ロードサイドへの出店で目にする「事業用定期借地権」は、建物ごと借りる通常のテナント契約とは根本的に仕組みが違います。借りるのは土地だけで、建物は自分で建てる契約です。

存続期間は10年から50年で、更新はありません。契約満了時には、原則として建物を取り壊して更地に戻す義務まで生じます。この仕組みを理解しないまま資金計画を立てると、契約満了時に想定外の費用が発生します。

出店を検討する前に確認しておくことは6つあります。

この記事でわかること

  • 借地借家法上の事業用定期借地権の要件
  • 存続期間10年〜50年・更新なしという条件の意味
  • 通常の建物賃貸借(テナント契約)との違い
  • 建物建築費・内装費が自己負担になる範囲
  • 契約満了時の原状回復(建物取り壊し)義務
  • ロードサイド出店で選ばれる理由

通常の建物賃貸借契約で確認すべき条項は賃貸借契約書で確認すべき8つの条項で扱っています。この記事は事業用定期借地権という別の契約類型に絞ります。

事業用定期借地権と通常の建物賃貸借の違いを示した図。事業用定期借地権は土地のみを借りて建物は自己所有・更新なし、通常の建物賃貸借は建物ごと借りて内装のみ自己負担・更新ありとなる。
「何を借りるか」が根本的に違います|事業用定期借地権は土地だけ、通常の賃貸借は建物ごと借ります。

決め1|借地借家法上の事業用定期借地権の要件(公正証書での契約が必須)

事業用定期借地権は、借地借家法第23条に定められた借地権の一種です。専ら事業の用に供する建物の所有を目的とすることが要件で、居住用の建物には使えません。

契約は公正証書によって行うことが法律上の要件です(借地借家法第23条第3項)。私文書での契約は認められず、公証役場での手続きが必要になります。

土地の所有者(地主)と契約するのは、建物ではなく土地の使用権です。建物は借主が自分で建て、所有権を持ちます。

事業用定期借地権の主な要件
項目要件確認すること
目的専ら事業の用に供する建物の所有居住用途には使えない
契約方式公正証書(借地借家法第23条第3項)公証役場での手続きが必要
存続期間10年以上50年未満期間ごとに更新・建物買取請求権の扱いが変わる

決め2|存続期間は10年〜50年、更新はない

事業用定期借地権には、通常の借地権にある法定更新(借地借家法上、期間満了時に自動的に更新される制度)がありません。契約時に定めた期間が満了すれば、原則として契約は終了します。

存続期間が10年以上30年未満の契約と、30年以上50年未満の契約では、法律上、建物買取請求権の扱いなど適用される条項が異なります。長期の出店計画を前提にするなら、投資回収に必要な年数から逆算して期間を交渉してください。

契約更新がないため、期間満了後も同じ場所で営業を続けたい場合は、地主との再契約交渉が必要です。再契約が成立する保証はない前提で、期間満了時期を早めに意識しておいてください。

決め3|通常の建物賃貸借(テナント契約)との根本的な違い

通常の建物賃貸借(テナント契約)では、建物は貸主(オーナー)が所有し、借主は建物と内装のみを整えます。事業用定期借地権では、建物そのものを借主が建てるため、建築確認申請から建物の維持管理まで、借主の責任範囲が大きく広がります。

事業用定期借地権と通常の建物賃貸借の違い
項目事業用定期借地権通常の建物賃貸借
借りるもの土地のみ建物(内装除く)
建物の所有者借主(自分で建てる)貸主
更新原則なし(期間満了で終了)法定更新あり(契約による)
初期費用建物建築費+内装費内装費のみ(保証金・敷金別)
満了時の対応建物取り壊し・更地返還が原則内装の原状回復のみ

決め4|建物建築費・内装費は原則すべて自己負担になる

通常のテナント契約では建物本体の建築費がかからない分、事業用定期借地権では建物本体の建築費が丸ごと初期投資に乗ります。内装だけを見れば費用感が近く見えても、総投資額は大きく変わります。

