「標準的な店舗で◯◯万円ほどです」と言われても、その中身も、工事会社を選べるのかも分かりません。けれど、加盟する前に書面で確かめられます。

本部の指定業者が、指定の仕様で施工する契約が多いためです。確認することは7つ。すべて法定の書面に書いてあります。

この記事でわかること

  • 契約の前に書面をもらえる根拠と、そこに何が書かれるか(中小小売商業振興法)
  • 内装の義務が書かれる正確な場所。書いていなければ義務はない、という読み方
  • 加盟金・保証金の性質と返還の条件が、書面のどこで確かめられるか
  • 類似店舗の収支から、内装費の回収年数を逆算する手順
  • 契約期間が投資の回収に足りているかを見る観点(公正取引委員会の考え方)
  • 契約が終わったときの内装と競業禁止で、確認しておく点
加盟前に確認することと、法定開示書面のどこに書かれるか、書いていなければどう読むかを並べた表。内装の義務は施行規則第10条第17号に書かれる。書いていなければ特別の義務はないということ。加盟金に何が含まれるかは施行規則第11条の表の一に書かれる。書いていなければ内装費が別途になる可能性がある。定期的に払う金銭は表の八と第10条第13号に書かれる。書いていなければ回収の計算ができない。類似店舗の収支は表の七に書かれる。書いていなければ回収年数を自分で置くしかない。契約期間と更新解除は表の五に書かれる。書いていなければ投資回収と合っているか判断できない。契約中と終了後の営業制限は第10条第11号に書かれる。書いていなければ制限はないということ。違約金は第10条第18号と表の五のニに書かれる。書いていなければ中途解約の負担が読めない。
書面の「どこに書いてあるか」を先に押さえます|法定開示書面は項目が決まっています。その項目に何も書かれていないこと自体が情報です。

内装費は、自分で決められない場合がある

相見積が取れない、仕様を変えられない、金額の根拠が見えない。代わりに、立ち上げの速さと統一感が得られます。

自分で内装会社を選ぶ場合との違い
項目自分で選ぶ場合本部の指定がある場合
見積もりの比較3社に取って比べられる比較できないことがある。単価の妥当性を自分で確かめる
仕様の決定予算に合わせて削れる統一仕様のため、削れる範囲が限られる
工期会社と直接調整する本部の承認が工程に入る
追加費用が出たとき工事会社と直接交渉する本部を経由することがある
契約終了時賃貸借契約の原状回復のみ商標・意匠の使用停止も加わる

この表は、書面と契約書を読むときの観点を整理したものです。実際にどちらになるかは、加盟しようとしているチェーンによって異なります。次の章から、どこを読めば分かるかを扱います。

加盟前に確認する7つのこと

そのまま使える聞き方を表に入れました。説明会の場で読み上げて構いません。

7つの確認事項と、そのまま使える聞き方
確認すること書面のどこを見るかそのまま使える聞き方
1. 書面をもらう—「契約前にお渡しいただく書面を、先に拝見できますか」
2. 内装の義務施行規則第10条第17号「店舗の構造・内外装について、特別の義務はありますか」
3. 加盟金の中身施行規則第11条 表の一「この金銭の性質と、返還の条件を教えてください」
4. 工事会社の指定同第10条第17号の記載内容「工事会社は選べますか。相見積もりは取れますか」
5. 類似店舗の収支施行規則第11条 表の七「立地条件が類似すると判断した根拠を教えてください」
6. 契約期間施行規則第11条 表の五「契約期間は何年で、更新の条件は何ですか」
7. 終了時の扱い同第10条第11号・第18号「契約終了後の営業の制限と、違約金の算定方法を教えてください」

確認1|契約の前に、書面をもらえる

中小小売商業振興法第11条第1項により、契約の前に書面が交付されます。

中小小売商業振興法 第11条第1項が定める記載事項
号条文の文言内装に関係する部分
第一号加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項内装費が加盟金に含まれるかを読む起点
第二号加盟者に対する商品の販売条件に関する事項什器や備品を本部から買う条件がここに出る
第三号経営の指導に関する事項研修の有無。開店前の日程に関わる
第四号使用させる商標、商号その他の表示に関する事項看板とサインの仕様に直結する
第五号契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項投資の回収期間と突き合わせる
第六号前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項ここに18項目。内装の義務も含まれる

