新しいお客様は来ている。ただ、2回目がない。ここで内装を全部やり直しても、たいてい戻りません。探すのは、減点されている場所です。

月200組のうち再来店が20%か30%かで、年間の売上は変わります。客単価3,000円なら10ポイントの差は年72万円(200組×10%×3,000円×12か月。仮の数字です)。

内装で直せる原因は7つ。どれも、加点ではなく減点の話です。

この記事でわかること

  • お客様が飲食店の設備で「気になる」と答えた30項目とその割合(日本政策金融公庫の消費者調査、回答1,000人)
  • そのうち内装工事で直せるもの・直せないものの分け方
  • 内装で直せる7つの原因それぞれについて、自店で確かめる方法
  • 「1軒目で十分満足した」が46.2%という数字が示す、滞在の質の意味
  • 内装を直しても再来店が戻らないときに疑うべきもの
  • 再来店率の測り方と、工事費を「1日何人」に翻訳する手順
飲食店の環境や設備について気になることの上位10項目。店内が薄汚れている感じがする26.8%、席が狭い25.6%、たばこを吸う人の煙が流れてくる・たばこ臭い22.9%、トイレが汚い22.7%、店内が油っぽい21.8%、机や椅子が汚い21.7%、他の客の声が響く20.4%、店が寒い17.2%、クレジットカードや電子マネー等が使えない14.9%、店内の空気が淀んでいる13.6%。出典は日本政策金融公庫の外食に関する消費者調査結果(2019年3月実施、回答1,000人、複数回答)。
上位に並ぶのは、味でも接客でもなく設備です|汚れ・席の狭さ・トイレ・におい。どれも工事のときに決まるもので、開店してからでは動かしにくい項目が並びます。

開業してすぐの集客は開業直後の店舗集客でやること、売上を分解して投資先を決める方法は店舗リニューアルで売上改善を狙うならで扱っています。この記事は2回目のご来店が起きない原因に絞ります。

2回目が来ない理由は、レジに残らない

黙って来なくなるからです。不満を言う人はごく一部で、大半は理由を告げずに終わります。だから自分で探しにいくしかありません。

お客様が気にしているのは、味ではなく設備

調査で挙がる上位は、清潔さ、席の間隔、トイレ、におい、音、温度。どれも内装で決まります。

直せる時期も表に入れました。工事のときにしか直せないものが半分あります。

「気になる」の上位10項目と、直せる時期
気になること(調査の選択肢の原文)回答した割合いつなら直せるか
店内が薄汚れている感じがする26.8%仕上材を替えるなら工事。清掃で戻る範囲なら開店後も可
席が狭い25.6%工事のときだけ。席数を減らす判断は開店後だと決断しにくい
たばこを吸う人の煙が流れてくる、たばこ臭い22.9%喫煙室の設置は工事。分煙の運用は開店後も可
トイレが汚い22.7%器具の交換と床壁の仕上げは工事。清掃の手間は仕上材で決まる
店内が油っぽい21.8%工事のときだけ。排気の風量と経路は後から変えにくい
机や椅子が汚い21.7%什器の入れ替えで対応可。張地の選び方は工事の段階
「他の客の声が響く」20.4%吸音材は後付けもできるが、天井を開けるなら工事のとき
店が寒い17.2%吹出口の位置は工事のときだけ。能力不足なら機器の入れ替え
クレジットカードや電子マネー等が使えない14.9%端末の導入は開店後も可。ただし電源と通信の配線は工事
店内の空気が淀んでいる13.6%工事のときだけ。給気口がなければ換気扇は回りません

出典:日本政策金融公庫「外食に関する消費者調査結果(飲食店を探す際の情報源・重視する情報等)」(2019年7月11日公表、2019年3月8日〜11日実施)。インターネットによるアンケート調査、対象は全国に居住する半年に1回以上外食をしている20〜69歳の男女、回収1,000人(男女各500人)、複数回答。3列目の「いつなら直せるか」は編集部の整理です。

