居抜きで判断が止まるのは、目の前にあるものが自分の資産になるのか、これから出ていく費用になるのかが見ただけでは分からないからです。

混ざりやすい言葉が3つあります。残置物、造作譲渡、貸主の設備。どれに当たるかで、壊せるかどうかも、退去時の義務も変わります。

判定の視点は7つ。残存年数、能力、法令適合、部品の入手、所有権、撤去費用、そして責任の所在です。

この記事でわかること

  • 残っている設備を1つずつ判定するための7つの視点と、視点ごとに何を確かめれば結論が出るか
  • 国税庁の耐用年数表にある年数が税法上の区分であって寿命ではない理由と、それでも判定に使える使い方
  • 「前の店が営業できていたのだから通るはず」が成り立たない保健所・消防・建築の3系統の理由と、根拠になる条文
  • メーカーの補修用性能部品の保有期間を、型番と製造年から自分で確かめる手順
  • 造作譲渡・貸主の所有・リース残債の3つの所有形態を内覧の場で見分ける方法
  • 厨房・電気・給排水・空調・内装仕上げの設備別の判定一覧と、内覧時に自分で確認できること
  • 浮いた金額と、壊れたときの損失を「1日何人分の粗利」に翻訳する計算手順(編集部の試算例)
給排水の配管位置と電気の引込容量は使えることが多い。排気ダクト、グリストラップ、空調、給湯器は条件つき。厨房機器と造作家具・什器は個別に判定。床・壁・天井の仕上げは多くが更新になる。
居抜きの価値は、動かせないものが合っているかで決まります|給排水と電気の位置・容量が合えば大きな節約になりますが、仕上げは多くが更新になります。前の店の内装が気に入ったことは、居抜きを選ぶ理由になりません。

「残っている」と「使える」は違う

判定を始める前に、3つの言葉を分けて、情報の入手先を決めます。誰に聞けば分かるかが決まれば、判定は進みます。

混ざりやすい3つの言葉を分ける
言葉 実際に問うていること 内覧時・契約前に自分で確認できること
残っている 現物がその場に据え付けられている、という事実だけを指す。所有権にも動作にも触れていない 譲渡対象の一覧を書面でもらい、写真の1台ずつと突き合わせて、一覧にない機器に印をつける
使える 通電・通水して動き、能力が自分の業態に足り、法令にも適合している状態を指す その場で電源を入れてよいか立会人に聞き、動いた様子を日付の入る設定で動画に残す
使いたい 自分の営業計画で本当に出番があるか。前の店に必要でも自分には不要な機器がある 開店1週間分の想定メニューを紙に書き、使う機器に印をつけて、印のない機器を数える
7つの視点と、判定に必要な情報の入手先
視点 何を判定するか 内覧時・契約前に自分で確認できること
視点1|残存年数 法定耐用年数の区分と、銘板に書かれた実際の設置年・製造年 銘板を1台ずつ撮影し、型式・製造番号・製造年月を表に書き写す
視点2|能力 容量・台数・処理能力が、自分の業態のピーク時に足りるか 自分の想定席数とピーク時の同時使用機器を紙に書き、既存の容量と並べる
視点3|法令適合 保健所・消防・建築の現行基準を、いまの状態で満たしているか 図面と写真を持って保健センターと所轄消防署の予防課に事前相談する
視点4|保証と部品 メーカーの補修用性能部品がまだ供給されているか、保証は残るか 型式と製造番号をメーカーの窓口に伝え、部品供給の可否を口頭で確認する
視点5|所有権 造作譲渡の対象か、貸主の所有物か、リース残債が付いているか 譲渡対象一覧・賃貸借契約書・リース契約書の3つを書面で見せてもらう
視点6|撤去と原状回復 更新したくなったときの費用と、退去時にどこまで戻す約束か 契約書の原状回復条項と造作買取請求権の条項を、申込み前に読む
視点7|責任の所在 流用した設備が壊れたとき、誰が費用を負担する取り決めか 譲渡契約書に現状有姿の文言があるかを探し、動作確認の日を書き入れる

公的統計で確かめられること、確かめられないこと

改修工事の受注件数は、部位別に公表されています。ただし居抜きの流用率を示す統計はありません。

非住宅建築物の改修工事|主たる工事部位別の受注件数(令和7年度第2四半期、国土交通省)
工事部位 主たる工事部位としての受注件数 居抜きの判定でこれが意味すること
電気設備 200,666件(前年同期比68.6%増、複数回答の部位別では246,255件) 既存の電気が「そのまま使える」前提を置かず、分電盤の写真を必ず持ち帰る
空気調和換気設備 143,583件(同28.8%増、部位別では177,168件) 空調と換気は更新の対象になりやすい。室内機の製造年を全台数ぶん記録する
給水給湯排水衛生器具設備 124,548件(同35.6%増、部位別では152,794件) 給湯器と水まわりの器具は消耗品と考え、号数と製造年を控えておく
内装 136,572件(同23.0%増、部位別では153,818件) 仕上げは更新が前提。残す部分を決めるのではなく、残せる部分を探す姿勢で見る
総数(非住宅建築物) 906,407件 母数として控え、上の各部位が全体の何割かを自分で計算してみる

