますか」と聞く。受け取れないなら、自分で現場を見る日を工程表に入れる
工期と手間 分離では設計が終わってから施工の見積・契約に進むため、工程が直列になり期間が伸びる。一貫では並行して進められる 開店希望日から逆算し、分離にした場合に何週間余分に必要かを両社に見積もってもらう
小規模案件での向き不向き 工事金額が小さいほど、契約を2本に分ける事務負担の比率が重くなる。一方で、設備の多い業種では設計が独立している価値が相対的に大きい 自店の工事金額と、厨房・給排水・排気などの設備の量を紙に書き出し、どちらの負担が大きいかを比べる
見積書に並ぶ費目の性格と、設計料との関係
費目 何の費用か/設計料との関係 見積書で自分が確認すること
設計料・デザイン料 図面と仕様書を作る業務への対価。工事の前に大半の作業が終わる。納品物が明確に定まる費目 納品される図面の名称を一覧で書いてもらう。名称が出てこない場合、範囲が固まっていない可能性がある
設計監理料 設計に加えて工事監理を含む対価。工事期間中も作業が続くため、支払時期が工事の進行に連動することがある 監理として現場に入る回数と、報告の方法・時期を書いてもらう。「随時」ではなく回数で答えてもらう
諸経費 工事を実行するための間接費用の集まり。現場事務所費、保険料、運搬費、一般管理費など。設計の人件費が入っている場合がある 「この諸経費に、図面を作る人の人件費は含まれますか」と聞く。含まれるなら設計料の行と重複していないか確かめる
現場管理費 施工者が自分の現場を管理する費用。職人の手配、資材の段取り、工程管理、安全管理など。工事監理とは立場が異なる業務 「この費用で行うのは施工管理ですか、設計図書との照合ですか」と聞く。前者なら監理の有無を別に確かめる
確認申請費・申請手数料 告示別添四が追加的な業務とする許認可等の業務に対応する費目。判断そのものに時間がかかる 「必要かどうかの判断はいつ誰が行いますか」と聞き、必要になった場合の金額の上限を契約前に決めておく
実測費・現地調査費 既存の区画を測り、設備の位置や天井裏の状態を調べる費用。設計の前提になる情報を集める作業 「実測はどこまで行いますか」と聞く。天井裏を開けて見るのか、図面と目視だけかで精度がまったく違う
パース・CG制作費 完成イメージを視覚化する費用。工事を実施するための情報ではないため、設計図書には当たらない 「パースの枚数と、修正が何回まで含まれますか」を確認する。修正回数の超過分の単価も同時に聞く
打合せ費・立会費 打合せの回数や現地立会いに対する費用。定額方式の見積では、回数の上限とセットになっていることが多い 含まれる回数を数字で確認し、超えた場合の1回あたりの単価を聞く。回数が書かれていなければ書いてもらう

