内見のときは天井が高くて明るい。けれどジムの内装で効くのは見た目ではなく、床の耐荷重、音と振動、そして天井の高さです。

契約してから床を対策すると、15坪のラバーマット入れ替えで数十万円、浮き床から組み直せば百万円単位の追加になります。

決めることは8つ。床、音と振動、高さ、空調と換気、水回り、鏡と照明、電気とセキュリティ、そして法規。

この記事でわかること

  • ダンベル落下と重量物の設置が床と建物の構造にどう効くか、内覧当日にメジャーと図面だけで何を確かめられるか
  • 真下・隣室への振動と音の伝わり方を、契約前に自分の耳で検証する手順と、管理会社に投げるべき質問文
  • 頭上動作に必要な高さを、天井高ではなくスプリンクラー・ダクト・照明の下端で判断する方法
  • 発熱と発汗に対する換気量・除湿・においの経路の考え方と、内装会社への伝え方
  • シャワー・トイレ・更衣室を給排水の位置から逆算して、15坪の中でどう面積を配分するか
  • 賃料・会員数・月会費から内装にかけられる金額を計算し、「1日何セッション分か」に翻訳する手順
  • 消防法・建築基準法・特定商取引法のうち、小規模ジムが実際に引っかかる条文と数値(200平方メートル、300平方メートル、5万円)
7年84か月・月会費3万3千円の場合、追加50万円は会員0.18名分、100万円は0.36名分、200万円は0.72名分、300万円は1.1名分、500万円は1.8名分にあたる。
「300万円かけるか」より「会員が1名増えるか」|同じ問いでも、後者のほうが判断できます。20歳以上の週1日以上のスポーツ実施率は51.7パーセント、「トレーニング」の実施率は12.3パーセントです。商圏の人口に掛けて確かめてください。

物件内覧で見るべき点を全業種共通で整理したものは店舗物件の選び方|内装工事の視点で内覧時に確認する10のポイント、 開業にかかるお金の全体像は店舗開業にかかる費用の全体像|内装費のほかに必要な8つの費目、 電気容量・空調・給排水といった設備条件の一般論は店舗の電気容量が足りない物件を避けるには|契約前に確認する7つの設備条件、 狭い面積を広く見せる工夫は小規模店舗を広く見せる6つの方法|視線・高さ・色・家具・収納・動線、 届出と許認可の全体像は店舗開業に必要な届出と許認可|内装の着工前に確認する9つの手続きで扱っています。 この記事は、それらの共通事項ではなく、パーソナルジムに固有の「重量物・振動・発汗」という3つの負荷に絞ります。

ジムの内装が他業種と違う3つの前提

重いものを落とす、汗をかく、そして人が動く。この3つが、他の業種にはない負荷を建物にかけます。契約後に対応した場合に何が起きるかを表にしました。

ジムに固有の3つの負荷と、契約後に対応した場合に何が起きるか
負荷 契約後に気づくと何が起きるか 契約前に自分で確かめる方法
重量物(積載荷重) マシンの搬入前に構造の確認が必要になり、設計事務所への確認費用と時間が追加で発生する。位置を変えれば済む場合もあるが、レイアウトを一から引き直すことになる 管理会社に「この区画の設計上の積載荷重は1平方メートルあたり何ニュートンですか。竣工図か構造計算書を見せていただけますか」と書面で質問する
振動(衝撃音) 開店後に真下から苦情が入り、フリーウェイトの使用時間を制限するか、営業しながら床を組み直すことになる 内覧時に真下の階へ行き、同行者に上の階で30センチメートルほど飛び降りてもらい、どの程度聞こえるかを自分の耳で確かめる
発汗(熱・湿気・におい) 夏場に空調が効かず、においが残る。空調の増設は電気容量の見直しと室外機の置き場所の確保が同時に必要になり、両方できないことがある 室外機を置ける場所(バルコニー・屋上・共用部)を実際に見て、写真を撮り、「室外機はここに追加で置けますか」と管理会社に確認する
上記3つの複合 床を上げる、天井を下げる、ダクトを回すという工事が重なり、天井高と有効面積の両方が削られる 内覧時に天井裏(点検口)を開けて、既存のダクト・配管・スラブ下端の位置を写真に撮り、内装会社に共有する