視点1〜2|残存年数と、能力

国税庁の耐用年数表は税務上の年数であって、壊れるまでの年数ではありません。そう断ったうえで、目安としては使えます。

実際の設置年は銘板で分かります。見つからないときの手がかりも表にしました。

能力は自分の業態に足りるかで判定します。同じ業態の居抜きでも、ずれやすい箇所が3つあります。

店舗に関係する主な法定耐用年数(国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」)
区分と細目 法定耐用年数 内覧時・契約前に自分で確認できること
建物附属設備/電気設備(照明設備を含む。)のその他のもの 15年 分電盤の扉裏に貼られた竣工年月または改修記録の日付を撮影する
建物附属設備/給排水・衛生設備、ガス設備 15年 水道メーターとガスメーターの検定満了年月を読み、写真に残す
建物附属設備/店用簡易装備 3年 陳列棚まわりの造作や簡易な間仕切りが、どれくらい前のものかを立会人に聞く
建物附属設備/アーケード・日よけ設備(主として金属製のもの) 15年 テントやオーニングの生地の傷み、骨組みのさびを外から撮影する
器具備品/冷房用・暖房用機器 6年 室内機と室外機の銘板を全台数ぶん撮影し、製造年月を一覧にする
器具備品/電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気・ガス機器 6年 冷蔵庫・製氷機の庫内温度計を見て、実際に設定温度まで下がるか確かめる
器具備品/陳列だな、陳列ケース(冷凍機付・冷蔵機付のもの) 6年 ショーケースの冷凍機が運転しているか、庫内に霜が厚く付いていないかを見る
器具備品/看板、ネオンサイン、気球 3年 看板の点灯を夜間に確かめ、表示面の退色と枠のさびを写真に残す
器具備品/理容・美容機器 5年 シャンプー台の昇降・給湯の動作を、立会人の同意を得て実際に動かす
機械装置/飲食店業用設備 8年 厨房機器を1台ずつ表にし、型式・製造番号・製造年月の3列を埋める
機械装置/洗濯業・理容業・美容業・浴場業用設備 13年 同じ表を作り、空欄が残った機器に「メーカー照会」と書き込む
機械装置/飲食料品小売業用設備 9年 物販の設備も同じ表で管理し、冷蔵・冷凍を伴う機器を先頭に並べる
銘板が見つからない・読めないときの代わりの手がかり
手がかり そこから分かること 内覧時・契約前に自分で確認できること
点検・修理のステッカー 直近に業者が入った日付と会社名。修理履歴をたどる入口になる ステッカーを撮影し、記載された会社に「この機器の履歴を教えてもらえるか」と聞く
冷媒の種類の表示 冷凍機に使われている冷媒。古い冷媒の機種は年式が古い可能性が高い 室外機や冷凍機の表示を撮影し、型式とあわせてメーカーに照会する
分電盤の竣工札・改修札 電気設備がいつ入ったか。設備全体の年代を推し量る基準になる 分電盤の扉を開けてよいか立会人に確認し、扉裏の札を撮影する
水道・ガスメーターの検定満了年月 メーターの更新時期。建物の設備更新の周期を推し量る材料になる メーターの表示を撮影し、満了年月が近い場合は管理会社に更新予定を聞く
能力の項目ごとに、不足すると何が起きるか
能力の項目 不足したときに営業で起きること 内覧時・契約前に自分で確認できること
電気の主幹容量 ピーク時にブレーカーが落ちる。冷蔵庫が止まり、食材を捨てることになる 分電盤の主幹ブレーカーの表示(アンペア)を撮影し、動力の有無を目で確かめる
ガスの供給圧とメーター容量 複数口を同時に使うと火力が落ちる。仕込みの時間が読めなくなる ガスメーターの型式表示を撮影し、都市ガスかLPガスかを立会人に確認する
給湯の号数 洗い場とシンクを同時に使うと湯温が下がる。洗浄の効率が落ちる 給湯器の銘板の号数を撮影し、同時に湯を使う箇所を図面に数え上げる
排気(フードとダクト)の風量 煙と熱がこもり、客席までにおいが回る。近隣からの申し出につながる フードの寸法をメジャーで測り、ダクトが屋外へ抜ける経路を目で追って撮影する
給気の経路 排気だけ強くなり、扉が重くなる。換気が回らず室内が負圧になる 給気口がどこにあるかを探し、見つからない場合はその旨をメモに残す
冷蔵・冷凍の容量 仕込みを置く場所がなくなる。仕入れの回数が増え、人件費が上がる 庫内の有効寸法をメジャーで測り、想定する仕込み量が入るかを数字で比べる
排水の口径と勾配 ピーク時に流れが追いつかず、シンクの水位が上がる 床の排水口の位置を平面に描き写し、既存のシンクからの距離を測る
グリース阻集器の容量 清掃頻度が上がる。においが出て、清掃を委託する費用が毎月かかる ふたを開けてよいか確認し、内部の寸法を測って写真に残す
空調の能力と吹き出し位置 間仕切りを変えた場所だけ効かない。夏場に客席の一部が使えなくなる 吹き出し口の位置を天井伏図に落とし、自分の席配置案と重ねてみる
同業態の居抜きでもずれやすい3か所
ずれる箇所 同業態でもずれる理由 内覧時・契約前に自分で確認できること
調理法の違い 同じ和食でも、焼き物中心と揚げ物中心では発生する熱と油煙の量が変わる 想定メニューを20品書き出し、揚げ物・焼き物・蒸し物の割合を数える
営業時間帯の違い 昼のみだった区画で夜間営業をすると、空調負荷も近隣への音の影響も変わる 前の店の営業時間を立会人に聞き、自分の想定時間と紙の上で並べる
回転数と席数の違い 席数が同じでも回転数が上がれば、洗浄・冷蔵・排水の負荷は比例して増える 1日の想定お客様数を書き出し、前の店の座席数で割って回転数を出す
寿命の年数を書かない理由
  1. 機器の側面・背面・扉の内側・脚元を順に見て、銘板を探す
  2. 銘板を、文字が読める距離で1台ずつ撮影する(型式・製造番号・製造年月・電源仕様が入るように)
  3. 撮影した写真を、機器名・設置場所とあわせて表に書き写す
  4. メーカーの修理受付窓口に電話し、型式と製造番号を伝えて「製造年」と「補修用の部品がまだ供給されているか」を聞く
  5. 回答を表の右端に書き込み、部品が供給されていない機器に印をつける
  6. 印のついた機器を「更新前提」として、開業時の予算に入れ直す

