内装に600万円かけ、そのうち400万円を借入で賄ったとします。火災で内装が使えなくなれば、返済は残ったまま、もう一度同じ工事が必要になります。

店舗の事故で発生する損失は3種類あります。自分の財産の損失、他人への賠償、そして休業。火災保険が担うのは、このうち1つ目だけです。

確認することは9つ。どれも開店前に、代理店へ渡す紙1枚で片づきます。

この記事でわかること

  • 賃貸借契約でほぼ必ず求められる借家人賠償責任保険が、誰の何を守るための保険なのかを、民法と失火責任法の条文から理解する方法
  • 火災保険の付保対象を建物・造作・設備什器・商品の4つに切り分け、抜けをなくす手順
  • 設備什器の保険金額を時価で決めるか再調達価額で決めるかの判断基準と、保険法第18条・第9条が定める考え方
  • 水漏れで階下を濡らしたとき、お客様がけがをしたときに動く施設賠償責任保険の守備範囲と、食中毒・製造物責任(PL)との切り分け
  • 休業1か月で出ていく固定費を家賃・人件費・借入返済に分解し、「1日あたり何人分の粗利に相当するか」まで落とす計算手順
  • 工事期間中の事故は誰が掛けた保険で処理されるのか(請負業者賠償責任保険・建設工事保険)と、施主が契約前に確認する項目
  • 地震・水災の扱いと、保険金が出ない典型例(経年劣化・免責金額・告知漏れ)を、保険法の条文で押さえる方法
  • 退去時の原状回復義務と保険の関係、そして代理店に渡すべき情報と聞くべき質問の一覧
社員の休業手当30万円、賃料・共益費25万円、借入の返済12万7,700円、アルバイトの人件費10万円、リース料3万円、税理士報酬その他3万円、水道光熱費の基本料金2万円、通信・システム利用料1万円で、合計約86万7,700円。
売上がゼロでも、1か月で約87万円が出ていく|止まらないのは賃料と借入の返済とリース料です。休業補償を選ぶときは、何日目から、何か月分出るのかをこの金額と並べて判断してください。

事故が起きたとき、内装に払った金額はどこへ行くのか

内装は建物ではなく、借主の財産として扱われます。貸主の火災保険では出ません。自分で掛ける必要があります。

店舗で事故が起きたときに発生する3種類の損失と、対応する保険の考え方
損失の種類 起きていること 今日、自店で確かめること
自分の財物が失われる 内装造作、厨房機器、空調、什器、レジ、パソコン、在庫商品が使えなくなる。復旧には工事と再購入が必要で、支払いは自分の資金から出ていく 保険の申込書の控えを開き、「建物」「設備・什器」「商品・製品」のどの欄に、いくらの金額が入っているかを書き出す
他人に対する賠償責任が生じる 貸主が所有する建物を損傷させた、階下のテナントの商品を濡らした、お客様が店内でけがをした。相手の損害額がそのまま自分の債務になる 賃貸借契約書の「保険に加入する義務」を定めた条項を読み、求められている補償の名称と最低保険金額を書き写す
営業が止まる 復旧工事のあいだ売上はゼロになるが、家賃・人件費・借入返済・リース料は止まらない。再開後もお客様が戻るまで時間がかかる 直近1か月の通帳と支払一覧から、売上がゼロでも出ていく金額だけを抜き出して合計する(本記事の休業の章で分解します)

中小企業の加入は「火災保険だけ」で止まっている

日本損害保険協会の実態調査に、種類別の加入率が出ています。賠償と休業の備えは、認知率からして低い。自店がどこにいるかを、この表で確かめられます。

企業向け損害保険の加入率と認知率(日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」n=1,050)と、自店での読み方
保険の種類 加入率/認知率 自店で今日確かめること
火災保険 加入58.6%/認知87.5% 申込書の控えで、対象が建物だけになっていないか、設備什器と商品の欄に金額が入っているかを見る
地震危険補償特約 加入30.9%/認知78.2% 地震による損害が対象になっているか、支払の割合と上限がどう設定されているかを約款で確認する
傷害保険 加入30.9%/認知79.8% 従業員のけがに関する備えが、労災保険とは別に必要かどうかを、勤務形態から検討する
業務災害補償保険 加入22.6%/認知63.5% アルバイトを含めた勤務中のけがについて、労災保険の給付を超える部分の扱いを確認する
施設賠償責任保険 加入17.0%/認知53.8% 水漏れで階下を濡らした場合、看板が落ちた場合、お客様が店内で転んだ場合に動く補償があるかを聞く
請負賠償責任保険 加入12.1%/認知54.0% 出張施術・出張調理・現場作業がある業態かを確認し、店外での作業中の事故の扱いを聞く
生産物賠償責任保険 加入11.4%/認知56.7% 提供した飲食物・販売した商品が原因で健康被害が出た場合の補償があるかを、約款の用語で確認する
休業補償保険 加入11.3%/認知67.7% 営業が止まった期間の家賃・人件費を埋める補償が付いているか、支払対象期間が何か月かを確認する

