「そろそろ手を入れたほうがいい」で決めると、外れます。改装で解ける問題かどうかを、先に確かめる必要があります。

20坪を坪25万円で仕上げ直せば500万円。5年で回収するなら月8万3,000円の粗利増が要ります。それが見込めるかどうかが、判断のすべてです。

物差しは6つ。自店の数字、設備の残存年数、税務と資金の周期、契約の残期間、季節性、そして周辺環境。

この記事でわかること

  • 改装の時期を決める6つの物差しと、それぞれを自店の数字・書類・カレンダーのどこから読み取るかの手順
  • 客数・客単価・来店頻度のどれが落ちているかを分解し、その落ち方が改装で解けるものかどうかを先に判定する方法
  • 空調・厨房・給排水・照明について、省令が定める法定耐用年数の実際の数字と、それが寿命ではないと理解したうえでの更新時期の決め方
  • 修繕費と資本的支出の分かれ目、そして補助金の交付決定前に発注すると対象外になるという制度上の期限が、着工時期そのものを縛る仕組み
  • 賃貸借契約の残期間から、いま出してよい投資額の上限を逆算する計算と、借地借家法のどの条文を契約書と突き合わせるか
  • 閑散期に寄せると休業損失がいくら変わるかを、「お客様◯人分」に翻訳する計算例
  • 相談を始める時点から着工までに何か月かかるか、そしてどの時点を過ぎると時期を選べなくなるか
減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一の建物附属設備の耐用年数は、昇降機設備のエレベーターが17年、電気設備(照明設備を含む)が15年、給排水・衛生設備・ガス設備が15年、アーケード・日よけ設備の主として金属製のものが15年、冷房・暖房・通風又はボイラー設備のうち冷凍機の出力が22キロワット以下のものが13年、消火・排煙・災害報知設備が8年、店用簡易装備が3年。
同じ「設備」でも、税務上の年数は3年から17年まで開きます|設備をひとまとめに「そろそろ」と考えると判断を誤ります。ただしこれは税金の計算のための年数で、寿命でも交換の推奨時期でもありません。更新の時期を決めるのは、自店の修理の記録です。

「そろそろ」で決めると外れる理由

外れ方には4つの型があります。早すぎる、遅すぎる、直す場所が違う、そして直しても戻らない。最後の型が、いちばん損をします。

「そろそろ」で決めたときに起きやすい4つの型
決め方 あとから何が起きるか 代わりに自分で確かめること
見た目が古びたから 内装は新しくなったが、落ちていたのが客数ではなく来店頻度だった場合、数字が動かない 直近12か月の客数・客単価・来店回数を月ごとに並べ、どれが落ちているかを1つに特定する
競合が新しい店を出したから 相手を追いかけた仕様になり、自店の強みが薄まる。工事費も相手基準になる 競合の開店月と、自店の客数が落ちた月を並べ、時期が本当に重なっているかを確認する
資金に余裕ができたから 契約の残期間や設備の更新時期と無関係な時点で着工し、数年後に二重の出費になる 賃貸借契約書の期間・更新条項と、主要設備の設置年を1枚の紙に書き出す
設備が壊れたから 緊急対応で機種も工期も選べず、内装を壊して直す工事が別に発生する 修理を呼んだ日付・症状・金額・部品待ちの日数を記録し、故障が増えている機器を先に洗い出す

