「前も美容室だった」は、判断材料になりません。残っていることと、自分の店で使えることは別です。価値があるのはシャンプー台ではなく、その下の給排水です。

不動産会社に聞けば「工事のことは内装会社さんに」、内装会社に聞けば「図面が要ります」、図面を取り寄せるには申込みを。この輪から抜けるには、自分で確かめるしかありません。

確認することは7つ。給排水、給湯能力、電気容量、セット面の配置、前の用途、保健所の基準、そして所有権。全部、内覧の1時間でできます。

この記事でわかること

  • シャンプー台で見るべきなのは台ではなく給排水の位置である理由と、内覧の場で排水口と配管経路を確かめる手順
  • 給湯器の銘板から号数を読み取り、冬場の毎分出湯量を自分で計算する方法と、台数を増やしたときに足りるかを判定する考え方
  • 美容室の電気を席数ではなくピーク時の同時使用で判定する手順と、分電盤のどこを撮影すればよいか
  • 前の店のセット面の間隔をそのまま踏襲してよいかを、自分の営業スタイルから逆算して決める順番
  • 前の用途が美容所でない物件を美容室にするとき、業種別に追加で必要になる工事と、内覧で先に確かめられること
  • 美容師法第12条・第13条と名古屋市の美容所の基準13項目、そして席数を増やすと必要面積がどう変わるか
  • 造作の所有権が前のテナント・貸主・リース会社の3者に分かれること、残置物の処分費を申込み前に書面で決める理由
位置が合って台も新しければそのまま流用できる。位置は合うが台が古い場合は配管を活かして台だけ交換する。位置が合わない場合は床上げかレイアウト変更の二択。台数を増やすなら増設分の給排水工事と給湯能力の見直しが要る。
見るのは台ではなく、まず位置です|台が古くても位置が合っていれば、配管を活かして台だけ交換できます。位置が合わない場合に残るのは、床上げかレイアウトを配管に寄せるかの二択です。

「前も美容室だった」が判断材料にならない理由

ずれるのは5つの場面です。台数が違う、位置が合わない、能力が足りない、そもそも持ち主が違う、そして基準を満たしていない。

「残っている」と「自分の店で使える」がずれる5つの場面
場面 なぜずれるのか 内覧時・契約前に自分で確認できること
前の店より席数を増やす 給湯の同時使用量、電気のピーク、そして美容所の作業所面積の基準がすべて席数に連動して増える 自分の計画席数を紙に書き、前の店の席数(残っている美容椅子の数と鏡の数)を数えて差を出す
前の店よりメニューが重い デジタルパーマ機器やスチーマーを複数同時に使うと、席数が同じでもピーク時の電力が変わる 導入予定の機器を型式まで書き出し、取扱説明書か製品ページで消費電力(ワット)を控える
シャンプー台の位置が動線に合わない 給排水は床下を通っており、位置の変更には床上げか斫りが伴う。台の入れ替えとは工事の種類が違う 床の排水口の位置を撮影し、間口・奥行きと合わせて簡単な平面図に落として自分の動線を重ねる
設備が古い 動いていても補修用の部品が供給終了していれば、故障した時点で入れ替えになる 給湯器・シャンプー台・空調の銘板を撮影し、型式でメーカーに部品供給の可否を問い合わせる
前の店の営業と自分の営業が違う セット面の間隔、待合の広さ、バックヤードの取り方は前の店の設計思想に沿っている 既存のセット面の中心間距離をメジャーで実測し、自分が想定する接客のしかたで足りるか座って確かめる

公的な数字で確かめられること、確かめられないこと

居抜きの相場を示す統計はありません。確かめられるのは、施設数と設備の耐用年数までです。

居抜きの検討で、公的な情報から確かめられることと確かめられないこと
知りたいこと 公的な情報から言えること 内覧時・契約前に自分で確認できること
美容所はどれくらいあるか 令和6年度で全国277,752施設、名古屋市4,992施設。年度中の使用確認件数は名古屋市で327件(衛生行政報告例) 物件のある区を管轄する保健センターの電話番号を控え、事前相談の予約が何日待ちかを聞く
1店舗あたりの規模 従業美容師数を施設数で割ると全国で約2.1人、名古屋市で約2.7人(編集部で算出) 残っている美容椅子の数と鏡の数を数え、前の店が何人体制だったかを推定する
検査手数料と届出の期限 名古屋市の検査手数料は16,000円。開設届は営業開始予定日の7日前までに提出(名古屋市「開設のしおり(美容所)」令和8年6月) 工事完了予定日から逆算し、検査・再検査の余地を含めた営業開始日を仮に置く
設備の法定耐用年数 理容・美容機器は5年、給排水・衛生設備とガス設備は15年、電気設備(照明設備を含む)その他のものは15年(国税庁) 銘板の製造年を撮影し、法定耐用年数との差を出す。ただし年数は寿命ではないため、部品供給の可否をメーカーに確認する
居抜きで内装費がいくら浮くか 公的な統計は見つからなかった。工事の内容が物件ごとに違いすぎるため、平均値に意味がない 同じ図面でスケルトンから作った場合の見積もりを1社に出してもらい、居抜きの見積もりと差額で比べる
シャンプー台の移設費用 公的な情報も業界団体の公表資料も見つからなかった。床の構造と配管経路で桁が変わる 排水口の位置と床の段差を撮影し、移設の可否と概算を内装会社に見てもらう