失火責任法があっても、貸主に対する責任は消えない

失火責任法は、隣家への賠償を軽減する法律です。けれども貸主に対しては、賃貸借契約上の原状回復義務が残ります。だから借家人賠償責任保険が要ります。

火災を起こしたときの相手ごとの責任の整理と、確認すべき条文
相手 責任の根拠と結論 自店で確認すること
隣の建物の所有者 民法第709条の不法行為責任が根拠だが、失火ノ責任ニ関スル法律により失火の場合は適用されない。ただし重大な過失があるときは責任を負う 厨房の油の管理、電気配線の状態、消火設備の点検記録など、「重大な過失」と言われかねない放置がないかを写真で記録する
建物の貸主 賃貸借契約に基づく債務不履行(民法第415条)と、善良な管理者の注意義務(民法第400条)、原状回復義務(民法第621条)が根拠。失火責任法の適用は及ばないと整理されるのが一般的 賃貸借契約書の保険加入義務条項を読み、求められている補償の名称・最低保険金額・契約期間の条件を書き写す
上下階・隣のテナント 火災であれば失火責任法の対象になり得るが、水漏れなど失火以外の原因では民法第709条の不法行為責任が問題になる 給排水管の位置、食洗機・製氷機・給湯器の設置場所を図面で確認し、階下に何があるかを把握しておく
店内にいたお客様 建物や設備の管理に起因するけがについては、施設の管理者としての責任が問題になる 段差、濡れやすい床、可動什器、天井から吊る照明など、けがにつながり得る箇所を開店前に洗い出す