公的統計で確かめる、改修工事の実際

リフォーム・リニューアル調査に、どの部位の工事が多いかが出ています。自店に置き換える方法も表にしました。

建築物リフォーム・リニューアル調査(令和6年度)から読み取れることと、自店に置き換える方法
調査で確認できた数字 そこから言えること 自店で確かめること
非住宅の受注高 9兆6,984億円(前年度比7.7%増) 非住宅の改修市場は動いている。工事会社の手が空いている前提で日程を組めない 希望する着工月の3〜4か月前に、候補の会社へ日程の空きを問い合わせておく
飲食店 2,388億円(同44.2%増)/物販店舗 8,358億円(同13.8%減) 改装が増える時期は業態ごとに違う。同じ商店街でも隣の業種は参考にならない 自分と同じ業態の近隣店が、この2年で改装したかどうかを歩いて数える
工事目的別(複数回答)で「劣化や壊れた部位の更新・修繕」が45万5,908件 非住宅の改修は、見た目の刷新より劣化対応が圧倒的に多い 自店の工事希望リストを「劣化対応」と「売上のための変更」に色分けし、比率を出す
工事部位別で「建築」28万3,949件に対し「設備」38万1,325件 件数では設備のほうが多い。内装より先に設備の期限が来ることが珍しくない 空調・給湯・厨房・照明の設置年を、機器の銘板か引き渡し書類から拾って一覧にする
部位別で「電気設備」15万632件、「内装」11万4,546件 電気設備の更新件数は内装を上回る。配線と分電盤は工事の順番を縛る 分電盤の空き回路数と契約電力を確認し、増設の余地があるかを先に見ておく
経済センサスの産業別の数字と、自店の計画への使い方
産業(大分類) 設備投資額売上高比率/純付加価値率 自店で計算してみること
全産業(平均) 設備投資額売上高比率 3.5%/純付加価値率 19.9% 自店の年商×3.5%を出し、直近5年で実際に設備へ使った額と比べる
宿泊業,飲食サービス業 設備投資額売上高比率 3.5%/純付加価値率 29.4% 年商×3.5%を「毎年ためるべき額」と置き、いま手元にある改装原資が何年ぶんかを数える
生活関連サービス業,娯楽業 設備投資額売上高比率 3.7%/純付加価値率 16.1% 美容室・サロン・クリーニングなどはここに含まれる。年商×3.7%を目盛りとして使う
卸売業,小売業 設備投資額売上高比率 1.2%/純付加価値率 9.9% 売上に対する投資余力が小さい。什器の入れ替えを何年に分けるかを先に決める
教育,学習支援業 設備投資額売上高比率 9.6%/純付加価値率 46.1% 教室・スクールはここ。投資比率が高い業種として、更新の周期を短めに見積もる

物差し1|客数・客単価・来店頻度のどれが落ちているか

売上を3つに分けます。どれが落ちているかで、改装で解けるかが決まります。

新規の客数が落ちているなら外観や写真の問題、来店頻度が落ちているなら店内の問題。落ち方の形から、先に判定できます。

売上を3つに分ける|指標・取得元・落ちていたときに疑うこと
指標 どこから取るか 落ちていたときに最初に疑うこと
客数(月間のご来店組数) レジの日報の会計件数、予約システムの予約成立件数 外から見えるもの。看板・外観・地図検索の情報・営業時間の表示が現状と合っているか
客単価(1組あたりの会計金額) 月間売上÷会計件数。レジの分析画面に出ていることが多い 中に入ってから決まるもの。席の間隔、照明、メニューの見え方、滞在時間の設計
来店頻度(同じ方が月に何回来るか) 会員システムやポイントカードの来店履歴。なければ予約システムの氏名重複 また来たいかどうか。音・空調・トイレ・待ち時間など、快適さに関わる部分
新規と再来の比率 予約システムの初回・再来のフラグ、または会員登録日 入口が細っているのか、出口から漏れているのか。改装の範囲がここで決まる
時間帯別・曜日別の客数 レジの時間帯別集計。1週間ぶん手で数えても足りる 空いている時間帯が固定しているなら、内装ではなく営業時間や品揃えの問題の可能性
落ち方の形から、改装で解けるかどうかを先に判定する
落ち方の形 読み取れること 改装で解けるか/先にやること
ある月から段差ができ、その後は横ばい 外部要因。競合の開店、通行量の変化、近隣施設の開閉など 改装より先に、その月に何が起きたかを特定する。原因が続いているなら改装しても戻らない
毎月わずかずつ下がり続けている 店の側の劣化、または客層の入れ替わり。もっとも改装が効きやすい形 改装で解ける可能性が高い。何を変えるかの検討に進む
客数は横ばいだが客単価だけ下がっている 注文の中身が変わっている。滞在時間や席の使われ方の変化が背景にあることが多い 席の構成と照明の見直しで動くことがある。値上げの可否を先に検討する
新規は入っているが再来が減っている 入店後の体験に問題がある。音・温度・待ち時間・清潔感のいずれか 改装で解けることが多いが、範囲は限定的でよい。全面改装の理由にはなりにくい
全体が落ちているのに特定の曜日だけ堅い 特定の客層に支えられている。その層が失われると一気に崩れる 改装で客層を変えると、いま支えている層を失う危険がある。着手前に慎重に検討する