需要と単価を、数字で確かめる

公的調査から、スポーツへの支出や施設の利用状況が分かります。ジムの現場の単位に翻訳する形で表にしました。

公的調査の数字を、ジムの現場の単位に翻訳する
調査で分かること 現場の単位に直すと 自店で確かめる方法
20歳以上の週1日以上のスポーツ実施率51.7% 商圏の成人のおよそ半分は、何らかの形で週1回は身体を動かしている。ジムに来ていないだけで、運動そのものは習慣になっている層が広く存在する 近隣の公共体育館・公園・河川敷を平日の朝と夜に見に行き、どの年代が何をしているかを30分だけ数える
「トレーニング」実施率12.3%(社会生活基本調査では12.9%) 商圏人口1万人なら器具を使うトレーニング経験者はおよそ1,100〜1,200人。会員30名はその2.6% 徒歩10分圏の町丁字別人口を市の統計ページで拾い、合計に12.9%を掛けた数を紙に書く
トレーニングの1日あたり平均時間41.9分 60分のセッション枠は、平均的な実施時間より長い。着替えとシャワーを含めると滞在は90分前後になり、その分の更衣室とシャワーの待ち時間が発生する 自分が現在勤務している店で、お客様の入店から退店までの実測時間を10名分メモし、平均を出す
トレーニングの週あたり実施日数2.6日 週2回コースを軸にすると、実施習慣の平均に近い。月8回の設計なら会員1人あたりの来店は月8回で、面積と枠の回転がここで決まる 自分が想定する料金プランの回数(月4回か月8回か)を先に決め、その回数で枠が埋まるかを1日の時間割に書き出す
実施を増やせない理由の1位は「仕事が忙しいから」26.5% 平日の早朝と夜、そして土日に枠が集中する。この時間帯に運営できるかが会員数の上限を決める 物件のビルの共用部が何時に施錠されるか、土日祝に入館できるかを管理会社に確認する