開店するときに確認する9つのこと

まず何にいくら掛けるかを積み上げます。内装、什器、機器、在庫。分類ごとに金額の出し方が違います。

時価と再調達価額の違いは、いちばん効く分岐です。時価だと、同じ内装をもう一度作るお金は出ません。

工事期間中の保険もあります。引き渡し前は施工者の保険ですが、施主が確認しておくことがあります。

確認1〜9の一覧|どの事故のときに効くのか
番号と確認事項 どんな事故のときに効くか 今日実行すること
確認1|借家人賠償責任 自店が火元になり、貸主が所有する建物を損傷させたとき 賃貸借契約書の保険条項と、申込書の借家人賠償の保険金額を突き合わせる
確認2|付保対象の切り分け 内装造作・厨房機器・什器・在庫のいずれかが失われたとき 工事の内訳書と什器リストを見ながら、建物・造作・設備什器・商品の4つに分類する
確認3|評価額の決め方 保険金を受け取ったが、同じ設備を入れ直すには足りなかったとき 設備什器の保険金額が時価と再調達価額のどちらの考え方かを代理店に確認する
確認4|施設賠償責任 水漏れで階下を濡らした、看板が落ちた、お客様が店内で転んだとき 給排水設備の位置と階下の用途を確認し、施設賠償の有無を申込書で調べる
確認5|生産物賠償(PL)と食中毒 提供した飲食物や販売した商品が原因で健康被害が出たとき 食品を扱う業態かどうかを踏まえ、生産物賠償の対象範囲と付随費用の扱いを聞く
確認6|休業補償 復旧工事のあいだ営業できず、固定費だけが出ていくとき 売上ゼロでも出ていく金額を1か月分合計し、補償の対象期間と突き合わせる
確認7|工事期間中の保険 引渡し前に、工事中の事故で内装や第三者に損害が出たとき 工事請負契約書の保険条項を読み、施工会社の保険証券の写しを求める
確認8|地震・水災の扱い 地震で什器が倒れた、豪雨で店内が浸水したとき 約款で地震・噴火・津波と水災の扱いを確認し、ハザードマップで立地を調べる
確認9|保険金が出ない典型例 請求したが、経年劣化・免責金額・告知の問題で支払われなかったとき 免責金額の設定額と、申込時に申告した業種・設備の内容を控えで確認する
付保対象の分類と、金額の積み上げ方
分類 含まれるものの例 金額の根拠をどこから取るか
建物(貸主所有) 躯体、外壁、共用部分、貸主が最初から設置していた設備 原則として貸主が保険を掛ける範囲。賃貸借契約書で所有と管理の区分を確認し、自分の保険の対象外であることを明確にする
造作(借主が費用負担) 天井・壁・床の仕上げ、造作カウンター、造作棚、追加した電気・給排水設備、間仕切り 工事の内訳書から、建物に固定される工事項目だけを抜き出して合計する
設備・什器 厨房機器、空調の室内機、冷蔵庫、製氷機、レジ、パソコン、可動什器、施術用機器 購入時の請求書とリース契約書を並べ、自己所有とリースを分けたうえで自己所有分を合計する
商品・製品・材料 在庫、食材、販売用商品、施術用の薬剤や消耗品 在庫が最も多くなる時期の棚卸金額を基準にする。季節で大きく動く業態は最大月で見る
時価と再調達価額の違いと、判断のしかた
考え方 保険金の出方と注意点 自店で確認すること
時価による評価 使用年数の経過を反映した現在の価値で算定される。保険法第18条第1項の原則的な考え方にあたる。古い設備ほど受取額が小さくなり、買い直しには足りないことがある 設備什器のうち、取得から5年以上経過しているものの一覧を作り、その合計額を出す
再調達価額による評価 同等のものを新たに調達する金額を基準に算定される。復旧に必要な金額との差が小さくなる一方、保険料は高くなる傾向がある 申込書に記載された保険金額が、いま同じものをそろえた場合の見積り額と近いかを比べる
約定保険価額を置く 保険法第18条第2項は、約定保険価額があるときはその金額で算定するとしている。ただし保険価額を著しく超えるときは保険価額による 約定の有無と、その金額の根拠になった資料(見積書・請求書)を保管しているかを確認する
超過保険を避ける 保険法第9条により、契約時に保険金額が保険価額を超えていた場合、超過部分について契約を取り消せるとされている 什器の入替えや売却で保有資産が減ったときに、保険金額を下げる連絡をしているかを振り返る
店舗で起きやすい賠償事故と、確認すべきこと
場面 誰にどんな損害が出るか 今日、自店で確かめること
給排水設備からの漏水 階下テナントの天井・内装・商品・什器が濡れる。相手が営業できなくなれば、その分の損害も問題になる 図面で給排水管の経路を確認し、階下に何のテナントが入っているか(食品か、衣料か、電子機器か)を管理会社に聞く
看板・外装の落下 通行人のけが、駐車車両の破損。歩道に面した袖看板は風の影響も受ける 看板の取付年と、直近の点検記録があるかを施工会社に確認し、写真を残す
店内でのお客様の転倒 段差、濡れた床、めくれたマット、暗い足元でお客様が転倒しけがをする 開店前に自分で店内を歩き、つまずきやすい箇所と滑りやすい箇所を書き出して対策を決める
預かった物の破損・紛失 コートやかばんを預かる業態で、汚損・紛失が起きる。施設賠償の対象になるとは限らない 預かり物の扱いが補償の対象かどうかを代理店に質問し、回答を書面かメールで残す
工事期間中の保険と、施主が確認すること
保険の区分 何を対象にするか/誰が掛けるのが一般的か 施主が確認すること
建設工事保険 工事の目的物そのものが工事期間中に損害を受けた場合に備える。施工会社が手配することが多い 工事請負契約書の保険条項を読み、加入の有無と保険金額を書面で確認する
請負業者賠償責任保険 工事に起因して第三者の身体・財物に損害を与えた場合の賠償責任に備える。施工会社が手配することが多い 証券の写しを求め、対象工事の記載と保険期間が今回の工事をカバーしているかを見る
施主支給品の扱い 施主が自分で購入して現場に持ち込んだ什器や機器は、施工会社の保険の対象外とされる場合がある 支給品の一覧と搬入日を作り、保管責任がどちらにあるかを議事録に残す
引渡し前後の切れ目 施工会社の保険は引渡しで終わり、店舗側の保険は開始日から始まる。日付がずれると空白期間が生じる 引渡し予定日を確認し、自分の保険の始期をその日以前に設定できるか代理店に相談する
保険金が支払われない典型例と、契約前に潰しておくこと
類型 なぜ支払われないのか 今日から実行できる対策
経年劣化・摩耗 偶然の事故ではなく、時間の経過や通常の使用による劣化と判断されるため 給排水設備・厨房機器・空調の点検日と内容を記録する台帳を作り、写真を添えて残す
免責金額の範囲内 契約時に設定した自己負担額までは支払われないため。小規模な事故ほど該当しやすい 申込書の控えで免責金額を確認し、直近の想定される小事故の修理見積りと比べる
告知内容と実態の相違 保険法第4条の告知義務に反し、故意または重大な過失で事実を告げなかったと判断された場合、保険法第28条第1項により契約を解除され得るため 申込時に申告した業種・火気の使用・営業時間・設備の内容が、いまの実態と一致しているかを見直す
用途や設備を変えたのに連絡していない 契約後に危険の程度が変わったにもかかわらず通知していない場合、支払に影響する定めが置かれていることがあるため 厨房機器の追加、業態の変更、営業時間の延長があったら、その月のうちに代理店へ連絡する
対象外の事象だった 地震・噴火・津波、戦争その他の変乱など、そもそも対象外と定められている事象だったため 約款の「保険金を支払わない場合」の見出しだけを通しで読み、該当しそうな項目に付箋を貼る