物差し2|設備の残存年数

空調、厨房、給排水、照明。法定耐用年数は目安ですが、更新の時期を考える起点になります。

実際の判断には記録が要ります。修理の履歴と、その費用。年に何度も直しているなら、更新のほうが安くなります。

建物附属設備の法定耐用年数(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一)
設備 法定耐用年数 自店で確認すること
店用簡易装備 3年 売場の簡易な装飾や陳列まわりが該当しうる。開店時の見積書でどの費目に入っていたかを確認する
消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備 8年 消防設備点検の報告書を過去3年ぶん並べ、指摘が繰り返されている機器を洗い出す
冷房、暖房、通風又はボイラー設備(冷凍機の出力が22キロワット以下のもの) 13年 室外機の銘板から製造年と出力を読み取る。22キロワットを超えるものは15年区分になる
電気設備(照明設備を含む。蓄電池電源設備を除く) 15年 分電盤の設置年と、契約電力、空き回路の数を確認する。増設できるかで工事の順番が変わる
給排水又は衛生設備及びガス設備 15年 床下や壁内の配管は交換に解体を伴う。図面で経路を確認し、点検口の位置を控えておく
アーケード又は日よけ設備(主として金属製のもの) 15年 外部に面する部分は建物側の所有か自店の造作かを、賃貸借契約書と図面で確認する
昇降機設備(エレベーター) 17年 建物側の設備であることが多い。更新工事の予定を管理会社に問い合わせておく
設備の更新時期を判断するために取る記録
記録する項目 取り方 判断への使い方
修理を呼んだ日付と機器名 作業報告書を機器ごとのクリアファイルに入れる。写真でも足りる 同じ機器で年3回以上呼んでいれば、更新を工事の計画に組み込む段階
症状と交換した部品 作業報告書の「処置」欄をそのまま残す 同じ部品を繰り返し替えているなら、次は本体の更新を検討する
修理費の金額 請求書を機器ごとに集計する。年ごとの合計を出す 年合計が更新費用の一定割合に達したら、直し続けるより入れ替えたほうが総額は下がる
部品の取り寄せにかかった日数 修理を依頼した日と直った日の差を記録する 日数が延びてきたら供給が細っている合図。次の故障は長期化する前提で考える
営業に支障が出た時間 閉めた時間、使えなかった席数や設備を書き添える 1回の故障で失う粗利が計算できる。計画更新と緊急交換の差額の根拠になる
製造年(銘板の記載) 室外機・給湯器・厨房機器の銘板を写真に撮る 部品の保有期間は製造打ち切りからの年数で決まる。メーカーに残存年数を問い合わせる

