見積が予算を200万円超えている。どこを削るかを決める前に、内装費を「1日何人分の売上か」に翻訳してください。

客単価600円のカフェで800万円を60か月で回収するなら、1日に必要な客数が計算で出ます。その人数が現実的かどうかで、予算の妥当性が決まります。

判断することは7つ。収益構造、物件の状態、厨房機器、容量、客席の仕上げ、テイクアウト比率、そして削る順番。

この記事でわかること

  • 想定する客単価と席数から、内装費の上限を逆算する手順。坪単価を探さなくても、自分の店の数字だけで決められます
  • カフェの売上を席数・回転数・客単価・営業日数の4つに分解し、内装のどこがどれに効くかを仕分ける方法
  • 物件の状態で工事費が動くのはカフェではどこか。給排水の立ち上がり位置とカウンターの位置が金額を決める理由
  • エスプレッソマシン・製氷機・食洗機について、発注前に確認する4項目と、内装側に出てくる条件
  • ガス機器を入れるかどうかで換気設備と消火器具の義務が変わること。建築基準法施行令と消防法施行令の該当条文
  • 提供するメニューによって床と内壁の仕上げの基準が緩和され得ること。食品衛生法施行規則別表第19第五号ロの中身と、保健所への相談のしかた
  • 減額を相談するときの削る順番7段階と、見積書のどの行で「削ってはいけない線」を確認するか
滞在型は椅子・照明・音環境・空調・客席の電源に重点を置き、ファサードの派手さとテイクアウト動線を抑えられる。テイクアウト中心はファサード・看板・動線・待機スペースに重点を置き、客席の広さと椅子のグレードを抑えられる。
削ってよいものは、業態で入れ替わります|滞在型で椅子を落とすと滞在時間が短くなり、追加注文が減ります。判断6で扱う分岐です。自分がどちらなのかを先に決めてから、削る順番を考えてください。

800万円の見積が出てきた日に、最初にやる逆算

決める入力値は4つ。客単価、粗利率、営業日数、回収期間。この4つで、必要な客数が出ます。

客単価別、回収期間別、内装費別の3通りで試算しました。自分の数字に近い行を見てください。

内装費の上限を逆算するために、自分で決める4つの入力値
入力値 なぜ内装費に効くか 自分で決めるときの手がかり
想定客単価 同じ内装費でも、客単価が半分なら必要な客数は倍になる。カフェで内装費が重くなる最大の理由がここにある 主力の1杯の価格に、付随して出るフードやサイドの平均を足す。フードを出さないと決めているなら、飲み物単価がそのまま客単価になる
席数 席数が売上の上限を決める。同時に、席数が面積を決め、面積が工事費を決める。両側から効く唯一の変数 図面に描かれた席数ではなく、「実際に埋まる席」を数える。空調の効きが悪い席、通路に面して落ち着かない席は、いったん除いて数える
回転数(1席が1日に使われる回数) 滞在時間が長いほど回転は落ちる。内装で滞在時間を延ばす投資は、客単価を上げるが回転を下げるという両面を持つ 想定する平均滞在時間で営業時間を割る。滞在45分・営業10時間なら理論上13回転だが、待ち時間と空席時間があるため、そこから大きく落ちる前提で置く
回収期間(何か月で返すか) 同じ内装費でも、36か月で返すのと84か月で返すのとでは、1日に必要な客数が倍以上違う 借入の返済期間に合わせる。造作を残して退去する可能性があるなら、賃貸借契約の期間より長い回収計画は立てない
客単価別|内装費800万円を60か月で回収するのに必要な1日の客数(編集部の試算例)
想定客単価 必要な1日の客数 自店に置き換えるときに変える数字
600円 約13人 フードを出さない飲み物中心の想定。テイクアウト比率が高いほどこの帯に寄る
800円 約10人 飲み物に軽いフードが2割程度付く想定。付帯率を自分のメニュー案で見積もり直す
1,000円 約8人 ランチかセットが主力になる想定。回転が落ちる分を席数で補えるかを同時に確認する
1,500円 約6人 食事とデザートを組み合わせる想定。厨房面積が増え、内装費の前提そのものが上がる
3,000円 約3人 カフェではなく飲食店の帯。同じ800万円でも必要人数が5分の1になることの確認用
回収期間別|客単価600円で内装費800万円を回収するのに必要な1日の客数(編集部の試算例)
回収期間 必要な1日の客数 この期間を選ぶときに確認すること
36か月(3年) 約21人 短期で返す計画。開業初年度からこの客数が出る根拠があるかを、立地の通行量と近隣の同業の数で確かめる
60か月(5年) 約13人 賃貸借契約が5年未満なら、更新できなかったときに残債が残る。契約書の更新条項を先に読む
84か月(7年) 約9人 7年後に内装の一部が更新時期に入る。椅子の張り替えや厨房機器の入れ替え費用を別枠で積む
120か月(10年) 約6人 10年は賃貸借契約と設備寿命の両方を超えることが多い。会計上の耐用年数とも突き合わせる
内装費別|客単価600円・60か月で回収するのに必要な1日の客数(編集部の試算例)
内装費 必要な1日の客数 800万円との差から読み取ること
500万円 約8人 300万円の削減で1日5人ぶん軽くなる。ただし削った内容が席の使いやすさに及んでいないかを確認する
600万円 約10人 200万円の削減で1日3人ぶん。減額交渉で狙う現実的な幅はこのあたりに収まることが多い
800万円 約13人 基準。1席あたりに直すと、20席なら1席40万円、24席なら1席約33万円
1,000万円 約16人 200万円の上乗せで1日3人ぶん重くなる。その3人を生む根拠が図面にあるかで判断する
1,200万円 約19人 1日19人は、20席なら1席あたり約1回転ぶん。回転計画そのものを見直す水準