確認1〜2|給排水と、給湯能力

シャンプー台そのものより、床の排水口の位置が効きます。台を動かすと、床を上げるか、勾配を取り直すことになります。

給湯は号数から冬の出湯量を計算できます。設定40度・冬の水温5度で計算すると、同時に何台使えるかが数字で出ます。

シャンプー台の4つの状況と、判断の分かれ目
状況 何が起きるか 内覧時・契約前に自分で確認できること
位置が合い、台も新しい そのまま流用できる可能性が高い。居抜きの利点が最も大きく出る形 銘板の製造年を撮影する。実際にレバーをひねって湯が出るか、排水がスムーズに引くかを見せてもらう
位置は合うが、台が古い 配管を活かして台だけ入れ替えられる。工事の範囲が台の据え替えに収まる 銘板の型式を控え、メーカーに補修用性能部品の供給が続いているかを問い合わせる
位置が合わない 床上げか斫りによる配管の引き直しか、レイアウトを配管の位置に寄せるかの二択になる 排水口の位置を実測して平面図に落とし、自分の動線を重ねて「寄せられるか」を先に判断する
台数を増やしたい 増設分の給排水工事に加え、給湯能力と作業所の床面積の基準を両方見直すことになる 増設したい位置から既存の排水立管までの距離をメジャーで測り、写真とあわせて記録する
美容室の設備と、国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」の区分
設備 耐用年数表の区分と年数 内覧時・契約前に自分で確認できること
シャンプー台・セット面の椅子 器具・備品「理容・美容機器」=5年 銘板の製造年と型式を撮影し、5年を超えているものを一覧にする
給水・給湯・排水の配管 建物附属設備「給排水・衛生設備、ガス設備」=15年 建物の竣工年を不動産会社に聞き、前の店の入居年と合わせて配管の設置時期を推定する
分電盤・幹線・照明器具 建物附属設備「電気設備(照明設備を含む)その他のもの」=15年 分電盤の内扉に貼られた施工年月のシールを撮影する。貼られていなければ管理会社に聞く
壁付けの造作什器・棚 器具・備品「その他の家具」の接客業用のもの=5年、「店用簡易装備」=3年 什器の寸法を実測し、自分の計画で使えるか、撤去するかを先に決める
エアコン(業務用パッケージ以外) 器具・備品「冷房用・暖房用機器」=6年 室内機と室外機の銘板を撮影し、製造年と冷房能力(キロワット)を控える
洗濯機・タオルの乾燥機 器具・備品「電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気・ガス機器」=6年 給排水とガスの接続がどこから取られているかを撮影する
号数から冬場の毎分出湯量を出す(設定温度40度、冬の水温5度とした場合の計算例)
銘板の号数 冬の毎分出湯量(号数×25÷35) 内覧時・契約前に自分で確認できること
16号 およそ毎分11.4リットル 銘板を撮影し、号数・型式・製造年の3つを控える
20号 およそ毎分14.3リットル(京葉ガスの計算例と一致) 給湯器が屋内設置か屋外設置かを撮影し、排気筒の出口の位置も記録する
24号 およそ毎分17.1リットル ガスの種類(都市ガスかLPガスか)を銘板とメーターで確認する
32号 およそ毎分22.9リットル ガスメーターの号数(表示されている最大流量)を撮影し、給湯器の入力と合うかを見る
銘板が読めない・見つからない 号数が分からないため計算できない 管理会社に給湯器の型式を問い合わせる。答えられない場合は、更新を前提に予算を組む
電気温水器・ヒートポンプ式 号数ではなく貯湯量(リットル)と加熱能力で表される 貯湯タンクの容量を銘板で確認し、湯を使い切ったあと再加熱に何分かかるかを管理会社に聞く
給湯まわりで、内覧の場で控えておく項目
項目 なぜ必要か 内覧時・契約前に自分で確認できること
号数 冬の毎分出湯量を計算する基礎になる。これがなければ足りるかどうかの判定ができない 給湯器本体の銘板を正面から撮影する。文字が薄い場合は指でなぞって読み、メモに書き起こす
製造年 設置から相当年数が経っていれば、開業直後の故障と部品供給終了のリスクが上がる 銘板の製造年月を撮影し、型式でメーカーの補修用性能部品の保有期間を問い合わせる
設置場所(屋内か屋外か) 屋内設置は排気の経路が要る。更新時に同じ形式が入らないと、外壁の穴あけや配管の引き回しが発生する 給湯器の全景と、排気筒がどこへ抜けているかを撮影する。屋外なら室外の設置スペースも撮る
ガスの種類 都市ガスとLPガスでは給湯器の機種が違い、置き換えができない。増設時の供給条件も変わる ガスメーターと給湯器の銘板の両方を撮影する。建物の外にボンベがあればLPガスと分かる
ガスメーターの容量 給湯器を大きくしても、メーターや配管が細ければ供給が追いつかない ガスメーターに表示された号数(最大流量)を撮影し、ガス会社に増量の可否を問い合わせる
給湯の配管経路 台を増やす場合、給湯管をどこから分岐させるかで工事の量が変わる 給湯器から各シャンプー台までの経路を目でたどり、露出している部分を撮影する
内覧の場で、給排水を確かめる手順
  1. シャンプー台の足元にしゃがみ、床の排水口を探して真上から撮影する。台に隠れて見えない場合は、台の背面と床の取り合いを撮る
  2. 入口の内側の角を基準にして、排水口までの距離を2方向(間口方向と奥行き方向)で測り、写真にメモを書き添える
  3. シャンプー台まわりに床の段差があるかを確認する。段差があれば高さを測る。段差は前の店も床を上げて配管を通した証拠になる
  4. 天井と床に点検口があるかを見る。点検口があれば、開けてよいか担当者に確認したうえで内部を撮影する
  5. 壁と天井を見渡し、配管や配線が露出している箇所を撮影する。塞がれた跡があれば、その位置も記録する
  6. 可能であれば給湯の蛇口を開けて、湯が出るまでの時間と、排水がスムーズに引くかを見る
  7. 撮影した写真と実測値を、その日のうちに1枚の簡単な平面図にまとめる。手描きで構わない
自分の店で同時に使う湯量を、現物で測る
  1. 立会いの担当者に断ったうえで、シャンプー台のシャワーを普段どおりの勢いで出す
  2. バケツで10秒間受け、たまった量をリットルで読む
  3. その値を6倍して、毎分の使用量に直す(例:10秒で1.5リットルなら毎分9リットル)
  4. 自分の計画で同時に稼働させる最大台数を掛ける(例:毎分9リットル × 2台=毎分18リットル)
  5. 給湯器の銘板の号数から、冬の毎分出湯量を計算する(号数×25÷35)
  6. 4の値が5の値を上回っていれば、冬場に湯温が下がる可能性があると判断し、内装会社に給湯器の更新を含めた見積もりを依頼する
  7. 洗濯機やタオル蒸し器など、シャンプー以外で湯を使う機器があれば、その分も4に足す