ポイント1〜3|床、音と振動、高さ

床は全面を同じ厚みにする必要はありません。落とす場所だけを厚くすれば足ります。積載荷重は、契約前に建物側へ確認できます。

音と振動は、床を伝わる分がいちばん厄介です。下の階に何が入っているかを、内覧で確かめてください。

高さは、梁の下で測ります。ラットプルダウンやスミスマシンは、天井高が足りないと入りません。

床で決めること(ポイント1)と、契約前に確かめる方法
決めること 判断の考え方 内覧・確認の具体的な行動
ラバーマットの厚みの配分 全面を厚くしない。フリーウェイトの置き場、バーベルを下ろす位置、マシンの下、ストレッチスペースで厚みを変える 平面図に「ここでデッドリフトをする」「ここにダンベルラックを置く」と手書きで書き込み、その紙を内装会社に渡す
下地がスラブ直か、二重床か コンクリートスラブに直接仕上げているか、脚を立てた二重床(置き床)かで、衝撃の伝わり方がまったく違う。二重床は空気層が太鼓のように働くことがある 床の隅を踵で軽く叩いて音の違いを聞き、点検口があれば開けて下地を写真に撮る。管理会社に「床は二重床ですか、スラブ直ですか」と聞く
設計上の積載荷重 マシン本体とプレートの合計重量を先に計算し、その数値を提示して確認する。集中して置くか分散するかでも判断が変わる 「合計約〇〇キログラムの機器を配置します。この区画の設計積載荷重と、竣工図・構造計算書の閲覧可否を教えてください」と書面で送る
床の水平(不陸) 古い物件では床が傾いていることがある。ラックやマシンが傾くと安全性に直結し、鏡の映りも歪む 水平器(スマートフォンのアプリでも可)を床に置き、部屋の四隅と中央の5か所で測って数値を控える
原状回復の範囲 床を上げる工事をした場合、退去時に撤去して元に戻す義務があるか。撤去費用を開業時から積んでおく必要がある 契約書の原状回復条項を読み、「床を150ミリメートル上げた場合、退去時の扱いはどうなりますか」と貸主側の書面回答をもらう
音と振動で決めること(ポイント2)と、契約前に確かめる方法
決めること 判断の考え方 内覧・確認の具体的な行動
真下のテナントの業種と在室時間 住居・治療院・学習塾は避ける。飲食店や物販は、営業時間が重なっていても許容されやすい ビルの入口の表札とポストを見て全テナントを控え、真下の階へ入って営業時間を確認する。夜21時に外から窓の明かりを見る
建物の構造(RC造・S造・木造) 鉄筋コンクリート造のスラブが最も安定する。鉄骨造でデッキプレートの床は、たわみが出やすく読みにくい 募集図面の構造欄を見るだけでなく、「床スラブの厚さは何ミリメートルですか」と管理会社に聞き、竣工図の該当ページの写しをもらう
実際の伝わり方 仕様書では分からない。同じ構造でも建物ごとに違う。測るしかない 2回目の内覧で同行者に上階(対象区画)で30センチメートルほど飛び降りてもらい、自分は真下の階でその音を聞く。スマートフォンの録音でも記録する
営業時間の上限 午後10時以降は求められる静けさの水準が上がる。深夜枠を作るなら、その時間はフリーウェイトを使わない設計にする 賃貸借契約書と管理規約に営業時間の定めがないかを確認し、「22時以降の営業に制限はありますか」と書面で質問する
隣室との界壁の仕様 界壁が天井裏で止まっている(上まで達していない)と、音が天井裏を回り込む 天井点検口を開けて、隣との間仕切り壁が上まで達しているかを懐中電灯で確認し、写真を撮る
高さで決めること(ポイント3)と、内覧で測るべき箇所
決めること 判断の考え方 内覧で測る・聞く内容
頭上動作をする位置の最低高 部屋の平均ではなく、その位置の最低高で判断する。1か所でも成立すればよいので、部屋全体を高くする必要はない 脚立とメジャーで、床からスプリンクラーヘッド・ダクト・照明の下端までを部屋の5か所以上で測り、平面図に数値を書き込む
マシンの全高と搬入経路の高さ 設置できても搬入できないことがある。エレベーターのかご内高さ、扉の有効高さ、廊下の梁下が制約になる エレベーターの内寸(幅・奥行・高さ)と扉の有効寸法を測り、階段搬入の場合は踊り場の広さを写真に撮る
スプリンクラーの移設可否 移設には消防設備士の工事と所轄消防署への手続きが伴う。位置を動かすより、動作の位置を動かすほうが安い場合が多い 「スプリンクラーヘッドの移設は可能ですか。過去に実施した事例はありますか」と管理会社と消防設備業者の双方に聞く
床仕上げで減る高さ ラバーマットの厚み、防振層の厚み、二重床の高さがすべて天井高から引かれる 内装会社に「床の仕上げで何ミリメートル上がりますか」と確認し、測った天井高からその数値を引いた紙を作る
天井を張るか、スケルトンで見せるか 張らなければ高さは稼げるが、反響が増え、埃が落ち、空調効率も下がる。吸音材を部分的に貼るなどの併用が現実的 スケルトンの状態で手を叩き、反響の残り方を耳で確かめる。同じことを内装済みの他店でもやって比較する