カフェという業態を、公的統計で確かめる

4つの公的統計から、確かめられることと、自分の計画への使い方を整理しました。相場の数字は、確認できたものだけを載せています。

4つの公的統計から確かめられることと、自分の計画への使い方
統計 確かめられたこと 自分の計画にどう使うか
令和3年経済センサス‐活動調査 喫茶店は全国58,669、名古屋市2,416。従業者1〜4人が全国の73.5% 人手で回転を上げる前提を外す。動線と席の使いやすさで回転を作れる図面かを確認する
家計調査(2023〜2025年平均) 喫茶代の年間支出は全国平均10,261円、名古屋市16,431円で全国1位 客単価で割って来店頻度に直し、必要客数を「何世帯ぶんか」に翻訳して商圏の広さを見積もる
2025年度新規開業実態調査 開業費用は平均975万円、中央値600万円。500万円未満が41.8%(n=2,165) 内装費だけで中央値を超えていないかを確認する。超えるなら、超える理由を1行で説明できるようにする
建築物リフォーム・リニューアル調査 店舗(飲食店、物販店舗)の平均工期は500万〜1,000万円未満で46日 工期ぶんの家賃を内装費に足して総額を見る。契約日から開店日までの家賃を見積書の外に書き出す

判断1〜2|収益構造と、物件の状態

売上を決める変数は4つ。席数、回転数、客単価、営業日数。内装で動かせるのは、このうち席数と回転数だけです。

だから回転に効く投資と、効かない投資を分けます。見分け方を表にしました。

工事費は前の入居者の業態で決まります。飲食からの居抜きなら安く、物販からだと給排水で跳ねます。

カフェの売上を決める4つの変数と、内装で動かせる範囲
変数 内装で動かせるか 自店で確かめる方法
席数 動かせる。面積配分とレイアウトで直接決まる。ただし増やすほど1席あたりの快適さは落ちる 図面に描かれた席を、「自分が座りたいか」で1席ずつ判定する。座りたくない席を引いた数が、実際の席数
回転数 動かせる。注文から提供までの動線、下げ物の距離、席の出入りのしやすさで決まる 図面上でカウンターから最も遠い席までの歩数を数える。下げ物を運ぶ経路が客席の通路と交差する回数も数える
客単価 間接的に動かせる。滞在時間が延びれば追加注文が出るが、同時に回転は落ちる。両立しない 滞在時間を延ばす設計にするか、短く回す設計にするかを先に決める。決めずに両方を狙った図面は、どちらにもならない
営業日数・営業時間 ほぼ動かせない。ただし照明計画と外装で、夜の時間帯に営業できる店に見えるかは変わる 営業時間の終わりの時間帯に、実際の物件の前に立ってみる。外から店内が見えるか、明るさが足りるかを確認する
回転に効く投資と、効かない投資の見分け方
項目 回転への効き方 自店で判断する基準
カウンターから最遠席までの距離 効く。提供と下げ物の往復回数がそのまま人件費と提供速度になる。1日数百往復の差が出る 図面に配膳経路を線で引き、往復の距離を測る。1日の想定提供杯数を掛けて総距離を出す
席と席の間、席と壁の間の寸法 効く。隣を立たせないと出入りできない席は、実質的に2席で1組としてしか使えない 図面上で、椅子を引いた状態の背後に人が通れる幅が残るかを確認する。残らない席を数える
レジと受け渡しの位置 効く。会計待ちの列が客席の通路を塞ぐと、着席中のお客様が出られなくなり回転が止まる ピーク時に想定される待ち人数を決め、その人数が並ぶ長さを図面に描き込む
空調の吹き出し位置と席の配置 効く。効かない席は使われない。使われない席は、その席の内装費が丸ごと回収されない 吹き出し口と各席の位置関係を図面で確認する。直風が当たる席と、風が届かない席を数える
壁面の仕上げ材のグレード ほとんど効かない。面積が大きいので金額は動くが、席の使われ方は変わらない 座った状態で手が届く高さと、それより上を分ける。手が届く範囲だけグレードを維持し、上は落とす
天井の仕上げ ほとんど効かない。ただし躯体現しにすると音が響きやすくなり、滞在の質に影響することがある 躯体現しにする場合、吸音の対策を別に取れるかを確認する。取れないなら仕上げを残す
装飾・グリーン・アート 効かない。開業後に少しずつ足していける。工事に含める必要がない 見積書から外し、開業後の運転資金の側に移す。移した金額を減額の実績として記録する
前の入居者の業態別|カフェで工事費が動く場所
前の業態 カフェにするときに金額が動く場所 内覧で確認して写真に撮ること
カフェ・喫茶店 いちばん有利。給排水・排気・電気の位置がそのまま使える可能性が高い。ただし設備の残存年数が短ければ開業直後に更新費が来る 厨房機器と給湯器の銘板を撮り、製造年を記録する。カウンターの位置と給排水の立ち上がりの関係を、メジャーで測って撮る
飲食店(ラーメン・居酒屋など) 排気ダクトとグリストラップが残っていれば有利。ただし油汚れの除去と、フードのサイズがカフェには過大なことがある ダクトの経路を端から端まで撮る。フードの寸法を測る。グリストラップの位置と容量、清掃の状態を撮る
物販店・美容室 給排水が1か所しかないことが多く、カウンター内に複数の水栓を作るには配管を新設することになる。排気の経路もない 床から立ち上がっている配管の位置を、壁からの距離を測って撮る。排水の口径も記録する。外壁に開口が取れるかを撮る
事務所 給排水が共用部にしかない場合がある。電気容量も事務所仕様で、厨房機器を同時に動かす前提になっていない 分電盤の扉を開けて主幹の容量と回路数を撮る。専有部内に給排水が引き込まれているかを管理会社に確認して記録する
スケルトン 撤去費と処分費が発生しない代わりに、工事量は最大になる。設計の自由度が高く、席数の最適化はしやすい 床のコンクリートの平らでない度合いと、天井裏の空きを撮る。給排水と電気の引込位置を図面で確認する