確認3|電気容量は、ピーク時に同時に動くもので判定する

席数ではありません。ドライヤー、給湯器、エアコン、洗濯乾燥機が同時に動く瞬間で決まります。

内覧で撮影・記録しておく項目を表にしました。分電盤の扉を開けた写真が、いちばん役に立ちます。

美容室でピーク時に同時に動きやすいものと、確認のしかた
機器 電気の観点で押さえること 内覧時・契約前に自分で確認できること
ドライヤー 1台あたりの消費電力が大きく、台数がそのままピークに効く。セット面の数だけ同時に回る可能性がある 使う予定のドライヤーの型式を決め、本体または製品ページの消費電力(ワット)を控える
デジタルパーマ機器・アイロン 加熱中の消費電力が高い。予約の入れ方によっては2台同時に動く 1日に何件のメニューを想定するか、同時に2件入る可能性があるかを予約表の形で書き出す
スチーマー・加温器 施術時間が長く、稼働している時間帯がドライヤーと重なりやすい 導入台数を決め、型式ごとの消費電力を控える
空調 夏と冬のピークに常時動く。室内機の台数と能力で消費電力が決まる 室内機と室外機の銘板を撮影し、冷房能力(キロワット)と消費電力を控える
給湯器(電気式の場合) 電気温水器やヒートポンプ式なら、加熱中は大きな電力を使う 給湯がガスか電気かを銘板で確認する。電気なら消費電力を控える
洗濯機・タオル蒸し器 営業中に回し続けることが多く、ピークに常時上乗せされる 置き場所とコンセントの位置、専用回路になっているかを撮影する
照明 営業時間中は常時点灯。器具の数が多い店では合計が無視できない 天井の器具の数を数え、種類(LEDか蛍光灯か)を撮影する
電気まわりで、内覧の場で撮影・記録しておく項目
項目 何が分かるか 内覧時・契約前に自分で確認できること
分電盤の全景 盤の大きさと設置位置。増設のとき盤を交換できる余地があるかの手がかりになる 扉を閉じた状態で全景を1枚、盤の周囲の壁も含めて撮影する
主幹ブレーカーの表示 その物件で一度に使える電力の上限(アンペア) 表示部分を寄りで撮影する。数字が読めなければメモに書き起こす
分岐回路の数と空き 機器を専用回路にできるか。空きがなければ盤の増設や交換が必要になる 並んでいるブレーカーの数を数え、ラベルが貼られていない列があるかを撮影する
電力量計(メーター) 契約の種別。動力(三相)が来ているかどうかもここで分かる メーターの表示面を撮影する。メーターが2つあれば両方撮る
コンセントの位置と数 セット面ごとに電源が来ているか。足りなければ配線の増設が要る 壁と床のコンセントをすべて撮影し、平面図に位置を書き込む
施工年月のシール 電気設備がいつ入ったか。法定耐用年数15年との差を測る目盛りになる 分電盤の周囲に貼られたシールを探して撮影する。なければ管理会社に竣工年を聞く