調査で挙がった30項目のすべて(回答割合の高い順・選択肢の原文のまま)
  1. 店内が薄汚れている感じがする 26.8%
  2. 席が狭い 25.6%
  3. たばこを吸う人の煙が流れてくる、たばこ臭い 22.9%
  4. トイレが汚い 22.7%
  5. 店内が油っぽい 21.8%
  6. 机や椅子が汚い 21.7%
  7. 「他の客の声が響く」 20.4%
  8. 店が寒い 17.2%
  9. クレジットカードや電子マネー等が使えない 14.9%
  10. 店内の空気が淀んでいる 13.6%
  11. 机や椅子が不安定(座り心地が悪い) 12.9%
  12. 洗面台が汚い 12.4%
  13. 駐車のスペースがない、十分でない 12.0%
  14. 「客の出入りがうるさい」 11.5%
  15. 店が暑い 11.4%
  16. 席の数が少ない 11.1%
  17. 店内の照明が暗い 10.7%
  18. トイレが狭い 9.4%
  19. トイレが和式のみだった 9.3%
  20. 店内にWi-Fiがない 8.7%
  21. 食器が古い 7.9%
  22. トイレが男女共用だった 7.9%
  23. たばこを吸えるスペースがない 4.2%
  24. 席に電源のコンセントがない 3.8%
  25. トイレにウォシュレットが付いてない 3.8%
  26. キャリーバッグやベビーカー等の大きな荷物を置くスペースがない 3.7%
  27. 洗面台が狭い 3.2%
  28. 駐輪(自転車)のスペースがない、十分でない 3.2%
  29. 店内がバリアフリー対応になっていない 1.6%
  30. 店内でテレビが見れない 1.1%
  31. その他 0.9%/気になることはない 27.6%

内装で直せる7つの原因

自店で確かめる方法を表にしました。自分の店は毎日見ているので、気づけません。手順が要ります。

7つの原因と、自店で確かめる方法
原因まとめた調査項目(回答割合)自店で確かめる方法
1. 汚れて見える店内が薄汚れている26.8%/机や椅子が汚い21.7%/食器が古い7.9%開店前に、入口から入って3秒だけ店内を見る。目に入る面の色ムラを数える
2. 席が狭い席が狭い25.6%/机や椅子が不安定12.9%/大きな荷物を置く場所がない3.7%2人で座って、上着とかばんの置き場があるか試す。通路を人がすれ違えるか歩く
3. トイレと洗面台トイレが汚い22.7%/洗面台が汚い12.4%/トイレが狭い9.4%/和式のみ9.3%/男女共用7.9%1日の終わりに床の四隅と便器の裏を見る。清掃に何分かかっているかを計る
4. においと空気たばこ22.9%/店内が油っぽい21.8%/空気が淀んでいる13.6%15分外に出てから戻る。入った瞬間のにおいで判断する。中にいると分かりません
5. 音「他の客の声が響く」20.4%/「客の出入りがうるさい」11.5%満席のときに、隣の席の会話が聞き取れるかを確かめる。奥の席で座って測る
6. 温度店が寒い17.2%/店が暑い11.4%席ごとに温度計を置く。入口近く・吹出口の真下・いちばん奥の3点で差を見る
7. 支払い・電源・通信カードや電子マネーが使えない14.9%/Wi-Fiがない8.7%/席に電源がない3.8%「カードは使えますか」と聞かれた回数を1週間数える。会計にかかる時間を計る

原因1|汚れて見える

汚れているのではなく汚れて見えるのが問題です。目地、継ぎ目、巾木の上。掃除しても取れない場所があります。

汚れが目立つ場所と、工事で選べる対策
目立つ場所起きていること工事で選べる対策
入口の建具まわり手の触れる高さに黒ずみ。押し板がないと扉そのものが汚れる押し板・引手を金属にする。手の高さだけ拭ける材料に変える
壁の腰から下椅子の背もたれ、かばん、靴が当たる。塗装だと剥がれる腰壁を900mm程度まで張る。巾木を厚めにする
厨房の出入口油と水滴が床に落ちる。目地が黒くなる目地の少ない床材にする。長尺シートの立ち上げで巾木をなくす
テーブルの天板熱い皿とアルコール消毒で白化するメラミン化粧板を使う。無垢材なら塗装の種類を確認する
照明器具の上面ほこりが積もる。お客様の位置からは見えないが、天井が暗く見える上面のない器具にする。ダウンライトへ変える
空調の吹出口吹き出す風で周囲に黒い筋が出る吹出口の周りだけ拭ける材料にする。位置を客席の真上から外す

原因2|席が狭い

設計者の想定は平均的な体格です。いちばん体格の大きい方に座ってもらうと、すぐ分かります。

席の狭さを、開店前に自分で確かめる手順
  1. いちばん体格の大きい方に座ってもらう。設計者の想定は平均値です
  2. 上着を脱いでもらい、置き場所を探してもらう。探す動作が出たら足りていません
  3. かばんを持って座ってもらう。床に置くと通路にはみ出さないかを見る
  4. スタッフが配膳しながら通る。お客様が座った状態で、体をずらさずに通れるか
  5. 奥の席から出てもらう。手前の方が立たないと出られないなら、そこは使われない席になります
  6. 2人で向かい合って食事をする。皿を並べて、肘が当たらないか
  7. 隣の席との間で会話する。声を落とさずに話せるか。落とすなら間隔が足りていません