物差し3|税務と資金の周期

修繕費になるか、資本的支出になるかで、その年の経費が変わります。国税庁の判定基準があります。

補助金の公募時期も、日程に影響します。採択されてから発注が原則なので、逆算に組み込んでおいてください。

修繕費と資本的支出の分かれ目(国税庁タックスアンサーNo.1379)
区分 国税庁が示している基準 改装の時期を決めるときに確認すること
原則として資本的支出になるもの 建物の避難階段の取付けなど物理的に付け加えた部分の金額/用途変更のための模様替えなど、改造または改装に直接要した金額/機械の部分品を特に品質または性能の高いものに取り替えた場合の、通常の取替えの金額を超える部分 自分の工事希望リストのうち、どれが「改造または改装」に当たりそうかを税理士に見てもらう
修繕費とすることができるもの(その1) おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良などであるとき、または一つの修理、改良などの金額が20万円未満のとき 過去に同じ部位をいつ直したかを記録から拾い、周期が3年以内に収まっているかを確かめる
修繕費とすることができるもの(その2) 資本的支出か修繕費か明らかでない金額がある場合で、その金額が60万円未満のとき、またはその資産の前年末の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下であるとき 工事を1回にまとめるか2回に分けるかで判定が変わりうる。金額の切り方を相談する
どちらとも明らかでない場合 上記に該当しない場合は「資本的支出と修繕費の区分の特例(所基通37-14)」により、資本的支出と修繕費に区分することが認められている 見積書の内訳を部位ごと・工種ごとに分けてもらう。一式表記のままでは区分できない
判定の順序 同ページに「修繕費と資本的支出の区分(フロー図)」が掲載されている 相談の前にフロー図に目を通しておくと、税理士との会話が短く済む
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>の日程(2026年8月23日時点で確認できたもの)
段階 第19回/第20回の日付 工事の計画で自分が確認すること
公募要領の公開 第19回:2026年1月28日/第20回:2026年5月27日 公開された時点で対象経費の条件を読み、自分の工事が対象になりうるかを判定する
事業支援計画書(様式4)発行の受付締切 第19回:2026年4月16日/第20回:2026年12月4日 締切以降の発行依頼はいかなる理由でもできない。商工会・商工会議所への相談日を先に押さえる
申請受付締切 第19回:2026年4月30日17:00/第20回:2026年12月15日17:00 この時点で工事の見積書を出せる状態にしておく。内装会社に提出期限を伝える
採択発表 第19回:2026年7月頃の予定 採択されても着工はできない。ここから交付決定までの待ち時間を工程に織り込む
交付決定 採択発表から概ね1〜2か月かかる場合があると公募要領に記載 交付決定通知書に記載された交付決定日から発注できる。着工日はこの日以降で組む
補助事業の実施期限 第19回:交付決定日より2027年6月30日まで 工事も支払いもこの期限までに終える必要がある。工期に余裕がある時期を選ぶ