ポイント4〜6|空調と換気、水回り、鏡と照明

ジムは人が発する熱と湿気が多い業態です。一般的な事務所用の計算では足りません。内装会社に投げる質問文を表にしました。

シャワーを付けるかどうかは、給湯能力と排水の位置で決まります。後から足すのは、床を上げることになります。

鏡は面積が大きいほど効きますが、照明の映り込みと一緒に考えないと逆効果です。

空調と換気で決めること(ポイント4)と、内装会社への質問文
決めること 判断の考え方 内装会社・管理会社への具体的な質問文
空調機の能力 面積ではなく発熱量で選ぶ。在室人数、マシンの消費電力、照明の発熱、外気に接する面積を条件として渡す 「同時に運動する方が最大4名、ランニングマシン2台、南向きの窓が3か所という条件で、必要な冷房能力を計算していただけますか」
換気量と経路 冷やす機能と入れ替える機能は別。給気と排気を対角に置き、部屋を空気が通り抜けるようにする 「給気と排気はそれぞれどこに設けますか。図面に空気の流れを矢印で描いていただけますか」
シャワー・更衣室からの湿気の処理 湿気をトレーニングスペースに戻さない。シャワー室は個別に排気を取り、扉下の隙間から給気する 「シャワー室の排気は専用ですか。排気が止まったあとに湿気が室内へ回り込む経路はありますか」
室外機の設置場所 能力を上げても室外機を置く場所がなければ設置できない。共用部への設置は管理組合の承認が要ることが多い 「室外機を追加で設置できる場所はどこですか。共用部に置く場合の承認手続きと期間を教えてください」
吹き出し口の向き 汗をかいた状態で冷風が直接当たると不快になり、逆に当たらないと暑い。マットの位置と吹き出し口の関係を先に決める 「トレーニングマットを置く位置に、冷風が直接当たらない吹き出し口の配置にできますか」
水回りで決めること(ポイント5)と、契約前に確かめる方法
決めること 判断の考え方 内覧・確認の具体的な行動
給水・排水の立管の位置 立管から遠いほど床を上げる必要が出て、天井高と工事費に効く。立管の近くに水回りをまとめるのが基本 床の点検口や既存の給湯室・トイレの位置から立管のおおよその位置を推定し、平面図に印を付けて内装会社に渡す
排水の勾配が取れるか 排水は自然に流れる。距離が長いほど落差が必要になり、床の高さが上がる 「シャワーをこの位置に置いた場合、排水の勾配を取るために床を何ミリメートル上げる必要がありますか」と内装会社に図面上で確認する
給湯器の能力と設置場所 ピーク時の連続使用人数から号数を決める。交換にはガス管の口径や電気容量の確認が伴う 既存の給湯器の型番を写真に撮り、「連続で3名がシャワーを使う想定です。この給湯器で足りますか」とガス事業者か内装会社に聞く
防水の範囲と仕様 シャワー室は防水層が必須。壁の立ち上がりをどこまで取るかで漏水の危険が変わる。階下への漏水は賠償に直結する 「防水層は壁のどの高さまで立ち上げますか。防水試験(満水試験)は行いますか」と内装会社に確認し、回答を見積書に書いてもらう
更衣室とシャワーを分けるか兼ねるか 同時に室内にいる組数で決まる。1組なら兼ねる、重ねて入れるなら分ける 1日の時間割を紙に書き、前後のセッションが何分重なるかを実際に数えてから決める
水回りに使う面積の上限 先に上限を決めてから設計に入る。決めずに進めると、水回りが膨らんでトレーニングスペースが痩せる 平面図の上に「水回りはこの範囲まで」と赤線を引いた紙を作り、複数の内装会社に同じ紙を渡す
鏡と照明で決めること(ポイント6)と、確認・依頼の方法
決めること 判断の考え方 内装会社への具体的な質問文・確認行動
鏡の位置と大きさ 確認したい動作と角度から決める。全面に張る必要はなく、必要な面だけ張れば費用は下がる いま働いている店で、自分がどの位置に立ってどの鏡を見ているかを1週間メモし、その配置を図面に描いて渡す
鏡の下端の高さと保護 床まで張ると足元が広く見えるが、ダンベルが当たって割れる危険がある。下端に幅木や保護材を入れる 「鏡の下端は床から何ミリメートルにしますか。飛散防止フィルムは貼りますか」と確認し、仕様書に記載してもらう
寝た姿勢でのまぶしさ ベンチやマットの真上に光源を置かない。間接照明やルーバー付き器具を使う 図面にベンチとマットの位置を描き込み、「この位置に寝たときに光源が直接目に入らない配置にしてください」と依頼する
撮影用の1か所を決める 店内全体の光を整えるのは高い。撮影する壁を1か所決め、そこだけ色温度と演色性を揃える 「この壁の前で撮影します。色温度と演色性(Ra)を指定した器具にしてください」と伝え、器具の型番を見積書に明記してもらう
調光ができるか 時間帯や用途で明るさを変えられると、朝と夜で雰囲気を変えられる。器具と配線を最初から調光対応にしておく 「調光対応の器具と回路にした場合、追加費用はいくらですか」と見積もりの段階で金額を出してもらう