判断3〜4|厨房機器と、あとから足せない容量

厨房機器は削減対象ではなく必須条件です。機器が決まると、内装工事の側に条件が出ます。

簡易な営業には、食品衛生法施行規則で4つの緩和が認められています。該当するかを確かめてください。

あとから足せない容量は4つ。排気、給排水、電気、そしてガス。火を使う設備を置くかどうかで、法令上の要求が変わります。

カフェの主な機器と、内装工事の側に出てくる条件
機器 内装工事の側に出てくる条件 発注前に自分で確認すること
エスプレッソマシン 相と電圧が機種で分かれ、専用回路を求めるものがある。給水と排水の両方が必要。カウンター天板の耐荷重と高さも決まる カタログと銘板で、相・電圧・定格消費電力・指定の分岐ブレーカー容量の4点を書き出す。機種未定なら候補の最も厳しい条件を採る
製氷機 給水・排水に加えて、放熱のための背面と上部の空きが必要。空冷式は周囲の温度が上がると能力が落ちる 取扱説明書の設置条件のページで、必要な離隔寸法を確認する。1日の必要製氷量から機種を決め、その寸法で図面に描いてもらう
食器洗浄機 給湯・給水・排水と、機種によっては単相200V。排水は床下に流すか、排水ポンプで持ち上げるかで工事が変わる 導入するかどうかを先に決める。導入するなら、排水の落とし先が確保できる位置に置けるかを図面で確認する
冷蔵庫・冷凍庫 放熱と扉の開き勝手で、周囲に必要な空きが決まる。カウンター下に組み込む場合は換気の経路も必要 扉が開く方向と、開けたときに通路を塞がないかを図面で確認する。組み込みなら、機種の放熱方式を確認する
オーブン・トースター 電気式かガス式かで、必要な設備が大きく変わる。ガス式なら換気設備と消火器具の要否に影響する 提供するフードのメニュー案を先に確定させる。焼くのか温めるのかで必要な機器が変わる
コンロ(ガス) ガスの引込、ガス管、フード、排気ダクト、グリスフィルター、火炎伝送防止装置まで連鎖する。単体では終わらない 本当に必要かを、メニュー案に立ち返って判断する。1品のために引くなら、その1品の想定売上と工事費を並べて比べる
手洗い設備 施設基準で求められる。水栓は洗浄後の手指の再汚染が防止できる構造とされており、水栓の方式が指定される センサー式・押しボタン式・肘で操作できるレバー式のいずれかを選び、給水経路を図面に入れる。個数は保健所に確認する
食品衛生法施行規則 別表第19第五号ロ|簡易な営業に認められている4つの緩和
緩和される項目 条文が定めていること 自分の店で確認すること
床面及び内壁の材料 「取り扱う食品や営業の形態を踏まえ、食品衛生上支障がないと認められる場合は、不浸透性材料以外の材料を使用することができる」 メニュー案を持って保健所に事前相談し、自店が簡易な営業に当たるかを確認する。当たるなら、床と腰張りの仕様を見積前に確定させる
床面の排水設備 「取り扱う食品や営業の形態を踏まえ、食品衛生上支障がないと認められる場合は、床面に有しないこととすることができる」 床に排水溝を切らずに済むかを確認する。切らなければ床の勾配も不要になり、段差も生まれない
冷蔵又は冷凍設備の位置 「取り扱う食品や営業の形態を踏まえ、食品衛生上支障がないと認められる場合は、施設外に有することとすることができる」 店内の限られた面積に冷蔵設備を押し込まずに済むかを確認する。押し込まなければ、その面積を客席に回せる