視点3〜4|法令適合と、部品の入手

前の店が営業できていたことは、いまの基準を満たしている証明にはなりません。名古屋市の共通基準と、消防の3条文で確認します。

部品には保有期間があります。製造終了から何年で供給が終わるか。メーカーに型式を伝えれば教えてもらえます。

名古屋市「営業施設の基準」の共通基準のうち、居抜きで確認が必要になりやすい項目
基準の項目 条文が求めていること 内覧時・契約前に自分で確認できること
共通基準 三 チ(手洗い設備) 流水式手洗い設備を必要な個数有し、水栓は洗浄後の手指の再汚染が防止できる構造であること 手洗いの水栓を1か所ずつ撮影し、ハンドルを手でひねる型かどうかを見る
共通基準 三 ニ(床と内壁) 床面は不浸透性の材質で排水が良好であること。内壁は床面から容易に汚染される高さまで不浸透性材料で腰張りされていること 厨房の床にコップ1杯の水を流し、排水口に向かって流れるかを目で見る
共通基準 三 ハ(清掃のしやすさ) 床面、内壁および天井は、清掃、洗浄および消毒を容易にできる材料で作られ、容易に行える構造であること 天井と壁の入隅、機器の裏側に手が届くかを実際に手を入れて確かめる
共通基準 三 リ(排水設備) 十分な排水機能を有し、汚水の逆流により食品を汚染しないよう配管され、配管は十分な容量を有すること 排水口のふたを開けてよいか確認し、内部の詰まりとにおいを確かめて撮影する
共通基準 三 ヲ(便所) 作業場に汚染の影響を及ぼさない構造であり、専用の流水式手洗い設備を有すること 便所の位置と厨房との位置関係を平面に描き、便所内の手洗いの有無を確認する
共通基準 三 タ(更衣場所) 従事者の数に応じた十分な広さがあり、作業場への出入りが容易な位置にあること 更衣に使える場所があるかを図面上で探し、想定する従業者数と並べる
共通基準 二(区画) 作業区分に応じて間仕切り等により必要な区画がされ、住居その他の室が同一建物にある場合はそれらと区画されていること 厨房と客席、厨房と住居部分の境界が壁や扉で仕切られているかを確認する
消防の3つの条文と、居抜きの判定でそれが意味すること
条文 条文が定めていること 内覧時・契約前に自分で確認できること
消防法第17条第1項 飲食店などの防火対象物の関係者は、政令で定める技術上の基準に従って消防用設備等を設置し、維持しなければならない 天井の感知器、誘導灯、消火器の位置を撮影し、数と設置場所を平面に描き写す
消防法第17条の2の5第2項第4号 特定防火対象物は、基準改正時の既存不適格の救済(同条第1項)の対象外とされている 自分の業態が特定防火対象物に当たるかを、所轄消防署の予防課に電話で確認する
消防法第17条の3の3 関係者は消防用設備等を定期に点検させ、その結果を消防長または消防署長に報告しなければならない 直近の点検報告書の写しを、貸主または管理会社に見せてもらえるか聞く
補修用性能部品の保有期間(全国家庭電気製品公正取引協議会「製造業表示規約」別表3から抜粋)
製品名 保有期間(製造打切後) 居抜きの判定で自分が確認できること
電気冷蔵庫 9年 型式をメーカーに伝え、その型式の製造がいつ終わったかを聞く
エアーコンディショナー 9年 室内機と室外機の両方の型式を控え、それぞれについて供給状況を聞く
電子レンジ 8年 厨房で使う加熱機器の型式を一覧にし、まとめて1回の電話で照会する
冷水器 8年 客席用の冷水器や給茶機が譲渡対象かどうかを一覧で確かめる
電気洗濯機 6年 おしぼりやリネンを自店で洗う場合、洗濯機の年式も判定対象に入れる
換気扇 6年 厨房と便所の換気扇を数え、それぞれ回るかどうかを実際に確かめる
電気掃除機 6年 清掃用品が譲渡対象に含まれるかを一覧で確認し、含まれるなら状態を見る
電気コンロ 5年 電気式の加熱機器は保有期間が短めであることを踏まえ、更新前提で考える
照会の回答パターンと、それを受けてどう判定するか
メーカーの回答 その機器の位置づけ 契約前に自分がやること
部品は供給中で、当面続く見込み 流用の候補として残せる。ただし保証がないことは変わらない 修理を頼める会社が近くにあるか、出張対応の範囲を同じ電話で聞いておく
部品の供給は数年内に終わる見込み 「使えるが、期限つき」。更新時期を先に決めて資金を積む対象 終了予定の時期をメモし、その年の予算に入れ替え費用を書き込む
部品の供給はすでに終了している 次に壊れたら終わり。開業直後に止まる可能性を織り込む 入れ替え費用を見積もり、造作譲渡料の交渉材料として書面にする
型式が古く、記録が残っていない 判定不能。判定できないものは「更新前提」に分類する この機器を除いた状態で採算が合うかを、もう一度計算し直す
メーカーに聞く手順と、聞く内容
  1. 銘板の写真から、型式と製造番号を書き出す
  2. メーカー名で検索し、業務用機器の修理受付窓口の番号を調べる(家庭用と別の窓口になっていることが多い)
  3. 型式と製造番号を伝え、「製造年」「その型式の製造がいつ終わったか」「補修用の部品はいまも供給されているか」の3点を聞く
  4. 供給が終わっている場合は、「代替の機種はあるか」「入れ替える場合の設置条件(電源・給排水・寸法)は同じか」を続けて聞く
  5. 聞いた内容を、機器の一覧表に日付とあわせて書き込む
  6. 供給が終わっている機器を合計し、その入れ替え費用を開業予算に加える