原因3|トイレと洗面台

ここだけで判断されることがあります。後から変えられるものと、工事のときにしか決められないものを分けました。

トイレで決めることと、後から変えられるか
決めること後から変えられるか着工前に確かめること
個室の数と男女の別変えられない。面積と排水の位置で決まるピーク時に何人が同時に使うか。客席数から見て足りるか
個室の広さ変えられない扉を閉めた状態で、荷物を持ったまま向きを変えられるか
洋式・和式器具の交換で変えられる。ただし床の解体を伴う既存が和式なら、洋式化の費用を見積もりに入れる
洗面台の位置給排水の移動が要る。壁の中を開けることになる個室の中か外か。外なら待つ人の動線と重ならないか
床と壁の材料張り替えられる。休業は1〜2日目地の数を数える。少ないほど掃除は速い
換気扇の能力器具の交換で変えられる扉を閉めた状態で回るか。給気の隙間があるか
照明の明るさ器具の交換で変えられる暗いと汚れは隠れるが、清潔感も落ちる。手元だけ明るくする

原因4|においと空気

15分外に出て、戻ってみてください。入った瞬間の印象が、お客様の印象です。

においの原因を切り分ける手順
  1. 15分外に出て、戻る。入った瞬間の印象がお客様の印象です
  2. 入口を開けた瞬間と、奥に入ったときで違うか。奥だけ臭いなら、そこで空気が止まっています
  3. ティッシュを換気扇にかざす。吸い付かないなら風量が出ていません
  4. 厨房と客席の間の扉を閉めて、厨房の排気を回す。扉が重くなるなら給気不足です
  5. 営業終了後、1時間換気を回してから入る。それでも臭うなら、においが材料に染みています
  6. グリスフィルターと排気ダクトの内部を見る。油が溜まっていれば、それ自体がにおいの発生源です
  7. トイレの換気扇を回した状態で、客席側の空気が動くか。逆流していないかを確かめる

原因5|音

会話が聞き取れない店は、長居されません。響く原因と、対策の順番を表にしました。

店内が響く原因と、対策の順番
対策する場所効果の大きさ工事の手間
天井いちばん大きい。面積が広く、反射が全席に及ぶ吸音板への張り替え。営業しながらは難しい
壁の上部大きい。人の声は上に抜けて壁で返る吸音パネルの後付けが可能。休業せずにできる
床中くらい。椅子を引く音と足音に効く張り替えは休業が要る。ラグの敷き込みなら即日
席と席の間中くらい。視線を切ると声も小さくなる間仕切り・背の高いベンチ。什器の追加で対応できる
入口の扉小さいが、出入りのたびに全席に届くドアクローザーの調整。風除室の追加は工事
BGMの音量小さい。ただし上げると会話も大きくなり逆効果工事は不要。スピーカーの位置は工事のとき

原因6|温度

店全体ではなく、席によって偏ります。入口の近く、吹き出しの真下、窓際。その席だけ二度と使われないことがあります。

温度が偏る場所と、いつ直せるか
偏る場所起きていること直せる時期
吹出口の真下冷気が直接当たる。夏でも寒いと感じる着工前。位置の変更はダクトの引き直し
入口のすぐ内側扉が開くたびに外気が入る着工前なら風除室。開店後はエアカーテンの追加
いちばん奥の席風が届かない。夏は暑く、冬は寒い着工前。サーキュレーターで補える範囲は限られる
窓際ガラスから熱が出入りする開店後もフィルム・内窓で対応できる
厨房に近い席厨房の熱が流れてくる着工前。間仕切りと排気の計画で決まる
店全体能力そのものが足りない機器の入れ替え。電気容量が足りるかを先に確認する

原因7|支払い・電源・通信

会計で待たせると、最後の印象が悪くなります。配線は着工前に位置を決めておいてください。

着工前に位置を決めておく配線
  1. レジ・決済端末。電源と通信の両方。将来2台に増やす可能性も見ておく
  2. ルーターの置き場所。金属の什器の中に入れると電波が飛びません
  3. 券売機・セルフレジ。導入する可能性があるなら、空配管だけでも入れておく
  4. 席の電源。カフェや長時間の滞在を想定するなら、どの席に付けるかを図面で決める
  5. 防犯カメラ。天井を閉じたあとでは配線が通せません
  6. 電話とインターホン。厨房から客席が見えない配置なら必須
  7. 看板とサインの電源。外部なので、屋内より工事が大きくなります
  8. 予備の空配管。用途が決まっていなくても、1本入れておくと後から効きます