出典:中小小売商業振興法(e-Gov法令検索)第11条第1項の条文を確認して作成。同項の括弧書きで、特定連鎖化事業は「連鎖化事業であつて、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの」と定義されています。同法の「中小小売商業者」は小売業に属する事業を主たる事業として営む者と定義されており(同法第2条第2項)、法律の本文に飲食業への言及はありません。ただし中小企業庁は、特定連鎖化事業を「いわゆる小売・飲食のフランチャイズ・チェーン」と説明しています(小売商業対策に関するよくある質問)。自分が加盟しようとしているチェーンが法定開示の対象になるかは、本部に直接ご確認ください。

確認2|内装の義務は、第17号に書いてある

ここを読めば、自分で選べる範囲が分かります。

施行規則 第10条のうち、内装と費用に関わる号
号条文の文言読み取れること
第十七号加盟者の店舗の構造又は内外装について加盟者に特別の義務を課すときは、その内容内装の縛りの全体。ここが空欄なら義務はない
第十三号加盟者から定期的に金銭を徴収するときは、当該金銭に関する事項毎月出ていく金額。回収の計算に使う
第十号加盟者の店舗の周辺の地域において同一又は類似の小売業を営む店舗を、本部が自ら営業し又は他の者に営業させる旨の規定の有無及びその内容近くに同じチェーンが出る可能性
第十一号契約の期間中又は契約の解除若しくは満了の後、他の特定連鎖化事業への加盟禁止、類似事業への就業制限その他加盟者が営業活動を禁止又は制限される規定の有無及びその内容やめたあとに何ができなくなるか
第十八号特定連鎖化事業を行う者又は加盟者が契約に違反した場合に生じる金銭の額又は算定方法その他の義務の内容違約金。中途解約の負担
第七号加盟者の店舗のうち、立地条件が類似するものの直近の三事業年度の収支に関する事項回収年数を逆算する材料(確認5)
第六号直近の三事業年度における加盟者の店舗の数の推移に関する事項増えているか、減っているか

出典:中小小売商業振興法施行規則(e-Gov法令検索)第10条の条文を確認して作成。同条は全18号あり、上記はそのうち内装と費用に関わるものです。「特定の商品や原材料を指定の先から仕入れる義務」を正面から定めた号は、第10条・第11条には見当たりませんでした。関連するのは法第11条第1項第2号の「商品の販売条件に関する事項」です。仕入先の推奨制度については、後述の公正取引委員会の考え方で開示が望ましい事項として挙げられています。

確認3|加盟金に、何が含まれているか

内装費が加盟金に含まれるのか、別なのか。施行規則第11条が記載内容を定めています。

施行規則 第11条が求める、金銭についての記載内容
記載事項書面に書かれる内容内装との関係で見るところ
加盟に際し徴収する金銭(表の一)イ 額または算定方法/ロ 加盟金、保証金、備品代その他の徴収する金銭の性質/ハ 徴収の時期/ニ 徴収の方法/ホ 返還の有無及びその条件「備品代」が挙がっているのは、什器の費用がここに入りうるため。ロで内装費が含まれるかを読む
定期的に徴収する金銭(表の八)イ 額または算定に用いる売上・費用等の根拠を明らかにした算定方法/ロ 性質/ハ 徴収の時期/ニ 徴収の方法毎月の固定費。内装費の回収に使える粗利がここで削られる
契約の期間・更新・解除(表の五)イ 契約の期間/ロ 更新の条件及び手続き/ハ 解除の要件及び手続き/ニ 契約解除によつて生じる損害賠償金の額又は算定方法回収の年数と、途中でやめた場合の負担
商標等の使用条件(表の四)イ 使用させる商標、商号その他の表示/ロ 使用の条件があるときは、その内容看板とサインの仕様。外装費に直結する
商品の販売条件(表の二)イ 販売し、または販売をあつせんする商品の種類/ロ 代金の決済方法什器や消耗品を本部から買う場合の条件