視点5〜7|所有権・撤去費用・責任の所在

所有形態は3つ。リース残債が残っているものは、勝手に処分できません。確認する書面を表にしました。

流用した設備が、あとで費用になる場面が4つあります。退去時の原状回復が、その代表です。

流用して不具合が出たとき、誰が直すのか。4者の責任の切れ目を、契約前に書面へ足してください。

3つの所有形態と、それぞれの見分け方
所有形態 どういう状態か 内覧時・契約前に自分で確認できること
前テナントの所有物(造作譲渡の対象) 前のテナントが自費で入れたもの。譲渡契約で自分に所有権が移る 譲渡対象一覧に型式と製造番号が書かれているかを確かめ、現物と照合する
貸主(建物側)の所有物 建物に元から付いている設備。使わせてもらう立場で、勝手に撤去できない 賃貸借契約書の別表や設備一覧に載っているかを確認し、載っていれば撤去不可と考える
リース会社の所有物 リース契約中の機器。所有権はリース会社にあり、前テナントに処分権がない 機器にリース会社の管理シールが貼られていないかを1台ずつ探して撮影する
所有権まわりで確認する3つの書面
書面 そこで確かめること 契約前に自分で確認できること
造作譲渡対象一覧 譲渡の対象と対象外の切り分け。対象外の残置物を誰が処分するか 一覧に「型式・製造番号・数量」の3項目が書かれているかを見て、なければ書き足してもらう
賃貸借契約書(別表・設備一覧を含む) 建物側の設備がどこまでか。造作買取請求権を放棄する条項があるか 「造作」「買取」「原状回復」の3語を目次と本文から探し、該当条項に付箋を貼る
リース契約書(該当機器がある場合) 残債の有無、契約期間、中途解約の条件、再リースの可否 リース会社名と物件番号を控え、譲渡の可否を自分でリース会社に電話して聞く
流用した設備が、あとで費用になる4つの場面
場面 何が費用になるか 内覧時・契約前に自分で確認できること
営業中に故障して入れ替える 機器の代金に加えて、搬出入と設置の費用、そして工事日数ぶんの営業停止 いちばん大きい機器の寸法を測り、扉・階段・エレベーターの開口寸法と比べる
レイアウトを変えたくなる 給排水と電気の位置を動かす工事。床を開ける場合は復旧も必要になる 床の排水口と分電盤の位置を平面に落とし、動かせない点として印をつける
退去時に原状回復する 自分が入れていない造作の撤去費用まで負担する可能性がある 契約書の原状回復条項を読み、「スケルトン」「現状有姿」の語の有無を確かめる
次のテナントに譲渡する 譲渡できれば回収になるが、貸主の承諾がなければ譲渡自体ができない 契約書に造作譲渡の可否と、貸主の承諾を要する旨の条項があるかを探す
搬出入経路で測る5か所
測る場所 測る寸法 内覧時に自分で確認できること
建物の入口 扉の有効開口(幅と高さ)、風除室がある場合は2枚の扉の間の奥行 扉を開けた状態でメジャーを当て、開口の実寸を撮影する
共用廊下 いちばん狭い箇所の幅と、曲がり角での回転に必要な寸法 廊下を端から歩き、消火器や配管で狭くなっている箇所を測る
階段 踏面の幅、踊り場の広さ、手すりから壁までの有効寸法 踊り場で機器を回せるかを、実際に手を広げて見当をつける
エレベーター かごの内寸(幅・奥行・高さ)、扉の開口、積載荷重 かご内の表示板を撮影し、積載荷重と定員を控える
自店の入口と厨房の入口 扉の有効開口、厨房への出入口の幅、天井までの高さ 厨房の入口で幅を測り、既存の冷蔵庫の幅と比べてみる
4者の責任の切れ目と、契約前に書面へ足すこと
相手 根拠になる契約と条文 契約前に自分で書面に足せること
造作を売る前テナント 造作譲渡契約。民法第559条により売買の規定が準用され、第562条・第566条・第572条が働く 動作確認を行う日を契約書に書き込み、確認した機器の一覧に双方が署名する
建物の貸主 賃貸借契約。民法第621条の原状回復と、契約書の特約 建物側設備の修繕をどちらが負担するかを、機器ごとに一覧で確認する
内装工事会社 請負契約。民法第636条・第637条。既存機器は工事の範囲外になりやすい 見積書に「既存機器の接続のみ」と書かれている項目を探し、保証の有無を確認する
機器のメーカー 製品の保証。中古で譲り受けた場合は基本的に働かない 有償の保守契約を結べるかを、型式を伝えたうえで問い合わせる