休業1か月で出ていく固定費を、分解して数える

家賃、人件費、リース料、通信費、返済。売上がゼロでも出ていくお金を分解すると、休業補償にいくら掛けるべきかが決まります。

休業1か月で出ていく固定費の分解(15坪の飲食店を想定した計算例)
費目 1か月の金額(例)と考え方 自店で確認する方法
賃料・共益費 25万円。建物が使えない状態でも、契約で減額の定めがなければ原則として発生し続ける 賃貸借契約書で、建物が使用できない場合の賃料の取扱いを定めた条項があるかを確認する
人件費(社員の休業手当) 社員2名の平均賃金の合計が月50万円として、労働基準法第26条が定める平均賃金の60パーセント以上で30万円 直近3か月の賃金台帳から平均賃金を算出し、60パーセントに相当する金額を出しておく
人件費(アルバイト) シフトを止めれば変動費に近いが、雇用を維持する場合は休業手当の対象になり得るため、ここでは10万円を計上 雇用契約書でシフトの定め方を確認し、休業時の取扱いを事前に決めて書面にする
借入の返済 12万7,700円。1,000万円を年利2.0パーセント・7年・元利均等で返済する場合の毎月返済額として計算 返済予定表を開き、元金と利息の内訳と毎月の引落日を書き出す
リース料 3万円。設備を使っていなくても契約期間中は支払いが続く リース契約書で中途解約の可否と残債の扱いを確認する
水道光熱費の基本料金 2万円。使用量がゼロでも基本料金は発生する 直近12か月の請求書から、最も使用量が少ない月の金額を確認する
通信・システム利用料 1万円。回線、予約システム、レジのサービス利用料など 毎月引き落とされているサービスの一覧を作り、停止できるものとできないものを分ける
税理士報酬・その他 3万円。顧問料、各種会費、社会保険料の事業主負担分など 通帳の自動引落しを3か月分さかのぼり、毎月出ている項目をすべて書き出す
合計 約86万7,700円。売上がゼロでも、1か月でこの金額が出ていく 自店の数字で同じ表を作り、合計欄を赤で囲んでおく

保険はいつから効かせるのか

契約日、引渡し日、開店日。この3つの間に、保険の切れ目ができやすい。什器を先に搬入する期間が、いちばん危ない時期です。

開業までの日付と、保険をどう合わせるか
日付 その時点で誰が何の責任を負うか 確認・手配すること
賃貸借契約の締結日 契約上の義務が発生する。物件の引渡しを受ければ、保存義務も生じる 契約書の保険加入義務条項を読み、開始日を賃貸借の開始日に合わせられるか代理店に相談する
鍵の引渡し日 物件を現実に使える状態になる。施工会社が入る前でも、鍵は借主が管理している 鍵の受渡しの記録を残し、誰が何本持っているかを一覧にする
工事の着工日 施工会社が現場を占有する。工事に起因する事故は施工会社側の保険が受け持つのが一般的 工事請負契約書の保険条項と、施工会社の保険証券の写しを取得する
設備の搬入日 自分で購入した機器が現場に置かれる。施工会社の保険の対象外とされる場合がある 搬入日と品目を記録し、その時点から自分の保険の対象になるかを代理店に確認する
工事完了・引渡し日 占有が施工会社から店舗側に戻る。施工会社の工事保険はこの時点で役割を終える 引渡し日を確定させ、自分の火災保険の始期がその日以前になっているかを確認する
開店日 お客様が来店し、商品の提供が始まる。施設賠償や生産物賠償が現実に必要になる 開店日までに、賠償に関する補償が有効になっているかを証券で確認する