出典:中小小売商業振興法施行規則第11条の表を確認して作成。同表は全8項目あり、上記はそのうち費用と内装に関わるものです。開業にかかる費目の全体像は店舗開業にかかる費用の全体像、内装工事の見積書の読み方は店舗内装の見積書で確認する7つの費目で扱っています。

確認4|工事会社を選べるか、相見積もりを取れるか

指定があっても、内訳の開示は求められます。指定の有無ごとに、できることを表にしました。

指定の有無ごとに、できること
状況確かめる方法その場でできること
第17号に何も書かれていない書面の該当欄が空欄自分で内装会社を選ぶ。3社に相見積もりを取る
仕様の指定のみ第17号に仕様の内容が書かれているその仕様書を渡して、複数社に見積もりを取る
工事会社の指定がある第17号に指定の旨が書かれている内訳の明細を求める。「一式」の中身を聞く
本部を通した発注になる第17号と、法第11条第1項第2号の記載本部が上乗せする分があるか、あるならその率を聞く
書面に記載がなく、口頭で指定される書面と説明が食い違っている書面に追記してもらうよう求める

見積書を突き合わせる手順は店舗内装の見積もり比較で見る7つのポイント、坪単価で判断を誤る理由は店舗内装の坪単価はいくらかで扱っています。指定がある場合でも、坪単価の水準を知っておくと、質問の精度が上がります。

確認5|類似店舗の収支から、回収を逆算する

類似店舗の収支を出してもらい、内装費を「1日何人」に翻訳します。

内装費600万円を「1日何人」に翻訳する(すべて仮の例)
段階計算結果
内装と設備の投資加盟金とは別に、内装・什器で(仮)600万円
回収の期間契約期間5年(60か月)で置く月あたり10万円の粗利
売上に換算粗利率60%で割り戻す月16.7万円の売上
1日あたり月26日営業で割る1日6,400円
人数に換算客単価800円で割る1日8人
定期的に払う金銭を引くと売上の5%をロイヤルティとすると(仮)必要な売上はさらに増える。表の八の数字で計算し直す

この600万円・5年・粗利率60%・客単価800円・ロイヤルティ5%は、計算の手順を示すための仮の数値です。実際の数字は、書面の表の七(類似店舗の収支)と表の八(定期的に徴収する金銭)から取ってください。類似店舗の収支は、加盟した店舗の実績であって、自店の予測ではありません。立地条件が類似すると判断した根拠を必ず確認してください。事業計画書に落とす手順は店舗開業の事業計画書はどう書くかで扱っています。

確認6|契約期間は、投資の回収に足りるか

5年契約で10年かけて回収する計画は成り立ちません。

公正取引委員会が挙げている、加盟者募集時に開示が望ましい事項
項目原文の文言内装との関係
[1]加盟後の商品等の供給条件に関する事項(仕入先の推奨制度等)什器・資材の仕入先が指定されるか
[3]加盟に際して徴収する金銭の性質,金額,その返還の有無及び返還の条件法定開示と重なる。書面で確かめる
[4]加盟後,本部の商標,商号等の使用,経営指導等の対価として加盟者が本部に定期的に支払う金銭の額,算定方法,徴収の時期,徴収の方法回収の計算に使う
[6]事業活動上の損失に対する補償の有無及びその内容並びに経営不振となった場合の本部による経営支援の有無及びその内容想定を下回ったときにどうなるか
[7]契約の期間並びに契約の更新,解除及び中途解約の条件・手続に関する事項投資の回収期間と突き合わせる
[8]加盟後,加盟者の店舗の周辺の地域に,同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無及びその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無及びその内容近隣に同じチェーンが出ると、売上の前提が変わる