設備別の判定一覧

厨房、電気、給排水、空調、内装の仕上げ。設備ごとに、見る場所と判定の基準を表にしました。内覧の場で順に当てはめてください。

厨房まわりの判定
設備 判定の考え方 内覧時・契約前に自分で確認できること
排気フードとダクト ルートが確保されていることは大きな利点。ただし風量が自分の調理法に足りるかは別問題 フードの外形寸法を測り、ダクトが屋外へ抜ける経路を建物の外から目で追って撮影する
ダクト内部の汚れ 清掃で済むか交換が必要かで費用が変わる。長年清掃していないダクトは火災の面でも見過ごせない フードのグリスフィルターを1枚外し、内側の油の付き方を撮影する(外してよいか確認のうえ)
グリース阻集器 容量の基準は名古屋市にはなく、算出書を出して確認を受ける。前の店の容量が自分に合うとは限らない ふたを開けてよいか確認し、内寸(幅・奥行・深さ)を測って写真に残す
冷蔵庫・冷凍庫・コールドテーブル 止まると営業が止まる。製造年と部品供給の可否で判定し、分からなければ更新前提 電源を入れてよいか確認し、庫内温度が設定まで下がる時間を計って動画に残す
製氷機 給水と排水の両方に接続されている。庫内の衛生状態と、製氷能力が自分の客数に足りるかを見る 1日の必要製氷量を客数から概算し、銘板の製氷能力(kg/日)と比べる
食器洗浄機 電気・給水・給湯・排水のすべてに関わる。能力と、洗浄温度が保てるかを見る ピーク時の食器点数を概算し、銘板のラック処理能力(ラック/時)と比べる
ガスレンジ・フライヤー 比較的単純な構造で流用しやすいが、ガスの種類(都市ガス/LPガス)が合っているかが前提 銘板のガス種表示を撮影し、建物のガスメーターの種類と一致するか確かめる
シンクと作業台 ステンレスの什器は傷みにくく、流用の価値が高い。ただし槽の数と大きさが基準に関わる シンクの槽数と各槽の内寸を測り、保健センターに図面を持って相談する
手洗い設備と水栓 現行の施設基準で構造が定められている項目。手でひねる型は交換の対象になる 手洗いの位置と個数を平面に描き、水栓の操作方式を1か所ずつ撮影する
厨房の床(防水と勾配) 下地が生きていれば仕上げの張り替えで済む。防水が切れていれば打ち直しになる コップ1杯の水を床に流し、排水口へ向かうか、途中でたまるかを見る
電気の判定
項目 判定の考え方 内覧時・契約前に自分で確認できること
主幹ブレーカーの容量 足りていれば大きな利点。足りなければ引込工事が必要で、建物側の事情に左右される 分電盤の扉を開けてよいか確認し、主幹の表示を撮影して数値を控える
動力(三相200V)の有無 業務用の冷凍機や大型の空調に必要。あとから引くと費用と期間がかかる 分電盤に三相の表示があるか、動力用のメーターが別に付いているかを見る
分岐回路の数と余り 機器を増やすと回路が足りなくなる。空き回路があれば追加工事が小さく済む 分電盤の中の空きスペースと、使われていないブレーカーの数を数えて撮影する
既存の配線の状態 露出配線や仮設のような配線は、やり直しの対象になる可能性がある 天井裏や機器の裏側の配線を撮影し、工事会社に見てもらう材料にする
照明器具 器具そのものは流用できることが多いが、光源の種類と器具の年式で判断が変わる 器具の台数を数え、点灯しないものに印をつけて写真に残す
分電盤そのものの年式 電気設備の法定耐用年数は15年。盤自体が古ければ、他の設備も同世代の可能性が高い 扉裏の竣工札または改修札の日付を撮影し、建物の設備更新時期の目安にする
給排水の判定
項目 判定の考え方 内覧時・契約前に自分で確認できること
