キッチンカー・移動販売の開業では、車両そのものが食品衛生法上の「営業施設」として扱われます。固定店舗の厨房と同じ感覚で車両を改造すると、給水タンクの容量やシンクの数が基準に届かず、許可が下りないことがあります。

出店先も1か所ではないため、道路使用許可やイベント出店許可など、固定店舗にはない手続きが加わります。

車両の改造を確定する前に決めておくことは7つあります。

この記事でわかること

  • 車両が「営業施設」として扱われることの意味
  • 給水タンク・排水タンクの容量基準の考え方
  • 提供するメニューによって変わるシンクの数の基準
  • 食品衛生責任者の配置
  • 出店先ごとに必要になる道路使用許可・イベント出店許可
  • 車両の検査・許可更新のサイクル

固定店舗の厨房設計は飲食店の厨房設計で決める9つのことで扱っています。この記事は車両ならではの基準に絞ります。

キッチンカーの営業許可を取るまでの流れを示した図。車両の設計・改造、車両の食品衛生法上の営業許可申請、保健所の現地検査、許可取得という4段階で進む。
車両の設計を確定する前に、保健所へ事前相談する段階があります|給水タンクの容量とシンクの数は、車両の改造後に変えるのが最も難しい部分です。

決め1|車両そのものが「営業施設」になる、という食品衛生法上の扱い

固定店舗では、店舗の内装が食品衛生法上の営業施設になります。キッチンカーでは車両そのものが営業施設です。営業許可は車両の所在地を管轄する保健所ではなく、車両の基地(主に停める場所)を管轄する保健所に申請します。

許可の区分は「飲食店営業」が基本ですが、扱うメニューによって「菓子製造業」等の別区分になる場合もあります。車両の改造を発注する前に、扱うメニューを決め、必要な許可区分を保健所に確認してください。

車両基準は都道府県ごとに条例で定められており、基準そのものに地域差があります。出店を予定する地域と、車両の登録・基地となる地域が異なる場合は、両方の基準を確認してください。

決め2|給水タンク・排水タンクの容量基準

調理に使う清潔な水を積む給水タンクと、排水を溜める排水タンクは、扱うメニューや調理工程の数に応じた容量が求められます。タンクの容量は車両の限られたスペースを取り合う要素で、あとから大きくするのは難しい部分です。

扱うメニュー数・調理工程を先に決め、必要なタンク容量を保健所に確認してから、車両のレイアウトを固めてください。容量が足りないと、稼働できる時間・提供数に上限がかかります。

車両基準で確認する主な項目
項目内容確認すること
給水タンク調理・洗浄に使う清潔な水を積むタンク扱うメニュー数から必要容量を保健所に確認する
排水タンク使用済みの水を溜めるタンク給水タンクと同容量以上が求められることが多い
冷蔵・冷凍設備食材を保管する設備扱う食材の量に対して容量が足りるか確認する

具体的な容量基準は都道府県ごとの条例・運用基準で定められています。数値は営業許可申請先の保健所に必ず個別に確認してください。

決め3|シンクの数と、調理内容ごとの基準の違い

シンクの数は、車両内で行う調理工程(食材の洗浄・調理器具の洗浄・手洗い)を、どこまで分けて確保できるかで決まります。単純な調理(温めるだけ等)と、複数工程を要する調理では、求められるシンクの数が変わります。

仕込みを別の場所(自宅や既存の飲食店の厨房等)で行い、車両では最終の調理・提供だけを行う運用にすると、車両側のシンク要件が緩和される場合があります。仕込みをどこで行うかは、車両の設計に先立って決めておく事項です。

決め4|食品衛生責任者を1名以上置く

キッチンカーも固定店舗と同様に、食品衛生責任者を1名以上置く必要があります(食品衛生法)。栄養士・調理師等の資格がなくても、都道府県等が実施する講習会を修了すれば資格を得られます。

営業許可の申請時には、食品衛生責任者の資格を証明する書類が必要です。車両の完成を待たず、早い段階で講習を受けておくと、許可申請の手続きがスムーズです。

決め5|出店先ごとに必要な道路使用許可・イベント出店許可

道路上(歩道や路肩)で営業する場合は、道路交通法に基づく道路使用許可が別途必要です(道路交通法第77条)。公園や商業施設の敷地内で出店する場合は、施設の管理者の許可が必要になります。