食品を取り扱う区域の区画 「従業者以外の者が容易に立ち入ることのできない構造であれば、区画されていることを要しないこととすることができる」 カウンターで仕切るだけで足りるかを確認する。壁と扉を作らずに済めば、造作の量が減り、店内も広く見える
あとから足せない4つの容量と、カフェでの効き方
容量 カフェで足りなくなる理由 賃貸借契約の前に確認すること
電気(主幹容量・回路数) エスプレッソマシン、製氷機、食洗機、冷蔵庫、空調が同時に動く時間帯がある。ピークは開店直後と昼 分電盤の主幹容量と回路数を撮る。建物全体の受電に空きがあるかを管理会社に確認し、回答を書面かメールで残す
給水(口径・同時使用) 水を使う点がカウンター内に集中する。口径が細いと、同時に使ったときに圧が落ちて機器の性能が出ない 専有部に引き込まれている給水管の口径を確認する。立ち上がりの位置を、壁からの距離を測って写真に撮る
排水(位置・勾配) 排水の落とし先が遠いと、床を上げるか、ポンプで持ち上げることになる。床を上げれば段差ができる 床の立ち上がり位置と口径を確認する。カウンター予定位置からの距離を測る。グリストラップの有無と位置も記録する
排気(外部への経路) フードメニューを出すなら排気が要る。外壁に開口が取れない、シャフトがない物件では、そもそも成立しない 外壁の開口、既存のシャフト、屋上への経路を撮る。既存ダクトがあれば口径と経路を端から端まで撮る
火を使う設備を置くかどうかで変わる法令上の要求
条文 定めていること 自分の店で確認すること
建築基準法施行令 第20条の3第1項第1号 密閉式燃焼器具等以外の火を使用する設備又は器具を設けていない室は、換気設備を要しない室に含まれる メニュー案から、火を使う設備が本当に必要かを判定する。判定結果を持って特定行政庁に確認する
建築基準法施行令 第20条の3第1項第3号 発熱量6キロワット以下でも「(調理室を除く。)」とされ、店舗の調理室は緩和の対象にならない 「小さいコンロだから大丈夫」という判断をしない。設計者に条文を示して、扱いを確認してもらう
建築基準法施行令 第20条の3第2項 換気設備の構造を定める。第1号イ(1)で給気口の高さ、(2)で排気口の高さと直接外気への開放などを規定 換気設備が必要になる場合、その仕様が見積書のどの行に入っているかを確認する
消防法施行令 別表第一(三)項ロ 「飲食店」を(三)項ロとして掲げる。カフェもここに当たる 自店がどの項に当たるかを、所轄の消防本部の予防課に図面を持って確認する
消防法施行令 第10条第1項第1号ロ (三)項で火を使用する設備又は器具を設けたものは、延べ面積を問わず消火器具が必要 火を使う設備を置く計画なら、消火器具の費用を見積に入れる。設置位置も図面で確認する
消防法施行令 第10条第1項第2号ロ (三)項で前号ロに当たらないものは、延べ面積150平方メートル以上で消火器具が必要 自店の延べ面積を確認する。150平方メートル未満で火気設備もないなら、この条では義務は生じない
消防法施行令 第21条第1項第3号イ (三)項を含む防火対象物で、延べ面積300平方メートル以上のものに自動火災報知設備が必要 延べ面積を確認する。地階・無窓階の場合は同項第10号(100平方メートル以上)も確認する