物差し4〜6|契約の残期間、季節性、周辺環境

契約の残期間より短い回収計画にはできません。残り2年で500万円は、まず回りません。借地借家法の条文と、契約書のどこを読むかを表にしました。

閑散期は数字で確定させます。過去3年の月別売上を並べれば、休業できる時期が出ます。

周辺環境の変化も確かめます。競合が増えたのか、人の流れが変わったのか。改装で解ける問題かどうかは、ここで決まります。

借地借家法の条文と、契約書のどこを読むか
条文 定めている内容 自分の契約書で確認する場所
第26条第1項(建物賃貸借契約の更新等) 期間の定めがある場合、当事者が期間満了の1年前から6か月前までに更新をしない旨または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす(ただしその期間は定めがないものとする) 契約期間の満了日を確定させ、その1年前と6か月前をカレンダーに書き込む
第26条第2項 更新しない旨の通知をした場合でも、期間満了後に賃借人が使用を継続し、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも同様とする 通知を受け取った場合の対応期限を、契約書の通知条項と合わせて確認する
第27条第1項(解約による建物賃貸借の終了) 賃貸人が解約の申入れをした場合、建物の賃貸借は申入れの日から6か月を経過することによって終了する 期間の定めのない契約になっていないか、契約書の期間の条項を確認する
第28条(更新拒絶等の要件) 賃貸人による第26条第1項の通知または解約の申入れは、双方が建物の使用を必要とする事情のほか、従前の経過、利用状況、建物の現況、立退料等の申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができない 建物が老朽化していないか、建替え計画がないかを、管理会社に口頭で確認しておく
第32条第1項(借賃増減請求権) 租税等の負担の増減、価格の変動その他の経済事情の変動、近傍同種の建物の借賃との比較により借賃が不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、将来に向かって増減を請求できる(一定期間増額しない特約があるときはその定めに従う) 賃料の改定条項と、増額しない特約の有無を読む。改装後に賃料交渉が来る可能性を織り込む
第33条第1項(造作買取請求権) 賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合、期間満了または解約申入れによる終了時に、賃貸人に対しその造作を時価で買い取るべきことを請求できる 造作買取請求権を排除する特約が入っていないかを確認する。多くの事業用契約では排除されている
第38条第1項・第6項(定期建物賃貸借) 公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。期間が1年以上の場合、賃貸人は期間満了の1年前から6か月前までの間に終了する旨の通知をしなければ終了を対抗できない 契約書の表題と、更新に関する条項を読む。「更新がない」と書かれていれば残期間が投資の上限になる
契約の残期間別に、取れる選択肢が変わる
残期間 現実的に取れる選択肢 動く前に確認すること
1年未満 可搬の什器・照明・サインの入れ替えなど、持ち出せるものに限定する 更新の意思を貸主に伝え、返答を書面かメールで残す。返答がないうちは大きな発注をしない
1〜2年 回収できない前提で、金額の上限を先に決めて範囲を切る。造作は最小限にする 更新料の有無と金額、更新後の契約期間、賃料改定の可能性を管理会社に確認する
3〜5年 部分改装なら回収の計算が成り立つ。設備更新はこの期間内に済ませられるかを検討する 設備の残存年数と契約の残期間を並べ、期限が先に来るのはどちらかを確定させる
6年以上、または更新の見込みが確かめられた 全面改装が選択肢に入る。設備更新と内装を1回の工事にまとめられる 建物の建替え計画、大規模修繕の予定、区画の再編計画を管理会社に確認する
定期建物賃貸借(更新なし) 残期間がそのまま回収可能期間の上限。再契約の可否は貸主の任意である前提で組む 再契約について現時点の方針を聞き、確約が得られないなら残期間だけで計算する
自店の閑散期を数字で確定させる手順
手順 やること 注意すること
1|月別の売上を並べる 直近24か月ぶんの月別売上を1枚に並べる。2年ぶん見るのは単年の特殊要因を外すため 移転・改装・長期休業があった月には印を付け、比較から外す
2|月別の粗利に直す 売上×粗利率。原価率が季節で動く業態は、月ごとの原価を使う 粗利率は自店の決算書から出す。産業平均の付加価値率を代入しない
3|1日あたりの粗利を出す 月の粗利÷その月の営業日数。月ごとに営業日数が違う点に注意する 休業しても出ていく家賃・リース料・固定給は、この計算とは別に足す
4|休業日数を掛ける 想定する休業日数を掛け、月ごとの機会損失を比べる 工期は見積時点より延びることがある。3割増しでも成立する月を選ぶ
5|職人の手配のしやすさを重ねる 候補月を2つ以上出し、内装会社に日程の押さえやすさを聞く 同業他店も同じ閑散期を狙う。希望月の3〜4か月前には相談を始める
6|告知の期間を逆算する 休業の告知を出す日を決め、常連のお客様への案内方法を決める 告知が早すぎると休業前の来店が減る。再開日を同時に伝えられる状態にしてから出す
周辺環境の変化と、自店への効き方の確かめ方
起きた変化 自店に出る影響 確認の方法
同業の新規開店 新規のお客様が分散する。既存のお客様の一部が試しに流れ、戻るかどうかは体験次第 開店月と自店の新規比率が落ちた月を突き合わせる。3か月後に戻っているかを見る
大型商業施設の開業・閉店 人の流れの経路そのものが変わる。通行量の増減は時間帯によって逆方向に動くことがある 店前の通行量を、開業前と同じ曜日・時間帯に15分ずつ数える。写真より数のほうが確実
近隣のオフィス・工場の移転 平日昼の需要が段差で落ちる。改装では戻らない種類の減少 平日昼と夜、土日の売上比率を移転前後で比べる。落ちた時間帯が固定しているかを見る
道路工事・区画整理・駅の改修 一時的に客足が鈍る。工事の終了とともに戻ることが多い 工事の完了予定を施工者の看板か自治体の公表資料で確認する。終了まで改装を待つ判断もある
近隣の住宅供給・世帯構成の変化 客層が入れ替わる。単価と滞在時間の前提が変わる 自治体が公表している町丁目別の人口・世帯数を、数年ぶん並べて傾向を見る
同業他店の閉店 需要が自店に寄る。席数や設備の容量が先に限界に達することがある ピーク時間帯の待ち時間と、断ったご予約の件数を1か月記録する