ポイント7〜8|電気とセキュリティ、そして法規

24時間営業なら、入退室の管理とカメラの配線が工事に含まれます。あとからだと、壁を開けることになります。

法規は、用途と規模で消防設備が変わります。相談先と、持っていくものを表にしました。

電気とセキュリティで決めること(ポイント7)と、確認の方法
決めること 判断の考え方 管理会社・内装会社への具体的な質問文
契約できる電気容量の上限 建物全体の受電容量が決まっており、テナント1区画に割り当てられる上限がある。上限を超えると増設は困難か高額になる 「この区画で契約できる電気容量の上限は何アンペア(またはキロボルトアンペア)ですか。増設の可否と概算費用も教えてください」
マシンの合計消費電力 電源が必要な機器のカタログ値を合計する。ランニングマシンは起動時に大きな電流が流れる点に注意する 導入予定のマシンの型番と消費電力を一覧にした紙を作り、「この構成で足りますか」と電気工事の担当者に渡す
ランドリーを店内に置くか 乾燥機は消費電力が大きく、排湿の経路も必要。外注に出すほうが電気と工事の負担は小さい 「洗濯乾燥機を1台置く場合、専用回路と排湿ダクトはどこに通せますか。追加費用はいくらですか」
スマートロックと監視カメラの位置 電源と通信が要る。後付けは配線が露出する。玄関、更衣室の入口、トレーニングスペースの画角を先に決める 平面図にカメラの位置と向きを描き込み、「この位置に電源と通信線を先行配線してください」と依頼する
無人時間の運用と記録 誰がいつ入ったかを記録し、事故時に説明できるようにする。保険の加入条件になることもある 賠償責任保険の見積もりを内装設計と並行して取り、保険会社が求める設備要件を書面でもらって内装会社に渡す
通信回線の引き込み スマートロック、カメラ、予約システム、決済が回線に依存する。回線が引けない物件は無人営業に向かない 「光回線の引き込みは可能ですか。すでに配管は来ていますか。共用部からの引き込みに管理組合の承認は要りますか」
法規で確認すること(ポイント8)と、相談先・持っていくもの
確認すること 判断の基準になる数値・条文 相談先と、持っていくもの
消防法上の用途区分 消防法施行令別表第一。単独用途なら(十五)項「前各項に該当しない事業場」、雑居ビルの一区画なら建物全体が(十六)項イまたはロ 所轄消防署の予防課。平面図、建物全体のテナント一覧、想定する在館人数を持参する
消火器具の設置義務 消防法施行令第10条。(十五)項は延べ面積300平方メートル以上。(一)項から(四)項などは150平方メートル以上 同上。建物全体の延べ面積が分かる資料(管理会社から取得)を持参する
防火対象物使用開始届 各市町村の火災予防条例。名古屋市は火災予防条例第66条に基づく届出で、手数料は不要 防火対象物のある区の消防署予防課。名古屋市は電子申請も可能。提出期限を電話で確認してから工事日程を組む
建築基準法の用途変更 ジムは施行令第115条の3第2号の「スポーツの練習場」として特殊建築物。法第6条第1項第1号により200平方メートル超で確認申請が必要(法第87条第1項で準用) 特定行政庁(市の建築指導課など)。現況の平面図、変更前の用途が分かる資料、面積の計算根拠を持参する
用途地域の制限 用途地域によってはスポーツの練習場を設けられない。確認申請が不要な規模でも制限は適用される 市の都市計画課または建築指導課。住所と物件の面積を伝えて、用途地域と制限の内容を確認する
特定継続的役務提供への該当 特定商取引法第41条と施行令別表第四の7つの役務。該当する場合、期間(エステティックは1月)超過かつ金額5万円超が要件 消費者庁の窓口または弁護士。提供するサービスの内容、料金プラン、契約期間を書き出した紙を持参する