判断5〜6|客席の仕上げと、テイクアウト比率

客席の仕上げは削れます。ただし、削ると回転が落ちる項目もあります。椅子の座り心地と、通路の幅がそれです。

テイクアウト比率が高いほど、客席よりカウンターまわりに予算を寄せます。業態タイプ別の重点を表にしました。

客席まわりで削れる項目と、削ってよいと言える条件
項目 削り方 削っても回転が落ちないと言える条件
壁の仕上げ材(腰から上) グレードを一段下げる。面積が大きいので単価差がまとまった金額になる 座った状態で手が触れない高さであること。写真に写る面をひとつだけ残し、そこにだけ予算を集める
天井の仕上げ 躯体現しにして塗装で仕上げる。ボードと下地の分がまるごと減る 吸音の対策を別に取れること。取れないなら、会話が響いて長居できない店になり、客単価が落ちる
造作家具(収納側) お客様の目に触れる部分だけ造作にし、収納は既製品に置き換える 既製品の寸法が納まること。納まらずに隙間や段差が出ると、掃除の手間が毎日発生する
収納の扉 オープン棚にして建具費を減らす。見せる収納として設計する 置くものの見た目が揃うこと。揃わないなら、開業後に布をかけることになり、結局見苦しくなる
バックヤードの仕上げ 機能が満たされていれば十分。塗装のみ、あるいは下地のままにする 清掃性が確保されていること。汚れが落ちない材料にすると、毎日の掃除時間が増える
装飾・グリーン・アート 工事に含めず、開業後に少しずつ足す 常に条件を満たす。工事に含める理由がない。運転資金の側に移す
照明器具のグレード 器具の意匠を落とし、配線と位置は図面どおり残す 照度と配光が確保されていること。器具は後から替えられるが、配線の位置は替えられない
客席まわりで削ると回転が落ちる項目と、見積書での確かめ方
項目 削ると何が起きるか 見積書のどの行を見るか
椅子の座り心地 滞在時間が短くなり、追加注文が減る。逆に座り心地が良すぎると回転が落ちる。狙う滞在時間に合わせる 「家具」「什器」の行。工事とは別発注になっていることが多く、その場合は別途分の金額を必ず出してもらう
席と席の間の寸法 隣を立たせないと出られない席ができる。実質的に席数が減り、1席あたりの内装費の負担が上がる 見積ではなく図面で確認する。椅子を引いた状態の背後に残る幅を、席ごとに実測する
空調の能力と吹き出し位置 効かない席ができる。その席は使われず、その席ぶんの内装費が回収されない 「空調設備工事」の行。能力(キロワット)と台数、吹き出し口の位置が図面と一致しているかを確認する
音の環境(吸音) 反響が強いと会話が疲れる。長居してもらえず、追加注文が出ない。開業後の対策は難しい 「内装仕上工事」の中の天井・壁の仕様。躯体現しにする場合、吸音材の行が残っているかを確認する
客席の電源とコンセント 滞在時間の長い業態では集客要素になる。あとから増やすには床か壁を開ける 「電気設備工事」の行。コンセントの数と位置が図面と一致しているかを確認する
照明の配線位置と回路分け 時間帯で明るさを変えられなくなる。昼と夜で使い方の違う店では、実質的に営業時間が短くなる 「電気設備工事」の照明回路の行。回路が何系統に分かれているかを確認する
看板・ファサード 何の店でいくらなのかが外から読み取れない。通行人が入る判断をできず、集客が落ちる 「サイン工事」「外装工事」の行。別途になっている場合は、別途分の金額を必ず出してもらう
業態タイプ別|重点を置く部分と、抑えられる部分
タイプ 重点を置く部分 抑えられる部分と、その判断基準
滞在型(イートイン中心) 椅子、席と席の寸法、照明、吸音、空調、客席の電源。滞在時間と追加注文に直結する ファサードの派手さとテイクアウト動線。ただし看板の視認性は落とさない。何の店でいくらかが読めるかを基準にする
テイクアウト中心 ファサード、看板、注文から受け取りまでの動線、お待ちいただくスペース、外からの視認性 客席の広さと椅子のグレード。席を置くなら、待つための席か、短時間で立つ席かを先に決める
併設型 2つの動線が交錯しない設計。受け取り口の位置と、着席中のお客様の出入り経路を分ける 面積配分を早い段階で固めること自体が削減になる。あとから比率を変えると造作をやり直すことになる
テイクアウト比率別|売上の上限を決めるものと、削る場所
テイクアウト比率 売上の上限を決めるもの この比率のときに削る場所
ほぼ0%(イートイン専業) 席数×回転数。空調が効かない席、出入りしにくい席はそのまま上限を下げる テイクアウト用の受け取り口、お待ちいただくスペース、持ち帰り用什器。作らない
2〜3割(イートイン主体) 席数×回転数が主。ただしピーク時の受け取り列が客席の通路を塞ぐと、両方の上限が同時に落ちる 受け取り口を独立させるのではなく、レジの脇に寄せる。専用カウンターの造作は作らない
5割前後(併設型) 2つの動線が交錯しないこと。交錯すれば、どちらの回転も落ちる 客席のグレードを一段落とし、その分を動線の分離と受け取り口の位置に回す
7割以上(テイクアウト主体) ピーク時間帯にさばける人数と、外からの視認性。通行量が売上の天井を決める 客席の広さと椅子のグレード。吸音と客席の電源は不要。浮いた分を看板とファサードに回す
ほぼ10割(持ち帰り専業) 提供速度と、行列が発生したときに歩道を塞がないこと 客席関連はすべて不要。ただし待つ場所は必要。屋外に列ができる前提で、看板の高さを見直す

