定期借家は「更新がない契約」と説明されます。ただし違うのはそこだけではなく、 手続きが4か所で違います。
契約は書面か電磁的記録によることが要り、契約とは別に事前の説明が要ります。説明が なければ「更新がない」という定めそのものが無効になります(借地借家法第38条)。
そして出店する側にとって大きいのは、内装への投資を期間内に回収できるかです。 契約前に確認することは7つあります。
この記事でわかること
- その契約が本当に定期借家かを見分ける方法
- 事前の説明の書面を受け取ったかどうかがなぜ重要か
- 期間が満了する前に来る終了の通知の時期
- 店舗で途中でやめられるかは、何で決まるか
- 再契約の条件を、いつ確かめておくか
- 内装への投資を期間内に回収できるかの見方
土地を借りる事業用定期借地権は事業用定期借地権で出店するときに確認すること、 賃貸借契約書の条項全般は店舗の賃貸借契約書で確認する9つの条項で 扱っています。この記事は建物の定期借家契約に絞ります。
確認1|その契約が本当に定期借家かを見分ける
定期借家は、期間の定めがある建物賃貸借について、公正証書等の書面によって契約の更新が ないことを定めた場合に成立します(借地借家法第38条第1項)。電磁的記録によるものは 書面によるものとみなされます(同条第2項)。
「定期借家」と口頭で言われただけでは、その効力は生じません。 契約書の表題と、更新に関する条項の文言を実際に読んでください。
| 項目 | 普通借家 | 定期借家 |
|---|---|---|
| 更新 | 原則として更新される | 更新がない(第38条第1項) |
| 契約の方式 | 書面でなくても成立する | 書面または電磁的記録(第38条第1項・第2項) |
| 事前の説明 | 定めなし | 書面等での説明が要る(第38条第3項・第5項) |
| 終了の通知 | 定めなし | 期間1年以上は1年前から6か月前まで(第38条第6項) |
条文はe-Gov法令検索の本文で確認しました。実際の契約がどちらにあたるかは、契約書の内容と手続きの経過によって判断されます。判断に迷う場合は契約前に専門家に相談してください。
確認2|事前の説明の書面を受け取ったか
貸主は契約の前に、更新がなく期間の満了によって賃貸借が終了することを、書面を交付して 説明しなければなりません(借地借家法第38条第3項)。賃借人の承諾があれば電磁的方法でも 行えます(同条第4項)。
この説明がされなかった場合、更新がないという定めは無効になります(同条第5項)。 契約書とは別の書面なので、受け取った書類を分けて保管してください。
確認3|期間満了の通知が、いつ来るか
期間が1年以上の場合、貸主は期間の満了の1年前から6か月前までの間に、終了する旨の 通知をしなければ、終了を賃借人に対抗できません(借地借家法第38条第6項)。
この期間は、次の物件を探すための時間でもあります。契約したときに、 通知が来る時期をカレンダーに書き込んでおいてください。
| 日付 | 何の日か | その時点でやること |
|---|---|---|
| 満了の1年前 | 終了の通知が来始める時期(第38条第6項) | 再契約の意思を貸主に伝える |
| 満了の6か月前 | 通知の期間の終わり | 通知が来ていなければ貸主に確認する |
| 満了日 | 賃貸借が終了する日 | 原状回復と明け渡しの完了日から逆算する |
確認4|途中でやめられるか(店舗は特約で決まる)
借地借家法第38条第7項は、居住の用に供する建物で床面積200平方メートル未満のものについて、 やむを得ない事情があるときの解約の申入れを定めています。
店舗はこの規定の対象ではありません。途中でやめられるかどうかは、 契約書の中途解約の特約によって決まります。特約がなければ、期間の途中で出るときに 残りの期間の賃料を求められることがあります。
| 読む条項 | 確認すること | 無かったときの意味 |
|---|---|---|
| 中途解約の可否 | 解約できる旨の定めがあるか | 定めがなければ、期間内は原則として続く |
| 予告の期間 | 何か月前に申し入れるか | 予告期間分の賃料は発生する |