加入までの手順と、代理店に渡す情報

賃貸借契約書の保険条項を書き写すところから始めます。求められている補償の名称と、最低保険金額が書いてあります。

代理店に渡す情報も決まっています。渡す情報が具体的なほど、提案は正確になります。

代理店に渡す情報と、その情報が必要な理由
渡す情報 なぜ必要か どこから取るか
賃貸借契約書の写し 求められている補償の条件、造作の帰属、原状回復の範囲が、保険の設計の前提になるため 不動産会社から受け取った契約書一式。特約条項の別紙も忘れずに含める
工事の内訳書 造作の金額を積み上げる根拠になり、保険金額の妥当性を説明できるため 施工会社の見積書と最終請求書。一式計上の項目は内訳を出してもらう
什器・設備の一覧 設備什器の保険金額の根拠になり、自己所有とリースの区別も明確になるため 購入時の請求書、リース契約書、減価償却の資産台帳
平面図と設備の位置 火気の位置、給排水の経路、階下の用途が、危険の評価と補償の設計に影響するため 設計事務所または施工会社から受け取った竣工図
固定費の月額表 休業に関する補償を、何か月分・いくらで設計するかの根拠になるため 本記事の休業の章の表に自店の数字を入れたもの
業態と営業の実態 告知事項として申告する内容そのものであり、事故時に必ず確認されるため 営業時間、提供する商品、火気の使用状況、従業員数を書き出したメモ
保険に加入するまでの手順
  1. 賃貸借契約書の保険条項を書き写す。求められている補償の名称、最低保険金額、契約期間の条件をそのまま紙に書き出します。所要は30分程度です。
  2. 資産の一覧を作る。工事の内訳書と什器の請求書から、造作・設備什器・商品の3つに分けて金額を積み上げます。半日から1日を見ておいてください。
  3. 固定費の月額を出す。本記事の休業の章の表に、自店の数字を入れて合計します。通帳とリース契約書があれば2時間ほどで作れます。
  4. この3点を持って代理店に相談する。複数の代理店に同じ資料を渡すと、提案の違いが補償の設計の違いとして見えるようになります。
  5. 提案を受けたら、対象・金額・免責・期間の4点で比べる。保険料の総額だけで比べると、補償の薄い提案が安く見えます。
  6. 重要事項説明書と約款の「保険金を支払わない場合」を通しで読む。分からない語句には印を付け、質問を一覧にして回答を書面かメールでもらいます。
  7. 申込書の控えと証券を、賃貸借契約書と同じ場所に保管する。更新時期を賃貸借契約の更新時期と揃え、カレンダーに登録します。

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よくある質問

ここでは、開業前後の店舗経営者から実際に多く寄せられる疑問を4つ取り上げます。 いずれも、この記事の本文で扱った内容を、質問の形に置き換えたものです。 回答は一般的な仕組みの説明であり、個別の商品の内容を保証するものではありません。

繰り返しになりますが、保険の内容は商品ごとに異なり、この記事は一般的な仕組みの説明です。 加入の判断は必ず約款と重要事項説明書を読み、代理店や保険会社に確認してください。 以下の回答も、そのうえで「何を聞けばよいか」を組み立てるための材料としてお使いください。

不動産会社から勧められた保険にそのまま入ってもよいですか?

まず前提として、保険の内容は商品ごとに異なり、この記事は一般的な仕組みの説明です。 加入の判断は必ず約款と重要事項説明書を読み、代理店や保険会社に確認してください。

そのうえで申し上げると、不動産会社が案内する保険は、 賃貸借契約書が求める条件、つまり借家人賠償責任の補償があること、 保険金額が一定額以上あること、契約期間が賃貸借期間をまたぐことを満たすように組まれていることが多く、 その意味では契約違反にならない選択です。

ただし、賃貸借契約書が求めているのは貸主に対する賠償の担保が中心であり、 自分の設備什器や内装造作をいくらで評価するか、 営業が止まった期間の固定費をどう埋めるかまでは契約書の関心事ではありません。

したがって、案内された内容をそのまま受け入れるのではなく、 設備什器の保険金額がいくらで設定されているか、 その金額は時価と再調達価額のどちらの考え方か、 休業に対する補償が付いているかどうかの三点だけは、申込書の控えで自分の目で確認してください。

保険業法第294条の2は、保険募集を行う者に対し、顧客の意向を把握し、 それに沿った提案と内容の説明、そして顧客の意向と契約内容が合致していることを確認する機会の提供を行うことを求めています。 質問をすることは制度上も前提とされた行為です。

内装工事に600万円かかりました。火災保険の保険金額はいくらに設定すればよいですか?