図面の権利、解約の精算、安さが高くつく型

途中で会社を変えることは起こります。そのときに図面を使えるかどうかは、契約書で決まります。着工前に文言を入れておけば済む話です。

設計料を削った結果として高くつく型は5つあります。追加工事、やり直し、監理不在、届出の漏れ、引き渡し後の不具合。どれも着工前に手を打てます。

図面をめぐる4つの論点と、契約書に入れておく文言
論点 法律上の扱い 契約書に入れておく内容
著作権は誰のものか 著作権法第10条第1項第5号・第6号が建築の著作物と図面を例示。著作物性は個別判断。会社の従業員の職務著作は同法第15条第1項により原則として法人等が著作者 「本業務の成果物に係る著作権は◯◯に帰属する」と明記する。帰属先を決めるだけで、以降の議論の大半が不要になる
発注者がどこまで使えるか 代金を支払っても、利用の範囲が当然に広がるわけではない。契約に定めがなければ、目的の範囲を超える利用は争いになり得る 「発注者は、本件店舗の建設・改修・維持管理の目的で成果物を無償かつ無期限に利用できる」といった利用許諾の条項を入れる
第三者に渡してよいか 秘密保持の定めがある場合、第三者への開示が制限されていることがある。著作権とは別に、契約上の制約として働く 「発注者は、本件店舗に関する工事・保守のために必要な範囲で、第三者に成果物を開示できる」と書いておく
途中で契約が終わったら 中途解約時の成果物の扱いに法令上の一般規定はない。契約の定めと、支払済みの範囲で判断されることになる 「契約が中途で終了した場合、既に支払われた対価に対応する成果物について、発注者は前項の範囲で利用できる」と定める
電子データを受け取れるか 建築士法第24条の4第2項は事務所側の図書保存を定めるが、発注者へのデータ交付を義務づける規定はない 「成果物は、印刷物および編集可能な電子データで納品する」と形式と時期を明記する。形式名まで書いておく
将来の改装はできるか 著作権法第20条第2項第2号により、建築物の増築・改築・修繕・模様替えによる改変には同一性保持権の規定は適用されない 建物の改変については条文が答えを用意している。ただし図面の転用は別問題なので、利用許諾の条項で手当てする
設計の段階ごとの精算の考え方と、契約前に決めておくこと
解約の時期 精算の考え方(根拠となる条文) 契約前に決めておくこと
初回提案の直後 提案が無償の範囲であれば精算は発生しないことが多いが、範囲が書面で決まっていなければ争いになる 「初回提案は無償か」「無償の範囲はどこまでか」を最初のやり取りで確認し、メールで残す
基本設計の途中 請負なら民法第634条の「注文者が受ける利益の割合」、準委任なら第648条第3項の「既にした履行の割合」で測ることになる 基本設計を何回の打合せに分けるかを決め、何回目まで進んだら何割という区切りを契約書に書く
基本設計の完了時 基本設計図書と工事費概算書が納品されていれば、可分な部分の給付として利益を受けたと評価されやすい 基本設計の成果物の一覧を契約書に列挙し、それが揃った時点を精算の節目として明記する
実施設計の途中 図面の完成度に応じた評価になる。どこまで描けているかを客観的に示す資料がないと交渉が長引く 実施設計を図面の種類ごとに分割し、種類ごとの完了を進捗の指標にすることを取り決めておく
工事契約の直前 設計は完了しているため、設計料の全額が発生していると考えるのが自然。工事監理の部分は未着手 設計料と工事監理料を契約書の上で分けて記載してもらう。分けてあれば、監理分だけを外せる
着工後 民法第641条により、注文者は仕事の完成前ならいつでも損害を賠償して解除できるが、賠償の範囲が争点になる 工事請負契約の解除条項と、設計業務委託契約の解除条項の両方を並べて読み、矛盾がないかを確かめる
設計料の安さが後から高くつく5つの型と、着工前にできる対策
型 何が起きるか 着工前に自分でできる対策
型1|現場決めの積み上げ 細部が図面にないため、現場で施主が決めることになり、決めた分が追加になる。1件が小さいので歯止めがかかりにくい 着工前に「現場で決めることになる項目」を一覧で出してもらい、その場で決めておく。決められない項目は上限額を先に決める
型2|相見積が成立しない 図面の水準が低いため各社が違う想定で見積を出し、金額の差の理由が読めない。最安値が最も安い想定である場合が多い 各社に「見積の前提として想定した仕様」を書き出してもらう。床材・照明器具・造作の3点だけでも揃えば比較の精度が上がる
型3|設備のやり直し 排気・給排水・電気容量の干渉が現場で判明し、仕上げた部分を壊してやり直す。解体・再施工・工期延長が同時に発生する 天井裏と床下の状態を、契約前に実際に開けて確認してもらう。開けられない場合は、判明したときの費用負担を決めておく
型4|監理不在 図面と現場を照合する人がいないため、違いがあっても発注者が気づかない。数年後に不具合として表面化する 「工事監理報告書はもらえますか」と聞く。もらえないなら、下地・配管・配線が隠れる前の写真を工程ごとに提出してもらう
型5|手続きの見落とし 用途変更・消防・保健所の手続きが誰の担当でもない状態になり、着工直前に判明して工程が大きくずれる 必要な手続きを紙に書き出し、それぞれの担当者名を記入する。空欄が残った手続きは自分の担当として扱う