確認4〜5|セット面の配置と、前の用途

前の店の配置を無自覚に引き継ぐと、前の店の設計思想ごと引き継ぐことになります。自分の営業を数字で書いてから、踏襲するか決めてください。

前のテナントが美容室でない場合は、追加の工事が要ります。業種別に、必要になる条件を表にしました。

セット面まわりの要素別・流用の可否と確認のしかた
要素 流用の可否を分ける条件 内覧時・契約前に自分で確認できること
壁付けの鏡 位置が自分の計画に合えばそのまま使える。合わなければ、鏡の再利用より下地と配線の移設が費用の中心になる 鏡の寸法と、床から鏡の下端までの高さを測る。割れや曇りがないかを寄りで撮影する
鏡の裏の下地と配線 壁の中にあるため、動かすと壁の解体と復旧が伴う。ここが実質的な制約になる 鏡まわりのコンセントとスイッチの位置を撮影し、平面図に書き込む
セット面ごとのコンセント ドライヤーとアイロンを同時に使うなら、席ごとに複数口が要る。数が足りなければ増設になる 1席あたりの口数を数える。テーブルタップで延長されている痕跡があれば、それも記録する
造作の什器・カウンター 寸法が自分の計画に合うかどうか。合わなければ撤去費が発生し、その負担者も問題になる 幅・奥行き・高さを実測し、引き出しを開けて内部の状態を撮影する
席と席の間隔 前の店の営業スタイルに合わせて決まっている。自分の施術のしかたと合うとは限らない 鏡の中心から隣の鏡の中心までの距離を測る。実際に椅子に座り、背後を人が通れるか試す
床の仕上げ 毛髪の清掃と薬剤への耐性で選ぶ。前の店の仕上げが自分の運用に合うとは限らない 床の材質を撮影し、シャンプー台まわりに水染みや浮きがないかを見る
待合のスペース 美容所の基準では作業所と区分して設けることが求められ、名古屋市では作業所の8分の1以上の面積が要る 待合として使える範囲の間口と奥行きを測り、作業所として使う範囲と分けて記録する
前のテナントの業種別・美容室にするときの条件
前の業種 有利な点と、必要になりやすい工事 内覧時・契約前に自分で確認できること
美容室・理容室 給排水・給湯・電気容量が美容の営業を前提に整っている。必要になるのは台の更新とレイアウトの調整が中心 前の店の美容椅子の数を数え、自分の計画席数との差を出す。差があれば作業所面積の基準を計算し直す
ネイル・エステ・まつげエクステ 手洗いや簡易な給排水はあるが、シャンプー台の位置まで排水が来ていないことが多い。個室の間仕切りの撤去が要る場合がある 水を使う設備がどこにあるかを撮影し、シャンプー台を置きたい位置からの距離を測る
飲食店 給排水と給湯、電気容量の条件が良いことが多い。一方で厨房設備の撤去、グリストラップの扱い、床の防水と勾配の作り直しが要る 厨房の給排水の位置と、排水の立管がどこにあるかを撮影する。グリストラップの有無と位置も記録する
物販店・アパレル 内装がシンプルで解体費が軽い。給排水の新設、給湯器の設置、電気容量の増設が必要になりやすい 区画内に水回りがあるかを確認する。ない場合、建物の水回りの位置(トイレや給湯室)を撮影する
事務所 床と壁の状態が良いことがある。給排水の新設、床上げ、換気の計画、電気容量の見直しがまとめて必要になる 天井高を測る。床を上げる余地があるか、上げたときに天井高が足りるかを先に確かめる
クリニック・整骨院 手洗いと給排水が複数箇所にあることが多く、電気の容量も確保されている。区画の間仕切りが細かく、撤去費がかさむことがある 間仕切り壁の数と位置を撮影し、撤去したい壁が構造壁でないかを管理会社に確認する
スケルトン(前の内装がない) 制約がなく設計の自由度が高い。ただし設備をすべて新設するため、初期費用は最も大きくなる 給排水の引込み位置、電気の引込み容量、排気の出口の3つを図面と現地の両方で確認する
踏襲するかどうかを決める順番
  1. 自分の営業を数字で書く。1日の想定来店数、平均施術時間、同時に施術するスタッフの数の3つ
  2. その数字から必要なセット面の数とシャンプー台の数を出す。入る数ではなく、必要な数で出す
  3. 名古屋市の基準(美容椅子2台までは13平方メートル以上、1台増すごとに3平方メートル以上)で、必要な作業所の床面積を計算する
  4. その面積に待合(作業所の8分の1以上)を足し、区画の面積に収まるかを確かめる
  5. ここではじめて既存の配置図を重ねる。合っていれば流用、合っていなければどこをずらすかを決める
  6. ずらす場合、シャンプー台の位置だけは動かせない前提で組み直せないかを先に試す
  7. それでも成立しなければ、物件を替える選択肢を含めて内装会社に相談する
業種が変わるときに、内覧の場で先に見ておくこと
  1. 区画内と、区画のすぐ外にある排水の立管を探し、位置を撮影する。トイレや給湯室の近くにあることが多い
  2. シャンプー台を置きたい位置から、その立管までの距離をメジャーで測る
  3. 天井高を実測する。梁の下端の高さも別に測り、いちばん低いところを記録する
  4. 床下に配管を通す余地があるかを確認する。床がコンクリートの直押さえなら、床上げが前提になる
  5. 換気の排気の出口があるかを確認する。パーマ剤や染毛剤を使うため、排気の経路は先に押さえておく
  6. ガスが来ているかをメーターの有無で確認する。来ていなければ、給湯を電気にするか引込みを申請するかの判断が要る
  7. ここまでを撮影と実測でまとめ、内装会社に「成立するか」だけを先に聞く。金額の話はその後