判断7|削る順番と、削ってはいけない線

まず面積から見直します。必要席数から逆算して、借りる面積が過大でないか。ここがいちばん効きます。

削ってはいけないのは7項目。見積書での確かめ方も表にしました。

カフェで削ってはいけない7項目と、見積書での確かめ方
項目 削ると何が起きるか 見積書のどの行を見るか
1|電気容量と機器の専用回路 機器を同時に使うとブレーカーが落ちる。ピークの時間帯に落ちれば、その日のいちばん大きい売上が消える 「幹線工事」「引込工事」「分電盤」の行。主幹の容量と回路数、専用回路の本数が書かれているかを確認する
2|給排水の位置と口径 カウンター内で同時に水を使うと圧が落ち、機器の性能が出ない。位置を動かせば床を上げることになる 「給排水衛生設備工事」の行。配管の経路長と、床を上げる工事の有無、口径を確認する
3|排気と換気の能力 店内に熱と匂いがこもり、滞在時間が落ちる。外に出た匂いは近隣からの苦情になり、あとから引き直すことになる 「換気設備工事」「排気ダクト」の行。フードの寸法と排気ファンの能力、屋外への経路が書かれているかを確認する
4|空調の能力と吹き出し位置 効かない席ができる。使われない席が3つ出れば、20席・800万円の店では120万円が回収されない 「空調設備工事」の行。能力と台数、吹き出し口の位置を図面と突き合わせる
5|席と席の間、通路の寸法 出入りしにくい席は使われない。配膳と下げ物の往復が遅くなり、回転がそのまま落ちる 見積ではなく図面。椅子を引いた状態での残り幅と、配膳経路の距離を実測する
6|看板と外装の視認性 何の店でいくらなのかが外から読めない。通行人が入る判断をできず、開業後の売上で跳ね返る 「サイン工事」「外装工事」の行。別途なら別途分の金額を必ず出してもらう
7|予備費 解体後に想定外が出たときに、本体の仕様を落とすしかなくなる。いちばん削ってはいけない層から削ることになる 見積書には載らない。自分の資金計画の側で別枠として確保し、工事費とは別の行に書いておく
予算を下げるときに手を付ける順番
  1. 面積を見直す。必要席数から逆算して、借りる面積が過大でないかを確認する。家賃と工事費の両方が同時に下がる、唯一の段階
  2. 工事に含めなくてよいものを外す。装飾、グリーン、開業後に足せる什器。運転資金の側に移し、外した金額を記録する
  3. バックヤードと天井の仕上げ。お客様の体験に影響しにくい。ただし躯体現しにする場合は吸音の対策を別に確保する
  4. 造作を既製品に置き換える。目に触れる部分だけ造作にし、収納は既製品にする。寸法が納まることを図面で確認してから
  5. 床・壁のグレードを一段。面積が大きいので効果が出る。座って手が触れる高さより上に限る
  6. 照明器具の意匠を落とす。配線の位置と回路の分け方は図面どおり残す。器具は開業後に替えられる
  7. ここまでで足りないなら、席数か物件を見直す。椅子・空調・電気容量・排気を削って帳尻を合わせない

