開業に要る資格は、店に付くものではありません。人に付きます。 そのため、開業日までに人を揃える必要があります。
資格の多くは講習を受けて取ります。講習は毎日開かれているものではないため、 申し込みが遅れるとその分だけ開業日が動きます。
自分が取るのか、スタッフに取ってもらうのかも決めることになります。 業種によって要る資格は7つの区分に分けられます。
この記事でわかること
- 資格が店ではなく人に付くこと。何を先に決めるか
- 食品を扱うなら要る食品衛生責任者
- 防火管理者が要るかどうかは、何で決まるか(収容人員)
- 防火対象物点検資格者による点検が要る場合
- その仕事そのものに免許が要る業種
- 古物商・動物取扱業で営業所ごとに要る選任
届出と許認可の手続きそのものは店舗開業に必要な届出と許認可、 消防の手続きは店舗の消防手続きで確認する8つのことで 扱っています。この記事は誰がどんな資格を取るかに絞ります。
区分1|食品衛生責任者(食品を扱う営業)
食品を扱う営業を行う者は、食品衛生責任者を定めることとされています(食品衛生法施行規則 別表第十七)。飲食店だけでなく、食品を販売する店も対象になります。
調理師・製菓衛生師・栄養士などの資格を持っていれば、そのまま食品衛生責任者に なれます。持っていない場合は、都道府県知事等が行う講習会か、知事等が適正と 認める講習会を受けます。
| 経路 | 中身 | 確認すること |
|---|---|---|
| 資格を持っている | 調理師、製菓衛生師、栄養士、船舶料理士など | 手元の免許証で確認する |
| 監視員・管理者の要件 | 食品衛生監視員・食品衛生管理者の要件を満たす者 | 学歴・実務の要件を保健所に確認する |
| 講習会を受ける | 知事等が行う講習会、または適正と認める講習会 | 開催日と申込の締切を先に調べる |
根拠:食品衛生法施行規則 別表第十七(第66条の2第1項関係)。講習会の開催日程と申込方法は、開業地の食品衛生協会・保健所に確認してください。
区分2|防火管理者(収容人員で決まる)
多数の者が出入りする防火対象物の管理について権原を有する者は、政令で定める資格を 有する者のうちから防火管理者を定めます(消防法第8条第1項)。
要るかどうかは、収容人員で決まります。収容人員は、その防火対象物に 出入りし、勤務し、または居住する者の数です。飲食店や物販店などでは30人以上、 その他の用途では50人以上が目安になります(消防法施行令第1条の2)。
| 項目 | 確認すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 要否 | 自店の用途と収容人員が対象になるか | 消防法第8条第1項/消防法施行令第1条の2 |
| 甲種か乙種か | 延べ面積の区分(用途により300平方メートル・500平方メートル) | 消防法施行令第3条 |
| 誰が取るか | 店長など、日常的に建物にいる人 | 選任は開業前に済ませる |
建物全体で収容人員を数える場合と、テナント単位で見る場合があります。自店がどちらにあたるかは、所轄の消防署に確認してください。
区分3|防火対象物点検資格者(収容人員300人以上など)
政令で定める防火対象物の管理について権原を有する者は、防火対象物点検資格者に定期的に 点検させ、その結果を消防長または消防署長に報告します(消防法第8条の2の2)。
対象は、収容人員が300人以上のものなどです(消防法施行令第4条の2の2)。 自店が資格者を抱える必要はなく、資格を持つ業者に点検を依頼する形が一般的です。
区分4|危険物保安監督者(政令で定める取扱所など)
政令で定める製造所・貯蔵所・取扱所の所有者等は、甲種危険物取扱者または乙種危険物取扱者で 6か月以上の実務経験を有する者のうちから危険物保安監督者を定めます(消防法第13条第1項)。
飲食店で灯油やガソリンを大量に扱うことは通常ありません。該当するのは 給油取扱所など、危険物を一定量以上扱う施設です。自店が対象になるかは、所轄の消防署に 確認してください。
区分5|その仕事そのものに要る免許
美容・理容・調理など、その行為を業として行うために免許が要る仕事があります。これは 開業の手続きとは別に、そもそもの前提になります。
免許に加えて、店の規模によって管理者の選任が要ることがあります。 たとえば美容師である従業者の数が常時2人以上の美容所には、管理美容師を置きます (美容師法第12条の3)。