部分改装で延命するか、全面改装か

観点ごとに、有利なほうが入れ替わります。契約の残りが短いなら部分、長いなら全面が基本です。

着工から逆算したカレンダーも用意しました。各時点を過ぎると変えられなくなることを書いています。

部分改装と全面改装|観点ごとの違い
観点 部分改装で延命する 全面改装に踏み切る
1回あたりの費用 小さい。ただし繰り返すと累計が膨らみ、比較の対象は「1回」ではなく「累計」になる まとまった資金が一度に必要。借入を伴うことが多く、返済計画と重なる
休業 短い。営業しながら進められる範囲もある。ただし回数ぶん発生する 長い。1回で済むが、閑散期に収まるかを工期の3割増しで確認する必要がある
設備更新との関係 設備は別工事になりやすい。天井や壁を開け直す手間が別に発生する 設備更新をまとめられる。解体と復旧が一度で済み、期限も揃う
税務上の扱い 金額と周期によっては修繕費として処理できる余地がある(No.1379の基準による) 「改造または改装に直接要した金額」として資本的支出になりやすい
契約の残期間との相性 残期間が短いときに向く。持ち出せるものに寄せれば損失をさらに抑えられる 回収できる期間が残っていることが前提。残期間が最短の期限になる
仕上がり 直した部分と古い部分の差が出ることがある。素材や色の在庫が終わっている場合もある 全体のトーンを揃えられる。客層と単価の前提から作り直せる
補助金との相性 販路開拓につながる部分に絞れば対象になりうるが、老朽更新のみでは対象外になりやすい 目的と対象経費の切り分けが必要。交付決定前に発注できないため工程が長くなる
着工から逆算するカレンダーと、各時点を過ぎると変えられなくなること
時期 やること この時点を過ぎると変えられないこと
着工の12か月前 6つの物差しを紙に書き出す。客数・客単価・来店頻度の12か月、設備の設置年、契約の残期間、月別粗利、周辺の変化 この整理をせずに進むと、以降のすべての判断が見た目だけを根拠にしたものになる
着工の10〜12か月前 補助金を使うなら、該当しそうな制度の公募要領を読み、商工会・商工会議所に相談する 公募の締切を過ぎると、次の回まで半年前後待つことになる
着工の8〜10か月前 貸主または管理会社に、更新の意向と建物側の工事予定を確認する。回答は記録に残す 更新の見込みが不明なまま金額を決めると、回収の計算そのものが立たない
着工の6〜8か月前 複数社に相談を開始する。目的・予算の上限・希望する休業期間を伝え、現地を見てもらう 希望する着工月が埋まる。閑散期は同業他店も同じ時期を狙う
着工の4〜6か月前 プランと概算見積もりを比較する。設備更新を含めるかをここで確定させる 設備を含めるかどうかは、この時点を過ぎると図面の作り直しになる
着工の3か月前 契約と実施設計。什器・設備・特注品を発注する 納期の長い設備・什器は、ここで発注しないと着工日に間に合わない
着工の1か月前 休業の告知。常連のお客様への案内、ご予約の調整、地図情報の営業時間の更新 告知が遅れると、休業中のご来店と、再開後の戻りの両方を失う
着工日 閑散期に合わせて実施する。工期は見積の3割増しでも成立する日程で組む 着工後の仕様変更は費用と工期の両方に跳ね返る