床の排水口の位置 動かせない点として扱う。自分のレイアウト案と重ねて、どれだけ合うかを見る 排水口の位置を平面図に描き写し、入口の角からの距離をメジャーで測る
給水の口径 同時使用の量に関わる。口径が細いと、複数箇所で同時に使ったときに水量が落ちる メーターボックスを開けてよいか確認し、水道メーターの口径表示を撮影する
給湯器の号数 同時に湯を使う箇所の数で必要な号数が変わる。号数が足りないと湯温が下がる 給湯器の銘板を撮影し、号数と製造年月を控える。設置場所が屋外か屋内かも記録する
排水管の勾配と口径 建物の構造で決まる部分が大きい。既存の勾配が取れているかは実際に流して見る シンクの水を流し、排水が滞りなく引くかを目で見て、時間を計る
通気の有無 通気が取れていないと、排水時に封水が切れてにおいが上がる 排水口の周辺のにおいを確かめ、においがする場合はその旨をメモに残す
給排水・衛生設備の年式 法定耐用年数は15年。配管そのものが古ければ、漏水のリスクを織り込む 露出している配管の材質とさびの状態を撮影し、工事会社に見てもらう
空調の判定
項目 判定の考え方 内覧時・契約前に自分で確認できること
室内機の製造年 製造年が古ければ、開業のタイミングで更新するほうが結果的に安く済むことがある 室内機の銘板を全台数ぶん撮影し、製造年月を一覧にする
室外機の設置場所 置き場所が確保できているかは大きな利点。新設する場合は場所と近隣への配慮が要る 室外機の位置と、隣の建物・窓との距離を測って撮影する
能力(馬力)と客席の広さ 厨房の熱と客席の人数で必要能力が変わる。前の店と業態が違えば能力も変わる 銘板の能力表示を控え、自分の想定席数と厨房の機器台数を紙に書き出す
吹き出し口の位置 間仕切りを変えると効かない場所ができる。天井を触る工事なら位置も直せる 吹き出し口の位置を天井の平面に描き写し、自分の席配置案と重ねる
換気設備(給気と排気) 排気だけ強いと室内が負圧になり、扉が重くなる。給気の経路があるかを見る 給気口を探し、見つからない場合は「給気口なし」とメモに書いて写真を撮る
ドレン(排水)の経路 結露水を流す経路。詰まっていると天井から漏れる 室内機の下に水染みがないかを見上げて確かめ、あれば撮影する
内装の仕上げの判定
項目 判定の考え方 内覧時・契約前に自分で確認できること
床の下地 仕上げが傷んでいても下地が健全なら張り替えで済む。下地が傷んでいれば上から仕上げても短期間で不具合が出る 床を歩いて沈む箇所・きしむ箇所を探し、その位置を平面に印をつける
厨房の床の防水と勾配 防水が切れていれば打ち直し。階下がある物件では漏水の影響が大きい 水を流して勾配を見るのと同時に、床と壁の取り合いのシールの切れを確かめる
壁の下地と腰張り 厨房の内壁は、床面から容易に汚染される高さまで不浸透性材料で腰張りされている必要がある 厨房の壁を触って、腰の高さまで拭ける材料が張られているかを確かめる
天井の状態 雨漏りや漏水の痕は建物側の問題。触ると費用が大きくなるため、痕の有無は先に見る 天井を見上げて染みの有無を確かめ、あれば管理会社に原因と対応を聞く
内装制限のかかる材料 用途と規模によって使える材料が絞られる。前の店の仕上げが自分の業態で使えるとは限らない 使われている材料の写真を撮り、工事会社に内装制限の有無を確認してもらう
前の店の印象 看板を替えても「前の◯◯だった店」として認識され続けることがある。同じ商圏で長く営業していた店ほど強く出る 物件の前に立ち、通行する方から見えるのはどの面かを確かめて写真を撮る