保健所と消防に確認する順番

名古屋市の場合、内装の設計から開店までに確認する手続きと期限が決まっています。設計が固まる前に一度、相談に行ってください。

名古屋市の場合|内装の設計から開店までに確認する手続きと期限
手続き 期限・金額(名古屋市の場合) 自分の所在地で確認すること
保健センターへの事前相談 「施設の工事着工前に設計図面等を管轄の保健センターに持参し、相談して下さい」と案内されている 管轄の保健所の窓口と、相談に持参する資料の種類。図面の縮尺や記載事項の指定があるかも聞く
営業許可申請(飲食店営業) 「少なくとも営業開始予定日の20日前まで」に手数料を添えて提出。新規申請手数料は16,000円 申請期限と手数料の額。オンライン申請が使えるか。申請時に施設審査の日程を決める運用かどうか
許可の有効期間 実地審査で12項目を査定し、該当数に応じて5年から8年で決まる(0〜3項目は5年、10〜12項目は8年) 有効期間の決め方。査定制なのか一律なのか。査定制なら、加点される仕様の一覧をもらう
工事計画の届出(消防) 火災予防条例第66条の2により、工事に着手する前に関係図面を添えて消防署長へ届け出る 着工前の届出が必要かと、その提出先。所轄の消防署本署の予防課に相談する
火を使用する設備等の設置届 火災予防条例第68条第2号の3により、排気用ダクト等を有するちゅう房設備はあらかじめ届出 対象となる設備の範囲と、届出の時期。フードとダクトを付ける計画なら必ず確認する
使用開始の届出(消防) 火災予防条例第66条により、使用開始の日の7日前までに消防署長へ届け出る 開店日から逆算した提出期限。検査の日程が必要かどうかもあわせて確認する

あわせて読みたい

よくある質問

カフェの内装費について、相談の場でよく出る質問を4つ挙げます。 いずれも、答えの前提になる条文や統計を確認したうえで書いています。 数値が示せないものは、示せない理由も書いています。

特に多いのが、坪単価に関する質問です。 相場が分かれば安心できる、という気持ちは分かります。 しかしカフェの場合、相場より自分の客単価から逆算するほうが、はるかに確実な判断になります。

もう1つ多いのが、法令に関する質問です。 ここは自己判断すると工事のやり直しになるため、条文を示したうえで「どこに確認するか」まで書いています。 施設基準は自治体の条例で定めるものなので、必ず自分の所在地で確認してください。

カフェの内装費は坪いくらが目安ですか?

カフェに限定した坪単価を、出典をたどれる形で示している公的な資料は確認できませんでした。 この記事でも数値は書いていません。 参照できるのは、業種を限定しない開業費用の統計です。

日本政策金融公庫総合研究所の2025年度新規開業実態調査(2025年8月調査、有効回答2,165社、回収率25.4%)は、開業費用の平均値を975万円、中央値を600万円と公表しています。

分布は250万円未満が20.1%、250万〜500万円未満が21.7%、500万〜1,000万円未満が29.7%、1,000万〜2,000万円未満が18.5%、2,000万円以上が10.0%です。

ただしこれは内装費だけの数字ではなく、物件取得費や運転資金を含んだ開業費用の総額です。 業種別の内訳は調査結果の概要には掲載されておらず、母集団も同公庫の融資先に限られます。

坪単価を探すより、想定する客単価と席数から必要売上を先に逆算し、その売上で無理なく返せる金額を内装費の上限に置くほうが、判断としては確実です。 坪単価そのものの考え方は店舗内装の坪単価はいくらか|業種別の目安と、坪単価で判断を誤る6つの理由で扱っています。

エスプレッソマシンのために電気容量を増やす必要はありますか?

機種によって必要な電源が違うため、導入予定の機種のカタログと銘板を先に確認してください。 確認するのは、相と電圧(単相100V・単相200V・三相200Vのどれか)、定格消費電力、専用回路の要否、メーカーが指定する分岐ブレーカーの容量の4点です。

この4点は機種ごとに大きく異なり、公的な出典で示せる代表値がないため、この記事には具体的な数値を書いていません。 機種が未定の段階なら、候補のうち最も条件の厳しいものを基準に配線しておくと、後からの機種変更に耐えられます。

あわせて確認したいのが、物件側の余力です。 分電盤の主幹ブレーカーの容量と回路数、建物全体の受電容量に空きがあるかを、賃貸借契約を結ぶ前に管理会社へ確認してください。

建物全体に余力がなければ、店舗側だけでは増やせません。 マシン本体は後から買い替えられますが、幹線と分電盤は内装工事が終わったあとに触ると、壁と天井を開け直す工事になります。

ガスを引かず電気だけのカフェにすれば、内装費は下がりますか?

法令上の要求が変わる可能性があります。 建築基準法施行令第20条の3第1項第1号は、換気設備を要しない室として「密閉式燃焼器具等以外の火を使用する設備又は器具を設けていない室」を挙げています。

同項第2号の緩和は「床面積の合計が百平方メートル以内の住宅又は住戸に設けられた調理室」が対象で、店舗には当てはまりません。 同項第3号は発熱量6キロワット以下の設備を挙げていますが、括弧書きで「(調理室を除く。)」とされています。

つまり店舗の調理室で火を使う設備を置けば、同条第2項の構造を満たす換気設備が必要になります。

消防法施行令第10条第1項第1号ロも、別表第一(三)項に掲げる防火対象物で火を使用する設備又は器具を設けたものには、延べ面積を問わず消火器具を設置するものとしています。 飲食店は同表(三)項ロです。

火を使う設備を設けなければ、同条同項第2号ロにより延べ面積150平方メートル以上が基準になります。 ただし建築基準法第28条第2項の居室の換気や、食品衛生法施行規則別表第19第三号ロが求める換気の構造は、これとは別に検討が必要です。

電化するかどうかは、特定行政庁と所轄の消防本部に図面を持って確認したうえで決めてください。

床の防水や壁の腰張りを省いて、費用を下げられますか?

