コワーキングスペース・シェアオフィスは、複数の事業者に区画を貸し出すという事業モデルそのものが、自社が使うためのオフィス移転とは違います。個室ブースを多数設置すると、建築基準法上の防火区画・避難経路の考え方も変わります。

間仕切りを増やすほど、避難経路は複雑になります。什器の配置を先に決めてから、避難経路を後付けで確認するという順番では、間仕切りの位置をやり直すことになります。

着工前に決めておくことを6つに整理しました。

この記事でわかること

  • 個室ブースを増やしたときの防火区画の考え方
  • 避難経路(廊下幅・二方向避難)の確保
  • 防音ブースの遮音等級の考え方
  • 電源・LAN配線の増設余地
  • 自社移転とは違う賃貸モデル特有の管理責任
  • 消防法上の用途区分と内装制限

自社が使うためのオフィス移転の内装はオフィス移転の内装で決める7つのことで扱っています。この記事は複数の事業者に貸し出す運営モデル特有の基準に絞ります。

コワーキングスペースの防火区画の考え方を示した図。個室ブースを多数設置すると避難経路が細分化され、建築基準法上の防火区画・二方向避難の確保がオフィスより厳しく問われる。
個室ブースが増えるほど、避難経路は複雑になります|二方向避難の原則を、什器の配置図ではなく建築士・消防設備士との協議で確認します。

決め1|個室ブース多数設置時の建築基準法上の防火区画

オープンなオフィスのレイアウトに、個室ブースを多数設置していくと、間仕切りの配置によっては建築基準法上の防火区画の考え方に影響が及ぶことがあります。特に一定の規模を超える防火区画では、間仕切り壁の仕様(防火性能)が問われます。

間仕切りを木製パーテーション等で自由に組みたい場合でも、防火区画に関わる壁面には、性能を満たす仕様が必要になることがあります。ブースのレイアウトを確定する前に、建築士に防火区画への影響を確認してください。

決め2|避難経路の確保(廊下幅・二方向避難)

個室ブースを増やすと、通路が細分化され、避難経路が意図せず1系統だけになってしまうことがあります。建築基準法では、居室から異なる2方向に避難できることが原則とされています(施行令第117条以下)。

ブースの島(グループ)をレイアウトする際は、行き止まりの通路を作らないことを最優先の制約として置いてください。什器の配置図を描く前に、避難経路の骨格を建築士・内装会社と決めておくと手戻りが減ります。

コワーキングスペースで確認する避難・防火の項目
項目根拠確認すること
防火区画建築基準法(区画の規模・用途による)間仕切り壁の防火性能を建築士に確認する
二方向避難建築基準法施行令第117条以下ブースの島の配置で行き止まりを作らない
廊下幅建築基準法施行令第119条個室ブース周りの通路幅を先に確保する

決め3|防音ブースの遮音等級

電話会議やWeb会議に使う防音ブースは、遮音性能を等級(JIS等の遮音等級表示)で確認できる製品が多く流通しています。隣のブースの会話が漏れ聞こえるかどうかは、ブースの数と配置密度が高いコワーキングスペースほど利用満足度に直結します。

既製品の防音ブースを使う場合は、床の耐荷重・電源の引き込み・換気(密閉度が高い分、換気設備が必要)も合わせて確認してください。造作で防音室を作る場合は店舗の防音対策で決める7つのことの考え方も参考になります。

決め4|電源・LAN配線の増設余地

コワーキングスペースは、利用する事業者ごとにノートPC・モニター・充電機器等の電源需要が積み重なります。契約電力とコンセントの数を、席数から余裕を持って計算してください。

LAN配線も同様に、有線接続を求める利用者向けの配線を、増設しやすい経路(OAフロア・配線ダクト等)で計画しておくと、将来の席数変更にも対応しやすくなります。契約電力の考え方は店舗の電気容量が足りない物件を避けるにはでも扱っています。

決め5|office-relocation記事との違い(自社移転ではなく賃貸モデル)

自社が使うためのオフィス移転(オフィス移転の内装記事)は、自社の働き方に合わせて内装を決められます。コワーキングスペースは複数の事業者に区画を貸し出すため、貸主として不特定多数の利用者に対する管理責任を負います。

利用規約の整備、共用部の管理、トラブル時の対応窓口など、内装だけでなく運営面の準備が必要です。内装計画は、この運営体制と一緒に検討してください。

決め6|消防法上の用途区分と内装制限の強化

事務所として扱われる用途区分(消防法施行令別表第一)でも、個室ブースが多く、就寝を伴わない小規模区画が密集する構成になると、消防用設備の設置基準や内装制限が事務所単体の想定より厳しく適用される場合があります。

用途区分の判定と必要設備は、所轄の消防署が個別に確認します。ブースの数・配置を確定する前に、消防署への事前相談を行ってください。あとから設備を足す工事は、天井や壁を開け直すことになります。

よくある質問

個室ブースは、何室までなら防火区画の規制を気にしなくてよいですか?

明確な室数の基準はなく、区画全体の規模や建物の構造によって扱いが変わります。数字を先に決めるのではなく、レイアウト案を建築士に見てもらい、防火区画への影響を個別に確認してください。

既製品の防音ブースなら、届出は不要ですか?

ブースの数・配置によっては、消防法上の用途区分の判定に影響することがあります。既製品であっても、設置前に消防署へ確認することをおすすめします。

契約電力は、席数のほかに何を考慮すればよいですか?

席数に加え、利用者が持ち込む機器(ノートPC・モニター・充電機器等)の想定台数、共用部の照明・空調の電力も含めて算定してください。増席の余地も見込んでおくと将来の対応がしやすくなります。

コワーキングスペースの運営に必要な許認可はありますか?

業態や提供するサービス内容(飲食提供の有無等)によって必要な許認可が変わります。飲食を提供する場合は食品衛生法上の許可が別途必要になることがあるため、サービス内容を先に確定してください。

避難経路の確認は、いつの段階で行うべきですか?

ブースのレイアウト案を確定する前が理想です。什器配置を先に決めてしまうと、避難経路の確保のためにレイアウトをやり直すことになります。

まとめ|個室が増えるほど、避難経路の設計が難しくなる

コワーキングスペースの内装|6つの確認のまとめ
決めること基準・根拠確認すること
決め1 防火区画建築基準法(規模・用途による)間仕切り壁の防火性能を建築士に確認する
決め2 避難経路建築基準法施行令第117条以下行き止まりの通路を作らない配置にする
決め3 防音ブース製品ごとの遮音等級床耐荷重・電源・換気もあわせて確認する
決め4 電源・LAN席数・機器数から算定増設しやすい配線経路を計画する
決め5 運営モデル複数事業者への賃貸という事業形態利用規約・管理体制を内装と並行して整備する
決め6 消防法上の扱い消防法施行令別表第一ブース配置確定前に消防署へ事前相談する

コワーキングスペースの内装は、什器の配置図より先に、避難経路と防火区画の骨格を決める必要があります。ブースの数・配置を確定する前に、建築士・消防署への事前相談を済ませてください。

自社移転との違いは、貸主として複数の利用者を受け入れる責任を負う点です。内装計画と合わせて、運営面の準備も進めてください。

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