確認6|保健所の施設基準を、現状が満たしている保証はない

美容師法と施行規則、衛生管理要領に数値があります。名古屋市の「開設のしおり」には13項目の基準が示されています。

美容椅子の台数から、必要な面積が決まります。台数を増やすなら、面積が足りるかを先に確かめてください。

美容師法・施行規則・衛生管理要領が定める数値と、居抜きで確かめること
項目 条文・通知が定めている内容 内覧時・契約前に自分で確認できること
検査と確認 美容師法第12条。構造設備について都道府県知事の検査を受け、第13条の措置を講ずるに適する旨の確認を受けた後でなければ美容所を使用してはならない 前の店の確認済証は引き継がれないことを前提に、工事完了から営業開始までの日数に検査と再検査の余地を入れる
開設の届出 美容師法第11条第1項。美容所の位置、構造設備、管理美容師その他の従業者の氏名などをあらかじめ都道府県知事に届け出る 管轄の保健センターの窓口を調べ、事前相談の予約を工事の設計段階で入れる
床と腰板 施行規則第26条第1号。コンクリート、タイル、リノリューム又は板等の不浸透性材料を使用すること 床と腰板の仕上げ材を撮影する。カーペットや布張りの腰板があれば、張り替えが要ると判断する
洗場 施行規則第26条第2号。洗場は流水装置とすること。衛生管理要領は、あわせて給湯設備を設けることを求めている 洗場のレバーをひねって流水になるか、湯が出るかを確認する
汚物箱・毛髪箱 施行規則第26条第3号。ふた付きの汚物箱及び毛髪箱を備えること 備品として残っているかを確認する。残っていなければ開業前に用意する物として一覧に入れる
照度 施行規則第27条第1号。作業面の照度を100ルクス以上。衛生管理要領は300ルクス以上が望ましいとしている 照明器具の数と種類を撮影する。照度計のアプリで参考値を測っておくと打ち合わせで使える
換気 施行規則第27条第2号。空気1リットル中の炭酸ガスの量を5立方センチメートル以下(衛生管理要領では5,000ppm以下と表記)に保つこと 換気設備の位置と、給気の経路があるかを撮影する。機械換気か自然換気かを記録する
消毒設備 美容師法第13条第2号。消毒設備を設けること。施行規則第25条が器具の消毒方法を区分ごとに定めている 消毒設備の置き場所として使える範囲を測る。薬液用と紫外線用の両方を置ける奥行きがあるかを見る
名古屋市「開設のしおり(美容所)」(令和8年6月)が示す美容所の基準13項目
番号 基準の内容 内覧時・契約前に自分で確認できること
① 美容の作業を行う場所(作業所)と待合所とを区分して設けること 区画のどこを作業所、どこを待合所にするかを平面図の上で線引きし、面積を出す
② 作業所の床面積は、美容椅子2台までは13平方メートル以上とし、美容椅子1台を増すごとに3平方メートル以上増すこと 自分の計画席数から必要面積を計算し、区画の内法寸法から出した面積と比べる
③ 待合所の床面積は、作業所の床面積の8分の1以上とすること ②で出した作業所面積を8で割り、待合として確保できる範囲がその面積を超えるかを確かめる
④ 床及び腰板には、コンクリート、タイル、リノリューム又は板等不浸透性材料を使用すること 既存の床と腰板の材質を撮影する。布やカーペットなら張り替えの費用を見込む
⑤ 洗場は、流水装置とすること 洗場の水栓を操作して流水になるかを確認する
⑥ 洗い場及び洗髪設備は、排水が完全に行われるよう設備すること(洗髪設備は市長が公衆衛生上支障がないと認めた場合を除く) 水を流して排水の引きを見る。引きが悪ければ配管の詰まりか勾配不足を疑い、管理会社に伝える
⑦ ふた付きの汚物箱及び毛髪箱を備えること 備品として残っているかを確認し、なければ開業準備の一覧に加える
⑧ 美容師が美容のための直接の作業を行う場合の作業面の照度を100ルクス以上とすること 既存の照明の数と配置を撮影し、セット面の位置を変える場合に器具の移設が要るかを見る
⑨ 美容所内の空気中の炭酸ガス濃度を0.5パーセント以下に保つこと 換気設備の有無と位置を撮影する。機械換気がなければ、給排気の計画を設計に含める
⑩ 皮膚に接する器具を消毒する設備は、その器具に応じた適切な消毒ができるよう設備すること 使う器具を書き出し、施行規則第25条のどの消毒方法を採るかを決めてから設備を選ぶ
⑪ 美容所は、薬液消毒及び紫外線消毒の設備を備えること 両方を置ける作業スペースが取れるかを実測する。しおりの図では洗い場の近くに配置されている
⑫ 美容所は、隔壁等により外部と完全に区画されていること 区画の境界がカーテンや簡易パーティションで仕切られていないかを確認する
⑬ 洗い場及び洗髪設備は、上下水道に直結していること 給水と排水がどこにつながっているかを管理会社に確認し、図面で経路を確かめる
名古屋市の基準にもとづく、美容椅子の台数別・必要面積(編集部で計算)
美容椅子の台数 作業所+待合所の必要面積(坪換算) 内覧時・契約前に自分で確認できること
2台 作業所13平方メートル以上+待合所1.625平方メートル以上=合計14.625平方メートル以上(約4.4坪) 区画の内法の間口と奥行きを測り、柱や梁で使えない部分を引いた実面積を出す
3台 作業所16平方メートル以上+待合所2.0平方メートル以上=合計18平方メートル以上(約5.4坪) 3台目を置く位置から排水立管までの距離を測り、給排水の増設が成立するかを見る
4台 作業所19平方メートル以上+待合所2.375平方メートル以上=合計21.375平方メートル以上(約6.5坪) 前の店が何台だったかを数え、差の台数ぶんの面積が区画に残っているかを確かめる
5台 作業所22平方メートル以上+待合所2.75平方メートル以上=合計24.75平方メートル以上(約7.5坪) バックヤード・トイレ・スタッフの休憩スペースを別に確保できるかを平面図で確かめる
6台 作業所25平方メートル以上+待合所3.125平方メートル以上=合計28.125平方メートル以上(約8.5坪) この面積が「区画全体」ではなく「作業所と待合所だけ」であることを図面上で確認する
8台 作業所31平方メートル以上+待合所3.875平方メートル以上=合計34.875平方メートル以上(約10.6坪) 給湯の同時使用量と電気のピークを、確認2と確認3の手順で計算し直す
事前相談から確認済証までの流れ
  1. 事前相談。図面等を提示して、管轄保健センターの環境薬務課に相談する。名古屋市では窓口が千種・中村・中・南の4つの保健センターに集約されている
  2. 開設届の提出。営業開始予定日の7日前までに、管轄保健センターへ。検査手数料16,000円
  3. 施設の検査。保健センターの環境衛生監視員が施設に来て検査する。検査希望日は早めに予約する
  4. 確認済証の交付。検査と所定の審査を経て、支障がなければ交付される。郵送を希望する場合は届出時に返信用封筒を提出する
  5. 営業の開始。確認済証の交付を受けてから使用する