資金計画を立てる際は、内装費だけでなく建物本体の建築費、その建築確認申請費用まで含めた総額で検討してください。融資の審査でも、建物の所有権を借主が持つ点は評価の対象になります。

建築費・内装費の総額の目安は店舗開業にかかる費用の全体像でも扱っています。事業用定期借地権を選ぶ場合は、この全体像に建物本体の建築費を上乗せして試算してください。

決め5|契約満了時の原状回復義務(建物取り壊し・更地返還)

契約が満了すると、借主は建物を取り壊し、更地にして土地を返還する義務を負うのが原則です。この取り壊し費用は、契約当初の内装工事とは別に、事業終了時のコストとして見込んでおく必要があります。

通常の建物賃貸借の原状回復(内装を撤去して引き渡す程度)と比べ、事業用定期借地権の原状回復は建物本体の解体という、規模も費用も大きな工事になります。契約時点で、取り壊し費用の目安を確認してください。

通常のテナント契約における原状回復の範囲は店舗の原状回復で確認する8つのことで扱っています。事業用定期借地権の場合は、この記事の範囲を超え、建物解体まで含む点に注意してください。

決め6|ロードサイド出店で事業用定期借地権が選ばれる理由

ロードサイド型の店舗(郊外の広い敷地を使う業態)で事業用定期借地権が選ばれる理由の1つは、広い土地を、建物の貸主を介さず直接借りられる点です。地主にとっても、建物の建築・維持管理の負担を負わずに土地を貸し出せる利点があります。

自社の仕様に合わせた建物を建てられる自由度がある一方、初期投資と契約満了時の解体義務という負担も引き受けることになります。出店戦略として、この仕組みが自社に合うかを、資金計画と合わせて検討してください。

よくある質問

事業用定期借地権の契約は、口約束や普通の契約書ではだめですか?

借地借家法第23条第3項により、公正証書によって契約することが法律上の要件です。私文書での契約や口約束では、事業用定期借地権としての効力が認められません。

契約期間中に、途中で解約することはできますか?

契約内容によります。中途解約の可否・条件は契約書に定められるため、契約前に解約条項の有無と条件を確認してください。

建物は誰の名義で登記しますか?

事業用定期借地権では建物を借主が建てるため、原則として借主名義で登記します。融資を受ける場合は、この建物への抵当権設定なども金融機関と相談してください。

契約が終わったら、必ず建物を壊さなければなりませんか?

原則として建物を取り壊し、更地にして返還する義務があります。地主との合意によって建物を譲渡する等の取り決めがある場合は契約書の内容によりますので、契約時に確認してください。

通常のテナント契約と、どちらが内装費を抑えられますか?

内装費だけで比べれば大きな差はない場合もありますが、建物本体の建築費が加わる事業用定期借地権のほうが総投資額は大きくなるのが一般的です。総額で比較検討してください。

まとめ|「借りるのは土地だけ」を前提に資金計画を組む

事業用定期借地権|6つの確認のまとめ
決めること基準・根拠確認すること
決め1 要件借地借家法第23条、公正証書が必須公証役場での契約手続きを前提に進める
決め2 存続期間10年以上50年未満、更新なし投資回収年数から必要な期間を交渉する
決め3 契約の違い土地のみ借りる/建物ごと借りる自社に合う契約類型かを比較する
決め4 初期費用建物建築費+内装費が自己負担建築費を含めた総投資額で資金計画を立てる
決め5 満了時の対応建物取り壊し・更地返還が原則解体費用を事業終了時のコストとして見込む
決め6 選ばれる理由広い土地を直接借りられる自由度負担と自由度のバランスを検討する

事業用定期借地権は、通常のテナント契約とは借りるものも、契約が終わったときの義務も別物です。内装費だけでなく、建物本体の建築費と契約満了時の解体費用まで含めた資金計画を、契約前に立ててください。

契約は公正証書が必須で、内容も個別性が高い分野です。契約書の内容は、内装会社だけでなく、不動産や借地権に詳しい弁護士・司法書士にも確認することをおすすめします。

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