内覧から契約までの手順と、チェックリスト

期限が来る順に並べました。造作譲渡の書面は、申込みの前にもらってください。

持ち物、撮影するもの、その場で聞くこと。印刷して持っていける形にしてあります。

いつまでにやるか|期限が来る順に並べる
確認すること なぜその時点までなのか その時点までに自分で用意できること
保健センターへの事前相談 名古屋市は施設の工事着工前に設計図面等を持参して相談するよう案内している 手書きでよいので平面の下書きと、厨房の写真を10枚ほど用意する
所轄消防署予防課への相談 飲食店は特定防火対象物で、基準改正が遡って適用されるため契約前に確かめる必要がある 用途、想定席数、延べ面積、階数を紙に書き出して持参する
リース残債の確認 所有権がリース会社にある機器は前テナントに処分権がなく、譲渡できない 機器に貼られた管理シールを撮影し、リース会社名と物件番号を控える
造作譲渡料の合意 合意後は交渉材料がなくなる。更新前提の機器を洗い出してから合意する 更新前提に分類した機器の一覧と、その入れ替え費用の概算を表にする
営業許可の申請 名古屋市は営業開始予定日の20日前までの提出を求めている 食品衛生責任者の講習会の申し込み状況を、あらかじめ確認しておく
防火対象物使用開始届 名古屋市火災予防条例第66条により、用途に使用するときに必要となる 名古屋市消防局のページから様式と記入例をダウンロードして目を通す
内覧の前と、契約までにやること
  1. 内覧の前に:想定メニュー20品、ピーク時に同時稼働する機器の一覧、希望するレイアウトの手書き案を紙に書く
  2. 内覧の当日:銘板、分電盤、排水口、フード、ダクトの経路、給湯器、室内機・室外機を1つずつ撮影する
  3. 内覧の当日:搬出入経路の5か所(建物入口・共用廊下・階段・エレベーター・自店入口)をメジャーで測る
  4. 内覧の当日:譲渡対象の一覧を書面でもらい、現物と突き合わせて、一覧にない機器に印をつける
  5. 内覧の翌日から:撮影した銘板をもとに、メーカーへ製造年と部品供給の可否を照会する
  6. 内覧の翌日から:賃貸借契約書の案を取り寄せ、原状回復・造作買取請求権・譲渡の可否の3条項を読む
  7. 申込みの前に:図面の下書きと写真を持って、管轄の保健センターへ事前相談に行く
  8. 申込みの前に:同じ資料を持って、所轄の消防署予防課へ相談に行く
  9. 申込みの前に:リース残債のある機器があれば、リース会社に直接電話して譲渡の可否を確認する
  10. 造作譲渡の合意の前に:立会いのうえで通電・通水し、動作を日付の入る設定で撮影する
  11. 造作譲渡の合意の前に:更新前提に分類した機器の入れ替え費用を合計し、譲渡料の交渉材料にする
  12. 契約書に署名する前に:現状有姿の文言の有無と、動作確認を行った日付が契約書に書かれているかを確かめる
持っていくもの
  • メジャー(5メートル以上のもの。厨房の奥行と共用廊下の両方を測る)
  • 懐中電灯(機器の裏側と天井裏、分電盤の中を照らす)
  • スマートフォンまたはカメラ(日付が記録される設定にしておく)
  • 使う予定の機器リスト(能力の判定に必要です)
  • 希望するレイアウトの手書き案(A4の紙1枚でよい)
  • 想定メニュー20品のリスト(揚げ物・焼き物・蒸し物の割合が分かるもの)
  • 方眼紙またはノート(平面を描き写すため)
  • ウェットティッシュと手袋(機器の裏を触るため)
その場で撮影するもの
  • 厨房機器の銘板(型式・製造番号・製造年月・電源仕様が読める距離で1台ずつ)
  • 分電盤の全景と、扉を開けた中身、主幹ブレーカーの表示
  • 分電盤の扉裏の竣工札・改修札
  • 水道メーターとガスメーターの表示(口径・ガス種・検定満了年月)
  • 給湯器の銘板(号数・製造年月・設置場所が屋外か屋内か)
  • 床の排水口の位置(周囲の壁からの距離が分かるように広めに)
  • グリース阻集器のふたを開けた内部(開けてよいか確認のうえ)
  • 排気フードの全景と、グリスフィルターを外した内側
  • ダクトが屋外へ抜ける経路(建物の外からも撮る)
  • 空調の室内機と室外機の銘板(全台数ぶん)
  • 天井の染み、床の沈み、壁のひび(あれば位置が分かるように)
  • 機器に貼られたリース会社の管理シールと、点検・修理のステッカー
その場で聞くこと
  • 譲渡の対象と対象外の切り分け(書面でもらえるか)
  • 対象外の残置物を、誰の費用で処分するか
  • リース契約中の機器があるか。あればリース会社名と物件番号
  • 建物側の設備(貸主の所有物)はどれか
  • 前の店の営業時間と業態、閉店した時期
  • 電源と水を通して動かしてよいか。だめなら、いつなら可能か
  • 直近の消防用設備等の点検報告書を見せてもらえるか
  • 賃貸借契約書の案を、申込みの前に読ませてもらえるか
  • 2回目の内覧に、内装会社と設備業者を同行させてよいか

あわせて読みたい

よくある質問

ここでは、居抜きの設備判定について実際に迷いやすい4点を取り上げます。 いずれも、条文や公表資料を確認したうえで答えています。

1つ目は製造年の調べ方です。 判定の出発点になるのに、意外と方法が知られていません。

2つ目は「前の店が営業できていたのだから通るはず」という推論の是非です。 これは3系統に分けて答える必要があります。

3つ目は、譲り受けた設備が壊れたときに売主に言えるかどうか。 4つ目は、流用した設備を退去時に撤去することになるかどうかです。

いずれも金額が大きくなりやすい論点です。 実際の契約については、署名の前に専門家に確認してください。

前の店の厨房機器の製造年は、どこを見れば分かりますか?

機器の側面か背面、扉の内側、脚元のいずれかに貼られている金属またはシールの銘板を探してください。 銘板には型式、製造番号、電源仕様、そして多くの機種で製造年月が書かれています。

製造年月が書かれていない機種でも、製造番号の先頭または末尾に西暦の下2桁と月が含まれていることがあります。 銘板を撮影して型式と製造番号をメーカーの窓口に伝えれば、製造年と、補修用の部品がまだ供給されているかを教えてもらえます。

ここで注意したいのは、国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」にある年数は、税務上の費用配分のために定められた法定耐用年数であって、機器が何年もつかを示したものではないという点です。

同表では建物附属設備の電気設備(照明設備を含む。)のその他のものが15年、給排水・衛生設備とガス設備が15年、器具備品の冷房用・暖房用機器が6年、機械装置の飲食店業用設備が8年、建物附属設備の店用簡易装備が3年とされています。

これらは経理の区分であり、8年を過ぎたら壊れるという意味でも、8年間は壊れないという意味でもありません。 判定に使えるのは、あくまで銘板から分かる実際の設置年と、メーカーが答えた部品の供給状況の2つです。

「前の店が営業できていたのだから、保健所も消防も通るはずだ」と考えてよいですか?