確認7|造作の所有権と、残置物の扱い

区画にあるものは3つに分かれます。貸主の設備、前テナントの造作、そして残置物。誰のものかで、壊せるかどうかも、退去時の義務も変わります。

区画にあるものを、所有権で3つに仕分ける
所有者 当てはまりやすいものと、扱いの違い 内覧時・契約前に自分で確認できること
前のテナント シャンプー台、セット面の椅子、什器、備品など。造作譲渡の対象になる。譲渡契約書に品名と数量を書く 譲渡の対象一覧を書面でもらい、現物と1つずつ突き合わせて写真に番号を振る
貸主(建物の所有者) 建物に付合したもの。床下の配管、埋め込んだ配線、建物側の空調など。譲渡の対象にならず、貸主から借りる形になる どこまでが貸主の設備かを、賃貸借契約書の別表と管理会社への確認の両方で押さえる
リース会社 リース契約中の機器。前のテナントの所有物ですらないため、勝手に使うと契約違反になる 機器にリース会社のシールが貼られていないかを1台ずつ確認し、リース残債の有無を書面で確認する
所有者が不明なもの 残置物として扱われることが多い。処分費の負担者を決めておかないと、自分の費用になる 不明なものを一覧にして写真を撮り、「処分費の負担者」を申込み前に書面で決める
建物に固定された造作 民法第242条の付合の対象になり得る。退去時に撤去義務があるかは契約の特約で変わる 賃貸借契約書の原状回復条項を読み、「スケルトン返し」か「現状有姿」かを確かめる
看板・サイン 建物の外部にあるため、貸主の承諾と屋外広告物のルールが関わる。前の店の看板をそのまま使うことは通常できない 看板の設置位置と大きさを撮影し、看板を出せる位置と条件を管理会社に確認する
申込みの前に、書面で決めておく5つ
  1. 譲渡の対象一覧。品名と数量を書き出し、現物と突き合わせて写真に番号を振る
  2. 譲渡の対象外のもの(残置物)の一覧と、その処分費の負担者
  3. リース契約の有無と残債。1台ずつ、機器ごとに確認する
  4. 貸主の承諾。造作の譲渡と、自分が行う工事の範囲について、貸主の承諾を得ているか
  5. 退去時の原状回復の範囲。前のテナントが残した造作を自分が撤去する義務を負うのかどうか

内覧チェックリスト

撮る、測る、試す、聞く、調べる。5つに分けて用意しました。印刷して持っていってください。

撮影しておくもの
  • シャンプー台の全景と、足元の床の排水口(真上から)
  • シャンプー台の銘板(型式・製造年が読める寄りで)
  • シャンプー台まわりの床の段差と、その高さが分かる写真
  • 給湯器の全景と銘板(号数・型式・製造年)、排気筒の出口
  • ガスメーターの表示面と、都市ガスかLPガスかが分かるもの
  • 分電盤の全景と、主幹ブレーカーの表示(扉は開けない)
  • 電力量計の表示面(メーターが2つあれば両方)
  • セット面まわりの鏡・コンセント・スイッチの位置
  • 区画全体(四隅から4枚)と天井、床の仕上げ
  • 換気設備の位置と、給気の経路が分かるもの
  • 天井と床の点検口(許可を得たうえで、開けられれば内部も)
  • 床と腰板の仕上げ材(不浸透性材料かどうかの判断材料)
  • 洗場の水栓と排水口、消毒設備を置ける範囲
  • 残置物(1点ずつ番号を振って撮る)
  • 建物の外観と、看板を出せそうな位置
実測しておくもの
  • 区画の間口と奥行き(内法で。柱型があれば柱型の寸法も)
  • 天井高と、梁の下端までの高さ(いちばん低いところ)
  • 入口の角から排水口までの距離(間口方向・奥行き方向の2方向)
  • シャンプー台を増設したい位置から排水立管までの距離
  • 既存のセット面の鏡の中心から隣の鏡の中心までの距離
  • シャンプー台から最も遠いセット面までの距離
  • 待合として使える範囲の間口と奥行き
  • バックヤード・トイレとして使える範囲
  • 造作什器の幅・奥行き・高さ
  • 入口の扉の有効幅(設備の搬入経路の判断に使う)
その場で試すもの
  • シャンプー台のシャワーを出し、10秒間バケツで受けて量を測る(6倍して毎分の量に直す)
  • 湯が出るまでの時間を数える
  • 排水の引き(水を流して、たまらずに引くか)
  • セット面の椅子に実際に座り、背後を人が通れるかを試す
  • 入口からシャンプー台までを自分で歩き、施術中のお客様の背中を通らないかを確かめる
不動産会社・前テナントに確認すること
  • 造作譲渡の対象一覧(品名と数量。書面で)
  • 対象外のもの(残置物)と、その処分費の負担者
  • 設備のリース契約が残っていないか(1台ずつ)
  • 貸主が造作譲渡と工事に承諾しているか
  • 賃貸借契約の原状回復条項(スケルトン返しか現状有姿か)
  • 造作買取請求権の放棄条項があるか
  • 前テナントの退去理由と、退去の時期
  • 建物の竣工年と、設備の更新履歴
  • 電気の増設が可能か(管理会社と電力会社への確認を依頼)
  • ガスの増量が可能か(ガス会社への確認を依頼)
  • 看板を出せる位置と、その条件
自分で調べられること(内覧の前でもできる)
  • 物件のある区を管轄する保健センターの窓口と電話番号
  • 事前相談の予約に何日かかるか
  • 自分の計画席数で必要になる作業所の床面積(名古屋市の基準で計算)
  • 導入予定の機器の消費電力(型式から製品ページで)
  • 給湯器の型式から、メーカーの補修用性能部品の保有期間