| 違約金 | 残存期間に応じた定めがあるか | 撤退の判断そのものが重くなる |
確認5|再契約の条件を、契約時に書面で確かめる
定期借家に更新はありませんが、期間が終わったあとに改めて契約を結び直すことはできます。 これを再契約と呼びます。
再契約は貸主と借主の合意によるもので、権利として求められるものではありません。 再契約の可能性について、契約の段階でどう扱われているかを書面で確かめてください。
確認6|賃料を改定する特約があるか
賃料の増減を請求する権利について、借地借家法第32条に定めがあります。ただし定期借家で 賃料の改定に関する特約がある場合は、この規定は適用されません(同法第38条第9項)。
改定の特約があるなら、上がる方向にも下がる方向にも効きます。 改定の時期と、どの指標で決まるのかを契約書で確認してください。
確認7|内装の回収年数を、期間の中に収める
定期借家では、期間が終われば出ることになります。そのため内装への投資は、原則として 契約期間の中で回収できる範囲に抑えることになります。
期間より長い年数で償却する造作は、途中で残ることになります。 税務上の耐用年数は店舗内装工事の減価償却と耐用年数、 退去時の原状回復は店舗の原状回復でトラブルを避ける7つの対策で 扱っています。
契約書を受け取ったら確かめること
- 契約書が書面か電磁的記録で交わされている
- 更新がない旨の条項が書かれている
- 契約書とは別に、事前の説明の書面を受け取った
- 期間の始まりと終わりの日付を控えた
- 終了の通知が来る時期をカレンダーに入れた
- 中途解約の可否と、予告期間・違約金を読んだ
- 再契約についてどう書かれているかを読んだ
- 賃料改定の特約の有無と、改定の時期を読んだ
- 原状回復の範囲がどこまでかを読んだ
- 内装の投資額を、契約期間で割って1年あたりを出した
よくある質問
定期借家は借主に不利な契約ですか?
期間が確定している分、賃料が抑えられていることもあります。不利かどうかではなく、内装の投資を期間内に回収できるかで判断してください。
事前の説明を受けていない場合はどうなりますか?
更新がないという定めは無効になります(借地借家法第38条第5項)。契約書とは別の書面なので、受け取った書類を分けて保管してください。
店舗でも途中で解約できますか?
借地借家法第38条第7項は居住用で床面積200平方メートル未満の建物についての規定です。店舗は契約書の中途解約の特約によって決まります。
期間が終わったら必ず出ていくことになりますか?
更新はありませんが、貸主と合意すれば再契約できます。ただし権利として求められるものではないため、投資の回収は期間内で考えてください。
終了の通知が来なかったら、そのまま使い続けられますか?
期間が1年以上の契約で通知がされていない場合、貸主は終了を対抗できません(借地借家法第38条第6項)。ただし個別の事情で判断が分かれるため、専門家に相談してください。
まとめ|期間より先に、説明の書面を確かめる
| 確認すること | 根拠・読む場所 | 確認したあとにすること |
|---|---|---|
| 確認1 契約の方式 | 借地借家法第38条第1項・第2項 | 書面か電磁的記録かを確かめる |
| 確認2 事前の説明 | 同条第3項・第5項 | 説明の書面を分けて保管する |
| 確認3 終了の通知 | 同条第6項 | 通知が来る時期をカレンダーに入れる |
| 確認4 中途解約 | 契約書の特約(同条第7項は居住用) | 予告期間と違約金を読む |
| 確認5 再契約 | 契約書・貸主との書面 | 扱いを書面で確かめる |
| 確認6 賃料改定 | 同条第9項・借地借家法第32条 | 改定の時期と指標を読む |
| 確認7 回収年数 | 自店の投資額と契約期間 | 投資額を期間で割って1年あたりを出す |
7つのうち、契約のあとでは取り返せないのが確認2の事前の説明と 確認4の中途解約です。どちらも署名する前にしか確かめられません。
条文はe-Gov法令検索の本文で確認しました。個別の契約がどう扱われるかは事情によって 判断が分かれるため、金額の大きい出店では契約前に専門家に相談してください。