金額そのものは物件と契約内容で変わるため一律には決まりませんが、決め方の順序は共通しています。 第一に、工事費600万円のうち、どこまでが貸主の所有する建物で、 どこからが自分の所有する造作および設備什器なのかを、 工事の内訳書と賃貸借契約書の造作の帰属条項で切り分けます。

第二に、自分の所有と整理された部分について、 同じものを今もう一度そろえるといくらかかるかを積み上げます。 第三に、その金額を時価で評価するのか再調達価額で評価するのかを決めます。

保険法第18条第1項は、てん補すべき損害の額は 損害が生じた地および時における価額によって算定すると定めており、これが時価の考え方の基礎です。 同条第2項は、約定保険価額があるときはその金額によると定めています。

使用年数の経過した設備を時価で評価すると、 事故のときに受け取れる金額は取得時より小さくなり、同じ設備を入れ直すには足りないことがあります。 なお、保険金額を実際の価額より大きく設定しても、 その差額分の保険料が無駄になるだけで、受け取れる金額が増えるとは限りません。

保険法第9条は、契約時に保険金額が保険の目的物の価額を超えていたことについて 契約者と被保険者が善意で重大な過失がなかったときは、 その超過部分について契約を取り消すことができると定めています。 多すぎても少なすぎても損をするため、根拠のある金額を積み上げることが唯一の対策です。

上の階からの水漏れで内装が濡れ、営業できなくなりました。自分の保険から出ますか。相手に請求できますか?

二つの経路があり、どちらが動くかで手元に残る金額も時間も変わります。 ひとつは、自分が掛けている火災保険の水濡れに関する補償から、 自分の内装造作や設備什器の損害を受け取る経路です。

もうひとつは、水漏れを起こした上階の入居者や建物所有者に対して、 民法第709条の不法行為責任などを根拠に賠償を求める経路です。

相手に過失があれば後者が成り立ちますが、原因の特定に時間がかかること、 相手が施設賠償責任保険などに加入していなければ支払能力の問題が残ることから、 復旧が遅れやすいという現実的な弱点があります。

なお、火災の場合に隣家との関係で語られる失火ノ責任ニ関スル法律は、 民法第709条を失火の場合に適用しないとする規定であり、水漏れそのものには及びません。

実務上まず確認していただきたいのは、自分の保険の申込書で水濡れに関する補償が対象になっているか、 免責金額がいくらに設定されているか、 そして営業が止まった期間の固定費を埋める補償が付いているかの三点です。

あわせて、水がどこから来たかを示す写真と、 営業を止めた日と再開した日の記録を、その日のうちに残してください。

地震で内装が壊れたら、火災保険で直せますか?

地震、噴火、またはこれらによる津波を原因とする損害は、 火災保険の基本的な補償では対象外とされているのが一般的で、 地震による損害に備えるための補償を別に付けるかどうかという判断になります。 ここで注意していただきたいのは、店舗と住宅で制度が異なる点です。

損害保険料率算出機構が公表している地震保険付帯率は、同機構の定義によれば 当該年度に契約された火災保険のうち住宅物件の契約件数に対する割合であり、 2024年度は全国平均70.4パーセントで、統計開始以降はじめて70パーセントを超えました。

この数値は居住用建物および家財を対象とした地震保険のみの数値で、各種共済は含まれません。 つまり、この70.4パーセントという数字は住宅の話であり、 店舗の契約にそのまま当てはめることはできません。

事業用の物件で地震による損害に備える場合は、 火災保険に地震に関する補償を特約として付ける形が一般的で、 支払割合や上限の設定も商品ごとに異なります。 判断の前に、約款で対象となる事象の範囲、支払の割合、免責金額を必ず確認し、 代理店や保険会社に説明を求めてください。

この記事は一般的な仕組みの説明であり、個別の商品の内容を保証するものではありません。

まとめ|店舗の保険で確認する9つのこと

保険は、掛けすぎても掛けなさすぎても損をします。内装にいくらかけたか、休業1か月でいくら出るか。この2つの数字が出れば、必要な補償は決まります。

まずは賃貸借契約書の保険条項を読んでください。そこに、最低限やるべきことが書いてあります。

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