イベント会場に出店する場合は、イベント主催者への出店申込みに加え、会場によっては保健所への臨時営業の届出が求められることがあります。出店先が変わるたびに、必要な許可の組み合わせも変わるという前提で準備してください。

出店先を決めるたびに確認すること
  • 道路上での営業か、私有地・施設内での営業か
  • 道路上なら道路使用許可(所轄警察署)
  • 私有地・施設内なら管理者の出店許可
  • イベント出店なら主催者への申込みと、必要に応じた臨時営業の届出
  • 電源・給排水の確保(施設側で用意があるか)

決め6|車両の保健所検査と、営業許可の更新

営業許可を取得する際は、保健所の担当者による車両の現地検査を受けます。検査に通らないと許可は下りません。改造を発注する段階で、保健所が確認する検査項目を業者と共有しておくと、検査での手戻りを防げます。

営業許可には有効期間があり、更新の手続きが必要です。更新時にも車両の状態が基準を満たしているかが確認されるため、タンクや設備の劣化を放置しないことが更新をスムーズにします。

決め7|固定店舗との違い(厨房設計の記事との使い分け)

固定店舗の厨房は、面積配分や給排気の設計に自由度がありますが、キッチンカーは車両という限られた空間の中で基準を満たす制約があります。将来的に固定店舗へ展開する計画がある場合は、キッチンカーでの営業許可と固定店舗の営業許可は別物である点に注意してください。

固定店舗の厨房設計で押さえる面積配分・給排気の考え方は飲食店の厨房設計で決める9つのことで扱っています。キッチンカーから固定店舗へ広げる際は、あわせて確認してください。

よくある質問

キッチンカーの営業許可は、どこの保健所に申請しますか?

車両の所在地ではなく、車両を主に停める場所(基地)を管轄する保健所に申請します。出店予定地と基地の自治体が異なる場合は、両方の基準を確認してください。

給水タンクの容量は、何リットル必要ですか?

具体的な容量基準は都道府県ごとの条例・運用基準で定められており、全国一律ではありません。扱うメニュー数を決めたうえで、営業許可申請先の保健所に個別に確認してください。

仕込みを自宅で行うことはできますか?

自宅を営業許可のある施設として届け出ない限り、原則として認められません。仕込みを行う場所も含めて、営業許可の対象施設として保健所に相談してください。

道路上で営業する場合、道路使用許可はどこで取りますか?

出店予定地を管轄する警察署に申請します(道路交通法第77条)。公園や施設内で営業する場合は、施設の管理者の許可が別途必要です。

キッチンカーの営業許可があれば、固定店舗もそのまま開業できますか?

できません。固定店舗を開業する場合は、その店舗について別途、食品衛生法上の営業許可を取得する必要があります。キッチンカーの許可は車両に対するものです。

まとめ|車両の設計は、許可の基準から逆算する

キッチンカー・移動販売の開業|7つの確認のまとめ
決めること基準・根拠確認すること
決め1 営業施設の扱い車両そのものが営業施設(食品衛生法)基地の所在地を管轄する保健所を確認する
決め2 給水・排水タンク都道府県条例の車両基準メニュー数から必要容量を保健所に確認する
決め3 シンクの数調理工程の数による仕込みをどこで行うかを先に決める
決め4 食品衛生責任者食品衛生法早い段階で講習を受けておく
決め5 出店先の許可道路使用許可(道路交通法第77条)等出店先ごとに必要な許可を確認する
決め6 検査・更新保健所の現地検査、許可の有効期間検査項目を車両改造業者と共有する
決め7 固定店舗との違い車両と店舗は別の営業許可固定店舗への展開時は別途許可を取る

キッチンカーの内装(車両改造)は、意匠よりも先に許可の基準から逆算して設計を決める必要があります。扱うメニューと出店先のイメージを先に固め、保健所への事前相談を早い段階で行ってください。

車両基準は都道府県ごとに異なります。この記事の内容を目安に、必ず申請先の保健所に最新の基準を確認してから、車両改造の発注を進めてください。

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