「今だけ半額」の値札には、「今まで」の値段が本当にその値段だった証拠が要ります。証拠のない「今まで」は、その一枚の値札ごと違反になります。

内装にどれだけお金をかけても、入口に貼った値札1枚で信用を落とすことがあります。2025年9月、消費者庁はおせち商品の価格表示に措置命令を出しました。

問題になったのは、値引き後の価格そのものではありません。比較対照価格として示した「今までの価格」の裏付けです。過去の値段を比較対照価格として使うには、満たすべき条件が4つあります。

この記事でわかること

  • 比較対照価格として過去の値段を使える4つの条件(いわゆる8週間ルール)
  • セールにかける商品の販売期間が短いときの考え方
  • 「先月まで」と書けなくなる、2つの期限
  • 条件を満たさない値下げ表示をしたときに、実際に何が起きるか(措置命令と課徴金の違い)
  • 小規模な店の値下げ表示で、課徴金の対象になりやすいかどうかの目安

SNSでのプレゼント企画は店舗のSNSプレゼント企画で確認すること、ポイントカードの設計は店舗のポイントカード・スタンプカードで確認することで扱っています。この記事は「今までいくらだったか」という価格の書き方に絞ります。

比較対照価格として過去の価格を使うには、セール開始前8週間のうち通算2週間以上、かつその期間の過半をその価格で販売していたこと、最後に販売した日から2週間以上経過していないことが必要。4つの条件を満たして初めて「今までの価格」と表示できる。
4つとも満たして、はじめて「今まで◯円」と書けます|1つでも欠けると比較対照価格として使えません。値付けを変えた日の記録が前提になります。

「特大和洋おせち」の価格表示に、措置命令が出ています

2025年9月12日、消費者庁は通信販売大手の株式会社ジャパネットたかたに、おせち商品の表示について景品表示法にもとづく措置命令を出しました。実際より有利だと誤認させる、有利誤認表示にあたるという判断です(景品表示法第5条第2号)。

有利誤認表示は、「実際のもの又は他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される」表示を指します(同法第5条第2号)。値下げ後の価格を大きく見せるための「今までの価格」が、実態と違えばここに当たります。

比較対照価格として過去の値段を使えるかどうかは、消費者庁のガイドラインが定める4つの条件で判断します(不当な価格表示についての景品表示法上の考え方 第4の2(1)ア(ウ))。

比較対照価格として過去の価格を使える4つの条件
基準内容くわしく
1. 検討する期間セール開始前8週間(対象商品の販売期間が8週間未満ならその全期間)くわしく
2. 販売していた比率その値段で売っていた期間が、検討期間の過半を占めることくわしく
3. 通算の期間通算で2週間以上その値段で売っていたことくわしく
4. 直近性最後にその値段で売った日から2週間以内であることくわしく

出典:消費者庁「株式会社ジャパネットたかたに対する景品表示法に基づく措置命令について」(2025年9月12日公表)、「二重価格表示」。ガイドラインは不当な価格表示についての景品表示法上の考え方(平成12年6月30日公正取引委員会、改定平成14年12月5日公正取引委員会)です。

基準1|比べる期間は「セール開始前の8週間」

見る期間は、セールを始める時点からさかのぼった8週間です。9月に始めるセールなら、7月上旬からの値付けが対象になります。

ただし、その商品を売り始めてからまだ8週間経っていないこともあります。その場合は、売り始めてから今までの期間で見ます。新商品を早々に値下げする場合はここに当たります。

対象商品の販売期間別に見る、検討する期間
対象商品の販売期間検討する期間確認すること
8週間以上、その商品を売っているセール開始時点からさかのぼる8週間8週間分の値札・POSデータを確認する
売り始めてから8週間未満売り始めてから、セール開始までの全期間売り始めた日を、発注書や仕入伝票で確認する

基準2|その値段で売っていた期間が「8週間の過半」

検討する期間のうち、その値段で実際に売っていた期間が半分を超えている必要があります。8週間なら、4週間より多く売っていたかどうかが目安です。

2週間だけ試しに高く値付けして、残りの6週間は別の値段で売っていた場合、その2週間の値段は比較対照価格に使えません。過半という比率が効いてきます。

8週間のうち何週間売っていれば「過半」か
その値段で売っていた週数8週間に占める比率扱い
5週間62.5%過半を満たす
4週間50.0%ちょうど半分。過半(半分を超える)には届かない
3週間37.5%過半を満たさない

出典:消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」第4の2(1)ア(ウ)。「過半を占める」という文言そのものの数値の線引き(ちょうど半分の扱い)は、条文の解釈にあたる部分のため、迷う場合は最寄りの消費生活センターや弁護士に確認してください。