「1軒目で十分満足した」が46.2%という数字

2軒目に行かなかった理由の上位です。来なかった理由が、必ずしも不満とは限りません。そこも含めて見てください。

2軒目に行かなかった理由(上位6項目)
理由(調査の選択肢の原文)回答した割合店として読み取ること
1軒目で十分満足した46.2%1軒で完結させられる店なら、滞在時間と客単価を伸ばせる
翌日に酔いや疲れを残したくなかった15.7%食事を主にした注文が増える。厨房の想定と合っているか
出費を抑えたかった14.0%価格帯が読み取れることが、入店の前提になる
自分の時間(趣味や休息など)を大切にしたかった8.8%早い時間帯の客層を取り込めるか
ほろ酔いで心地よい気分でいたかった7.9%長居しやすい席の作りが効く
終電・終バスを逃すリスクがあった6.0%立地で決まる。内装では変えられない

出典:日本政策金融公庫「飲酒を伴う外食に関する消費者調査結果(2025年8月)」(2025年11月13日公表)。2025年8月6日〜12日、インターネットによるアンケート調査。対象は普段月1回以上の頻度で飲酒を伴う外食をしている20〜69歳の男女2,000人。この設問は「2軒目に行かなかった」と回答した1,423人に尋ねた複数回答です。飲酒を伴う外食に限った調査であり、昼食やカフェ、物販にはそのまま当てはまりません。3列目は編集部の整理です。

内装を直しても、再来店が戻らないとき

商品、価格、接客。内装では動かないものがあります。先に打つべき対策を表にしました。

内装では動かないものと、先に打つべき対策
要素なぜ内装では解決しないか先に打つべき対策
商品・サービスの質空間を整えても中身は変わらない。共有されるかは中身で決まる主力商品を3つに絞り、味と提供時間を安定させる
価格帯情報サイトで最も重視される項目(81.7%)。内装では伝わらない外からメニューと価格が読めるようにする。掲示の位置を変える
接客人の問題。工事では変わらないバックヤードを整えて動きやすくすると、間接的には効く
立地・アクセス物件を決めた時点で確定している駐車場と駐輪場を確保する。地図情報を正確にする
認知そもそも知られていなければ来店は起きない地図検索と写真を整える。Googleビジネスプロフィールから着手する
来店のきっかけ再来店には「思い出す機会」が要る次回の予約を店内で取る。会計の場所と手順を見直す

再来店率の測り方と、費用の翻訳

工事の前に、5つの数字を記録しておいてください。取っていないと、直したあとに効果が分かりません。

工事の前に記録しておく5つの数字
  1. 月の組数。人数ではなく組で数える。席の使われ方が見えます
  2. 客単価。売上÷組数ではなく、売上÷人数と両方取る
  3. 再来店の組数。予約名・会員登録・次回予約のいずれかで代用する
  4. 席ごとの利用率。使われていない席があれば、そこが問題の場所です
  5. 「〜はありますか」と聞かれた回数。電源・Wi-Fi・カード決済・喫煙。不足の直接の証拠になります

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よくある質問

7つのうち、どれから手をつければよいですか?

まず着工前にしか直せないものから確かめてください。席の間隔、排気の経路、空調の吹出口、給気の取り方の4つです。

これから工事をするなら、この4つを図面の段階で詰めます。すでに営業している店なら、汚れ・音・支払いと通信の3つが先です。休業せずに手を入れられます。

調査は飲食店が対象ですが、物販店や美容室でも同じですか?

そのまま当てはめないでください。この調査は飲食店を利用した方に尋ねたものです。

ただし汚れ・温度・トイレ・音は、業種を問わず滞在中に感じるものです。項目の順位ではなく、確かめ方の手順を借りる形で使うのが安全です。

再来店が減っているかどうか、どうやって判断しますか?

新規のご来店数と全体の組数を分けて見てください。新規が横ばいで全体が減っているなら、減っているのは再来店です。

分けられない場合は、次回予約の取得率や会員登録の数で代用します。数字がまったくないなら、まず3か月記録することから始めてください。

予算が限られています。いちばん費用対効果が高いのはどこですか?

営業中の店ならトイレです。工事の規模が小さく、休業も短く済み、調査で5項目が挙がっている場所だからです。

次が手の触れる高さの仕上材。腰壁を張るだけなら、店の印象は大きく変わります。天井の吸音は効果が大きい反面、営業を止める必要があります。

まとめ|減点されている場所を探す

再来店は、良いところを増やして伸びるものではありません。減点されている場所を1つずつ消していくものです。

まず15分外に出て、自分の店に入り直してください。それがいちばん安い調査です。

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