相場の数値がない中で、自分で比較する手順

設計料の相場を示す公的な数値はありません。だから各社に同じ質問状を送って、同じ形で答えてもらいます。業務区分の表をそのまま使えます。

返ってきた答えを並べると、金額ではなく範囲の差が見えます。そこからが比較です。

相見積の比較で、確認できる情報と確認できない情報
知りたいこと 一次情報で確認できるか 確認できない場合、代わりに何をするか
店舗内装の設計料の相場 確認できなかった。国土交通省・中小企業庁・公正取引委員会の公表資料と政府統計を確認した範囲で、店舗内装の設計料水準を示した一次情報は見つからなかった 複数社の見積の業務範囲を揃え、横並びで比較する。絶対水準ではなく相対比較で判断する
設計料の算定の考え方 確認できる。令和6年国土交通省告示第8号の第一が、業務経費・技術料等経費・消費税相当額の合算を標準としている 「人と時間で説明できますか」と聞き、答えられるかを見る。答えられる会社は原価を把握している
設計料に含まれる業務の一覧 確認できる。告示別添一が基本設計・実施設計・意図伝達・工事監理・その他の業務内容と成果図書を列挙している 別添一の一覧をそのままチェックリストとして使い、各社の見積に含まれるかを確認する
新築の場合の標準業務量 確認できる。告示別添三の別表が建築物の類型ごと・床面積ごとの標準業務人・時間数を示している 改修には適用できないと理解したうえで、業務量の桁感を掴むための参考にとどめる
改修工事の設計の基準 確認できなかった。国土交通省のガイドライン自身が「改修工事の設計等に関する業務報酬基準の整備」を今後の課題として挙げている 基準がないことを前提に、業務の範囲と時間数を各社に個別に説明してもらう
店舗改装工事の市場規模 確認できる。建築物リフォーム・リニューアル調査(令和6年度計)で、飲食店2,388億円、物販店舗8,358億円などの受注高が公表されている 自業種の増減を見て、交渉の余地がある時期かどうかの参考にする。設計料の水準は読み取れない
相見積から自分で比較する手順
  1. 各社に同じ質問状を送る。【確認1】の表の6行(企画・基本設計・実施設計・確認申請等・工事監理・意図伝達)を並べ、「それぞれ、御社の見積に含まれますか」という一問一答の形にします。含まれる・含まれない・一部含まれるの三択にして、一部の場合は範囲を書いてもらいます。
  2. 納品される図面の名称を一覧で出してもらう。平面図、天井伏図、展開図、平面詳細図、部分詳細図、建具表、電気設備図、給排水設備図、空調換気設備図といった名称で返ってくるかを見ます。告示別添一の成果図書の一覧が、そのままチェックリストになります。
  3. 工事監理の回数と報告方法を数字で聞く。「随時」「必要に応じて」という回答は数えられません。「週1回・全10回」「着工時・下地完了時・仕上げ完了時の3回」のように、回数と時期で答えてもらいます。
  4. 見積書の費目を8行の枠に振り分け直す。【確認5】の表の8つの費目を空欄にした紙を作り、各社の金額をその欄に移します。移せない金額は「その他」に置き、後で内容を聞きます。この作業で費目の立て方の差が消えます。
  5. 業務の範囲を揃えて金額を再計算する。ある社に工事監理が含まれず、別の社に含まれている場合、含まれていない社に「監理を追加した場合の金額」を出してもらいます。範囲が揃って初めて、金額の差が意味を持ちます。
  6. 差額の理由を1行で書く。各社の金額差について、「A社は実施設計が薄い」「B社は監理が10回入る」というように、理由を自分の言葉で書きます。書けない差額が残ったら、それが次に聞くべき質問です。

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よくある質問

設計料について、実際に相談の場で多く聞かれる質問を4つ挙げます。 いずれも、条文や告示を確認しないと正確に答えられない種類の質問です。 答えの中で数値を示していない箇所は、 一次情報で確認できなかったために示していないと理解してください。

推測で数値を書くよりも、確認できなかったと書くほうが、 読む方の判断にとって有益だと考えています。 なお、以下の回答はいずれも一般的な整理であり、個別の契約の解釈を示すものではありません。 自店の契約について判断が必要な場合は、契約書の実際の条項を持って専門家に相談してください。

「設計料無料」と書かれている会社は、本当に設計にお金がかかっていないのですか?

設計そのものに費用がかかっていないわけではありません。 図面を描く人の人件費は必ず発生しています。 無料と表示できる理由は、大きく三つに分かれます。

第一に、設計に要した費用を工事費のほうに含めて回収している場合です。 この場合、費目として見えないだけで、支払総額には入っています。 第二に、無料で行う設計の範囲が限定されている場合です。

平面プランと簡単なパースまでは無料で、実施設計や工事監理は含まれない、という区分になっていることがあります。 第三に、工事を受注することを条件に無料としている場合です。 他社に工事を発注すると、調査費や設計料を請求されることがあります。

どれも違法でも不誠実でもありませんが、比較の前提が変わります。 確認するべきことは三つです。 「無料の範囲はどこまでですか」 「工事を他社に出した場合はどうなりますか」 「工事費の中に設計に相当する費用は含まれていますか」。

この三つを両社に同じ言葉で聞き、答えを並べてから比較してください。 なお、建築士法第22条の3の4は、設計受託契約または工事監理受託契約を締結しようとする者は、 同法第25条に規定する報酬の基準に準拠した委託代金で契約を締結するよう努めなければならないと定めています。

これは発注する側にもかかる努力義務です。

店舗の設計料の相場は工事費の何パーセントですか?