出典:公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(平成14年4月24日、最終改正 令和3年4月28日)の「2 本部の加盟者募集について」より。これは開示が望ましい事項であって、法定の開示義務ではありません。中小企業庁の資料によれば、このガイドラインは小売・飲食にかぎらずすべての業種のフランチャイズ・チェーンに適用されます。当ガイドは法律の専門家ではありません。契約書の具体的な条項については、弁護士など専門家にご相談ください。

確認7|契約が終わったとき、内装はどうなるか

原状回復の義務が残ることがあります。撤去の費用まで、回収の計算に入れてください。

契約が終わったときに残るもの
残るものどの契約から生じるか加盟前に確かめること
看板・サインの撤去フランチャイズ契約(商標の使用)撤去の費用を誰が負担するか
内装の原状回復物件の賃貸借契約スケルトン戻しか、居抜きで渡せるか
造作の扱い両方本部の意匠が入った造作を、第三者に譲渡できるか
営業の制限フランチャイズ契約(第10条第11号)期間・地域・業種の範囲
違約金フランチャイズ契約(第10条第18号)中途解約した場合の算定方法
保証金の返還フランチャイズ契約(第11条 表の一ホ)返還の有無と、その条件

原状回復の範囲と契約書の読み方は店舗の原状回復でトラブルを避ける7つの対策、造作を売る側の視点は店舗の造作譲渡で退去費用を回収する、閉店の全工程は店舗を閉めるときの手順で扱っています。内装費を何年で償却するかは税務の話にもなります。耐用年数の考え方は店舗内装工事の減価償却と耐用年数をご覧ください。

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よくある質問

法定開示書面は、どの業種のフランチャイズでももらえますか?

中小小売商業振興法が書面の交付と説明を義務づけているのは、特定連鎖化事業を行う者です(同法第11条第1項)。同法の「中小小売商業者」は小売業に属する事業を主たる事業として営む者と定義されており(同法第2条第2項)、法律の本文に飲食業への言及はありません。

ただし中小企業庁は、特定連鎖化事業を「いわゆる小売・飲食のフランチャイズ・チェーン」と説明しています。一方、公正取引委員会のガイドラインは、中小企業庁の資料によればすべての業種のチェーンに適用されます。自分が加盟しようとしているチェーンが法定開示の対象になるかは、本部に直接ご確認ください。

内装工事の会社を、自分で選ぶことはできますか?

契約の内容によります。施行規則第10条第17号は「加盟者の店舗の構造又は内外装について加盟者に特別の義務を課すときは、その内容」を書面の記載事項として挙げています。指定の工事会社を使う義務があるなら、ここに書かれているはずです。

逆にここに何も書かれていなければ、特別の義務はないということになります。書面を読んだうえで、指定の有無と、相見積もりを取れるかを本部に確認してください。

加盟金に、内装費は含まれますか?

含まれるかどうかは本部によって異なります。施行規則第11条は、加盟に際し徴収する金銭について、額または算定方法、加盟金・保証金・備品代その他の徴収する金銭の性質、徴収の時期、徴収の方法、返還の有無とその条件を記載するよう定めています。

「性質」を記載する義務があるので、その金銭が何の対価かは書面で読み取れる形になっています。内装費が加盟金と別建てなら、見積書を別に受け取れるかを確認してください。

契約が終わったら、内装はどうなりますか?

本部の商標や意匠を使った内装は、契約が終われば使えなくなるのが通常です。あわせて物件の賃貸借契約による原状回復の義務も残ります。この2つは別の契約から生じるため、両方を確認する必要があります。

また契約終了後の競業禁止について、公正取引委員会は「本部の商権の維持,本部が加盟者に対して供与したノウハウの保護等に必要な範囲を超えるような地域,期間又は内容の競業禁止義務を課すこと」を、優越的地位の濫用に該当し得る行為として挙げています。

当ガイドは法律の専門家ではありません。契約書の該当条項は、弁護士など専門家にご相談ください。

まとめ|書面を先に読み、金額をあとで比べる

順番があります。書面を先に読み、金額をあとで比べる。逆にすると、比べる材料が手に入りません。

法定書面は請求すればもらえます。もらえない、見せられないと言われたら、それ自体が判断材料です。

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