内覧当日に自分で確かめる手順

メジャーとレーザー距離計。梁の下の高さと、床の状態。この2つを測るだけで、入るマシンが決まります。

内覧当日に自分で確かめる手順
  1. 持ち物を用意する。5メートル以上のメジャー、レーザー距離計(あれば)、脚立、懐中電灯、水平器(スマートフォンのアプリでも可)、平面図を印刷した紙、赤ペン、カメラ。
  2. 床の高さの基準を決める。入口の床を基準点として、部屋の四隅と中央の5か所で水平を測り、数値を平面図に書き込む。
  3. 天井から下がっている物の下端を測る。スプリンクラーヘッド、空調の吹き出し口、ダクト、照明、露出配管、感知器。それぞれの位置と床からの高さを平面図に書き込む。
  4. 天井点検口を開ける。懐中電灯で、既存のダクト、配管、スラブの下端、隣室との間仕切り壁が上まで達しているかを確認し、写真を撮る。
  5. 給排水の手がかりを探す。既存のトイレや給湯室の位置、床の点検口、壁の配管カバーから、立管のおおよその位置を推定して平面図に印を付ける。
  6. 分電盤を開けて写真を撮る。契約アンペア、主幹ブレーカーの容量、空き回路の数を控える。
  7. 室外機を置ける場所を見る。バルコニー、屋上、共用部の該当箇所を歩き、既存の室外機の数と空きスペースを写真に撮る。
  8. 真下の階へ行く。同行者に上階(対象区画)で30センチメートルほどその場で飛び降りてもらい、真下でどう聞こえるかを耳で確かめ、スマートフォンで録音する。
  9. 搬入経路を歩く。建物の入口から区画の扉まで、エレベーターの内寸、扉の有効幅と高さ、廊下の梁下、曲がり角の寸法を測る。
  10. 建物全体のテナントを控える。入口の表札とポストから全テナント名と業種を書き写し、夜21時にもう一度外から窓の明かりを確認する。
  11. 管理会社への質問を書面にまとめる。積載荷重、床スラブの厚さ、電気容量の上限、室外機の設置可否、営業時間の制限、原状回復の範囲。回答を書面でもらう。
  12. 測った数値を書き込んだ平面図をコピーし、相談する内装会社すべてに同じものを渡す。

よくある質問

パーソナルジムの開業を検討している方から、内装まわりで実際によく出る質問を4つ挙げます。 いずれも、答えが「場合による」で終わりがちな問いですが、 その「場合」を分けるための基準まで書きました。 物件の階数、床の構造、天井から下がっている設備、そして提供するサービスの中身。

この4つのどれに当たるかが分かれば、答えは自分で出せます。 自分の物件がどちらに当たるかを判断できるようになれば、 内装会社との打ち合わせで話が早く進みます。 なお、法令に関する質問については、最終的な判断は所轄消防署・特定行政庁・消費者庁の窓口に確認してください。

パーソナルジムの物件は、1階と2階以上のどちらを選ぶべきですか?

音と振動だけを基準にするなら、1階の路面店のほうが明らかに安全です。 2階以上では、ダンベルやバーベルを床に置いたときの衝撃が真下のテナントへ直接伝わり、 営業時間が重なっていれば苦情になります。

ただし1階は賃料が高く、同じ予算では面積が小さくなるため、 マシンの配置やシャワー・更衣室の確保が難しくなります。 2階以上を選ぶ場合は、真下がどの業種か、 建物の構造が鉄筋コンクリート造か鉄骨造か木造か、 床の下地がコンクリートスラブ直かどうかを必ず確認してください。

判断の軸は「1階か2階か」ではなく「真下に何があり、自分が営業する時間帯にそこに誰がいるか」です。 内覧のときに真下のテナントへ入り、上の階で人が飛び降りる音がどう聞こえるかを実際に確かめるところまでやってください。

防振マットを敷けば、下の階への音は解決しますか?

軽減はできますが、解決すると考えないでください。 ダンベルの落下は短時間に大きなエネルギーが床へ入る衝撃で、 マットの厚みだけでは吸収しきれない成分が建物の構造体を伝わっていきます。

とくに鉄骨造でデッキプレートの床の場合、 伝わり方が建物ごとに違い、施工してから測ってみないと分からないことが少なくありません。

現実的な組み立ては、マットの厚みを確保すること、 フリーウェイトを置く位置を柱や耐力壁に近い側へ寄せること、 そして重量を静かに下ろす運用をお客様に徹底することの三つを重ねることです。

内装会社に相談するときは「防音してください」ではなく 「真下が事務所で、平日の19時から22時に人がいる。ダンベルを落としたときの音を減らしたい」と条件を具体的に伝えてください。

天井高はどのくらい必要ですか。図面の数値を見れば判断できますか?