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よくある質問

ここでは、美容室の居抜き物件について実際に問い合わせの多い4つに答えます。 いずれも、内覧から契約までのあいだに判断を迫られる項目です。 答えの中で数値を挙げているものは、すべて条文か公表資料にもとづいています。

一方で、金額については答えを書いていません。 移設費用や更新費用は物件の条件で桁が変わるため、平均値に意味がないからです。 代わりに、自分で確かめる手順を書いています。

また、施設の基準に関する答えは名古屋市の例を挙げています。 基準は自治体の条例で定まるため、他の地域では数値も項目も異なります。 自分の所在地の保健所に必ず確認してください。

4つとも、判断を先延ばしにすると選択肢が減る種類の問題です。 特に4つ目の残置物と所有権は、申込みを入れる前でなければ条件として交渉できません。 順に見ていきます。

前の美容室のシャンプー台は、そのまま使えますか?

台が使えるかどうかより先に、位置が自分のレイアウトに合うかを確かめてください。 シャンプー台は給水・給湯・排水に直結しているため、位置を動かすと排水勾配を取り直すことになります。 床を上げるか、床を斫って配管を通し直すかの工事です。

位置が合っているなら、台が古くても配管を活かして台だけ入れ替えるという選択肢が残ります。 これが居抜きで最も効果の大きい節約です。

台そのものの判断材料は、銘板に書かれた製造年と型式です。 国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」では、器具・備品の「理容・美容機器」の法定耐用年数を5年としています。 これは税法上の年数であって機器の寿命ではありません。

設置から相当年数が経っている場合は、補修用性能部品がまだ入手できるかをメーカーに型式で問い合わせてから判断してください。 部品が終了していれば、故障した時点で入れ替えになります。

なお、移設や入れ替えの金額は物件の配管経路と床の構造で大きく変わるため、この記事では金額を書いていません。 銘板の写真と、排水口の位置を写した写真を内装会社に渡して、見積もりで確かめてください。

給湯器の号数は、どこを見て、どう判断すればよいですか?

給湯器本体の正面か側面に貼られた銘板に、型式と号数、製造年が書かれています。 号数の意味は、水温プラス25度のお湯を1分間に何リットル出せるかです。 リンナイの解説では、1分間に24リットル出せれば24号と説明されています。

京葉ガスのよくあるご質問では、1号を「1分間に1リットルの水を25度上昇させる能力」と定義しています。 同じページに、20号の給湯器で冬場に水温5度の水を40度にする場合の計算例が示されています。 20リットル × 25度 ÷ 35度で、毎分およそ14.3リットルです。

夏場に水温25度から40度にする場合は、20 × 25 ÷ 15でおよそ33.3リットルになります。 同じ号数でも、冬は夏の半分以下しか出ません。

判定は、自分の店で同時に使うシャンプー台の数に、1台あたり毎分何リットル使うかを掛けた値と、冬場の毎分出湯量を比べて行います。 1台あたりの使用量は物件のシャワーヘッドと水圧で変わるため、公表された標準値は見つかりませんでした。

そこで、内覧のときにバケツと秒針付きの時計を持参してください。 実際に10秒間出して量を測り、6倍すれば毎分の量になります。 その値を使えば、号数が足りるかどうかを自分で判定できます。

前が美容室だった物件なら、保健所の基準も満たしていますか?

満たしているとは限りません。 美容師法第13条は、美容所の開設者が講じなければならない措置として4つを挙げています。 常に清潔に保つこと、消毒設備を設けること、採光・照明及び換気を充分にすること、そして「その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置」です。

第4号があるため、施設の基準は自治体ごとに上乗せがあり、全国一律ではありません。

名古屋市の「開設のしおり(美容所)」(令和8年6月)は、作業所の床面積を美容椅子2台までは13平方メートル以上とし、美容椅子1台を増すごとに3平方メートル以上増すこと、 待合所の床面積を作業所の8分の1以上とすることなどを示しています。

前の店が美容椅子2台で営業していた区画に自分が4台を置く計画なら、必要な作業所面積は19平方メートル以上に増えます。 席数が違えば、同じ区画でも判定が変わるということです。

さらに美容師法第12条は、構造設備について都道府県知事の検査を受け、第13条の措置を講ずるに適する旨の確認を受けた後でなければ美容所を使用してはならないと定めています。 前の店の確認済証は引き継がれません。

席数を確定する前に、図面を持って管轄の保健所へ事前相談してください。 基準は自治体の条例で定まるため、名古屋市以外で開業する方は必ず自分の所在地の保健所に確認してください。

残置物の処分費は誰が負担するのですか。造作譲渡料を払えば全部自分のものになりますか?