考えてはいけません。 理由は3つあります。

第一に、食品衛生法第54条は都道府県が条例で施設の基準を定めると規定しており、その基準は改正されます。

名古屋市が公開している営業施設の基準では、共通基準の三のチが、従業者の手指を洗浄消毒する装置を備えた流水式手洗い設備を必要な個数有することとし、水栓は洗浄後の手指の再汚染が防止できる構造であることを求めています。

同じ資料の参考欄は、これを止水のための手指接触を伴うハンドル操作等を要さない構造と説明し、センサー式、押しボタン式、肘で操作できるレバー式を例に挙げています。 前の店が古いハンドル式の水栓のままなら、そこは作り直しの対象になります。

第二に、許可は施設ではなく営業者に与えられるものです。 食品衛生法第55条第1項により営業しようとする者が許可を受けなければならず、前の店の許可を無条件に引き継げるわけではありません。

ただし同法第56条第1項は、許可営業者が営業を譲渡したときに譲り受けた者が地位を承継すると定めており、名古屋市も営業を譲り受けた場合は新たな許可ではなく地位の承継届で足りる場合があると案内しています。 どちらになるかは保健センターへの事前相談で決まります。

第三に、消防法第17条の2の5第1項は基準が改正されたときに既存の防火対象物へ新基準を適用しない旨を定めていますが、同条第2項第4号は特定防火対象物をその例外としています。

飲食店を含む特定防火対象物では、基準が変われば既存の建物にも遡って適用されます。 前の店が営業できていたことは、現行基準に適合していることの証明にはなりません。

造作譲渡で受け取った設備が引き渡し直後に壊れたら、売主に言えますか?

契約書の書き方によって結論が変わります。 造作譲渡は有償契約なので、民法第559条により売買の規定が準用されます。

引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないときは、民法第562条第1項により買主は修補や代替物の引渡しなどの履行の追完を請求できます。

ただし民法第566条は、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないと、追完請求も代金減額も損害賠償も契約解除もできなくなると定めています。

さらに実務上の壁になるのが「現状有姿」という条項です。 民法第572条は、担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないと定めていますが、裏を返せば、知らなかった不具合については特約が有効に働きます。

つまり現状有姿と書かれた契約書に署名した時点で、開けてみないと分からない不具合の費用は自分が負うことになります。 だからこそ、譲渡契約書に署名する前に通電と通水をして動かし、動いた事実を日付入りの写真と動画で残しておく必要があります。

動作確認をしないまま署名した場合、あとから壊れても、それが引き渡し前からの不適合だったのか引き渡し後に生じたのかを証明できません。

流用すると決めた設備を、退去のときに撤去しなければならないことはありますか?

あります。 むしろ、それが居抜きで最も見落とされる費用です。

民法第621条は、賃借人は賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において賃貸借が終了したときはその損傷を原状に復する義務を負うと定め、通常の使用および収益によって生じた損耗と経年変化を除いています。

しかし事業用の賃貸借では、この原則より重い原状回復をうたう特約が契約書に書かれていることが多く、前の店が残していった造作まで含めてスケルトンに戻して返す約束になっている場合があります。 その場合、自分が使っていない設備であっても、自分が撤去して返すことになります。

また、建物に固定された造作は民法第242条により不動産の所有者がその所有権を取得するのが原則で、ただし書きが権原によって附属させた他人の権利を妨げないとしています。

借地借家法第33条第1項は、賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作について、賃借人が時価での買取りを請求できると定めています。 しかし同法第37条が強行規定として無効にしているのは第31条、第34条、第35条に反する特約であり、第33条は含まれていません。

つまり造作買取請求権を排除する特約は有効です。 契約書に造作買取請求権を放棄する旨の条項があるかどうかを、申込みの前に必ず確認してください。

まとめ|居抜き物件で判定する7つの視点

流用で浮いた金額は「1日何人分の粗利か」に翻訳できます。そこまで出せば、割高な造作譲渡かどうかも判断できます。

居抜きは、残っているから得なのではありません。自分の営業に合っていて、あと何年もつかが分かって初めて得です。

試算に置いた前提(すべて仮の数値)
項目 置いた数値 自分の数字に置き換えるときに使うもの
1日のお客様の数 30人 想定席数×想定回転数。事業計画の売上の根拠にした数字をそのまま使う
客単価 3,000円 想定メニューの平均単価に、想定される注文点数を掛けて出す
粗利率(売上から食材原価を引いた率) 70% メニューごとの原価率を出し、想定の注文構成で加重平均する
月の営業日数 25日 定休日と年末年始を差し引いた実際の営業日数を数える
お客様1人あたりの粗利 2,100円(3,000円×70%) 上の3つから自分で計算する。以降の計算はすべてこの数字を割り算に使う
編集部の試算例|金額を「1日何人分の粗利」に翻訳する
項目 計算の内訳(すべて仮の数値) 自分の数字で計算する手順
造作譲渡料250万円(36か月で回収) 2,500,000÷36=月69,444円 → ÷2,100円=月33人 → ÷25日=1日1.3人 提示された譲渡料を回収したい月数で割り、自店の1人あたり粗利と営業日数で割る
冷蔵庫の入れ替え60万円+休業2日 600,000+(2,100×30×2)=726,000円 → ÷12か月=月60,500円 → 1日1.2人 止まると営業が止まる機器を数え、1台ぶんの入れ替え費用と休業日数を置いて計算する
1日ぶんの粗利 2,100円×30人=63,000円 点検や調査を依頼する費用が、この金額を下回るかどうかで依頼の可否を決める
開業が1か月遅れた場合 63,000円×25日=1,575,000円(賃料と人件費は別途) 賃料と人件費を足し、事前相談を省いて遅れる場合の損失として比べる

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