必要な高さは扱う種目によって変わるため、一律の数値はありません。 ショルダープレスやスナッチのように頭上へ重量を上げる動作を入れるなら、 お客様の身長に腕を伸ばした分とバーの厚みと余裕を足した高さが要ります。

そして実際の制約になるのは天井高そのものではなく、 スプリンクラーヘッド、空調ダクト、照明器具、露出配管の下端がどの高さに来ているかです。 図面上の天井高が2,700ミリメートルでも、 設備の下端が2,400ミリメートルにあれば、その位置で使える高さは2,400ミリメートルです。

内覧では脚立とメジャーを持ち込み、床から設備の下端までを数か所で測り、 その数値を平面図に書き込んで内装会社に渡してください。

パーソナルジムは特定商取引法の特定継続的役務提供に該当しますか?

一律に該当するわけではありません。 特定商取引法第41条の特定継続的役務提供は、同法施行令の別表第四に掲げられた役務に限られ、 そこに挙がっているのはエステティック、美容医療、語学の教授、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの7つです。

トレーニング指導そのものは、この7つに名指しで挙がってはいません。 ただし、痩身のための施術を組み合わせるなど、 提供する内容が別表第四の一にある 「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと」に当たると判断される場合は、 エステティックとして規制の対象になり得ます。

期間が政令で定める期間を超え、かつ金額が5万円を超えるという要件もあわせて、 自店のサービス内容が該当するかどうかは消費者庁の窓口や弁護士に確認してください。

まとめ|ジムの内装で決める8つのこと

内装費の追加は「会員何名分か」に翻訳できます。15坪・賃料20万円・月会費3万3千円での試算例を置きました。

内見では、まず梁の下を測ってください。天井高は、工事では増やせません。

試算(例)|15坪・賃料20万円・月会費3万3千円の場合の月次収支
項目 金額(例) 自店の数字に置き換えるときの確認方法
賃料+共益費 20万円 募集条件の坪単価に専有坪数を掛け、共益費と看板使用料を足す。フリーレント期間の有無も確認する
水道光熱費 6万円 いま働いている店の請求書を面積で割り、自店の面積を掛けて概算する。シャワーの有無で大きく変わる
通信費・予約決済システム 3万円 導入予定のシステムの料金ページを見て、会員数に応じた課金かどうかを確認する
広告費 12万円 1名の入会にかかる広告費(獲得単価)を、いまの職場の実績か広告代理店の提示から確認し、月の目標入会数を掛ける
消耗品・リネン 4万円 タオルを店で洗うか外注かで変わる。外注ならリネン業者に枚数を伝えて見積もりを取る
保険料・雑費 3万円 賠償責任保険と火災保険の見積もりを、内装の設計と並行して2社以上から取る
オーナーの役員報酬 40万円 生活費として必要な金額を先に決める。ここを低く見積もると計画が成立しているように見えてしまう
借入返済(700万円・7年) 約9万円 金融機関の返済シミュレーションに金額・期間・金利を入れて、元利合計の月額を出す
必要な月商 約97万円 上の合計を出し、月会費で割って必要会員数を計算する
損益分岐の会員数 30名(1日4.8セッション) この人数を、開業から何か月で埋めるかを月別に紙へ書き出す
内装費の追加を「会員何名分か」に翻訳する(例・7年84か月・月25日営業・セッション単価8,250円)
追加する金額 現場の単位に直すと この金額を出すかどうかの判断のしかた
50万円 月5,950円/1日238円/月0.72セッション/会員0.18名分 「これがないと退会が年に1名増えるか」を自問する。増えると思うなら出す
100万円 月11,900円/1日476円/月1.4セッション/会員0.36名分 床・音・空調のように、あとから直せない項目に優先して充てる
200万円 月23,800円/1日952円/月2.9セッション/会員0.72名分 会員1名弱を7年つなぎとめる効果があるか。意匠だけの追加ならいったん保留にする
300万円 月35,700円/1日1,428円/月4.3セッション/会員1.1名分 会員1名以上の増加が必要。この規模の追加は、料金を上げられる根拠になるかで判断する
500万円 月59,500円/1日2,380円/月7.2セッション/会員1.8名分 物件そのものを変えたほうが安くないかを、もう一度比較する

名古屋で店舗内装業者を選ぶポイントを見る