基準3|通算で「2週間」売っていたか

合計で2週間に満たない値段は、そもそも実績として認められません。1日だけ、あるいは数日だけ試しにつけた値段は使えないということです。

ガイドラインの文言は「通算して2週間未満の場合」を除外する書き方です。連続していなくても、合計が2週間以上あれば条件を満たします。

通算2週間の考え方
売り方通算の期間扱い
連続して2週間、その値段で売った2週間条件を満たす
1週間売って値段を変え、また1週間その値段に戻した合計2週間条件を満たす(通算のため)
3日間だけ、その値段で売った3日条件を満たさない

基準4|最後にその値段で売った日から「2週間」経っていないか

その値段で最後に売った日から2週間以上経っていたら、もう「最近」の価格ではありません。半年前にやめた値段を、今のセールの比較対照にはできません。

在庫が残っていて久しぶりに再セールをかけるとき、前回のセールから間が空いていないかを確認してください。

最後に売った日からの経過期間と、扱い
最後にその値段で売った日から扱い確認すること
1週間条件を満たすPOSデータで最終販売日を確認
3週間条件を満たさない比較対照価格に使えない
半年以上条件を満たさない新しい「今までの価格」を作る必要がある

あわせて読みたい

4つを満たさない値下げ表示をすると、何が起きるか

条件を満たさない比較対照価格の表示が、すべて摘発されるわけではありません。ただし有利誤認にあたるリスクを抱えたまま値札を出すことになります。

有利誤認表示に問われたときに起きること
処分など有利誤認表示での扱い根拠
措置命令対象になる。表示の差止め、再発防止、周知徹底を命じられ、名称と内容が公表される景品表示法第7条第1項
課徴金納付命令対象になる。売上額の3%(繰り返す場合は4.5%)。算定期間は最長3年同法第8条第1項
課徴金の対象外になる場合算定額が150万円未満(売上額5,000万円未満が目安)のとき、または表示が違反にあたることを知らず、相当の注意を怠っていなかったとき同法第8条第1項ただし書
確約手続是正措置の計画が認定されれば、措置命令などの適用を受けない。2024年10月1日から同法第26条から第33条
直罰(100万円以下の罰金)消費者庁の説明では、対象は優良誤認表示と有利誤認表示同法第48条(2024年10月1日施行)

出典:消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」。課徴金は口コミのステルスマーケティング(ステマ告示違反)とは違い、有利誤認表示そのものが対象です。

よくある質問

比較対照価格を示さなければ、このルールは関係ありませんか?

比較対照価格を示さず、値下げ後の価格だけを表示するなら、この4つの条件の対象にはなりません。ただし「今だけ」「本日限り」のように期間や数量を偽って特別感を演出する表示は、別の有利誤認の類型にあたることがあります。

「セール開始前8週間」の値付けは、何を見て確認すればよいですか?

POSレジの販売データ、値札を替えた記録、価格を改定した発注書などが手がかりになります。ガイドライン自体は記録の方法を指定していませんが、8週間分の値付けをさかのぼって説明できる状態にしておくと、あとから比較対照価格として使えるかを自分で判断できます。

通算2週間というのは、連続していなくてもよいのですか?

ガイドラインの文言は「通算して2週間未満の場合」を除外する書き方です。断続的に売っていた期間を合計して2週間以上あれば、条件を満たします。

小規模な店の値下げ表示でも、課徴金の対象になりますか?

課徴金額の算定結果が150万円未満(対象期間の売上額が5,000万円未満が目安)のときは、課徴金納付命令の対象になりません。ただし措置命令はこの基準の対象外で、売上規模にかかわらず出される可能性があります。

まとめ|4条件を満たす記録を、値付けのたびに残す

「今まで◯円」の◯円が、比較対照価格として使えるかどうかは、4つの条件のすべてを満たすかで決まります。1つでも欠ければ、有利誤認表示のリスクを抱えたまま値札を出すことになります。

課徴金の対象になるかどうかは、対象期間の売上規模でおおよそ判断できます。目安を計算してみます。

4つの基準(再掲)
基準内容根拠
1. 検討する期間セール開始前8週間(8週間未満ならその全期間)第4の2(1)ア(ウ)
2. 販売していた比率その値段で売っていた期間が、検討期間の過半同
3. 通算の期間通算で2週間以上その値段で売っていたこと同
4. 直近性最後にその値段で売った日から2週間以内同
課徴金の対象になるかどうかの目安(編集部の試算例・すべて仮の数値)
段階計算出る数字
課徴金の下限額公表されている基準額150万円
その額になる売上高150万円 ÷ 3%約5,000万円
対象期間中の実際の売上高が、これを下回るなら課徴金額の算定結果が150万円に届かない課徴金納付命令の対象外
それでも変わらないもの売上規模を問わない措置命令のリスクはそのまま残る

数値は消費者庁の公表資料にもとづく計算です。対象期間の売上高や算定期間は個別の事案で変わるため、実際の該当・非該当の判断ではありません。

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