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よくある質問

ここでは、改装の時期について実際に多く寄せられる質問を4つ取り上げます。 いずれも、答えが「◯年」という数字にならない種類の問いです。 数字で答えられるものは条文や公表資料を示し、答えられないものは答えられないと書いています。

補助金に関する日付と条件は、2026年8月23日時点で確認できたものです。 年度ごとに内容が変わりますので、実際の申請では必ず最新の公募要領をご確認ください。 税務の判定と契約の解釈は、個別の事情によって結論が変わります。

店舗改装は何年ごとに行うのが一般的ですか?

業種ごとの改装周期を示した公的な統計や業界団体の調査は、今回の取材では見つけられませんでした。 そのため、この記事では「何年ごと」という年数の目安を書いていません。

年数に近い性格を持つ公的な数字としては、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一に定められた法定耐用年数があります。 建物附属設備では、店用簡易装備が3年、消火・排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備が8年です。

冷房・暖房・通風又はボイラー設備のうち冷凍機の出力が22キロワット以下のものが13年、電気設備(照明設備を含む。蓄電池電源設備を除く)と給排水又は衛生設備及びガス設備が15年、昇降機設備のエレベーターが17年とされています。

ただしこれは税金の計算のために定められた年数であり、設備の寿命でも交換の推奨時期でもありません。 実務では、客数・客単価・来店頻度のどれが落ちているか、設備の修理がいつから増えたか、賃貸借契約があと何年残っているかという自店の数字から判断してください。

年数ではなく、この記事の6つの物差しを順に当てるほうが確実です。 特に、契約の残期間より長い回収計画は成り立たないという1点だけでも、先に確認しておく価値があります。

賃貸借契約の残りが2年しかありません。数百万円の改装をしてよいですか?

残り2年で数百万円の投資は、回収の計算が成り立つかどうかを先に確かめてください。 月あたりの粗利増が控えめに見て8万円だとすると、24か月で回収できるのは192万円までです。

ここから休業中に失う粗利と固定費を引いた額が、工事にかけてよい上限になります。 更新できる見込みがあれば計算は変わりますが、その見込みは自分の期待ではなく、貸主または管理会社に確認して初めて前提にできます。

普通建物賃貸借であれば、借地借家法第26条第1項により、期間満了の1年前から6か月前までに更新しない旨の通知がなければ、従前と同一の条件で更新したものとみなされます。 さらに同法第28条は、賃貸人からの更新拒絶や解約の申入れには正当の事由が必要だと定めています。

一方、同法第38条第1項の定期建物賃貸借であれば更新はなく、期間の満了で終了します。 この場合、残期間がそのまま回収可能期間の上限です。

まず契約書の表題と更新に関する条項を読み、普通借家か定期借家かを確定させてから金額を決めてください。 この1点を確認せずに発注した場合、金額の妥当性は誰にも判断できません。

補助金を使いたいのですが、工事はいつ発注すればよいですか?

交付決定の通知を受け取る前に発注や契約をすると、その経費は補助の対象外になります。 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第19回公募の公募要領(第6版)は、補助対象経費の条件として「交付決定日以降に発生し補助事業期間中に支払が完了した経費」を挙げています。

そして補助対象外となる経費に「交付決定前に発注・契約、購入、支払い(前払い含む)等を実施したもの」を明記しています。 同要領はまた、採択通知書だけでは補助事業を始められないこと、交付決定は採択発表から概ね1〜2か月かかる場合があることも書いています。