造作譲渡料を払っても、その区画にあるものすべての所有権が移るわけではありません。 まず、建物に固定されたものは民法第242条の付合の対象になり得ます。

同条は「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」と定めています。 床下の配管や埋め込んだ配線のように建物と一体になったものは、前のテナントではなく貸主の所有物として扱われることがあります。

次に、リース契約が残っている機器は前のテナントの所有物ですらなく、リース会社の所有物です。 譲渡契約書に品名と数量を書かせ、リース残債の有無を書面で確認してください。

そのうえで、譲渡の対象に入らなかった物、つまり残置物の処分費を誰が負担するかを、申込みの前に書面で決めてください。 この一文がないと、引き渡し後に自分の費用で処分することになります。

退去時の扱いも同時に決めます。 民法第621条は、賃借人が賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状に復する義務を負うと定めていますが、 実際の店舗の契約では特約で範囲が広く設定されていることが多く、前のテナントが残した造作まで自分が撤去する取り決めになっている場合があります。

契約書の原状回復条項と、譲渡の対象一覧を突き合わせてから申し込んでください。

まとめ|美容室の居抜きで確認する7つのこと

流用で浮いた金額は「1日何人分のお客様か」に翻訳できます。200万円の差が、何日ぶんの粗利にあたるか。そこまで出せば判断できます。

居抜きは安いから選ぶものではありません。使えるものが、自分の営業に合っているかどうかで選びます。

美容室の居抜き物件で確認する7つのこと(再掲)
番号 確認することと、判断の分かれ目 内覧時・契約前に自分で確認できること
確認1 シャンプー台の位置と台数。価値があるのは台ではなく給排水。位置を動かすと床上げか斫りになり、費用の桁が変わる 床の排水口を真上から撮影し、入口の角から2方向の距離を実測して平面図に落とす
確認2 給湯能力(号数)。冬は夏の半分以下しか出ない。判定は冬の毎分出湯量と、同時使用の湯量を比べて行う 銘板で号数を控え、号数×25÷35で冬の毎分出湯量を計算する。使用量はバケツで10秒測って6倍する
確認3 電気容量。席数ではなく、ピーク時に同時に動くもので判定する。機器の構成が違えば結果は変わる ピークに動く機器を型式まで書き出して消費電力を足し、分電盤の主幹表示を撮影して突き合わせる
確認4 セット面の配置と間隔。前の店の配置は前の店の営業に最適化されている。無自覚に踏襲しない 鏡の中心間距離を実測し、実際に椅子に座って背後を人が通れるかを試す
確認5 前の用途が美容所でない場合の工事。飲食店跡は条件が良いことがある。事務所跡は床上げと天井高が分かれ目 排水立管までの距離と天井高を実測し、床を上げたあとに残る天井高を計算する
確認6 保健所の施設基準。前の確認済証は引き継がれない。名古屋市では美容椅子2台まで13平方メートル、1台増すごとに3平方メートル 自分の計画席数で必要面積を計算し、図面を持って管轄の保健センターに事前相談する
確認7 造作の所有権と残置物。所有者は前テナント・貸主・リース会社の3者に分かれる。造作買取請求権は特約で外せる 譲渡の対象一覧と残置物の処分費の負担者を、申込みの前に書面でもらう
試算の前提と、自分の数字に置き換えるときの取り方
項目 この試算で置いた仮の数値 内覧時・契約前に自分で確認できること
区画の広さ 20坪(美容椅子4台、シャンプー台2台の計画) 区画の内法を実測し、柱と梁で使えない部分を引いた実面積を出す
スケルトンから作った場合の内装費 坪40万円として800万円 同じ図面で「スケルトンから作った場合」の見積もりを1社に出してもらう
居抜きを活かした場合の内装費 450万円(シャンプー台の位置は流用、台は入れ替え、セット面と内装は作り直し) 流用する設備と作り直す設備を一覧にし、その前提で見積もりを依頼する
造作譲渡料 150万円 譲渡の対象一覧をもらい、同じものを新品で揃えた場合の金額と比べる
償却する月数 60か月(5年) 賃貸借契約の期間と、更新の条件を契約書で確かめる
粗利率 60パーセント(材料費と歩合を除いた残り) 想定するメニュー構成から、薬剤費と歩合を引いた実際の粗利率を出す
客単価と営業日数 客単価8,000円、月25日営業 近隣の同価格帯の店の料金表を調べ、自分の設定と照らす
200万円の差額を「1日あたりのお客様の人数」に直す4段階(編集部の試算例)
段階 計算と結果 内覧時・契約前に自分で確認できること
1|差額を出す スケルトン800万円 − (居抜き450万円+造作譲渡料150万円)= 200万円 同じ図面で2通りの見積もりを1社に依頼する。設計者が同じなら比べられる
2|月額に直す 200万円 ÷ 60か月 = 月あたり約33,300円 賃貸借契約の期間を確認し、契約期間を超える償却年数を置いていないかを見る
3|売上に戻す 33,300円 ÷ 粗利率0.6 = 月あたり約55,500円の売上 薬剤費と歩合を差し引いた実際の粗利率を、メニュー別に計算する
4|人数に直す 55,500円 ÷ 25日 = 1日約2,220円。客単価8,000円で割ると1日あたり0.3人 自分の客単価の設定を、近隣の同価格帯の店の料金表と照らす
補正1|設備の残存年数 流用した給湯器が3年後に更新になれば、その費用を差額から引く必要がある 給湯器とシャンプー台の銘板の製造年を控え、更新時期の見込みを立てる
補正2|退去時の負担 造作譲渡料は退去時に戻らない前提で計算する(借地借家法第33条は特約で排除できる) 賃貸借契約書に造作買取請求権の放棄条項があるかを読む

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