店舗内装の設計料について、工事費に対する比率を示した公的な統計は、 編集部が国土交通省・中小企業庁・公正取引委員会の公表資料および政府統計を確認した範囲では見つかりませんでした。 したがってこの記事では、相場としての数値は示しません。

国が定める業務報酬基準(令和6年国土交通省告示第8号)も、 工事費に対する比率で報酬を算定する方式は採っていません。

同告示第一は、業務経費、技術料等経費および消費税に相当する額を合算する方法により 算定することを標準とすると定めており、 業務経費は直接人件費・特別経費・直接経費・間接経費の合計とされています。 つまり、国の基準の考え方は「工事費の何パーセント」ではなく「かかる人と時間の積み上げ」です。

工事費に対する比率は、あくまで各社が独自に用いている見積の表示方法にすぎません。 数値の代わりに使えるのは、複数社の見積を同じ土俵に載せる手順です。 設計に関わる費目をすべて拾い出し、 含まれる業務の範囲を各社に書き出してもらい、 同じ範囲に揃えたうえで金額を比べてください。

途中で内装会社を変えたいのですが、もらった図面を次の会社に渡してもいいですか?

契約書の定めを先に確認してください。 図面は著作権法第10条第1項第6号が例示する「学術的な性質を有する図面」に、 また設計された店舗そのものが同項第5号の「建築の著作物」に当たり得ます。 ただし、著作物として保護されるかどうかは個別の判断になり、 すべての図面が当然に著作物になるわけではありません。

実務上より重要なのは、著作権が誰に帰属し、 どこまでの利用が許されているかを契約書がどう定めているかです。 何も書かれていない場合、著作権は作成した側に残るのが原則で、 発注者は代金を払ったからといって自由に転用してよいことにはなりません。

したがって、設計を依頼する時点で、 成果物の著作権の帰属、第三者への開示と利用の可否、 契約が途中で終了した場合の取扱いの三つを契約書に書き込んでおくのが確実です。 すでに図面を受け取っている場合は、次の会社に渡す前に、 作成した会社へ書面で利用の可否を確認してください。

なお、著作権法第20条第2項第2号は、 建築物の増築、改築、修繕または模様替えによる改変には 同一性保持権の規定を適用しないと定めています。

設計だけ先に頼んで、工事は別の会社に出すことはできますか?

できます。 設計を建築士事務所などに委託し、 その図面をもとに複数の施工会社から見積を取る進め方は一般的です。 この形にすると、同じ図面で工事費を競わせられること、 工事の内容を発注者の側に立って確認してもらえること、という二つの利点があります。

一方で、契約が設計業務委託と工事請負の2本になるため、手続きと窓口が増えます。 不具合が出たときに、図面の問題なのか施工の問題なのかで責任の所在を争う場面も生じます。 判断の前に確認することは三つです。

第一に、依頼先が建築士法第23条第1項の建築士事務所登録を受けているか。 第二に、工事監理を誰が行い、その報告をどの頻度で受けられるか。 建築士法第2条第8項は工事監理を 「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」と定義しています。

第三に、設計者と施工者の間の連絡を誰が仲介するか。 小規模な店舗では、契約が2本に増える手間に見合うかどうかを、 工事金額と工期の余裕から判断してください。

まとめ|設計料で確認する8つのこと

設計料100万円が高いかどうかは、金額だけでは決まりません。その100万円で何をしてもらえるかと、削ったときに何が起きるかを並べて初めて判断できます。

「設計料はいくらですか」ではなく「どの業務まで入っていますか」と聞いてください。答え方で、その会社の設計の位置づけが分かります。

設計料と、削ったときに起こり得る出費を同じ単位に翻訳する(編集部の試算例)
金額の内容 試算の内訳(仮の数値) 自店の数字に置き換える手順
設計監理料100万円 客単価3,000円・原価率30%なら粗利2,100円。100万円÷2,100円=約476人。年間300日営業で1日あたり約1.6人 自店の客単価と原価率を入れて粗利単価を出し、提示された設計料を割る。年間営業日数で割って1日あたりに直す
着工後の追加100万円 工事費1,000万円の1割が追加になった場合。粗利2,100円換算で約476人、1日あたり約1.6人 過去に工事を経験していれば、そのときの追加額の割合を使う。初めてなら1割と2割の両方で計算しておく
設備のやり直し50万円 天井を開けて再施工する費用。粗利2,100円換算で約238人、1日あたり約0.8人 自店で天井裏・床下に関わる工事があるかを確認し、ある場合はこの費目を予備費に入れておく
開店2週間の遅れ 家賃30万円の物件で賃料15万円。日商5万円で14日分の売上機会70万円。合計85万円は約405人、1日あたり約1.4人 自店の家賃を日割りし、想定日商を掛けて遅延1日あたりの損失を出す。それに想定遅延日数を掛ける
動線が1動作長い 1動作5秒×1日200回=1,000秒。年間300日で約83時間。時給1,200円なら年間約10万円 厨房やバックヤードで1日に何回繰り返す動作かを数え、秒数を掛ける。人件費単価を掛けて年額に直す
客席が1席増える 客単価3,000円・1日1.5回転・年間300日で年間135万円の売上。粗利2,100円換算なら年間約94万円 自店の想定回転数を入れて、1席あたりの年間粗利を出す。設計料と同じ単位で比べる

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