第19回の実際の日程は、事業支援計画書(様式4)発行の受付締切が2026年4月16日、申請受付締切が2026年4月30日17:00、採択発表が2026年7月頃の予定でした。 つまり申請から着工できる状態になるまで4〜5か月を見る必要があります。

補助金の内容と日程は年度ごとに変わります。 ここに書いた日程は2026年8月23日時点で確認できたものとしてご覧いただき、最新の情報は必ず公式サイトでご確認ください。

なお、同要領は補助対象外の例として「老朽化した既存機械の取替え費用」「単なる取替え更新であって新たな販路開拓につながらない機械装置等」も挙げています。 設備の老朽更新を補助金で賄う計画は、成り立たない可能性が高い点にご注意ください。

空調が古いのですが、壊れるまで待つべきですか?

壊れてから交換すると、交換費用のほかに営業を止める損失が上乗せされます。 緊急対応では機種も工期も選べず、在庫のあるものから選ぶことになります。

判断の材料は年数ではなく、自店に残っている記録です。 修理を呼んだ日付、症状、金額、部品の取り寄せにかかった日数の4つを1年ぶん並べて、修理費の年合計と、修理のために営業に支障が出た時間を出してください。

同じ機器で年に3回以上呼んでいる、部品が在庫限りだと言われた、修理費の年合計が更新費用の一定割合に達した。 このいずれかに当てはまるなら、更新を工事の計画に組み込む段階です。

税務上の扱いも判断に関わります。 国税庁のタックスアンサーNo.1379は、通常の維持管理や修理のための支出は必要経費になる一方、資産の使用可能期間を延長させたり価値を高めたりする部分の支出は資本的支出として区別され、この区別は名目ではなく実質で判定するとしています。

同ページは、おおむね3年以内の周期で行われる修理や、一つの修理・改良などの金額が20万円未満のときは修繕費とすることができるとも書いています。 金額が大きくなる更新は、着工前に税理士に相談してください。

まとめ|改装の時期を決める6つの物差し

回収は「1日◯人」まで割ってください。月8万3,000円が、1日何人分の粗利にあたるか。そこまで出せば、判断は難しくありません。

まず売上を3つに分けることから始めてください。どこが落ちているか分からないまま改装すると、直す場所を間違えます。

回収に使える期間の上限を決める4つの期限
期限 どこから読み取るか 短くなる要因
賃貸借契約の残期間 契約書の期間の条項。定期建物賃貸借なら残期間がそのまま上限 更新の可否が貸主の判断による。建替え計画や大規模修繕の予定があると読みにくくなる
主要設備の残存年数 機器の銘板の製造年と、修理の記録。メーカーへの部品保有期間の問い合わせ 部品供給が終わると、故障した時点で更新が確定する
借入の完済までの期間 返済予定表。追加借入をする場合はその返済期間も重ねる 返済と改装費の回収が重なると、月々の余力が消える
自分が店を続けるつもりの年数 事業承継の予定、健康、家族の事情。数字にはならないが最も強い期限 ここを曖昧にしたまま長期の回収計画を立てると、途中でやめられなくなる
回収の試算で外しやすい4点
外しやすい点 なぜ外れるか 自分でできる対処
売上増を楽観に見積もる 期待値をそのまま計算に入れてしまう。改装直後の一時的な増加を平常値と誤認する 客単価が数%上がる、客数が1割戻る、といった控えめな前提で2通り計算する
休業中の固定費を忘れる 機会損失(失う粗利)と固定費(出ていく家賃・リース料・固定給)は別物 休業日数×1日あたりの粗利に加えて、休業期間の固定費を総額に足す
予備費を取らない 解体後に想定外が出るのは改装では珍しくない。特に配管と下地 工事費の5〜10%を予備費として別に確保し、上限額の計算から除いておく
再開後の戻りに時間がかかる 常連のお客様が戻るまでに数か月かかることがある。回収の開始が遅れる 回収期間の最初の2〜3か月は粗利増をゼロとして計算する

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