提供するメニューによっては、緩和が用意されています。 食品衛生法施行規則の別表第19第五号ロは、飲食店営業のうち「そのままの状態で飲食に供することのできる食品を食器に盛る、そうざいの半製品を加熱する等の簡易な調理のみをする営業」を簡易な営業と定義し、そこに喫茶店営業を含めています。

この簡易な営業に当たる場合、床面及び内壁について「食品衛生上支障がないと認められる場合は、不浸透性材料以外の材料を使用することができる」、排水設備について「床面に有しないこととすることができる」、冷蔵又は冷凍設備について「施設外に有することとすることができる」と定めています。

床の防水と排水溝、内壁の腰張りは金額の大きい工事なので、緩和が使えるかどうかで見積は変わります。 ただし判断するのは営業者ではなく、許可を出す保健所です。

名古屋市域の施設基準は愛知県食品衛生条例第3条により食品衛生法施行規則第66条の7のとおりとされていますが、運用は自治体ごとに異なります。 名古屋市は施設の工事着工前に設計図面等を管轄の保健センターへ持参して相談するよう案内しています。

必ず自分の店の所在地を管轄する保健所に、メニュー案と図面を持って事前相談してください。

まとめ|カフェの予算で決める7つの判断

削減額と、削ったことで失う売上。両方を「1日の客数」で並べれば、判断できます。

削る順番は、面積、什器、仕上げ、そして最後まで設備には触らない。この順を守るだけで、数年後の出費が変わります。

削減と損失を「1日の客数」で並べる(編集部の試算例)
起きること 1日の客数への影響 自店で確かめる方法
内装費を200万円減らす 必要な1日の客数が約13人から約10人へ。3人ぶん軽くなる 減額後の見積総額で、内装費÷回収期間÷粗利率÷営業日数÷客単価を計算し直す
面積を2坪減らして席を2つ落とす 工事費と家賃が同時に下がる一方、売上の上限も下がる。差引で判断する 落とす2席が1日に生む売上(回転数×客単価)と、2坪ぶんの家賃+工事費を並べて比べる
空調を1台減らして効かない席が3つできる 1席40万円×3席=120万円が回収されない。200万円の減額のうち6割が消える 吹き出し口と席の位置関係を図面で確認し、風が届かない席を数える。開業後は実際に座って確かめる
通路を詰めて席を2つ増やす 増えた2席が使いにくければ、増えた席も既存の席も回転が落ちる。両方を失う 椅子を引いた状態で背後に人が通れるかを、図面上の寸法で確認する。通れないなら増やさない
工期が2週間延びる その間の家賃が売上ゼロで出ていく。国交省調査では800万円規模の店舗工事の平均工期は46日 家賃の日割り×延びた日数を計算し、削減額から差し引く。工程表の余裕日数を契約前に確認する
看板を簡素にして通行人の認知が落ちる 金額は下がるが、効果を数値で確かめられない。カフェでは削減の効果が最も測りにくい項目 開業前に、物件の前を歩いて店名とメニューが読める距離を測る。読める距離が短いなら削らない
この記事で数値を書かなかった項目と、代わりに使う方法
項目 書かなかった理由 代わりに自分でやること
カフェの内装費の坪単価 カフェに限定した坪単価を、出典をたどれる形で示している公的資料を確認できなかった。開業費用の統計は業種別の内訳が公表されていない 想定客単価と席数から必要売上を逆算し、返せる金額を内装費の上限にする。この記事の冒頭の4つの入力値を使う
カフェの原価率・粗利率の目安 業態と仕入で大きく変わり、一律の目安を裏づける一次情報を確認できなかった。試算では編集部が仮に70%と置いている メニュー案の1品ごとに原価を書き出し、想定の販売構成比で加重平均する。仕入先の見積を取れば計算できる
エスプレッソマシンの消費電力 機種による差が大きく、代表値として示せる公的な出典がない。相と電圧も機種で分かれる 候補機種のカタログと銘板から、相・電圧・定格消費電力・指定の分岐ブレーカー容量の4点を書き出す
予備費の比率 物件の状態で必要額が大きく変わり、一律の比率を裏づける一次情報を確認できなかった 解体を伴う工事ほど厚く、内装だけの工事ほど薄く見る。自分の物件の状態に当てはめて金額で決める

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