| 業種 | 要るもの | 確認すること |
|---|---|---|
| 美容所 | 美容師免許。常時2人以上なら管理美容師 | 美容師法第12条の3/人数の見込み |
| 理容所 | 理容師免許。人数によって管理理容師 | 開業地の保健所に確認する |
| クリーニング所 | クリーニング師(取次店は不要) | クリーニング取次店の内装で決める5つのこと |
業種ごとの免許・管理者の要件は、法令に加えて都道府県の条例で細部が定められていることがあります。開業地の保健所に確認してください。
区分6|古物営業の管理者(営業所ごと)
古物商・古物市場主は、営業所または古物市場ごとに、業務を適正に実施するための責任者 として管理者1人を選任します(古物営業法第13条第1項)。
営業所が複数あるなら、それぞれに1人が要ります。2店舗目を出すときに 人が足りないことがあるため、早めに決めてください。古着屋・リユースショップの内装は 古着屋・リユースショップの内装で決める6つのことで 扱っています。
区分7|動物取扱責任者(事業所ごと)
第一種動物取扱業者は、事業所ごとに、十分な技術的能力と専門的な知識経験を有する者の うちから動物取扱責任者を選任します(動物愛護管理法第22条第1項)。選任した者には 都道府県知事が行う研修を受けさせます(同条第3項)。
要件を満たす人を採用できるかどうかが、開業日を左右します。 ペットショップや動物病院に併設するサロンの内装は ペットショップの内装で決める6つのことで扱っています。
開業日から逆算して決めること
- 自店の業種で、どの区分の資格が要るかを書き出した
- それぞれ、誰が取るかを決めた
- すでに持っている免許がないか、手元の書類を確認した
- 講習会の開催日程と、申込の締切を調べた
- 収容人員を数え、防火管理者の要否を消防署に確認した
- 甲種か乙種か(延べ面積の区分)を確認した
- 複数店舗なら、店ごとに選任が要るものを分けた
- 選任の届出をいつ出すかを、開業の工程表に書いた
よくある質問
資格は店主が全部取る必要がありますか?
店主が取る必要はありません。ただし食品衛生責任者や防火管理者は、日常的に店にいる人が務めるほうが実務に合います。誰が取るかを開業前に決めてください。
講習はいつ申し込めばよいですか?
講習は毎日開かれているものではありません。開催日程と申込の締切を先に調べ、開業日から逆算して申し込んでください。定員のある講習もあります。
防火管理者が要るかどうかは何で決まりますか?
用途と収容人員で決まります(消防法施行令第1条の2)。収容人員はその建物に出入りし、勤務し、居住する者の数です。数え方は所轄の消防署に確認してください。
防火対象物点検資格者は、自店で雇う必要がありますか?
資格を持つ業者に点検を依頼する形が一般的です。対象になるかどうか(収容人員300人以上など)を、まず所轄の消防署に確認してください。
2店舗目を出すとき、資格は使い回せますか?
古物営業の管理者や動物取扱責任者は営業所・事業所ごとの選任です(古物営業法第13条第1項、動物愛護管理法第22条第1項)。人が足りなくなることがあるため、早めに確認してください。
まとめ|講習の開催日から逆算する
| 区分 | 要る場面 | 根拠 |
|---|---|---|
| 区分1 食品衛生責任者 | 食品を扱う営業を行うとき | 食品衛生法施行規則 別表第十七 |
| 区分2 防火管理者 | 収容人員が政令の人数以上のとき | 消防法第8条第1項 |
| 区分3 防火対象物点検資格者 | 収容人員300人以上などのとき | 消防法第8条の2の2 |
| 区分4 危険物保安監督者 | 政令で定める取扱所などを持つとき | 消防法第13条第1項 |
| 区分5 業の免許 | 美容・理容・調理などを業として行うとき | 美容師法第12条の3ほか |
| 区分6 古物営業の管理者 | 古物商の営業所ごと | 古物営業法第13条第1項 |
| 区分7 動物取扱責任者 | 第一種動物取扱業の事業所ごと | 動物愛護管理法第22条第1項 |
7つのうち、日程がいちばん読みにくいのは講習を受けて取る資格です。 開催日と定員が決まっているため、開業日から逆算して先に申し込んでください。
条文はe-Gov法令検索の本文で確認しました。収容人員の数え方や講習の運用は自治体に よって案内が異なります。開業地の保健所と所轄の消防署で確かめてください。